スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「夜光曲-薬師寺涼子の怪奇事件簿」/ドラよけお涼がゆく!

 2007-03-30-22:49
 
田中 芳樹, 垣野内 成美
薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲 
祥伝社 NON NOVEL

ヨコガミ破りは当たり前。
ダダとリクツはこねる為にある。
国宝級の美脚に美貌、財力もばっちりのキャリア警視、薬師寺涼子。
ついた渾名は、「ドラキュラも避けて通る」こと間違いなしの、「ドラよけお涼」。

執事のように、僕のように、彼女に付き従うのは、こちらはノンキャリアの部下、泉田準一郎警部補。

「あたしにしか解決できない一大事」を待ち望む涼子の前に現れる事件とは?

目次
第一章 緑の風もさわやかに
第二章 蛍の光り、窓辺の血
第三章 怪人「への一番」の陰謀
第四章 ゼンドーレン最後の日
第五章 ヤマガラシ奇談
第六章 文人総監のユーウツ
第七章 双日閣の対決?
第八章 怪人+怪物+怪獣
第九章 原形質からやりなおせ


えー、わたくし、またシリーズ本を途中から読むという過ちを・・・。軽いシリーズだし、状況説明もちゃんとしてくれるので、読めてはしまうんだけど。でも、シリーズの最初くらいは、探してみようかな。

さて、「夜光曲」に戻ります。最初に起こったのは、新宿御苑の緑が一夜にして枯れ木に変わってしまったという事件。次に起こったのは、蛍狩りが名物の日本庭園での、人食いボタルの出現事件。これは新たなバイオ・テロの一種なのか??

個人的な理由もくっつき、ホタル撲滅宣言で気炎を上げる都知事の緊急会見中に、今度は都知事がネズミに襲われる。一連の騒動は、背後に同じ犯人がいるのだろうか?

涼子が走り、「私」泉田が付き従う。きらきらと光り輝くような(良い意味でも悪い意味でも)涼子に比較し、泉田はまるで涼子の影のよう。でも、この彼がね、サポートは適切だし、有能で、なかなかにかっこいいのではと思うのよ。これはぶっ飛んだ涼子に爽快さを求めて読んでもいいし、泉田くんの忍従ぶりに可憐さというか、ある種の萌えを求めて読むのかなー。しかし、もそっとリアル(に思える)な警察小説では、三十三歳にして、警視庁の警部補というのは、ノンキャリアとしては相当に出世が早い方だと思うんだけど、涼子につりあわせると、こうなっちゃうのかなぁ?

えー、事件の方は、私、最初「怪奇」事件簿という言葉に気付かず読んでたので、てっきり普通の事件を解決するのだと思っていたのだけれど、そこは「怪奇事件簿」。怪奇なのです、理屈ではないのです・・・。妖怪ヤマガラシなのです・・・。

後、楽しい所は、某都知事を髣髴とさせる都知事の言動。自衛団的な首都戦士東京ってほんとにありそうなところが怖いよ・・・。どうなるのでしょうねえ、東京都知事選。嗚呼、東京都民は楽しそうで良いなぁ・・・。
 ← これが最初?
スポンサーサイト

「世界の民話館 魔女の本」/魔女!魔女!魔女!!

 2007-03-28-23:32


ルース マニング=サンダーズ, Ruth Manning‐Sanders, 西本 鶏介
魔女の本
ブッキング

目次
 
日本のお友だちへ
 まえがき
1 魔女ばあさん
2 ラプンゼル
3 なまけ者のハンス
4 ふたごとがみがみやの魔女
5 エスベンと魔女
6 プルネッラ
7 ロバになるレタス
8 ヘンゼルとグレーテル
9 ぼろずきん
10 白いはと
11 ジョニーと魔女っ娘
12 黒い階段の山
 訳者あとがき
(1:イギリス、2、3、7、8:ドイツ、4:ロシア、5:デンマーク、6:イタリア、9:ノルウェー、10:デンマーク、11:チェコスロバキア西部ボヘミア、12:アイルランドの話)

ラプンゼルヘンゼルとグレーテルのようなメジャーなものから、あまり聞いた事がないものまで、世界各地の民話の中から選りすぐった魔女のお話。意地悪な魔女、親切な魔女、若く美しい魔女、色々と出てくるけれど、民話の良いところは、善良な主人公たちは、いつだって最後は悪い魔女の魔力から巧く逃れる事が出来る事!

「ふたごとがみがみやの魔女」「白いはと」は投げモノとでもいいましょうか、前者では女の子が、櫛を投げ(大きな森が出来る)、ハンカチを投げて(大きな深い川が出来る)魔女から逃れ、後者では王女が植木鉢を投げ(何重にも連なった小山が出来る)、水入りの瓶を投げて(波が荒れ狂う大きな湖が広がる)魔女から逃れる。

特に好きだったのは、「エスベンと魔女」「ぼろずきん」

◆エスベンと魔女◆

十一人の兄さんたちとは違って、小さく生れ付いてしまったエスベン。兄さんと父親は、この末の弟を馬鹿にしたけれど、母親だけはエスベンにやさしかった。
やがて成長して独立を望んだ兄たちには馬とお金が与えられ、兄たちは家を出たけれど、エスベンには何も与えられなかった。そこでエスベンは、森の木の中から気に入った枝を選び、馬の形を拵え、棒の馬に跨って兄たちの後を追う。「いそいで飛んでおくれ、ぼくのかわいい馬よ。ぼくを、世の中に連れていっておくれ」。
そうして、兄たちに危機が迫る度に、エスベンは彼らを助けるのであるが・・・。魔女とエスベンのやり取りが楽しい。「わしの~を・・・したのは、お前か?」「そのとおり!」「また、ここへもどってくるか?」「たぶんね!」

◆ぼろずきん◆
子供が出来ずに悲しんでいたお妃に、森で出会った魔女が子供の授かり方を教えてくれた。ところが、ある一つの注意点を守らなかったために、美しく輝くような赤ん坊だけではなく、ぞっとするような醜い赤ん坊が生れてしまった!
お妃はどうしても、醜く奇行が目立つ姉を好きになれなかったのだけれど、美しい妹は醜い姉を慕うのだった。そして、二人がもうすぐ大人になるある年のクリスマス・イブのこと。騒ぐ魔女たちの前にうっかり姿を現してしまった妹べレニスは、その美しい頭を子牛の頭に挿げ替えられてしまった! 姉のぼろずきんは、ベレニスを元に戻すために、二人で航海に出るのであるが・・・。


これ、ブッキングにより復刊された本であるようです。「世界の民話館」は全10冊のシリーズ本であるとのこと。「魔女の本」の他にも、「魔法使いの本」、「竜の本」、「悪魔の本」、「王子と王女の本」、「怪物の本」、「こびとの本」、「巨人の本」、「人魚の本」、「王と女王の本」があるそうです。魔女の本」が挿絵も美しく、楽しい本だったので、シリーズの他の本も期待出来そう。とりあえず、今気になるのは、「竜の本」「人魚の本」かなぁ。

「第四次元の小説-幻想数学短編集」/日常生活の中に数学的問題をそっと置いてみますれば

 2007-03-27-23:01
R・A ハインライン, 三浦 朱門
第四次元の小説―幻想数学短編集 
目次
タキポンプ   エドワード・ペイジ・ミッチェル
歪んだ家   ロバート・A・ハインライン
メビウスという名の地下鉄   A・J・ドイッチュ
数学のおまじない   H・ニアリング・Jr.
最後の魔術師   ブルース・エリオット
頑固な論理   ラッセル・マロニー
悪魔とサイモン・フラッグ   アーサー・ポージス
コラム   吉永良正
あとがき  三浦朱門
解説   森 毅
リスト・オブ・ブックス


それぞれの短編の頭に書いてある文がぴったりなので、引いちゃいます(臙脂色の文字の部分が引用部分)。

◆タキポンプ◆
もしあなたが、走っている電車の上を前に駆ければ、
電車より速く移動していることに気づくはずだ。
その原理を利用して無限の速度を生み出す意外な仕組みとは・・・。

数学嫌いの私が、数学教授の娘に恋をした。教授に出された課題とは・・・?

◆歪んだ家◆

一次元の直線を横に移動させると、二次元の正方形が作れる。
二次元の正方形を上方に移動させると、三次元の立方体が作れる。
それならば、三次元の立方体をどこかの方向へ動かせば、
四次元の「超立方体」、すなわち過剰空間が作れるはずだ・・・。

意気盛んな建築家のティールは、画期的な家を作ることを考えた。それは四次元の家だというのだ。
友人ベイリーのために、ティールは四次元の家を設計するのであるが・・・。

◆メビウスという名の地下鉄◆ 
細長い帯を半回転ねじって貼りあわせると、
裏も表もない輪ができる。
そのメビウスの輪のような不思議な性質が、大都市の地下鉄網に
まぎれこみ、一台の電車が忽然と姿を消した・・・。

ある日、忽然と姿を消した一台の電車に対し、タペロ教授はある考えを示すのだが・・・。
音も電流の流れすらも検知出来るというのに、消えた電車はどこに行ってしまったのか?

◆数学のおまじない◆

もし、何の努力もせずに
数学がめきめき上達する方法があったなら・・・。
できの悪い学生を救うために教授が考え出した苦肉の策は、
こんな不思議なおまじないだった・・・。

不出来な学生のために、ある馬鹿らしい約束をしたランサム教授。ところが、その学生、フィンチェルは、見る見るうちに数学的才能を発揮する。それはあの「おまじない」のせいなのか?
 
◆最後の魔術師◆

「クラインの壺」は、内も外もない不思議な空間だ。
脱出ワザを得意とする魔術師が、
なんとそのクラインの壺からの脱出に挑戦する。
むろん、タネもシカケもあるのだが、
そこには二重、三重のどんでん返しが待ち受けていた・・・。


◆頑固な論理◆ 
6頭のチンパンジーが100万年の間、
タイプライターをたたき続けたら、
大英博物館にあるすべての書物を打ち出してしまうという。
それを実際に確かめようとしたある人物が遭遇した
驚くべき結果とは・・・?

◆悪魔とサイモン・フラッグ◆
ある数の2乗とある数の2乗を足すと、別の数の2乗になる、
これはめずらしいことではない。たとえば3^2+4^2=5^2がそうだ。
ところがこれが3乗以上の場合だと見つからない。
本当にひとつもないのか? 歴代の数学者を悩ませる
世紀の難問「フェルマーの定理」に悪魔が挑む
 
リスト・オブ・ブックス
では、数学はおもしろい、数学から広がる想像力、不思議なパズルの世界、時空を超えた冒険、異次元への入口の5つのジャンルに分かれて本が紹介されている。

気になったのは以下の本。

ブルーノ・エルンスト, 坂根 厳夫
エッシャーの宇宙

ジョージ ガモフ, 伏見 康治, 鎮目 恭夫, 市井 三郎, 林 一
トムキンスの冒険



どの短編がすごくいいとか、着眼点に感服したりする本ではないのだけれど、切り口や本の作り方に好感を持った本でした。アンソロジーは楽しいねえ。

「ミミズクとオリーブ」/安楽椅子主婦探偵。得意は故郷、讃岐の郷土料理

 2007-03-26-22:43
芦原 すなお
ミミズクとオリーブ

街の喧騒を離れ、八王子の郊外で静かに暮らす、作家のぼくと妻。手土産片手に訪れるは、夫妻と同郷の警察官、河田。河田の楽しみは、奥さんの手料理なのだけれど(「お手間でしょうけれど、~にもしてくれたら」などと、土産を手渡したりもする)、それとは別にこの奥さんの卓越した推理力をも当てにしているようで・・・。人ごみが嫌いな奥さんの代わりに、目になり耳になるのは、作家の夫のお役目。友人、河田と漫才のようなやり取りをしながら、現場に赴くのだ。

表題のミミズクとオリーブは、庭にあるオリーブの樹に来るミミズクのこと。子供がいない夫婦の元に、日毎現れるミミズクは、奥さんの手から食べ物を貰い、ぽーぽーと鳴く。そんなのどかな風景が実に似合う夕暮れ。

目次
ミミズクとオリーブ
紅い珊瑚の耳飾り
おとといのおとふ
梅見月
姫鏡台
寿留女
ずずばな
 解説 加納 朋子


いやー、郷土料理に安楽椅子探偵といえば、まさに私の好みー!と思って、古本屋で捕獲したのですが、これは実は微妙でした。表紙の雰囲気、登場人物の考え方や行動から、昔の話かと思いきや、実はどうも現代の話のようであったり。どうせだったら、レトロな味わいもあることだし、現代ではなく、ノスタルジックに一昔前を舞台にしてくれた方が良かったなぁ。

そして、主役とも言える安楽椅子探偵の奥さんが! この奥さん、出来過ぎというか、こんなにデキるだなんて逆に怖い。友人河田が突然訪ねてこようが、手土産をああしてくれ、こうしてくれと細かく指示を出されようが、そしてその料理を奥さんの分などを考えもせず、男二人で出されるがままさっさと食べてしまおうが、特に全く気を悪くする様子もない。

でも、話の中で唯一時制を遡る、「梅見月」における、まだ結婚どころか、お付き合いすらしていない頃のお話なんて、この旦那さん、完全に奥さんの手の中で転がされているのである。いいのだろうか・・・。そして、奥さんはこの旦那さんのどこを、そんなに気に入ったのだろうか・・・。

せめて(?)、美味しそうな料理のメモ。

・カラ付きの小海老と拍子木に切った大根の煮しめ
・白身の焼き魚の身をすり鉢ですって麦味噌と合わせ、ダシでのばしてご飯にかけるサツマ(ダシでのばさず、小鉢に盛って酒のツマミにするのも良し)
・新しくて肉厚のスルメの天麩羅(身の方は上下に二つに切り、さらにそれぞれを二センチ幅で縦に切る。足の方は、一本ずつさいて揚げる)

続きも一緒に買っちゃったんだけど、どうしようかな、これ・・・。汗 ほのぼのはしてるんだけどねえ、ほのぼのは。ただ、ちょっと、この旦那さんの能天気っぷりに、軽くいらっとくるだけで・・・。
?

「河よりも長くゆるやかに」/おれたちの青春

 2007-03-25-22:06
吉田 秋生
河よりも長くゆるやかに
小学館文庫

汚れた河を見ながら、主人公トシと友人の深雪(女の子みたいな名前だけど、立派に男の子)はこんな言葉を交わす。

 この河だって上流の方に行けばきれーなんだ、なのにこんなに汚れちゃって。
 でも、上流はきれいだけど流れも急だし、幅も狭い。
 海に近くなったこの汚れた河の方が、深くて広くてゆったり流れる。
 どっちがいい?


これは、男子高生トシとその周囲の人間たちを描いた、帯から引くと「ニッポン高校生のシビアで熱い日々-青春賛歌」なんである。

目次
さらばスクール・ボーイ愚連隊
愛というのじゃないけれど
真夜中のゲイ・ボーイ
愛と青春の朝立ち
大麻畑でつかまえて
今だから言える暗い過去
ボクのキミはピッカピカ!
大弱点
みゆき
やっぱりアレなのよ
Aランクでいこう
エッセイ 夢枕 獏


米軍基地近くの街で、姉と二人で暮らす能代季邦(としくに)。真面目一方だった父は突然の浮気の果てに家を出て、母はその後暫くして亡くなった。父は毎月の養育費を手渡してくれるものの、出来の良かった姉は、父に反発するかのようにホステスになり、季邦もまた少々ヤバい事にも首を突っ込みつつ、様々な手段でカネを稼ぐ。

境遇だけで見るとなかなかに大変なのだけれど、このトシは実に逞しい。仲間達と馬鹿馬鹿しい遊びに興じつつ、ガールフレンドのみどりともよろしくやりつつ、日々を過ごす。途中から親友となる深雪もまた、悪徳高利貸しと評判の父を持ち、またその出生にも屈折したものを持つのだけれど、彼らはその辺、実に巧く飲み込みつつ、日々を生きる。それもまた、一緒に馬鹿なことをやってくれる、仲間があってこそなのかもしれないけど。彼らの生はゆっくりと広く流れるのか? 狭く急に流れるのか?

馬鹿馬鹿しく騒がしい、主人公とその周りの男子高生たちもいいし、脇の人物もいい。トシの姉と軍人ポパイの恋路、トシの父の恋、深雪の両親の愛、みどりの親友、順子のトシへの叶わなかった恋(順子の話で興味深いのが、「椿の花を落とさないで」。女の子にとってキスをするのは勇気のいる事。落ち易い椿の花を、落とさぬほどに、どうぞ優しく・・・)など。

文庫裏を見たら、これが雰囲気をとってもぴったり言い表しているので、引いちゃいます。

 女とみればヤリたがり、大麻ときけば吸いたがるニッポンの高校生トシ、深雪、秋男。けっこうシビアな現実を抱えてたりもするのだが、涙をこらえて能天気なふりをしてみせるのさっ。ゲイバーでバイト、ドラッグ密売、スーパーでナンパと、りりしくしぶとくスケベに生きる3人組が今日も行く。

私はトシと深雪の2人に注目してしまったけれど、実は3人組だったのだね。秋男の事情については、深く取り上げられないせいか、ちょっと印象が薄かった。

これ、男性の感想を聞いてみたくもあるなぁ。こんなに馬鹿でスケベではないのかしら?笑
 ← 絵はこんな感じ。これは、にぱっと笑うトシだよね。

☆ 女子高生モノであればこちら → 『櫻の園 』 こちらもいいですよ~。

「後宮小説」/少女、銀河がゆく

 2007-03-24-22:50
後宮小説 (新潮文庫)後宮小説 (新潮文庫)
(1993/04)
酒見 賢一

商品詳細を見る
読み終わっての感想は、これはまたけったいな小説だなぁという事。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作であるこの作品は、中華風味のファンタジーとでも申しましょうか、「ファンタジー」と言われると、ついつい「え、魔法?、妖精?」などと思う、こちらの固定観念を軽く超えてゆく。でも、森見さんの『太陽の塔』などもファンタジーノベル大賞だし、この賞自体が、わざと所謂「ファンタジー」っぽいものを回避してんでしょうか。

目次
崩御/宮女狩り/入宮/双槐樹/仮宮/女大学/後宮哲学/卵/淫雅語/銀正妃/
喪服の流行/前夜の絵巻/幻影達の乱/北磐関/後宮軍隊/受胎/縦横
あとがき
解説 矢川澄子


至極最もらしい文献などを引きつつ、語られるのは片田舎の出身の少女、銀河の数奇な人生。

前帝が腹上死したために、若干十七歳の皇太子のために、新しい後宮作りが必要となった。広い国土を宦官のチームが飛び回り、少女銀河が住まう緒陀地方にも、宦官真野がやって来た。齢十三歳の銀河は宮女になることになる。

彼女が連れ出された素乾国の都、北師の街にある宮殿において、銀河は宮女となるための研修を受ける。この後宮というところが、またけったいな所で、全ての宮女は膣を模した「たると(垂戸)」を通って後宮へ入り、また月に一度は何人かの宮女候補が後宮を出されることになる(所謂、「月のもの」を模す)。後宮とはすべからく女性を模すものである。

さて、銀河は同室の宮女候補生たちや、その他大勢の候補たちと共に、角先生による女大学に励む。もともと後宮の講義は、性技術の講義として始められたものだったけれど、角先生は哲学の徒であった。まだまだ童女である銀河は、同輩達が陶然となる美貌の菊凶による性技術の講義よりも、むしろ枯れた学究の徒である角先生による講義を好む。角先生もまた、銀河を可愛がり、また己の人生を賭けた証を彼女に夢見ようとする・・・。

並み居る美貌の者達を抑えて、なぜか正妃の座を射止めた銀河であるが、折悪しく、反乱軍の蜂起が勃発する。銀河は後宮で軍隊を組織し、反乱軍に立ち向かうのであるが・・・。


粗筋を書くとこんな感じなのだけれど、これはむしろ周りの与太話の方が面白い本。銀河の同室の三人の女性たち、庶民の出の銀河を馬鹿にしていた気位の高いセシャーミン、道ならぬ恋に燃える玉遙樹(タミューン)、美貌だけれど無口で簡潔な表現を好む江葉も魅力的だし、すっとぼけた角先生も魅力的。そして、何と言っても皇帝がね! 私は好きだなぁ。

また、敵方である幻影達(イリューダ)、渾沌のコンビも興味深い。特にこの渾沌の人物設定はなかなか他の小説では見られないものだと思う。彼の心と行動は、まさに渾沌そのもの。

これを元にしたアニメも出ているそう。

 
原作の際どい所は勿論抜いているそうですが、この天真爛漫な銀河、きっとアニメにおいても魅力的なことなのでしょう。

酒見さんはずっと気になっていた作家さんだったんだけれど、これが初読み。陋巷に在り』は、その長さに恐れをなして、近づけないでいたのだけれど、この方、長い物語の方が面白そう。こちら『後宮小説』においても、無駄話が面白いもの。時間が取れたら、読んでみたいなぁ。

「初体験物語」/はじめての・・・

 2007-03-23-20:29
姫野 カオルコ
初体験物語

姫野さんでこのタイトルとくると、あちら方面なのかしらなどと、思ってしまうわけですが(amazonの画像を貼ろうと、「初体験物語」で検索したら、ええ、かなり怪しげなのも引っ掛かってきました)、これはちょっと違う本。はじめて~をしたのは、で始まるエッセイ集。そのはじめての体験は、あいうえお順になっていて、アイ・プチ、アイシャドーから始まり、ワープロ、私がはじめて、で終わる。

初出は雑誌「ダカーポ」の1992年10・21号~1997年7・2号まで。安田成美の「ねえ、薔薇って書ける?」などの時事ネタも含みつつ(この厭らしさに、きっちりと突っ込むのが姫野さんだよなぁ)、今読んでも勿論面白いです。ここに描き出された姫野さんは、まさに姫野さんの小説に出てくる女性を髣髴とさせる人物像(これもまた、一つの演技、なのかもしれないけど)。

よい意味でも悪い意味でも「息苦しいくらい重い」といわれる『喪失記』に比べ、息が楽に出来るような楽しい一冊にしようと考え、編集者が構成してくれたのではないか、とのこと。うんうん、確かに『喪失記』は重かった~。

でもこの本には、姫野さんと姫野さんの小説に出てくる女性を、同一視してしまいそうなエピソードも沢山含まれてて、「ん?」と思うことも多いのだ。真実の姫野さん像が気になるなぁ。骨太美人で料理が上手、という辺りはきっと真実だと思うのだけれど。

そういえば、私を姫野さんに叩き落した『ツ、イ、ラ、ク』 も文庫化されました。また、こういうヘビー級の恋愛小説も読んでみたいものです。


 ← これは、ほんとに凄い小説です。

「たまゆらの道」/世界は繋がってゆく

 2007-03-21-21:17

志村 ふくみ, 志村 洋子
たまゆらの道―正倉院からペルシャへ

染織家、志村ふくみ、志村洋子さん母子がものした本。副題に正倉院からペルシャへ、とある通り、日本の染織家であるお二人が、辿った染織の道は実に幅広く、深い。同じ日本であっても、第一章「日本の美がたり」で訪れるのは、伊勢神宮における「神々の装束」であったり、高野山の「祈りの色と文様」、毛越寺・厳島神社・野田神社の「舞の装束」など、私たちの日常とは離れた奥深い所に密かに存在しているものたち・・・。写真も綺麗です。

目次
序文
第一章 染織への道
第二章 日本の美がたり
第三章 日本の美の源流をたずねて-イラン、トルコ
作品とエッセイ
終わりに
感謝
取材協力
参考資料

 
ふくみ、洋子の親子がほぼランダムに書いておられる共著なので(文章の最後には、(志村ふくみ)、(志村洋子)などの記述があるものの)、今どちらが書かれているのだ?と考えると、そういう点ではちょっと読み辛い。ふくみさんが書かれた方が、何だかびしりと厳しい気が通ってる気もするんだけど。ええ、居住まいを正して読まないと、怒られちゃう感じ。藍を立てたり、植物から色を染めるのは、一期一会の真剣勝負。そもそも、気迫が違うのかもしれません。

豊富に付けられている写真の一部をメモ。

・高野山の霊木(p72-73)
 高野槙から染められた、薔薇色と黄色の美しい事! 茶色の木からこんな色が出るのか不思議ー。
・毛越寺の延年の舞(p74-75)
 ふわりふうわりと舞う。
・仙台・南蛮の陣羽織(p88-89)
 水玉の伊達家の今見てもモダンな陣羽織。「紫羅背板五色水玉文様陣羽織」。 
・ペルシャ(p225、p230-231)
 金糸を入れた錦織物、華麗な「ザリ・バフィ」を織るところ。
・装飾タイルのモスク(p246-247)
 緑と青は、天を映し出す聖なる色として崇められたとの事。

そういえば、この本が頭にあったからか、こんな本も借りてきてしまいました。

NHK「アジア古都物語」プロジェクト
NHKスペシャル アジア古都物語 イスファハン―オアシスの夢

しかし、こちらは惜しむらくもカラー頁が少ない! こんなNHKスペシャルがやってただなんて、知らなかったなぁ。NHKスペシャル・アジア古都物語の一部だとのこと。見たかったです。

イスファハンは、「世界の半分」とまで謳われた美しい都市だったのだという。砂漠と沙漠は違って、「沙漠」は「水のないところ」を意味するのだそうだけれど(サハラ砂漠のように、絶えず砂嵐が起こり、地形が変わっているのが「砂漠」)、国土の殆どがこの「沙漠」と「砂漠」に占められる国で、このように美しい都市が発展したのは面白いことだなぁ、と思った。

番組の取材はちょうど2001年9月のニューヨークのテロ以降の事であり、イランの隣国アフガニスタンへのアメリカによる空爆が続けられていた時期だったとのこと。イスファハンで働くアフガン難民の中には、故郷に残した両親の消息が分からなくなった人もいるのだという。世界は美しく、人々は懸命に生きているのにね。

「ペーパームーンにおやすみ」/臆病で大胆不敵な彼女とナイトのオレ

 2007-03-16-00:02
オンライン書店ビーケーワン:ペーパームーンにおやすみ

川原 由美子

ペーパームーンにおやすみ

朝日ソノラマ文庫

目次
ペーパームーンにおやすみPart1
ペーパームーンにおやすみPart2
ペーパームーンにおやすみPart3
ペーパームーンにおやすみPart4
センチメンタル


25歳の目下、売出し中(というか、この間までほとんどぷーたろー)の作家のオレ、加園ハルキ。自作、『紙細工の街』が映画化され、原作者のオレは、主演のアイドル女優、まだ15歳の森川ともみに妙に懐かれてしまった。

森川ともみの別名は、「天才少女」に「わがまま姫」。彼女がいないところでは、大人たちは、彼女に対するバリゾーゴンの嵐。可愛い表情、顔とは裏腹に、時々、妙に醒めた目をするともみ。彼女はオレに何を求めているんだ?

「ペーパームーンにおやすみ」のPart1~4は、このハルキとともみ(ともみが言う所の、ハルりんとともりん)の物語。古本屋で捕獲したんだけど、やっぱり川原由美子さんはいいなー。「前略・ミルクハウス 」などもそうなのだけれど、下手に描くと陳腐になる、若者たちの居場所探しが、切実に迫ってくる。

劇中劇の映画は、主人公の歌世が周囲を拒絶して、自分の世界に閉じこもるという何ともクライ話。ハルキとともみの二人は、紙細工の街を、月を、ほんものの月に変えることが出来るのか?

 ← 見たことないんだけど、これが関係あるわけだ。


「センチメンタル」は、「前略・ミルクハウス」の最終巻に収められていた、「夏だったね」に良く似ているかな。ただし、こちらの季節は冬。一人ぼっちのクリスマスイブに偶然出会った、絵奈とタカシ。一週間限定査定、返品付きの条件で付き合うことになった二人は・・・。

誰にでも優しくて、魅力的な顔を見せる男の子。お付き合いできるのは嬉しいけど、そんな男の子の「トクベツ」になる事は難しい。自分だけに特別なのか?というのは乙女心的には重要なのであります。

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」/少女たちよ、武器をとれ

 2007-03-14-23:48

桜庭 一樹, むー

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない -A Lollypop or A Bullet-」
富士見ミステリー文庫

ふわふわしたお菓子は欲しくない。現実に必要のないものは欲しくない。必要なのは実弾、現実の実となるもの。生活に打ち込む、本物の力。

だって、あたし、中学二年生の山田なぎさ。十年前の突然の大嵐で父は亡くなり、ある日突然、家を一歩も出なくなった兄は、母のパート代や父の保険金を食い潰して、引き篭もって好きなものを代引きで買いまくる。好きなものだけに熱中し、傍観者で居る事を決めた兄は、つまり現代の貴族になったのだ。学校帰りに買い物をし、毎日ご飯を作り、主婦しているあたしに必要なのは、この現実を撃ちぬく弾丸。

そんなあたしの前に、ふわふわしたお菓子のような転校生、海野藻屑(うみのもくず)が現れた。冗談みたいな名前に、自分を人魚の「姫」だと言い張る嘘吐きの藻屑は、まるで砂糖菓子のような甘い弾丸、他愛無い嘘を現実に向かって撃ち続ける。

リアリストのあたしに比べ、藻屑の数々の言葉はあまりにも他愛無いものに見えたけれど・・・。藻屑が砂糖菓子のようなその言葉で、必死に撃っていた現実とは何なのか?

目次
第一章 砂糖菓子の弾丸とは、なかよくできない
第二章 砂糖菓子の弾丸と、ふたりぼっち
終章  砂糖菓子の弾丸とは、もうあえない
あとがき


鳥取県、境港市を舞台としたこの物語。甘い表紙に美少女二人。でも、騙されてはいけない。早い段階でネタは割れるし、文庫扉にもあるけれど、これは「青春暗黒」ミステリーなんである。

彼女たちの担任は、子供に必要なのは、安心なのだという。安心から零れ落ちた二人の少女の行方はかなしい。生き残った子供だけが大人になる。でも、

砂糖でできた弾丸(ロリポップ)では子供は世界と戦えない。
萌え系っぽい表紙とは裏腹に、ひりひりと痛い暗黒小説でありました。武器をとれ、と言ったところで、13歳。子供に何が出来ようか?

プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
02 | 2007/03 | 04
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。