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「アフリカの瞳」/立ち上がる人々

 2006-10-30-21:26
帚木 蓬生
アフリカの瞳

アフリカのとある国で暮らす日本人医師、作田信(サクダシン)。妻パメラとの間には、一人息子のタケシもおり、シンはこの国に骨を埋める覚悟をしている。市立病院に勤めるシンであるが、長年にわたって当直明けにはタウンシップにあるサミュエルの診療所を手助けしている。

恐らくは南アフリカ共和国がモデルとなっていると思われるこの国は、長年にわたるアパルトヘイトから解放されたものの、今度は貧困とHIVがこの国を襲う。諸外国からの考えなしの援助はこの国の育ち始めた産業を壊滅させ、貧困と無知がHIVの感染者を更に広げる。

しかしながら、この国には輝く瞳がある。明るい性質がある。日本ではずっと気になっていた、シンの顔の痣が全く気にならなくなるくらいに・・・・。この国では、生も死も色濃くうつる。

目次
1  あなたへの信頼 それが
   私たちを強くするのです
2  あなたは私たちを見つめる
  月の光となって
3  山の頂きで 谷底で
   私はあなたを称えるでしょう
4  鳥が木々の間を飛びまわる
   夏に挨拶をしながら
5  溢れ出る私の涙
   大河になって谷を下れ
6  私は燃える
   逃げ場もなく 燃え尽きる
7  私たちの家はここにない
   星のように遠い所にある
8  高い塀の向こうに肥沃な土地がある
   汲めども尽きぬ井戸と かぐわしい花畑
9  そこに私たちはもう帰らない
   父祖が死んだ土地だから
10 私たちに大地を 時を 石を
   風を語って下さい
11 この静寂のなかで
 ?? 私たちは今こそ歌うべきだ
12 鳥も 兎も 風さえも どこに行くのか知っている
 ? しかし私たちはどこに行けばいいのか
13 聞かせて下さい あなたの声を
14 違うと言おう 違うと
   NOこそ私たちの合言葉
15 死の谷を歩く
   私は怖くない あなたがともにいるから
16 私たちは歩く
   道の先にあなたが見えます
17 強く歌うには友がいる
   ひとりで歌う声はあなたに届かない
18 私たちには夢がある 私たちの眼を開かせ
   世界を見つめさせる夢が
19 ともに種をまき 刈り入れよう
   私たちの汗と血は未来に向かって流れる

(ふふ、なっがいけど、全部書き出してしまいました。読んでる間、ずっと、これ並べたかったんだよねー。ジャガランタの花とともに、この音楽のような章のタイトルがとても良いと思う)

この国では、国産の抗HIV薬ヴィロディンが妊産婦には無料で配られている。母子感染を防ぐためだ。ところが、HIV検査で陰性とされた赤ちゃんが、相次いでエイズ発症が原因と見られる様子で亡くなっていた。無料であるとはいえ、この薬を貰うために、妊婦たちは様々な労苦を耐え忍んでいる。この薬はまさに、彼女たちの命綱なのだ。また、欧米の薬に比べ安価であるとはいえ、無料配布とはならない妊産婦以外の患者たちも、必死の思いでこの薬を飲む。薬の効果に疑問を持ったパメラは、シンの助言を受けつつ、カヤ・ニールの仲間達と共に、ヴィロディンの追跡調査を始める。

一方、サミュエルの診療所を手伝うシンの元にも、劇的な症状を呈して亡くなったエイズ患者が運び込まれた。亡くなった娘、ブユは、ある白人女医のもとで治療を受けていたらしい。テンバが言うには、そこ、スティンカンプ女史のクリニックでは、赤い薬を貰う代わりに、日当が貰えると言うのだが・・・。これは、製薬会社の非合法の大規模な治験の一種なのか?

ラストの学会の様子は圧巻。ほんとはこんなに上手くはいかないのだろうけれど・・・。

アフリカのエイズ治療のために世界各国から寄せられたその資金は、先進国での高速道路五キロメートルの建設費と同じ程度の額、など刺激的なフレーズが沢山。欧米の製薬会社は、既に抗HIV薬の資金回収が終わっているにも関わらず、コピー薬の製造も輸入も長らく認めようとはしなかったらしい。WHOにより、やっとコピー薬の製造と輸入が認められても、それは正規の薬価の十分の一。勿論、貧しい人々の手に入るような値段ではない・・・。文中にも度々書かれていたけれど、対テロに回される費用の幾分かでもそちらの資金に回す事が出来れば・・・、と思う。

 ← 全く気付かなかったのですが、これが前作で
               今作に繋がってたみたいです・・・・。
               順番無視して読んじゃったらしく、ちょっとショック。汗
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「吃逆」/探偵はしゃっくり癖の進士様!

 2006-10-29-21:17
?
森福 都 吃逆 ?

時代は宋朝。第二百七十四位で科挙の試験に合格した私こと陸文挙は、合格はしたもののそれは第五甲という下位での合格であり、これでは仕官さえ儘ならない。ところが、陸には奇妙な特技があった。それは、吃逆(しゃっくり)と共にやって来る白昼夢とも言うべきか? しゃっくりをするた度に、彼には奇妙な光景が見えたり、とんでもない思い付きが浮かんで来るのだ。

さて、彼の奇癖を知った周季和という男から、『?話小報』なる小冊子の偵探としてスカウトされた陸。陸は周とともに、開封の都を騒がす噂の謎に迫り、いつしか付いた渾名は「吃逆偵探」。進士様の箔を借りた『?話小報』であるが、編集人である周季和の切れ者ぶりは凄まじく、実際はどちらが「偵探」なのか分からなかったりもするのだが・・・・。

勿論、男ばかりが出てくるむさ苦しい話ではない。物語を彩るのは、陸が惚れ込む、珠子楼の看板厨娘、宋蓬仙。陸の想いを知ってか知らずか、宋蓬仙と周季和には浅からぬ因縁があるようでもある。陸の想いは、蓬仙の想いは果たして実を結ぶのか?

目次
綵楼歓門
紅蓮夫人
鬼市子

「綵楼歓門」
男女の投身現場に偶然にも居合わせた陸。それを知った周季和から、偵探役を請われた陸は、周とともに投身の謎に迫る。この男女の投身事件には、それ以前にあった二人の妓女の投身にも関係しているようで・・・。
吃逆偵探として名を馳せた陸は、開封府知事の劉公に面会叶い、司理参軍として念願の仕官がかなう事になる。しかし、これもまた、実は周季和の引いた絵の中にあったのかもしれない。

「紅蓮夫人」
天子が鑑賞する水上演芸、「水百戯」に抜擢されるのは非常に名誉な事。梁大礼使による大選抜会に召しだされた、若手絡繰師の干敏求が操る絡繰人形は、「紅蓮夫人」という名の妖艶な人形だった。ところが、人形とともに、蓬莱島の雲輝亭に唯二人、取り残される事を望んだ梁大礼使が、何と刺殺されてしまう!
どこか尋常ならざる色欲を持っていたと評判の梁大礼使、彼は人形の唇を貪り、あまつさえ人形に挑みかかったのか。梁大礼使を殺したのは、人形の首から弾け飛んだ鉄線なのか? 常とは違う様子の周季和に、心を痛める宋蓬仙。そうとなれば、勿論「吃逆偵探」陸文挙も黙ってはおられないわけで・・・。
母親の影響ゆえか、悪女であればある程、心惹かれてしまうという周季和。泥土の中から必死に頭を擡げる蓮のような「紅蓮夫人」が哀しい。

「鬼市子」
鬼市子とは幽霊市のこと。冥界での必需品を整えるために、亡者同士が取引を行うとされる場所。五更の街鼓前から露店が立ち並び、夜が明ける頃には畳まれるという、旧鄭門の前で行われる市を、周とともに訪れた陸文挙。それは、盗品や世にも不思議な珍獣の宝庫であるという、市の風聞を確かめるためであった。
さて、周季和一筋であるかと思われた宋蓬仙に、籠物商の男、賀延賢という影がちらちらと見え、陸文挙は気が気ではないが・・・。
また、都の名物夫人、王夫人の死から始まった事件は、思わぬ余波を引き起こす。その昔の皇后、郭后の死や、呂宰相、陸の上司である劉公をも捲き込んだ噂となる。

綵楼歓門あたりは、「吃逆」の出番があまりにも多いため、ん?と思われる向きもあるかもしれませんが、紅蓮夫人からはきっとこの物語に引き込まれるはず! ここに至っても、うーむ、今ひとつ、と思われても、これは是非、鬼市子まできっちり読んで欲しい物語。あちらこちらに散りばめられたピースがぴたぴたと嵌まる様はまさに快感。こういうのに弱いんだよな。陸文挙が見た白昼夢、白い猿がするすると木を登る様子も印象深い。

どこまでもお人よしの一途な男、陸文挙、眉目秀麗であるけれど、どこか幸薄そうな周季和。どちらに肩入れして読むかは人それぞれだとは思いますが、私は最後に至って周季和の魅力にヤラれました。んふふ、こういう陰のある色男もいいよなぁ。続きも読みたいところなんですが、続編はないのですかね? 陸文挙の思いは果たして届くのかなー。

 ← こちらは文庫

「金春屋ゴメス」/ゴメス、現る!

 2006-10-26-21:26
 
西條 奈加
金春屋ゴメス 

第十七回日本ファンタジーノベル大賞受賞作であり、どうも評判が良いらしいこの作品。かつ、これ、表紙が魅力的でしてね。どう? ちょっと生意気そうな今時の若者が、腕時計に携帯を小道具として、きりりといなせな着物姿で表紙におさまる。実は、この「腕時計」と「携帯」を身につけているのは、作中の設定からすると、ほんとはおかしい。ま、でも、雰囲気を出すための作画なんだろうなぁ。

さて、月にも人が住まうというこの時代、日本の中には鎖国状態を貫く、「江戸」の国が存在したのです。江戸は、北関東と東北にまたがる、東京、千葉、神奈川を合わせた広さに相当する、一万平方キロメートル足らずの領土を持つ国でした。御府内と呼ばれる中心部は、十九世紀初頭の江戸を忠実に再現しており、人口約七百万人のうち、百万人がこの御府内に生活しておりました。

この「江戸」は鎖国を敷いていることから、一般人が気軽に行き来したり、ビジネスや観光目的の短期入国も認められていないという、日本人にとっては「近くて遠い国」でありました。また、電気も時計もない、まさに江戸時代と同じ生活に拘るため、「変わり者の国」としても知られておりました。

そんなこんなで、鎖国制度を敷く江戸の永住ビザを取得するのは、非常に難しいことでありましたが、何の因果か、この物語の主人公、佐藤辰次郎は一発で入国を許可されてしまいました。実は勿論、これには裏があるわけで・・・。

江戸に着いた辰次郎が身請けされ、暮らすことになったのは、一膳飯屋・金春屋。とはいえ、彼が手伝うのは、表の飯屋ではなく、裏金春。泣く子も黙る裏金春。そこに鎮座ましますのは、さながら巨大な鏡餅のような輪郭で、人間離れした怪異な風貌を持つ馬込寿々!(ゴメス)(いや、随分な言われようだけどさ。「そそけ立った髪」とかもすごいよな)

実態は、長崎奉行の出張所である裏金春。あ、長崎奉行とは鎖国時代の出島があった長崎の奉行ということで、つまりは外務省のようなものらしい。辰次郎は、甚三、木亮、寛治などの兄貴分たちと共に、江戸の町を走り回ることになる。

そして、そう、肝心の事件。辰次郎が江戸に一発入国出来たのは、実にこの事件のためであった!
過去起きた事件における唯一人の生き残りである辰次郎は、さて、首尾よく記憶を取り戻すことが出来るのか??

そうだなー、設定は滅茶苦茶面白いし、キャラもいいんだけど、この設定だったらもっと面白く出来たのでは?、と残念に思うことも多々。せっかくのキャラや設定が生きてない気がする。江戸の生活を説明する時、時々「お勉強」チックになっちゃうし、キャラもこうだ!と書いてあるだけで、それが何らかのエピソードから、すんなりと納得出来る感じではないのだよね。要は、まだこなれてない感じ? この「事件」も一作引っ張るには、ネタとしてちょっと苦しいような気がする。これだったら、短編でどんどん事件を解決してった方が、いいんじゃないかなぁ。うーむ、惜しい!

時代劇マニアで、実に二十七回目の応募で江戸に入国した松吉、江戸が二十九国目、旅行マニアの奈美。いわば、辰次郎と同期入国であるこの二人は、次作でも活躍しそうな感じ。なんだかんだいって、次作も読むとは思うので、こちらはもう少しこなれている事を期待しています。評判が良かっただけに、ちょっと期待し過ぎちゃったかなぁ。

 
西條 奈加
芥子の花    ← こちらは、二作目

☆その後、読んだ「芥子の花」の感想はこちら → 
「芥子の花」/金春屋ゴメス第二弾!
二作目では、一作目で残念に思っていたところが、ぐっとよくなって、非常に面白く読みました。続きも楽しみ♪

「邪魅の雫」/待ってました、京極堂シリーズ最新作!

 2006-10-19-22:37
京極 夏彦 邪魅の雫

心の中に、ぽつんと一つ落ちる黒い染み。黒い思い。
白いカンバスに、たった一つ付いた、けれど取れない染み。
それは邪悪な思い。邪な思い。

そういった感情と全く無縁の人はきっといない。けれど、通常はその染みをなかったことにして、またはその上に何か違うものを塗り重ねて、そして生き続けている。―少々後ろめたく思いつつも。

しかし、ここに邪悪な雫があったらどうだろう。美しいその雫は、たった一滴で人を殺す。もしも自分の世界に「それ」が持ち込まれたならば、自分の信ずる正義のために、若しくは自分の世界を壊すために、自らの世界を完結させるために、「それ」を使いたくはならないだろうか・・・。透明な雫の入った小瓶。それは、美しくも邪悪な一滴の集まり・・・。

東京、平塚、大磯で、人が死ぬ。連続しているようでもあり、非連続でもあるようなこれらの事件。警察の捜査は混乱を極め、京極堂シリーズのいつもの登場人物たちを、雪だるま式に捲き込んで、事件はますます錯綜する。一つの事実が判明しても、それは事件の解決の糸口にはならない。でたらめなこの事件においては、それはただ謎の羅列でしかない。

常にない様子の榎木津(だって、楽しそうではないのだ!)、最後に真打として登場する京極堂ではなく、此度活躍するのは、探偵助手の益田に、陰気な小説家・関口、木場修の巻き添えを喰って、派出所勤務中の青木といったところ。

いつも軽薄であることを、上滑りすることを心がける益田、常に世間に対して後ろめたい思いが抜けず、「犯人顔」と揶揄される関口が、この物語の語り手としては相応しいのかもしれない。なぜなら、これは「世界」と「世間」と「社会」の物語であるから。たびたび気鬱の病に襲われ、ただ自分に関係しているというだけで、人の存在が重いのだ、と語る関口の世界と世間、社会とのずれ。上滑りでもしてないと遣っていられない、立っていられない、社会と接続する術を持たない益田。彼ら二人こそがこの物語には相応しい。

京極堂は語る。世界は個人の内部の世界と外側の世界の二つに分けられる。言葉は内側から発せられて、外側に向かうもの。内側においては全能である言葉が、外に出た瞬間に世間という膜に吸収され、大した効力を持たないものとなる。それは既に社会にも届かず、勿論世界になど届く訳もない・・・。

自らの世界と外側の世界、世間、社会と接続する術を持たない者たちは、一体どうすればいいのだろうか。自分の内部の世界と、外側を繋げるのは、時に難しいものとなる。そう、たった一人で世界と対峙しているような、あの榎木津のような男を除けば・・・。青木を諭す、老刑事、藤村がいい。人には出来ることと、出来ないことがある。わしらに出来るのは、目の前のことだけ。目の前に何も見えないと、余計な大義名分が幅を利かせ始めるが、それは驕りだ思い込みだ。今やるべきことは、目に見えるところ手の届くところに犯人を引寄せること。

そうして炙り出された犯人は、ただぼわぼわと自らの世界を膨張させた人間だった。しかし、その世界は決して世間と、社会と互角に渡り合えるものではない。世界を語り、世界を騙る、漆黒の男、京極堂は、いつものように事件を解体し、また構築し直す。

京極堂の今回の語りにおいては、不思議である、怪異であるという解釈をするのは、古代、その世界の王、権力者にしか許されていなかった、というところが面白かった。個人の世界においては、どう解釈してもそれはその者の自由であるけれど、それを公言することは、その昔は罪であった。江戸期、明治、現代(大戦後の昭和)と時代が進むにつれて、解釈は下の者へと降りていった、という辺りには、「後巷説百物語 」を思い出したりね。

「絡新婦の理」もそうだったけれど(勿論、登場人物、シチュエーションその他は異なりますが)、最初と最後の部分がかちりと嵌まるのは、やっぱり快感。最後まで読んで、また冒頭に戻ると、哀しさが際立つように思った。でもさ、基本的に、京極堂って女性には優しいよね。笑 関口なんて、何もしてないうちから、いつも罵倒されてるっていうのに・・・。いや、あの糞味噌ぶりも、また心地良いんだけど。

「カエルのきもち」/カエル三昧

 2006-10-16-21:51
千葉県立中央博物館
カエルのきもち
晶文社

この表紙のカエルの何とも言えない愛らしさ♪ カエルのつぶらな瞳には、田植えをする人と、虫取り網を持った子供たちが映っている。

ぐるぐる さんちのカエルたちを思い出して、ついつい、借りてきてしまいました。
(ぐるぐるさんの「撮りっぱなしの写真館」の、 「両生類・爬虫類」カテゴリーにリンク
超キュートなカエルたちが、満載なのです♪ )

目次
まえがき
ガマ博士のあいさつ
1 人はカエルをどう見ているか
2 カエルってどんな生きもの?
3 カエルとのかかわり
4 カエルの身に起きていること
ガマ博士お別れのあいさつ
あとがき/「カエルのきもち」展の記録

「人はカエルをどう見ているか」「カエルの顔」で気になるのは、はっしとこちらを見つめる、カエルたちの顔顔顔・・・・。ここに写っているカエルたちは、日本のものなので、それ程毒々しくもないけれど、「カエルってどんな生きもの?」の、「カエルの歴史をたどる」「世界のカエル」では、かなり不思議なカエルたちが・・・。

ユビナガガエル、カメガエルなんて、丸々とした体に手足がちょこんとついているようにしか見えない・・・。うーん、これで飛べるのかしらん(跳ねないカエルもいる、とのことなので、これがそれなのかなぁ)。ま、「今、全世界に生息しているカエルは四千種あまり」ってことなので、その形、生態が異なっていても、全く不思議はないのかもしれない。

体重三キロを超えるカエル(西アフリカに生息するゴリアテガエル(ゴライアスガエル))とか、上から見ると枯葉そっくりのカエル(ミツヅノコノハガエル)、黄色と黒のカエル(キオビヤドクガエル)、まるでX-MENのミスティークのような青いカエル(コバルトヤドクガエル)など、不思議なカエルがいっぱい~。軽い図鑑としても楽しめた。

これ、カエルグッズのコレクターや、カエルに魅せられた人たちの座談会なども載っていて、まさにカエルに対する愛溢れる一冊でした。

水田も減ってしまうし、道路で轢かれるカエルも多いそうだけれど、やっぱり、この愛らしいカエル、ずっと一緒にいたいよね。ま、大人になった今でも私が触れるのは、多分、ちっちゃいちっちゃいアマガエルくらいなんだけど・・・。

「アラビアの夜の種族」/そして、物語は続く・・・

 2006-10-14-22:21
?
古川 日出男
アラビアの夜の種族 ?

物語はそれを聞くことを望む者の前に姿を現し、物語は語られることで不滅の存在となる。そして、物語を識った者は、その者自身が一冊の本となり、またその者自身の物語をも含んで、物語は続いていく。これは、そんな物語。きっと永遠の物語。

系統は全然違うけれど、物語の中に内包される物語、という点では、恩田陸の「
三月は深き紅の淵を 」を思い出した。?

これは、一冊の稀書を巡る物語。

ナポレオン・ボナパルトに侵攻される直前のカイロ。イスマーイール・ベイに仕える、一人のマムルークの若者、アイユーブが夜毎暗躍していた。イスマーイール・ベイは、二十三人いるベイ(知事)たちの間で、現在三番手のベイ。一番手、二番手の、ムラード・ベイとイブラーヒーム・ベイは、煌びやかで美々しいマムルーク騎馬隊の能力を、露ほども疑わないが、しかし、イスマーイール・ベイただ一人は、「騎士道」が廃れた近代戦をおぼろげながらも知る。美が即ち強さそのものである、騎士道の世界は、西洋では既に終焉を迎えた?

命ぜられる前に、常にイスマーイール・ベイに先んじて策をとるアイユーブが、近づくフランク族の脅威に対してとったのは、一冊の稀書。それは類稀なる書であるという。読み始めた者は、その本と「特別な関係」に落ち入り、うつし世のことを全て忘れ去る、別名「災厄(わざわい)の書。これをあのフランク人に、献上しようというのだ。そう、公式(おもて)の歴史には決して残らず、非公式(うらがわ)の歴史にのみ、語られるこの書を・・・。それは誰も知らぬ刺客となる・・・。

「災厄(わざわい)の書」を語るのは、夜(ライラ)とも呼ばれる、夜の種族(ナイトブリード)、ズームルッド。その声は甘い蜜の舌で語られ、夜毎語られるその言葉を、流麗な書体を操る書家と、助手のヌビア人の奴隷が余さず写しとる。そして、物語を聞く、アイユーブと書家、ヌビア人の奴隷もまた、夜の人間となった・・・。

語られるのは砂の年代記。砂漠の歴史。「もっとも忌まわしい妖術師アーダムと蛇のジンニーアの契約(ちぎり)の物語」と呼ばれるその物語には、複数の挿話が織り込まれ、その一遍一遍は主人公を異にする独立した物語である。しかし、語りが進むにつれ、それは巨きな物語に収斂する。別名、「美しい二人の拾い子ファラーとサフィアーンの物語」「呪われたゾハルの地下宝物殿」としても知られるこの物語の運び手は、わずか少数の選ばれた語り部、聖なる血を秘めた夜の人間のみ。そう、まさにズームルッドのみが、この物語の運び手である。

語られる物語は、二十数夜にも及ぶ。夜の物語にとっぷり漬かった後、夜が明ければ、待つのはカイロの危機的状況。ズームルッドの語りが佳境を迎えるにつれ、カイロの状況はますます悪くなる。すっかり夜の人間となった書家とヌビア人の助手は、カイロの危機的状況も知らずに、美食と美しい物語に耽溺し、充実した時を過ごすのだが・・・。アイユーブの計略は、さて、実を結ぶのか?

夜の間に語られる、長い長い物語をとっぷりと楽しんだ。アラビア色の溢れる艶やかなこの物語は、読んだことないんだけど、「千夜一夜物語」的でもあるのかな、と思ったり。純粋な人間としては、完璧の極みに辿り着いた、呪わしく醜い呪術師、アーダム。無色(いろなし)の皮膚(はだ)を持つ麗容の魔術師、ファラー。無双の剣士、美丈夫のサフィアーン。彼ら三人の物語が混じり合い、撚り合わされる様は圧巻。

これは彼ら三人の愛の物語でもあって、ファラーがひとり、人外境(ジンニスタン)に留まることを決めたのは切なくもある。美が善である世界において、醜く生まれ付いてしまったアーダムの純情、彼の報われなかった想いもまた切ないし、サフィアーンの純真無垢さはこれは救い。三者三様の世界が、色鮮やかに立ち上がる。

そうして、物語を聞き終わったアイユーブは、今度は彼自身が一冊の本となり、アイユーブの人生が語られる。ラストはある日本人作家の物語へと、舞台は移る。そうして、物語はきっと続いていく。ズームルッドから糸杉に、語り手が変わるように・・・。

語り手と聴き手がある限り、物語は存在する。物語は不滅だ。

目次
聖還暦(ヒジュラ)一二一三年、カイロ
 第一部 0℃
 第二部 50℃
 第三部 99℃
仕事場にて(西暦二〇〇一年十月)

・マムルーク(Wikipediaに
リンク
・ナポレオンのエジプト遠征について(Wikipediaに
リンク )?

←長いな~、と思いながら読んでいたら、文庫では三分冊されていました。

いやー、しかし、こういう物語はこの「長さ」も魅力の一つですなぁ(っても、読むのがそう遅い方でもないと思われる自分が、一週間びっちり読んでました。ま、一日の内で、純粋に読書に当てられる時間も、そう多くはないけど。にしても、な、長い・・・)。「物語」を愛する人間には、たまらない本だなぁ、と思いました。面白かった! 

トラバが飛ばない「みすじゃん。」のおんもらきさんの記事にリンク → 
アメブロ、なぜ一部のfc2ブログからのトラバを弾くの~?(困)

「ぶぶ漬け伝説の謎」/アルマジロ、再び!

 2006-10-12-22:19
 
北森 鴻
ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー 

支那そば館の謎 」の続編。京都、それもメジャーどころではなく、知る人ぞ知る、裏(マイナー)な名刹、大悲閣を舞台にした、ミステリーの連作集。

目次
狐狸夢
ぶぶ漬け伝説の謎
悪縁断ち
冬の刺客
興ざめた馬を見よ
白味噌伝説の謎

登場人物は前作に同じ。広域窃盗犯としての過去を持つが、現在は心を入れ替え、大悲閣の寺男を務める、有馬次郎ことアルマジロ。みやこ新聞の「自称・エース記者」、折原けい。バカミス作家のムンちゃん。全てを見通し、全てを包み込むような、懐の広いご住職。

前作にて予想されたことではあるけど、お調子者同士の、折原けいとムンちゃんのコンビは時に凶悪。有馬次郎でなくとも、少々頭が痛くもなる。おイタが過ぎて、「冬の刺客」においては、折原けいはとうとう「自称・エース記者」の看板を捨て、みやこ新聞に辞表を出すハメにも陥る。

とはいえ、全体的にライトな作風の本シリーズ。「興ざめた馬を見よ」、「白味噌伝説の謎」においては、裏京都・ミステリーガイドなるシリーズを売り込む、フリーライターとして返り咲き、またしても大悲閣に鼻息荒く乗り込むのだった・・・。

ちょっとした謎、ほんの少しの手掛かりから、有馬次郎が分かった!!!!、となる本シリーズ。その推理については、うーむ、それもあるのかもしれないけど、それだけじゃ分からんだろ、とも思うのだけど、本シリーズはキャラを楽しみ、十兵衛の大将の料理を楽しむべきもの。ちょっとした、京都の豆知識などを仕入れつつ、軽~く楽しむのが良いと思う。で、私はそれを楽しみました。

しかし、「ぶぶ漬け伝説の謎」で知って、吃驚したんだけど、京都ではラーメンに鶏の唐揚げというのが、当たり前の組み合わせとしてあるそうな。関東では見かけないような気が致します。関西でも特に京都だけのことなのかしらん。

そうそう、本シリーズの舞台である、大悲閣。このお寺って、実在しているそうなのですね。前作、支那そば館の謎」の文庫版の解説を立ち読みしたところ、なんと本物の大悲閣のご住職が解説を書いておられました。

更に更に、も一つ気になったシーン。

「どないしたん、折原まるでどこかの民族学者みたいやよ」
「いってくれるじゃないの、ア・リ・マ」
有馬でもなければ、アルマジロでもない。独特の言い回しで耳元に囁かれると、胃の腑から苦いものがこみ上げそうになった。
―悪いミステリーでも、読んだんちゃうか。

って、それはやっぱり、
蓮丈那智シリーズ のことよね。笑 

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (望郷篇)」/二人で暮らせば

 2006-10-10-22:58
坂田 靖子
マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (望郷篇)

前作の旅情編 においては、南極へ、オーストラリア大陸へと、ガシガシと動き回っていた、マーガレット奥さんとご主人。こちらは「望郷篇」だからなのか、それ程大きな遠出はない。せいぜいがとこ、ご主人の出張であったり、二人の小旅行であったり。でも、二人で、一人で旅して、帰るは楽しき我が家。

目次
草原の輝き
失われた都
吸血の森
海のセーター
名犬ナポレオン
オリーブ・グリーンの春
庭のたのしみ
訪問者たち
時間の森
プディング
氷河期
雪の日
歩く思い出たち
真夏の夜の夢
アラウンド・ザ・クロック
 シュール で ほわー/皆川博子

草原の輝き
:ご主人が出張先で見た、白い馬に、クロップマーク。白い馬については、こんな本 (「ケルトの白馬」)も以前読んだことがありました。

失われた都
:何百年も昔、ブルターニュの海の上にあった都、イスの話。滅んでしまったイスの伝説。パリとは、「イスに対するもの」という意味の、イスに代わる新しい都なのである。

吸血の森
:吸血鬼伝説が残る街に泊まったマーガレット奥さんとご主人。ご主人の虫刺されの痕を、吸血鬼の痕跡と間違えられて・・・。

海のセーター
:出張で、漁師町に泊まったご主人。パブである男性と仲良くなるが・・・。アラン・セーターは、海の男たちのもの。

名犬ナポレオン
:マーガレット奥さんが友人から預かったのは、キレイ好きで上品なダルメシアン。ご主人とは折り合いが悪かった、ナポレオンであるが・・・。

オリーブ・グリーンの春
:ギリシャの本を読んだマーガレット奥さんのたっての希望で、二人はフローラの季節を迎えたギリシャへ。

庭のたのしみ
:ご主人がこよなく愛するお庭♪

訪問者たち
:庭にやってくる(本来は)招かれざる訪問者達。ま、そこは好奇心旺盛なマーガレット奥さんですからね。

時間の森
:ご主人の旧友が暮らすのは、ほとんど未開と言ってもいい密林。ここでの生活にうんざりした旧友、カミングスさんは早く文明生活に戻りたいとぼやくけれど・・・。

プディング
:プディング狂想曲? 「女王陛下のプティング」から、「踊るプディング」のお話まで。プディングとは、カスタードプリンにあらず。小麦粉で作ったタルトパイのような地に、シチューや煮込みを入れたり、フルーツやジャムを混ぜて煮たり蒸したりしたものなのだ。

氷河期
:隣のティム少年と共に、恐竜のいた時代に思いを馳せるマーガレット奥さん。おりしも、停電とガスの供給ストップが重なり、そう、これはまるで氷河期を体験するかのよう!

雪の日
:雪ダルマを作りながら思い出す、ご主人の少年期のお話。直ぐ溶けちゃうし、邪魔なばっかりだけど、雪ダルマの行列も悪くないもんだよ、うん。

歩く思い出たち
:車が壊れてしまい、とある旧館に泊まることになった二人。マーガレット奥さんは、とうとう時空をも超える!

真夏の夜の夢
:夢の中で、ご主人の頭はなんとロバに!(あれ、でも、それでも考えられるってーことは、ご主人の頭は胃袋の中?笑) マーガレット奥さんにそっくりな、妖精の女王タイターニアに、妖精の王。そう、ここは、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の世界。

アラウンド・ザ・クロック
:突然飛び込んできたミミズクに部屋を乗っ取られてしまった二人。外で寝ようとしてみたり、一階の床で寝ようとしてみたり。マーガレット奥さんの言うとおり、ベッドじゃないところで寝るのって、わくわくするよね。たとえ屋根があっても、それらを取っ払えば、太古の昔からの繰り返し。空の下、風の中で人は眠るのだ。懐かしいのは、わくわくするのは、古の記憶が蘇るからなのかも。

ラスト、「アラウンド・ザ・クロック」では、何となく二人のお惚気。好きなものも苦手なものも違う、でこぼこコンビの二人だけれど、それでもやっぱりこの夫婦はピッタリなんだ。

「権現の踊り子」/パンクな文学

 2006-10-07-18:08
町田 康
権現の踊り子

町田氏の、色々詰まった短編集(amazonによると、著者初の短編集とか)。
時代ものあり、現実とは微妙にずれた世界あり、また現実のしょうことない男の話あり。

目次
鶴の壺
矢細君のストーン
工夫の減さん
権現の踊り子
ふくみ笑い
逆水戸

「鶴の壺」
若い頃、鶴が借りていた三畳間に転がり込んだ「わたし」。死期を迎えたという鶴の元に、当時餞別のつもりで、勝手に持ち帰った小銭が詰まった壺を返そうとするのだが・・・。

「矢細君のストーン」
彼が持つのは只の石ではない。あの君が代にも歌われた「さざれ石」なのだと、矢細君は主張するのだが・・・。

「工夫の減さん」
工夫して、工夫して、全てを台なしにしてしまう減さん。それは最期まで、一向に変わらぬ、改められぬものであった。

「権現の踊り子」
こちら、上手く纏められないので、amazonからそのまま引いちゃいます。
権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作(以上、amazonより引用)。

「ふくみ笑い」
仕事が減ってきて、バナナも買えなかった「俺」。これは世の中全てが、「俺」の敵に回ったせいなのか? 世の中全てに、符牒のようなものが存在し、「俺」だけがそのことを知らないのか。そう、たとえば、人に話しかける前に「ぎょんべらむ」と付けなきゃいけないとか。
更に、現実世界には裂け目が生じて、紐のような「ノイズ」が飛び交う。ノイズが付着した所から、糜爛して流れ落ちる肉。危うい世界に、猿愛児の音楽が鳴り響く。べらんが、めらん

「逆水戸」
誰あろう、従三位権中納言徳川光圀公のお忍び旅行。越後の縮緬問屋の隠居、光右衛門とは仮の姿である。これが所謂「黄門様」の世界だけれど、こちらは「逆水戸」。だから、こちらの光圀公は弱きを助けるわけではない。というか、弱きにも、責められるべき所があり、まったき善ではありえない。更に「強きを挫」こうにも、その「強き」方にもそれなりに妥当な理由がある。そんなこんなで、我が身のみが可愛い光圀一行は、市中を無駄に混乱させつつ、さらに自分達自身も危機に陥る。
忍者の吟は、ご老公一行の危機にも気付かず、ただ踊り狂う。ヘゲムーンの山車に乗り、三味線をかき鳴らす。じゃんかじゃんかじゃんかじゃんかじゃんかじゃんかじゃんかじゃんか。狂騒的なビートは止まることも知らず、吟、瞳の女どものみが、助かってひたすらに踊り狂う。

「ふくみ笑い」「逆水戸」が面白かったなぁ逆水戸」は設定がどうとかよりも、「ヘゲムーンの山車」や、「じゃんかじゃんかじゃんかじゃんか」というビートにヤラれたのかも。
「ふくみ笑い」は単純に面白い! 現実との違和感を、拡大妄想すると、こうなるのかしらん。

町田氏はミュージシャンでもあるだけあって、言語感覚が面白いですね。「ぎょんべらむ」とか、意味が分かんないのに、妙に気に入ってしまいました。
中・長編よりも、短編でぎゅっと密度濃く読んだ方が、自分には合っているようにも思いました。

 ← こちらは、文庫

☆関連過去記事: 「屈辱ポンチ 」/へらへらへらり

「女信長」/もし、織田信長が女だったら?

 2006-10-06-22:30
 
佐藤 賢一
女信長 

織田信長といえば、知らぬ者などいない、戦国時代から安土桃山時代を駆け抜けた戦国大名。楽市楽座、関所の撤廃などの商業政策、バテレンに学んだ鉄砲の重用、土地に縛られぬ常備軍の編成や、出自ではなくその能力を問題にする能力主義など、その姿勢は実に革新的なものであった。

しかし、これらのことも、商業が盛んな尾張の地で育った、経済に明るい女としての知恵であったのなら、力に囚われぬ、力のみに恃むことをしない、また名誉に囚われぬ、名ではなく、実を取る女としての生き方であったとしたとなら、それ程不思議な事ではなかったのかもしれない。

目次
序章  斎藤山城道山、富田の寺内正徳時まで罷出づべく候間
第一章 御敵今川義元は四万五千引率し
第二章 江北浅井備前手の反復の由
第三章 明智が者と見え申候
終章  徳川家康公、和泉の堺にて信長公御生害の由承り

父、織田備後守信秀は、女である御長を跡継ぎとした。それは、男では一国、二国を取るといった、当たり前の事しか出来ぬであろうと思ったから。なんとなれば、織田弾正忠家はそもそも、大国の主では有り得ない。もとより、その持つものはとても少ない。であるからして、父、信秀は女である御長の自由な心に賭けたのだ。尾張の大うつけとして、あたりを練り歩いてきた信長は、民人の願いを知る。それは、泰平の世だ。とことん勝ち抜いて戦の世を終わらせるのだ。

ああ、天下を一統することの何が難しい? まだ年若い信長は、自身を犯したばかりの斎藤道山に、平らかな声で問いかける。誰も勝ちきれなかったのは、誰も勝ちたくなどなかったからではないか? 男は戦の世が好きだからではないか? 男は戦のために戦をする。しかし、この信長はそうではない。見据える先は、目先の勝利ではなく、泰平の世。天下布武をかけた、信長の戦いが始まる。

覚悟を持って臨んだ信長ではあったが、天下を一統するのはそこはそれ、口で言うほど簡単なものではなかった。戦場で勝手に抜きん出るものを許さない、勝手な行動を許さない、重臣に恃むことをしない、信長のやり方は、家臣たちの反発をも生む。それは男のプライドを引き裂く行為だからだ。女である信長は、御長は、しかし、それを斟酌することはない。はん、くだらない。それで戦に勝てるというのか、それで天下が獲れるというのか。

しかし、その中で抜きん出るものどももいる。勿論、それは、戦場で生臭い兜首を持ってくるような、馬鹿力にものを言わせる働きではありえない。それは頭を使ってこそ。信長の周りを固めるのは、一途な柴田勝家、猿と呼ばう木下籐吉郎、御長が恋し、後に手酷く裏切られることになる浅井長政、幼少期を織田家で過ごした松平元康(徳川家康)そして、明智十兵衛光秀などなど。

戦に継ぐ、戦の中、信長は、御長は、「信長」であることに揺れ、男と女の間で揺れる。「男だから」「女だから」、誰よりも拘るのは信長自身。男である信長、女としての御長の姿を使い分けるものの、年を重ねる毎に、男の体の優位性は御長の中で存在を増し、それに引き替え、ここぞという時に男どもに与えてきた「女」としての肉体は衰える。蝮・斎藤道山が娘、正室の御濃が言うとおり、いつまでも「女を使う」ことは出来ないし、女の身で戦場を駆け回り、ひとり、孤独に決断を下すのは辛いこと。凡百の女とは違うという自負が過ぎるあまり、長年の友であった御濃との仲もおかしくなり、男、信長としても、何をしたいのか、どうすればよいのか、段々と頭に霞がかかるようでもある。

そんな中で存在感を増すのは、明智光秀という一人の男。信長は、男としての余裕、器量に優れた光秀を重用するが、しかし、内心、これまで恃んできた自分自身が崩れてしまうようで、段々と素直にその言葉を受け容れる事が出来なくなる。後年の信長の光秀に対する扱いは、ほとんどヒステリー。自ら崩壊していくようであった信長は、光秀にある問い掛けをする。光秀はそれをどう受けたのか?

終章は、喰えない狸親父二人の会話。

面白かったことは面白かったんだけど、ここで言う「男」、「女」の定義は多少古臭いし(ま、「信長」の考える、男、女論みたいなもんなんだけど)、鮮烈に駆け抜けた織田信長の生き様を語る、最後の狸親父二人の会話もね、「男」どもはあくまでも謀議の世界からは離れられないという感じで、信長の事はうっちゃってしまったようでちょっと淋しい。まぁ、そこはそれ、天下を一変させる天才、異才なくしても、一旦動いた世界は、男どもの謀議の世界で、淡々と進んでいくのかも。

あとあれですね、 佐藤賢一さんの性描写は、「
王妃の離婚 」などはそうでもなかったんですが、なんか、痛そうですよ(まぁ、なんつーか、所謂、男根主義な感じがする)。
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つな がる

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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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