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2007年読書的覚書

 2007-12-31-17:26

さて、2007年もあと少し。
2005年にブログを始めたので、こういったことを書くのも既に三回目。その一年を纏めておくと、後で読んだとき自分も楽しいんですよねー。というわけで、2007年の読書についても纏めておこうと思います。

今年の読書傾向としては、じわりじわりと翻訳本の世界に近づいて行ったなぁ、という感じ。まだまだその国や歴史についての知識が少ないので、歴史的な事実などの補完が今後の課題です。
(史実的なものを読むか、もしくは他の物語で重ねていくか)

ドイツ:
マークース・ズーサック「本泥棒」/
世界は美しくも醜いシチュー
シルヴィー ジェルマン「マグヌス」/
記憶、断片、人生

スペイン:
カルロス・ルイス サフォン「風の影」/
スペインのロマン小説

アメリカとメキシコの国境:
コーマック マッカーシー「すべての美しい馬」/
青年は旅をする、自らの居場所を求めて
コーマック マッカーシー「平原の町」/
その魂の行方

タイ:
ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」/
観光地、タイ。その空の下の人生の断片

リビア:
ヒシャーム・マタール「リビアの小さな赤い実」/
リビアの少年、少女

中国:
イーユン・リー「千年の祈り」/
珠玉の短編集
ダイ シージエ, 新島 進「フロイトの弟子と旅する長椅子」
/
フロイトの弟子にして、ドン・キホーテ、莫(モー)がゆく
ダイ・シージエ「バルザックと小さな中国のお針子」/
一九七一年、中国の青春

ペルシア(もしくはアイルランド?):
マーシャ メヘラーン「柘榴のスープ」/
生の営み、料理というもの、魔法のスープ

インド:
ジュンパ ラヒリ「停電の夜に」/
世界とわたし

ウクライナ:
アンドレイ・クルコフ「ペンギンの憂鬱」/
孤独と孤独が寄り添って・・・


また、ここまで挙げた本もすべてフィクションだったけれど、更に架空の歴史をきっちり作り上げた、次のような本も楽しかったです。

・小山 歩「戒」/
戒よ、どこまでも舞え
・酒見 賢一「後宮小説」/
少女、銀河がゆく

酒見賢一さんは、「墨攻」「語り手の事情」を積んでいるので、来年はこちらもさっさと読んでしまおうかと。小山さんは、ファンタジーノベル大賞優秀賞の「戒」しか出てないのが惜しいですねえ。まだまだ書いて欲しいなぁ。

人間の心に分け入るという面では、次の二冊も面白かったです。二冊とも、ノンフィクションのように思えてしまうくらいの迫力のフィクションなんだけど、「ミドルセックス」は両性具有、「くらやみの速さはどれくらい」は自閉症を扱っています。

・ジェフリー・ユージェニデス「ミドルセックス」/
少女カリオペの数奇な運命
・エリザベス ムーン「くらやみの速さはどれくらい」/
光と闇とその速さと

児童書では、鎌倉の河童を描いた以下二作品。続きも出て欲しいなぁ。

・朽木 祥「かはたれ―散在ガ池の河童猫」/
かはたれ時に見えしもの
・朽木 祥「たそかれ」/
誰そ彼時に出会いしもの

後は、怖がってたSF作品である「夏への扉」 も面白かったし、女性SF作家 キャロル・エムシュウィラー(85歳を越える現在も精力的に執筆活動を続けているのだとか!)の「すべての終わりの始まり」 も面白かったです。
P.G.ウッドハウスの
「ブランディングズ城の夏の稲妻」 のようなコージー・ミステリ的なのも、引き続いて合間合間に読んでいきたいし、エッセイでは、岸本佐知子さんの「ねにもつタイプ」 、吉野朔美さんの「お父さんは時代小説が大好き」  「お母さんは「赤毛のアン」が大好き」 が面白かった! 岸本さんの翻訳本や、ポール・オースターも読み進めていきたいです。


来年もまた、興味の赴くままに読んでいこうと思います。 
2007年、お付き合い下さりありがとうございました。
来年もまたよろしくお願いいたします。

【過去まとめ記事】
2006年読書的覚書
「2005年 読んだ本ベスト10」バトン
「2005年 読んだ本ベスト10」選外

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「ゼロ時間へ」/その瞬間から溯れ

 2007-12-30-00:13

アガサ・クリスティー, 田村 隆一

ゼロ時間へ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 1-8))

杉の柩 」の記事を書いたときに、ちらりとこの本のことは既に書いているのだけれど、「千の天使がバスケットボールする 」の樹衣子さんの映画記事(『ゼロ時間の謎 』)に触発されて再読です。

P・G・ウッドハウスの「ブランディングズ城の夏の稲妻 」を読んだ時にも、なんとなくクリスティを思い出したのだけれど、こういう一つ所に皆が集まって…、というシチュエーションには、古き良きミステリの香りがするように思います。特にそれが、海岸の避暑地の豪奢な別荘を舞台にしているとあっては!

この別荘に住んでいるのは、高齢のため体は悪くしているものの、精神は依然矍鑠たるままの未亡人、カミラ・トレシリアン夫人と、トレシリアン夫人の遠縁であり、もう十五年以上にわたって彼女の世話を続けている、オールド・ミスのメリイ・アルディン。そして、そこへ集まったのは、ウィンブルドンにも出場する、スポーツマンのネヴィル・ストレンジ。彼の現在の妻、ケイ・ストレンジ、そして、彼の最初の妻、オードリイ・ストレンジ。新旧取り混ぜ、ストレンジ夫人が二人も居るこの事態は、それが当世風だと呑込もうとしても、やはり異常。ネヴィルは彼自身の考えで、ケイとオードリイを引き合わせたと言うのだが…。

さらにケイを崇拝する美男子、テッド・ラティマー、オードリイの従兄弟、トーマス・ロイドもやって来て一つ所に集い、普段は落ち着き払った召使たちもが、ヒステリー状態に陥る緊迫した時間が始まる…。そうして起こる、一つの殺人…。さて、犯人は誰なのか???

この殺人事件はどこから始まっていたのか。一見無関係なエピソードがぴたぴたと嵌り、多くの登場人物を配しての心理劇も、流石女王クリスティらしくまたお見事。樹衣子さんも映画の仕上がりを褒めていらっしゃるけれど、原作もまた、現代にあっても全く古びないものだと思います。しかし、この事件における動機の怖い事! 舞台や登場人物はあくまで優雅だけれど、その心理は下手なホラーよりも怖いです…。また、この動機が古く感じないところがねえ…。


目次
序文
『ドアをあけると、人がいる』
白い雪と紅い薔薇
微妙な陰謀
ゼロ時間
 ソルトクリークの方へ<福永武彦>

昔のハヤカワ文庫のクリスティの本は、真鍋博さんのイラストが素敵だったのですが、今は全部クリスティ文庫になっちゃったんですよね。おっと、私が持っているものとは、訳者も変わっているみたいです。

アガサ・クリスティー, 三川 基好

ゼロ時間へ (クリスティ文庫)

「きのう何食べた?1」/食べること、大事にしてますか?

 2007-12-27-23:27
よしなが ふみ
きのう何食べた? 1 (1) (モーニングKC)

仕事帰りに立ち寄った本屋で、むらむらと買いたくなってしまい、珍しく購入したものです。ブログを見れば丸分かりかと思いますが、私のここ数年の読書は図書館中心。お陰さまで、ハードカバーなんかはバンバン読めるのですが、どうしても弱くなるのが漫画方面(世の中には漫画が置いてある図書館も多いようですが、我が図書館にはほとんど置いてないのですー)。

漫画は嵩張るのとコストパフォーマンスが悪いので、漫画文庫以外はここ数年、ほとんど手を出していなかったのですが、これはネットなどでの評判も良かったし、えいやと購入。

結果、良かったですー。料理漫画としても、十分に読むことが出来るし、レシピがざっくり描いてあることを考えると、レシピ本としてもいけるというわけで、コストパフォーマンスも丸。

中心となるのは、弁護士の筧史郎(シロさん・43歳)、美容師の矢吹賢二(ケンジ・41歳)のゲイの同棲カップルの食生活。

二人暮しの料理を担当する筧史郎は、背は高いし、ハンサムだし、料理は出来るし、弁護士だし…、と一見、かなりの好条件に見えるのに、彼がゲイだと知らない同僚からも、「普通の男が、43歳にして、あの若さと美貌だなんて気持ち悪い」などと言われてしまう。ある程度の年を重ねると、あまりに美貌の男というのは、胡散臭いものなのでしょうか。大手の渉外事務所で死ぬほど働かされるよりも、そこそこの収入で人間らしい暮らしを望む彼。料理の様子も、仕事帰りに寄るスーパーの雰囲気や、スーツを脱ぎながら下ごしらえするところなど、現実の臨場感たっぷり。確かにこれだったら、一度に何品も作り上げることが出来るよなぁ、と納得できる手際の良さ。
一話完結のお話の最後には、よしながふみさんによる、その料理の別アレンジの仕方が載っているのも良し。

そうだなぁ、そうやってやれば出来ると分かっていても、自分はついつい手を抜くし、品数も多くは作れないんだけれど! 何品も一気に作り上げて、心の中で秘かにガッツポーズをとる勢いの達成感を得ているシロさんが可愛いです。そういう日々の達成感って大事かも。そうして二人で一緒に食べることが、また「しあわせ」なわけで(ケンジがまた幸せそうに食べるんだ)。調理法としては、一気に作るだけあって、出汁を取るとかそういう面倒なことは言わず、茹でて合えたり、だしの素や、めんつゆが登場するのも特徴でしょう。身近でそんなに値の張らないものをうまーく使いこなしています。この中で、やってみたいと思ったのが、鮭とごぼうの炊き込みごはん。ちょっと生臭くないかな?と思ったんだけど、ごぼうの香りと塩鮭を使うことで、そうはならないのかなー。

お堅いシロさんと和やかケンジの二人もいいし、周囲の人々もいいですよ。シロさんのお母さんはちょっと大変だけれど。息子がゲイであることを知って、ゲイである息子を受け入れなきゃ!!、ってなってるところが、困ったお母さんなのです…。
スイカを縁に知り合った、ご近所の主婦・佳代子さんのレシピは、これからも楽しみ♪
ケンジの勤める美容院のお話で出てきた「爆弾」の話も面白かったなぁ。私も時々、何も考えず、タートルネック着て美容院行っちゃうんですが、んぎゃー、これも時として爆弾の一員と認定されてしまうのですね…(というか、その先を読んでないところが、「爆弾」たる所以…)。

続巻も楽しみです。これは揃えよっと。
大奥」も読みたくなっちゃいました。漫画喫茶にでも行ってこようかな~。

「探偵ガリレオ」「予知夢」/ガリレオ

 2007-12-25-22:28
探偵ガリレオ (文春文庫)探偵ガリレオ (文春文庫)
(2002/02/10)
東野 圭吾

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予知夢 (文春文庫)予知夢 (文春文庫)
(2003/08)
東野 圭吾

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言わずと知れた月9ドラマ「ガリレオ」の原作です。

福山雅治が扮していた湯川助教授とコンビを組むのは、新人女性刑事ではなく、湯川の同級生であった警視庁捜査一課の草薙刑事。とはいえ、この草薙刑事、同じ帝都大学出身とはいえ、彼が出たのは社会学部であり、在学中は湯川助教授の研究室がある理工学部の方にはほとんど足を踏み入れることもなかったのだとか。

理系オンチを自称する草薙刑事、不思議な現象があるたびに、湯川助教授の元を訪れ…。さて、その不思議な現象には、現実的な説明をつけることが出来るのか??

「探偵ガリレオ」の解説は、俳優の佐野史郎さんが書いておられるのだけれど、実は東野さんが湯川を創り出した時、そのイメージは佐野さんだったのだとか。佐野さんと福山さんでは、だいぶ違うけれども。笑 ま、月9的には福山さんなんでしょうね。私はドラマを毎回見ていたわけではないのだけれど、たまーに出てきた北村一輝さんが扮していた刑事が、草薙刑事なんですよね? それこそ、月9的には華がないのかもしれないけれど、福山&北村コンビで見たかったなぁ、などと思うのでした。本の中でも、この二人のじゃれ合いのような空気が良いのだもの。

本の中の湯川助教授は、同級生だった草薙刑事とのシーンが多いからか、ドラマよりも若干お茶目。同じなのはスポーツ万能なところでしょうか。とはいえ、ドラマでは福山さんが様々なスポーツに挑戦されていたけれど、本の方では学生時代から続けているバドミントン一本槍ですかね。

「容疑者Xの献身」の図書館予約もだいぶ落ち着いた数字になっていたので、こちらも読んでみようかなぁ、と思いました。

苦手意識を持っていた東野さんですが、ドラマのお陰で、割合楽しく読むことが出来ました。警察小説として読むと、草薙刑事一人で聞き込みに行っちゃったり、民間人である湯川が現場に入れちゃったり、ちょっとおかしいような気もするけれど、これはだから探偵小説なんですよね。

目次
探偵ガリレオ

第一章 燃える もえる
第二章 転写る うつる
第三章 壊死る くさる
第四章 爆ぜる はぜる
第五章 離脱る ぬける
解説・佐野 史郎


予知夢
第一章 夢想る ゆめみる
第二章 霊視る みえる
第三章 騒霊ぐ さわぐ
第四章 絞殺る しめる
第五章 予知る しる
解説・三橋 暁

「本泥棒」/世界は美しくも醜いシチュー

 2007-12-23-23:45
本泥棒本泥棒
(2007/07)
マークース・ズーサック

商品詳細を見る
語り手は死神。
表紙が全てを物語っているけれども、これは少女と死神(実際、大鎌は持ってないらしいけれど、人間はこのような姿を想像する)と本の物語。

「すてきとは無縁」であるそうだけれど、誠実に任務にあたるこの死神が見るのは、まず色、そして人間なのだという。一度に数万単位の魂を運ぶこともあるこの死神。魂が一人であっても数万の単位であっても、彼は彼なりに心を痛め、そのため、時にその痛みから気をそらすことが必要になる。生き残った人間たちの心の痛みに共感してしまう、心やさしき死神…。これは彼が語る、「生き残った者」、サバイバーである、ある少女の話。死神が長い間、ポケットに忍ばせていた一つのお話…。

その少女とは、ミュンヘンの郊外にある町、モルキングのヒンメル通り(訳:天国通り。皮肉なことに、そこは天国とは程遠い、貧しい人々が住む通り)に住む、フーバーマン夫妻の元に里子としてやって来た、リーゼル・メミンガーのこと。厳しい里親の母さん、ローザ・フーバーマンに、優しい里親の父さん、ハンス・フーバーマン。親友の近所に住む少年、ルディ・シュタイナー。リーゼルは時に亡くなった弟の悪夢に魘されつつも、周囲の人に見守られて成長していくのだけれど…。

その人の真価が分かるのは、彼等に危機が訪れたとき。リーゼルは厳しく口の悪い母さんの優しさを知り、父さんの強い優しさを知る。それは1940年の11月のこと。ユダヤ人の青年、マックス・ヴァンデンブルグが、庇護を求めて彼らの元にやって来る。ナチス政権下のこの時代、この場所でユダヤ人を匿うというのは、実に大変なこと。彼らはそれをほぼ完璧にやり遂げるのだけれど、父さんの一つの失敗からマックスはこの家の地下室を去り、父さんは戦場へ送られる…。

部のタイトルは、それぞれちょっと奇妙なものだけれど、これはリーゼルに影響を与えた本のタイトルからとられている。このうち、「見下ろす人」と「言葉を揺する人」は、作中作、ユダヤ人、マックスがリーゼルのために創った物語。これもまた、アートワークを含め、非常に良いのです。

「言葉を揺する人」=ワード・シェイカー。最高のワード・シェイカーは、言葉の真の力が分かる人。リーゼルは普通一般の読書好きとは違うと思うけれど(彼女が最初の本「墓掘り人の手引書」を読んだ時、彼女は字を読むことすら出来なかった!)、言葉を一つ一つ噛み締めるようなその読書には、こちらも考えさせられてしまう。里親のローザがリーゼルに言う「ろくでなし」、リーゼルがルディに言う「ろくでなし」という言葉の響きの実に甘いこと!

物語中で、散々、死神から警告されるのだけれど、物語は当然のように悲劇的な終末を迎える。そこにほんの少しの希望はあるのだけれど…。

 わたしは言葉を憎み、言葉を愛してきた。

多くの人にリーゼルの、マックスの、そして著者ズーサックの言葉が届けばいいな、と思う。

著者ズーサックは1975年生まれ。彼はドイツとオーストリアから移民してきた両親の間に、オーストラリアで生まれたのだという。「訳者あとがき」によると、ズーサックには、子供時代に両親から何度も聞かされた第二次世界大戦の話の中で、どうしても忘れられない二つのことがあったそう。一つはミュンヘンが空襲にあったときの異常なまでの空の赤さ、もう一つは弱った体で行進させられているユダヤ人にパンを差し入れたドイツ人の少年が、兵士にひどく鞭打たれたこと。どちらも、この物語の重要な場面となった。誠実に想像力を働かせた結果がこの本なのだと思う。

沢山のエピソードがあるのだけれど、私が好きなのは町長夫人とのエピソード。最後の和解の部分がいい。

目次
プロローグ 瓦礫の山
第1部 墓掘り人の手引書
第2部 肩をすくめる
第3部 わが闘争
第4部 見下ろす人
第5部 口笛吹き
第6部 夢を運ぶ人
第7部 完璧なドゥーデン辞書・シソーラス
第8部 言葉を揺する人
第9部 人類最後のよそ者
第10部 本泥棒
エピローグ 最後の色
 謝辞
 訳者あとがき


☆ナチス関係の本の過去記事☆
いずれもフィクションだけれど、力強い。
密やかな結晶 」/消えていってしまう・・・
マグヌス 」/記憶、断片、人生

「ブランディングズ城の夏の稲妻」/ブタ狂想曲??

 2007-12-21-22:41

P.G.ウッドハウス, 森村 たまき

ブランディングズ城の夏の稲妻 (ウッドハウス・スペシャル)

青葉学園物語 右むけ、左! 」にも、「ぶたぶた会議だ ぶう!ぶう!ぶう!」なる章がありましたが、こちらの本もまた、ある意味ではブタ狂想曲と言えるのかも。

でもね、舞台は英国は美しい郊外のお城。ここで巻き起こる騒動もまた変わってくるわけで…。

執事付きのお城。厳格で恐ろしい一族のおば。ちょっと(かなり?)抜けたところのある当主。一族のはみ出し者のおじ。身分も気もいいけれど、どこかひ弱な青年。同じく、気の良さは十分に分かるけれど、どうも現世的には成功を収めているとはいえない青年。更にそんな彼らのしっかり者の恋人である女性たち。彼らが結ばれるためには、被信託人である当主の協力が不可欠で…。ところが、当主は彼等に注意を払うどころか、高貴なる飼い豚、シュロップシャー農業ショー肥満豚部門銀賞受賞のエンプレス・オブ・ブランディングズの世話に夢中…。

もーこういうの大好きなのです。これもまた、恩田陸さんいうところの、「イギリス人のミステリ」(「小説以外 」より)ではありますまいか? ま、今回のは「冷徹な観察眼と、些かの稚気、教養と合理性に、ちょっと風変わりのスパイス」というか、「かなりの稚気に、風変りのスパイス」という感じなんだけれど…。ミステリというか、ドタバタ群像劇だしね。

国書刊行会から出ている<ウッドハウス・コレクション>は、表紙のお洒落な感じもずっと気になっていたのだけれど、残りも読むぞ!と決意したのでした(今回の本は、<ウッドハウス・スペシャル>。どう違うんだ??)。

言い回しなども楽しくて、ついニヤニヤしながら読んじゃいました。P・G・ウッドハウスの生年は1881年、没年は1975年。今読んでも、全然面白いのも凄いよなぁ。<ウッドハウス・コレクション>の出版年もかなり新しいので、訳のおかげもあるのかもしれませんが…。

私が楽しんだ言い回しは、たとえばこんな感じ。

イートン校とケンブリッジ大学は息子たちをしっかりと教育する。感情を露わにするのは行儀の悪いことであるという人生の基本的事実さえ理解させてしまえば、爆弾ももはや彼らの冷静さを乱し得ないし、地震だって彼らから「ふーん、それで?」が引き出せたらば好運である。しかし、ケンブリッジにも限界がある。イートンもまた然りである           (p356から引用)

キャラがあちこちで繋がってるみたいなので、そこも楽しみだなぁ。
この本で気に入ったのは、私のイギリスの執事のイメージを覆した執事ビーチ。いや、きちんとした執事なんだけど、ほんのちょっとばかり、賭けごと(といっても、競馬情報くらいなんだけど)などの誘惑に弱い気が…。そんなところも、妙に人間味があって良かったな。

イギリスの貴族のお城を舞台にしたドタバタ群像劇。クリスティほど意地悪ではなく、クリスティのように人が死なない(他の作品は知らないけれど)。勿論、クリスティも大好きだけれど、ウッドハウスも好きーー!と思ったのでした。

目次
序文
1. ブランディングズ城に胚胎する騒動
2. 真実の愛の行方
3. センセーショナルなブタ泥棒
4. ロナルド・フィッシュの注目すべき振舞い
5. ヒューゴ宛ての電話
6. スーの名案
7. パーシー・ピルビームの仕事
8. ブランディングズ城を覆う嵐雲
9. スー登場
10. スーのショック
11. まだまだスーのショック
12. 執事ビーチの行動
13. ディナー前のカクテル
14. 有能なバクスターの敏速なる思考
15. 電話にて
16. めぐり逢う恋人たち
17. エムズワース卿の勇気ある振舞い
18. 寝室における悲痛な場面
19. ギャリー事態を掌握する
 沃地としてのブランディングズ城 紀田順一郎
 エンプレス・オヴ・ブランディングズ N・T・P・マーフィー
 訳者あとがき 森村たまき
 《ブランディングズ城シリーズ》紹介


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「夢のような幸福」/しをんさんエッセイ

 2007-12-18-22:50

三浦 しをん
夢のような幸福
大和書房

今回の本で言いたいことは、表紙が吉野朔美さんだよ!!、ということでしょうか。笑
(吉野朔美さんの本エッセイ漫画?の感想はこちら
→「
お父さんは時代小説が大好き 」/本読み人の習性とその生態
 「
お母さんは「赤毛のアン」が大好き 」/本読み人の習性とその生態)

先日読んだ、「
乙女なげやり 」といい(こちらは、のだめの二ノ宮さんが表紙絵を描いておられます)、しをんさんの漫画への愛故か、しをんさんのエッセイは素敵な表紙がついてまさに「幸福」。

目次
一章 我が愛のバイブル
二章 夢のような話
三章 男ばかりの旅の仲間
四章 楽園に行く下準備
五章 世界の崩壊と再生
あとがき


内容はいつものしをんワールド。世界の名作、嵐が丘」を読むに及び、ガラスの仮面」から入り(ああ、私だって、ヒースクリフ桜小路優は忘れられないさ)、己の中の愛の位置づけを再確認するために、梶原一騎原作「愛と誠」を読む。愛と誠」って見たことも聞いたこともなかったんだけど、しをんさんの解説を読むだけでおなかいっぱい。さすが梶原一騎原作…。なかなか恐るべき漫画のようですね。

映画についての、しをんさんの解説というか紹介もまた面白くって。しをんさんは故・淀川長治さんの「どんな映画に対しても愛を持ち、少しでもいいところを見つけて褒めよ」との言葉を大切にしておられるそうだけれど、微妙なラインにいる愛すべきダメ映画に対する文章が面白いです。
 (織田裕二主演、「T.R.Y.」、しをんさんの愛するヴィゴ氏出演の「G.I.ジェーン」など。どう考えたって微妙だよね、これ。笑)

さて、これはあまり関係ないのだけれど、しをんさんといえばBL、BLと言えばしをんさん。

本日、本屋で「ユリイカ」がなぜか裏表紙を表にして並べられてるなぁ、と思ったら、表紙はこんなでした。別に裏返さなくてもいいじゃん、と思うのだけれど。でも、やるな、ユリイカ…。


ユリイカ 2007年12月臨時増刊号 総特集=BL(ボーイズラブ)スタディーズ

「歩く」/それは小さな一歩から

 2007-12-17-23:29
歩く歩く
(2007/05/25)
ルイス・サッカー

商品詳細を見る
」、サイドストーリー的な「 」に続くのは、アームピット<脇の下>を主人公とした物語。

あのグリーン・レイク・キャンプ少年院(文庫を確認したら、”グリーン・レイク少年矯正キャンプ”でした)を出たアームピットは、レイククリーク灌漑造園会社に時給七ドル六十五セントで雇われ、またしてもシャベルを握っていた。

地元オースティンに戻ってくるとき、アームピットが自分に与えた課題は五つ。その一、高校を卒業する、その二、仕事を見つける、その三、貯金をする、その四、喧嘩の引き金になりそうなことはしない、その五、アームピットというあだ名とおさらばする。そう、大切なのは、こういった地道な一歩一歩。カウンセラーは言う。グリーン・レイク・キャンプを出たアームピットの人生は、いわば激流の中を上流に向かって歩いて行くようなもの。それを乗り切るコツは、小さな一歩を根気強く積み重ねて、ひたすらに前に進むこと。もしも、大股で一気に進もうとしたならば、アームピットは間違いなく流れに足元をすくわれて、下流へと押し戻される…。

さて、オースティンには、同じくグリーン・レイク・キャンプを出たX・レイ<X線>が居た。地道な生活を心がけるアームピットに対し、X・レイは浮ついた考えを捨てきれないようで…。X・レイがアームピットに持ちかけてきたのは、人気歌手、十七歳のアフリカ系アメリカ人の少女、カイラ・デレオンのコンサートチケットのダフ屋行為。

勿論、地道な生活を心がける者ならば、こんな誘いに乗ってはいけないのだけれど…。話に乗ると告げた時から、後悔が始まっているというのに、アームピットはそのままずるずるとX・レイに引き摺られることに…。

さて、このアームピットとX・レイの話に挿入されるのは、人気歌手カイラ・デレオンその人の生活。三週間半で十九のホテルのスイートに泊まるような生活だけれど、大人ばかりに囲まれた彼女の生活もまた、それはそれで大変そうで…。

アームピットとカイラの人生が交わるとき、さて、何が起こるのか?

同じく、グリーン・レイク・キャンプに居たとはいえ、やってもいない盗みのせいで捕まった、「穴」の主人公、スタンリーとは異なり、アームピットは同情の余地があるとはいえ、実際に罪を犯した少年です。その辺は、だから物語としては、高校におけるアームピットの苦労や、家族のアームピットへの目など、少々厳しくなっているようにも思います。

そんなアームピットを助けるのは、高校の同級生の女の子などではなく、隣の家の脳性まひの白人の女の子、まだ十歳のジニー。年や肌の色、性別は違えど、二人は親友。結果として、アームピットとカイラを結び付けるのも、このジニー。ジニーとアームピットとの会話はほのぼの。ガタイのいい黒人の青年と、よわよわしい白人の女の子。好対照の二人だけれど、人間は誰かに尊重されることで、初めて自分を大切に思えるもの。アームピットはまさにジニーによって、そういった感情を引き出される。

訳者は変われど、ルイス・サッカーの本のリーダビリティは全く変化なし。ちょっとのつもりで読みはじめたら、ぐいぐいと読み進んでしまいました(しかし、金原さんって、翻訳ものの児童文学の内、えらい数に顔出してませんか??)。

 小さな一歩
  いく当てはない だから
   小さな一歩で

    一日一日を生き抜いていこう
     小さな一歩で
      どうにか自分を取りもどせたら
       道の途中で いつかわかるかもしれない
        自分はいったいだれなのか
                             (P343より引用)

そして、アームピットは最後にまた五つの目標をたてる。
その一、高校を卒業する、その二、オースティン・コミュニティ・カレッジに二年通う、その三、テキサス大学に編入できるようにがんばる、その四、やばい事には手を出さない、その五、アームピットっていうあだ名とおさらばする。

爽やかな青春小説です。是非この続きも読みたいもの! そして、弁護士もしくは有名なペテン師になれるのでは?と揶揄される、X・レイの物語も読みたいなぁ(最後、ちょっと見直すものの、X・レイって調子良すぎて、ひどいのだものー。いくら笑顔が良くたって、ダメだよう。ええ、ぜひ更生して貰いたいものであります)。グリーン・レイクものとして、色々な登場人物にスポットが当たるシリーズが出来れば嬉しいな~。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「宮沢賢治のお菓子な国」/心を満たしてくれるのは

 2007-12-16-21:08

中野 由貴, 出口 雄大

宮沢賢治のお菓子な国


宮沢賢治のレストラン 」のコンビが贈る、お菓子を切り口にした本なのです。

お菓子と言えば、生きていくために、必ずしも必要なものではない。けれど、それがあることで、幸せな気持ちになったり、一緒にお茶の時間を過ごすことで、素敵な時を持つことが出来たり。そんなちょっと余計な部分であるからこそ、より愛しいもの。

ちと長くなるけれど、「お菓子なごちそう」「巨きな菓子の塔」より引用します。

 「お菓子って何だろう」と考えると、童話集『注文の多い料理店』の序文を思い出す。

 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだが、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
 けれども、わたくしは、これらのちひさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。

 なくても大して困らないし、十分に生きていくことはできる。でも、それだけではきっとつまらないだろう、と気づかせてくれるもの。
 ほっとしたり、うれしくなったり、楽しくなったり、普段とちょっと違った気分や時間を味わわせてくれるもの。
 それがお菓子なのだ。きっと。賢治はそんなお菓子の効能をよく知る人だったのだと思う。
                 
                           (p14-15より引用)

そして、それはきっと物語も同じ。実用書や仕事に必要な書物だけでは、体を作る食べ物としては十分なのかもしれないけれど、それだけではちょっと心がカサカサしてしまう。そこを潤してくれるのが、こういった「お菓子」(勿論、この本の中に出てくるお菓子は、現実に存在するものばかりではない)であったり、想像力豊かな「物語」なのでしょう。ま、現実と同様、お菓子ばかり食べて生きていくことも、また同様に出来ないことだろうけれど、そういった楽しみも必要だよね。

本としては、お菓子を扱う分、ちと細切れになってしまう印象が強いので、「食べ物」を扱った「~レストラン」の方に分があるかなぁ、とも思うのだけれど、こういった切り口は大好きだし(そして、実に良く調べておられること!)、出口さんの水彩画も相変わらずの美しさ。まさにお菓子のように、ちびちびと少しずつ読む楽しみがある本でした。

目次
はじめに
○お菓子なごちそう*和洋菓子
○森のおもてなし*くだものなど
○野原の菓子屋のお気に入り*駄菓子など
○イギリス海岸のティパーティ*のみもの
○イーハトーヴ横丁*お店など
索引
イーハトーヴ<作品別>たべもの帖(宮沢賢治作品別たべもの索引)
参考文献
おわりに


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「幻想秘湯めぐり」/温泉の味わい

 2007-12-13-22:33

南條 竹則

幻想秘湯巡り
同朋舎

わー、南條さんだー、と特に確かめもせず、ネットでぽちっと図書館予約をしたのだけれど、実際手元に来てびっくりの表紙のおどろおどろしさ。ま、たしかに表紙に小さく「ホラージャパネスク」とあるのだけれど…。なんか、このノリの表紙と、本の大きさをどこかで見たことがあるなぁ、と思ったら、「日本怪奇幻想紀行」のシリーズが後ろのページに載っていました(以前読んだ、このシリーズの4巻、芸能・見世物録の感想はこちら )。

目次
まえがき
恐山―死者も入りぬという地獄湯に浸かる
台、花巻、鉛温泉―賢治を想いつつ温泉俳諧小説を作る
那須湯本温泉-妖狐を語り、火事の湯の話に震える
山代、山中、和倉温泉―鏡花に誘われて北陸へ旅立つ
修善寺温泉―死人の面に纏わる伝説の筥湯に入る
塩原温泉―とある温泉宿で、身も凍る怖い体験をする
畑毛温泉―過ぎし日を想い、温泉神秘小説の想を練る
温泉津温泉―角の生えた銅像と鄙びた温泉町に安らぐ


南條さんは、「恐怖の黄金時代 」なんて本も著わしておられるわけで、そういった方面にも造詣が深いわけですが、南條さん自身の本来の文章の味わいは、「酒仙 」や「猫城 」に見られるような、どこかすっとぼけたところにあると思うのです。

実際、この本の中でも、本当の恐怖体験は「塩原温泉」くらいのもの。あとは、淡淡とした味わいの不思議や、温泉に絡めた文学が語られる。

温泉というと、私の場合、上げ膳据え膳もまた楽しみだったするのだけれど、ここでいう温泉はもっと純粋な湯治的なもの。一人、ふらりと小体な宿に泊まる、こんな旅も楽しいかもなぁ(南條さんも一人でばっかり旅しているわけではないのだけれど)。

参考文献に挙げられている本、著者を見ても錚々たるメンバーです。私でも知っているところで言うと、幸田露伴、宮沢賢治、鶴屋南北、岡本綺堂、泉鏡花、尾崎紅葉などなど。これらが温泉文学とでもいうのかな、そういった視点で語り直されるわけです。ところで、貫一お宮の「金色夜叉」。これに、「続々金色夜叉」なんてものがあったことを初めて知りました。「金色夜叉」では舞台は熱海だけれど、「続々」では塩原が舞台となるのだって。ここでは、貫一は復讐鬼転じて救い主となり、なんだか「モンテ・クリスト伯」を思わせるのだとか。

なかなかね、その温泉地のことなら何でも知ってる屋台があるような温泉(ここでは、過去の話として、屋台を引く夫婦者の事が書かれていたけど、今でもこういう人達っているのかしら?)には行かないけれども、ノスタルジックな味わいというか、自分が知っている温泉とは、多少パラレルワールド的でもある、少々幻想的な温泉を楽しめる一冊でした。
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「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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