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「大江戸美味草(むまそう)紙」/花のお江戸のうまいもの!

 2006-08-31-22:46
杉浦 日向子
大江戸美味草(むまそう)紙

目次
ともあれ初春
まだ浅き春かな
野ゆき磯ゆき
初鰹ラプソディー
イキのいい奴
暑気払いの切り札
天竺浪人ふらり来て
初秋の便り
秋本番
たかがイモ、されどイモ
冬の足音
師走のぬくもり
*
甘いものがたり
酔い醒めて
くるわのグルメ
台所太平記
 大江戸美味目録

字は大きいし、あんまり厚い本でもないけど、満足の一冊。

初春から師走まで、季節感たっぷりに語られる江戸の食生活。
時に、食べものを詠った江戸川柳の謎解きも。

尋常ならざる初鰹の価格。なんと、初鰹一本は、下級士族の年俸に迫る金額だったのだとか。高価なものとは知っていたけど、具体的には知らなかったなぁ。

 金持ちとみくびっていく鰹売り

身代を築く金持ちは、概して倹約家であり、法外な初鰹などには手出しをしない。

逆に、法外な初鰹を買うのは、こんな家。

 初鰹そろばんのないうちで買い

算盤のない家、つまり収支決算、家計簿などに縁のない、日銭でおまんまを食べる家。

あちらこちらに、将軍様お膝元の江戸っ子としての気概が滲み出るのも興味深い(将軍様が召し上がるのだから、オレっちも!)。

その他、「どじやう」と「どぜう」では、「どじょう」の状態が異なっているとのことも、面白かったな。「どぜう」は「どじょう」が食べ物になった呼称で、だから、田んぼに「どぜう」はいないし、鍋の中に「どじょう」はいないんだそうだ。わざわざ呼び分けるということは、それだけ身近な存在だったのかしらん。

最近、(かなり前の、自分の中での池波ブーム以来)、また時代物を読むことが増えていて、あのシリーズのこの登場人物、このシリーズのあの登場人物が透けて見えるようで、この本を非常に楽しく読んだ。
「食」を知る事って、親近感を抱かせる。
?← こちらは文庫
杉浦 日向子
大江戸美味草紙(むまそうし)
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「巫女」/佇む少女は・・・

 2006-08-30-22:58

皆川 博子
巫子

潔癖な少女の季節。神秘的なもの、潔く美しいものに心惹かれ、またそれらを崇拝する彼女たち。ただし、意に染まぬものには、徹底的に厳しいのもまた同じ彼女たちである。

目次
冬薔薇
夜の声
骨董屋
流刑
山神
幻獄
山木蓮
冥い鏡の中で
巫女

「冬薔薇」
勘当同然に、過去、母が追い出された家。母を許さなかった祖父が危なくなり、その家に招かれた典子。汐子伯母は絶え間なく喋り捲り、典子は自分そっくりの少女、異母妹の碧に出会う。

「夜の声」
志乃のもとに深夜掛かってきた電話。それは過去の自分からの電話のようであった。「自殺ゲーム」を繰り返した幼き頃。現実にコップに入れるのは塩であったけれど、少女達の空想の中でそれは確かに毒であった。志乃はまだ幼い声に「十五で死ぬのも五十五で死ぬのも変わりはない」と告げるのだが・・・。

「骨董屋」
既に二人の子がある男の元に、後妻に入ることになった麻子。男との待ち合わせの前に、ふと入った駅近くの骨董屋。そこには不思議な姉弟がおり、彼らはおかしな事を口走る。麻子には全く覚えがないのに、「あこちゃん」、「あこちゃん」と馴れ馴れしい、姉エツ子。無口でありながら、何か訴えるような目をする弟リュウ。彼らは何者なのか?何を伝えにやって来たのか?

「流刑」
彼の最期を看取ることと引き替えに、生活の保障を得て、年老いた夫の後妻に入ることになった「私」。新婚旅行の代わりに、少女時代を過ごした土地へ赴いた彼女は、過去の神事の際に起こった出来事を思い浮かべる。

「山神」
学生時代の友人であった、玲子と和代。画家になった和代は、田舎暮らしを始めた玲子のもとを訪れる。学生時代華やかだった玲子は、見る影もなく老け込んでおり、和代に彼女が信ずるところの、幸不幸の帳尻の話をする・・・。

「幻獄」
幻覚剤の中で見る夢は・・・。タブーは夢の中までにも追いかけてきて、「私」は夢の中でも常に禁忌の世界に閉じ込められる。

「山木蓮」
按摩に訪れた女が語る昔話。彼女が話したくない話に巧みに持っていく客は誰だ?、と思うとゾーっと怖い話。

「冥い鏡の中で」
姉恵子をほとんど崇めていた麻子。その姉や、家族、招待客までが、齢三十一にしての姉の結婚式で一様にはしゃいでいるようである。麻子が信じてきた姉の憎悪、潔癖さは幻だったのか?

「巫女」
別の物語、巫女の棲む家」の母体のような作品であるそう。私小説ではないけれど、体験が七割ぐらい入っているとのこと。これが実体験とは・・・、と驚く話。「巫女」にされた少女の辛さ。

どれもこれも、読んだ後に心がしんとするような物語。

「蛍の行方」/お鳥見女房・第二弾!

 2006-08-29-22:21
 
諸田 玲子 蛍の行方―お鳥見女房 

前作、「
お鳥見女房 」において、珠世の夫であり、矢島家の当主である伴之助は、幕府の密命を帯びて沼津に入り、そこで消息を絶ってしまった。次男、久之助もまた父を追って沼津に入り、珠世の心痛を見かねた居候の源太夫もまた彼を追う。

果たして、伴之助は無事でいるのか? 久之助、源太夫の二人は、伴之助を無事に珠世のもとに連れ帰ることが出来るのだろうか。

緊迫した沼津に流れる時間とは異なり、源太夫の五人の子たちが引き起こす騒ぎは相変わらず。とはいえ、源太郎、源次郎の二人は剣術の稽古に勤しむようになり、他の子たちも、武家の子としての躾を喜んで受けるようになるんだけどね(源太夫父ちゃんが帰ってきたときに、吃驚させるんだい!)。

福は福を呼び、災いは災いを呼ぶ。どんなに辛いことが身に降りかかろうとも、笑う門には福来るを実践するような珠世母さんは、どうやってこの辛い主(あるじ)不在、生死も知れぬ二年間を乗り切ったのか?

婿養子であり、本来は「お鳥見役」とは何の関わりもなかった伴之助。お鳥見役にはお鷹様の世話をする表向きの仕事だけではなく、裏のお役目が存在する。嫡男に仕事を譲った後、父親は裏の仕事に就くことが決まりのようで・・・。それはお鷹様に喰い殺される、弱い雀の姿を見るようでもある。裏の辛い役目は、穏やかな日常を愛する温厚な伴之助をも変えてしまう。

伴之助が戻ったその後に、珠世の肝っ玉母さんぶりが、より必要になるのかもしれない。心の傷は難しい。珠世の父、久右衛門もまた、過去のお役目から暗い影を背負いこんでいる。しかし、珠世がいるならば、伴之助に笑顔が戻る日も近いのだろう。珠世には諦めるつもりはない。

目次
第一話 ちまき泥棒
第二話 蛍の行方
第三話 捨案山子
第四話 緑の白菊
第五話 大凧、揚がれ
第六話 雛の微笑
第七話 裸嫁
第八話 風が来た道

このシリーズのいいところは、何ともふくよかな珠世さんの人柄や、鬼子母神近くののどかな情景。さらりと読めるんだけど、爽やかな風がシリーズ通して吹いているような感じ。時代物ではあるんだけど、登場人物たちの悩みは現代的でもあり、またその辺の描き方もいい塩梅。

「狂乱廿四孝 」/幽霊画が語る物語

 2006-08-28-22:17
北森 鴻
狂乱廿四孝
(画像は文庫より引きましたが、私が読んだのは単行本です)

一枚の幽霊画に隠された謎。

脱疽におかされ、両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた、明治始めの名立女形・沢村田之助。彼の周辺で殺人や放火が相次ぐが、これには一枚の幽霊画が関係しているようで・・・。芝居町を守るため、守田座を守るため、そして田之助を守るため、座付き作者河竹新七のもとに弟子入り中の、ヒロインお峰は立ち上がるのだった。第六回鮎川哲也賞受賞作

沢村田之助はじめ、大道具方・長谷川勘兵衛、問題となる幽霊画を描いた狂画師・河鍋狂斎、守田座の座付き作者・河竹新七(のち、河竹黙阿弥)など、実在の人物を上手く絡めたミステリー。

話としては面白いし、女形・沢村田之助の凄惨とも言える芝居への思いには心打たれるんだけど、解説にもちらりとあったように、時代色が綺麗についているとは言い難い。ヒロインお峰ちゃんも実に愛らしいけど、この時代のこの場所に、こんな風に存在し得たとは思えないしね。

実はこの「幽霊画の謎」については、早々に投げ出してしまって、田之助やその周囲の人々、歌舞伎の世界を楽しんでしまった。田之助の色っぽさ、また芝居もの達の熱気がむんむん迫ってくるような物語だったよ。

ところで、ネットをウロウロさまよっていたら、皆川博子さんが同じ題材で書いておられると思われる本を見つけました。うーむ、こちらも読んでみたいなぁ。皆川さんの芝居の世界、「花櫓 」でも面白かったし。

皆川 博子
花闇

☆澤村田之助について (Wikipediaにリンク

「殿下の料理番」/皇室の食卓

 2006-08-26-21:51
オンライン書店ビーケーワン:殿下の料理番
渡辺 誠
殿下の料理番 皇太子ご夫妻にお仕えして―伝統と新風 皇室のいま
小学館文庫

宮内庁大膳部に勤め、昭和天皇、今上天皇、皇太子殿下と三代にわたって仕えた、二十六年間の日々から紡がれたエピソードの数々。
まさに「仕えた」という言葉が相応しい、尊敬と思いやりに満ちた日々のお話。

目次
プロローグ
 ―コウノトリが舞い降りた日に―
宮中料理人の仕事
”食”のあやなすコンチェルト
東宮御所の和やかな日々
微笑みのマリアージュ
忘れられない料理と出来事
エピローグ
 ―三十の味の思い出玉手箱―
解説 匙加減のうまい人 服部幸應(服部栄養専門学校校長)

宮中料理人が請け負うのは、宮中晩餐会をはじめとする贅を尽くし、また数量も大変なものになる料理から、皇室の方々の日常の食事までという実に幅広い仕事。そこでは一流レストランの仕事と、家庭の料理人の仕事、相反するものが必要とされる、ちょっと特殊な職場。更にレストランとも違うのは、素材の切り方一つから、焼き方、下ごしらえまで徹底的に拘った、食べやすさ、安全性。たとえ、少々生の方が美味しくとも、何かがあっては大変、しっかり火を通さなくてはならない。

まだ若輩だったという、昭和天皇、今上天皇に仕えた日々の話もいいのだけれど、何もかも間に合わせの東宮仮御所などで苦労したせいか、はたまた料理人として脂が乗ってきたせいなのか、皇太子殿下との日々は俄然イキイキした語り口で語られる。皇太子殿下の非常に紳士な人柄が描かれ、読んでいるこちらまでファンになってしまいそう・・・。いやー、ご自分でメニュー一つ選べない皇室の方々も大変だけれど、でも、それだからこそ、スタッフの美味しいものを食べて貰いたい、という熱い情熱も生まれるのかもね。時々、ほとんど「仕事」の域を超えているように思うもの。

微笑みのマリアージュ」は、皇太子妃となられた雅子さまを迎えることになってからのお話。ご成婚前のこの「特別なお客さま」を迎えての料理も、この本の著者、渡辺さんがメニューを考えたものだったのだとか。通常はお客様の人数から性別、年代まで事前に詳しく教えられそうなのだけど、その時には、まだ秘密のお客さまだったのだね。

さて、この本の「プロローグ」は愛子さまの誕生を受けて書かれている。そして、ここにはこの喜びを受けて、渡辺氏から皇太子ご夫婦へ贈るスペシャルメニューが載せられている。

 ブルターニュ産オマール海老とトマトの結婚
 ウニのロワイヤルに海の幸を添えて
 シャラン産小鴨のローストをおふたりの家庭料理に仕上げて
 フランス産シェーブルチーズと薄切りトリュフ
 オレンジの香りを加えたサクランボ

この料理の一つ一つにも、それぞれ詳しいに詳しい解説が付けられ、こんなところも洒落ているなぁと感じた、思いやりに溢れた本。
読んでいると、何だか和やかな気分になりましたですよ。

こんなに和やかでいい人ばかりのようでも、皇室に入るというのは、やはり大変な事なんだろうなぁ。雅子さま、ゆっくりオランダで静養出来るといいな。この本には、皇太子殿下のために料理を作る雅子さまや(この時の献立はチキンカレーとオニオンスープ。どちらも絶品だったそう。読んでても、とっても美味しそう)、海外のお客様を迎えるために、ワインの勉強を殿下と二人でなさる姿が描かれている。

「螢坂」/ビアバー≪香菜里屋≫にて・・・

 2006-08-24-00:55
 
北森 鴻
螢坂

「花の下にて春死なむ」
、「桜宵 」に続く、ビアバー≪香菜里屋≫シリーズ第三弾。

三軒茶屋の奥まった路地を抜けた先には、ぽってりと白い提灯が浮かび、そこではいつも、店主工藤が優しい微笑みとともに客を待つ。四種類の度数の異なるビールと、趣向を凝らした酒肴、それに常連同士の他愛無いやり取り、店主工藤の細かい心配りが、香菜里屋の特徴。

こんなお店があったら、行ってみたいよなぁ、と思ってしまう。
(ぬるくなると取り替えられてしまう、ビールの値段はどうなってるの?、などとも思ってしまうけど。笑 ベストな状態でビールを飲むことは、ここ香菜里屋の信条とも言える)

目次
螢坂
猫に恩返し
雪待人
双貌
孤拳

前二作と同様に、ミステリー仕立ての短編が並ぶ。

「螢坂」は他愛無い嘘をつかざるを得なかった女の哀しみが、「猫に恩返し」では町角の人情話に込められた、焼き鳥屋の常連客たちの思いが描かれる。

「雪待人」では、雪を待っていた女が描かれ、そのラストには店主工藤のちょっとした秘密が、池尻大橋のバー「香月」のバーマン、香月から語られる。残り二編では、それについて触れられることはないのだけれど、いつか、このちょっと不思議な人物、工藤の過去についても語られるのかもしれない。

「双貌」はちょっと凝ったお話。作家、秋津が描いた貌。二つの貌は何のため?

「孤拳」は捜し物をしに香菜里屋を訪れた、若い女性、真澄のお話。誰に振るう事も出来ない、ただ自ら眺める事しか出来ない孤独な拳。しかし、それは不幸であるということと、同義ではない。

≪香菜里屋≫シリーズ、第一弾の「花の下にて春死なむ」も読んだのだけど、これはメモを取る前に返却期限が来てしまったのです。そうだなー、なので、大体の印象なんだけど、一作目ではまだまだ「謎」の方が幅を利かせ、店主、工藤の造詣を含め、まだこなれていないような印象を受けた。「花の下にて春死なむ」は、「第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作」とのことなので、「謎」としては面白いのかもしれないけど、人の心の機微や料理を楽しむ私の読み方では、二作目、三作目の方が嗜好に合うよう。
三作目の本作では、料理も絶好調。ほんとに美味しそうなんだ、これが。

「恐竜物語」/レイ・ブラッドベリは恐竜を愛す

 2006-08-22-22:06
レイ・ブラッドベリ, 伊藤 典夫
恐竜物語


amazonでもbk1でも、表紙画像が出ないんだけど、この表紙の雰囲気がいい。

膝立ちになった少年が、仰ぎ見る大きな本の中には、地平には緑、空には虹という情景が広がる。その虹の下には、恐竜が雲の様に浮かび、振り返って少年の方を向く。どこかノスタルジックな印象を受ける表紙。

さて、「レイ・ブラッドベリは恐竜を愛す」としたけれど、これ、ほんとは「二人のレイは恐竜を愛す」とすべきなのです。今一人の「レイ」とは、レイ・ブラッドベリの高校時代からの親友であり、特撮映画の監督で知られる、レイ・ハリーハウゼン。
wikipedia にリンク)

尤も、恐竜に魅せられるのはこの二人に限った事ではなく、「少年」に共通のことなのかもね。

目次
序(レイ・ハリーハウゼン)
まえがき
恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?
デイヴィッド・ウィースナー画
いかずちの音
ウィリアム・スタウト画
見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを
オーヴァトン・ロイド画
霧笛
ステランコ画
もしもわたしが、恐竜は死んではいない、と言ったとしたら
ゲイアン・ウィルスン画
ティラノサウルス・レックス
メビウス画
解説 伊藤典夫

ノスタルジックなもの、詩的な響きのもの、近未来のもの、物悲しいもの、滑稽なもの、色々な味わいの恐竜の物語。

文庫ではあるけれど、いい紙を使っていて、挿絵もまた主役である、凝った本。

この本が出た時点で既に古典だったのかもしれないけど、「霧笛」が良かったな~。灯台から響く霧笛に仲間を見た、深海に棲む孤独な生き物のお話。灯台守のマクダンの、古い時代への畏敬の念に満ちた、静かな語り口が物語を盛り上げる。

見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを」、「もしもわたしが、恐竜は死んではいない、と言ったとしたら」は、ほとんど詩。訳文も頑張ってはいるのだろうけど、これ、原文で読んだらどんな感じなのかなぁ、と思った。この二編はね、イラストだけでも楽しむことが出来る。 「見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを」なんて、恐竜たちの宴会ともいえそうな、月夜に踊る実に楽しげなイラストがつけられている。

「お鳥見女房」/心やさしき、お江戸は鬼子母神近くに住む人々

 2006-08-21-22:20
 
諸田 玲子 お鳥見女房 

矢島家は、代々御鳥見役を務める少禄の御家人。「御鳥見」とは鷹の餌となる鳥の生息状況を調べる役職で、将軍家の御鷹場の巡検と、鷹狩のための下準備が主たる任務。珠世の夫である入り婿の伴之助が、当主としてお役目を務め、更に嫡男の久太郎も見習い役として出仕している。今は隠居の身であるが、珠世の父、久右衛門もまた、現役時代は御鳥見役を務めた。

さて、そんな矢島家に思わぬ居候がやって来た。最初の居候は、父・久右衛門が、過去、一度だけ酒を酌み交わした事を頼りにやって来た、小田原藩の脱藩藩士、源太夫。子攫いに間違えられる程の、無精髭にうらぶれた姿なれど、この源太夫、なかなか豪快で朗らかな人物。なおかつ、実は腕も立つらしい。そして、少禄の矢島家に世話になるのは、源太夫だけでなく、実は彼には五人の子がいて・・・。更に、脱藩の原因となった果し合いにより、源太夫を父の敵と付け狙う、沢井多津までもが、矢島家に厄介になることになり・・・。

こうして、何だかおかしな同居生活が始まり、矢島家の賑やかな日々が幕を開ける。

目次
第一話 千客万来
第二話 石榴の絵馬
第三話 恋猫奔る
第四話 雨小僧
第五話 幽霊坂の女
第六話 忍びよる影
第七話 大鷹狩

短編が連なっていくスタイルで、小さな出来事がある度に、矢島家の季節もまた巡ってゆく。第七話では、矢島家に居候が増えてから、約一年が過ぎている。

さて、多津は源太夫を父の敵と恨んだままでいるのか。浪人の源太夫は仕官先を見つけることが出来るのか。また、御鳥見役の裏のお役目のために、沼津へと旅立った伴之助は果たして無事でいるのだろうか。

これらのうち、幾つかの疑問には答えが与えられるけれど、実は、これ続編があって、そこに繋がっちゃっているみたい。図書館で見かけたとき、一緒に借りてくるのだった、と今、臍を噛んでいる。

何ともまろやかな、肝っ玉母さん(二十四の子供がいるとはいえ、まだ四十歳なんだけど)、珠世が実にいいし、周りの人物たちも良い。次男ゆえに悩む久之助、久之助の友人、隼人と妹、君江の淡い恋、源太夫の子供たちによって若返った久右衛門、その久右衛門が決して語らない過去の裏のお役目、矢島家で過ごすことによって、頑なな心がほぐれていった多津・・・。その変化はみな、緩やかなれど、確実に変わっていく。それぞれ、互いに思い合う姿も美しい(源太夫の大飯喰らい&図々しさはちょっとすごいけど。笑)。

「犬吉」 における、一本気な犬吉も良かったけれど、温かでまろやかな珠世さんも良いよ~。

←文庫化もされているようです。こちらの表紙は、単行本に比べ、時代時代しておりますが、構えずするっと読める時代物でありまする。

   
← 今、調べたら、続編いっぱい出てました。汗
  ・・・私が知らないだけで、もしかして人気シリーズだった??

その後、第四作まで読みました♪

■「
狐狸の恋 」/お鳥見女房第四弾

「巨匠の宿」/名建築の宿に泊まる

 2006-08-19-22:01
稲葉 なおと 巨匠の宿

とっても長くなるけれど、自分の覚書のために、目次を全部のっけてしまいます。

目次
はじめに
谷口吉郎の桃李境                             静岡県・熱海
吉阪隆正の野沢温泉ロッジ                     長野県・野沢温泉
ル・コルビュジエのラ・トゥーレット修道院            フランス・リヨン郊外
七代目小川治兵衛と、前川國男、坂倉準三、
  吉村順三の国際文化会館                     東京都・六本木
辰野金吾の奈良ホテル                       奈良県・奈良公園
中村外二の美山荘                             京都府・花背
磯崎新の秋吉台国際芸術村                      山口県・秋芳町
フランク・ロイド・ライトのナコマ・リゾート&スパ
                             アメリカ合衆国・カリフォルニア州
遠藤新の豊年虫                            長野県・戸倉温泉
村野藤吾の佳水園                           京都府・東山三条
安藤忠雄の国際芸術センター青森                  青森県・青森郊外
吉阪隆正の天望立山荘                         富山県・立山町
河井寛次郎のひさご家                         鳥取県・皆生温泉
ロバート・ヴェンチューリのメルモンテ日光霧降             栃木県・日光
丹下健三のグランシェラ蔵王                     山形県・蔵王温泉
伊東忠太の築地本願寺                           東京都・築地
吉村順三の文珠荘                             京都府・天橋立
大江宏の東京さぬき倶楽部                         東京都・三田
重森三玲の別格本山 福智院                    和歌山県・高野山
堀口捨己の後楽                             鳥取県・三朝温泉
ジャン・ヌーヴェルのオテル・レ・テルム            フランス・ボルドー地方
竹内栖鳳の千歳楼                             岐阜県・養老町
浦辺鎮太郎の旅館くらしき                          岡山県・倉敷
渡辺仁のホテルニューグランド                      神奈川県・横浜
宿案内
あとがき

これはまさに「名建築に泊まる」という一言につきる一冊。公共の宿から有名な温泉旅館まで、宿代もバラバラ(なーんと、一泊二千円なんてのもある)。でも、みな、美しき建造物であるという点では同じ地平に立っている。

全くの門外漢である私ですら、知っている建築家の方の名前がちらほら、また建物の事だけは知っているものもちらほら。

文章はちょっとセンチメンタルだけど、写真も美しく、なんとはなしに旅の雰囲気も味わうことが出来る。機能的で美しい建造物の数々にうっとり。

浦辺鎮太郎の旅館くらしき」、「渡辺仁のホテルニューグランド」などは、そこで働く人から語られる宿の歴史も良いよ。

この夏、ちょうど倉敷に行ったのだけど、倉敷の美観地区では、証券会社も木造の建物の中に入っていて、軒先には黒板にチョークで市場動向なんかが書いてあるんだよね。暑くてちょっとしかフラフラしなかったのだけれど、せっかくその辺を歩いていたのだから、この宿もちょっと見てみたかったなぁ、なんて思ったのだった(「旅館くらしき」について)。

お坊さんかと見まごうばかりの接客係がいる、福智院もいいな~。なんと、ここは豪華な客室に設備の整った浴室など、宿経営にも力を注ぐ寺なんだそうな。
ちょっと泊まってみたくない?

☆サイトもあるようです→こちら
  (画像を見るためには、一旦、ダウンロードしないといけないみたいだけど)

「ドードー鳥の飼育」/それは不毛か否か?

 2006-08-16-22:25
薄井 ゆうじ
ドードー鳥の飼育

あとがきには、これらは「不条理小説」集だとあるけれど、そうだなー、不条理というか、不毛な中に生まれる何か、といった感じ。不条理小説とは、もっと結末がぶった切られるものだと私は思っているのだけど、終わりかと思いきや、更に数ページが残っていたりして、案外親切に解説してくれているし。

目次
ドードー鳥の飼育
東京フラミンゴ
箱女システム
A級ハムサンド

ぽ・先生
無人駅長
時間喰い(タイムイーター)
眠れない街
あとがき

「ドードー鳥の飼育」は、絶滅した鳥である、ドードー鳥の飼育係となった男の話。気配は感じることが出来るものの、皆には見えているようであるドードー鳥が、彼には見えない。

「東京フラミンゴ」は、人間に混じって働く、フラミンゴの話。すっかり環境に馴染んでいるように見える彼だったけれど、フラミンゴは本来群れを作る動物である。

「箱女システム」。地方に出張した「私」は、コインロッカーの中で彼を待っていたという、立方体の女、敬子に出会う。

「A級ハムサンド。買い物には面倒な書類申請が必要となった時代の話。特にハムだなんて、正気の沙汰とは言えない!! ハムサンドを持ってピクニックに行きたいと、恋人に強請られた「僕」は、マーケットである老人に出会う。

「穴」。19歳の時から、ひたすら穴を掘っている「僕」の一生。「僕」の穴は「僕」のもので、「僕」が掘るべきもの。ヨモヨとの「せっくす」がどんなに良くても、彼女がどんなに大きくて快適な穴を掘ろうと、それは変わらない。

「ぽ・先生」。「ぼくら」と「ぽ・先生」の交わりの話。

「無人駅長」。荒野に向かってひた走る列車に乗った「僕」たち。乗客たちはみな、諦観したように、終着駅から山へと向かうが、誤ってこの電車に乗ってしまったらしい「彼女」だけは、終着駅で来るはずのない列車を待つのだという。

「時間喰い」。「僕」が叔父から貰った、大きな白い動物、「時間喰い」の話。

「眠れない街」。未来、人々の生活は睡眠局によって支配されていた。15歳になったら結婚して子供を作り、その子供が15歳となった時に、大人たちは眠りにつくのだ。それは、人口の抑制や、環境の保護のためであったのだが、全ての大人が眠りについたこの街で、既に本来の目的は失われているようである。美しい海が取り戻された東京湾で、魚を獲って暮らすマサルの話。

未来のイメージはそんなに新しいものではないし、驚くような視点が示されるわけでもない。短編に良くあるような鋭さやキレもなく、何だか曖昧模糊とした世界。

否定的な言葉を並べてしまったけれど、キライかといえばそういうわけでもない。この著者の本は初めて読んだので、後数冊は読んでみようかなぁ。

少年と少女、男性と女性の組み合わせが描かれるけれど、この世界の中では、少年と少女、男性と女性は相容れない。これって、この著者の基本的な考えなのかなぁ。その分、少年の側で読まないとちょっと辛いかも。ま、非常にシンプルな感じで好感の持てる、すっきりとした少年が描かれるんだけどさ。
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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