スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「支那そば館の謎」/北森さんの地方シリーズ?

 2006-06-29-23:16
 
北森 鴻
支那そば館の謎 

表紙に裏京都ミステリーとある通り、これは京都を舞台にしたミステリーの
連作集。

目次
不動明王の憂鬱
異教徒の晩餐
鮎踊る夜に
不如意の人
支那そば館の謎
居酒屋 十兵衛

観光客で賑わう渡つき橋から、山道のアップダウンを繰り返す事約二十分。嵐山の奥の奥に位置する大悲閣千光寺。寺男として勤める有馬次郎には、広域窃盗犯としての過去があった。全てを知りつつ、赦し見守る住職の下で、彼は修行の日々を送るのであるが、京都みやこ新聞文化部の自称エース記者、折原けいが持ち込む様々なトラブルに巻き込まれ、時に山を降りる事になる。

地方を舞台にしたミステリーであり、「ちょい悪」な過去を持つ主人公、頭が上がらず敬愛する人物が主人公にいるところなど、博多を舞台にした
「親不孝通りディテクティブ」 と似ている感じ。ただし、こちらの方が、ギャグ色が強く、ライト。本自体もソフトカバーだしね。

大日本バカミス作家協会賞受賞作家であり、著作『鼻の下伸ばして春ムンムン』で知られる水森堅ことムンちゃんの人物造詣、寿司割烹・十兵衛の大将が作る料理などが魅力的。でも、主人公とコンビを組む新聞文化部記者、折原けいとのやり取りが、かなり上滑りしているので、ちょっと好みが分かれるかな。

ムンちゃんが出てくるのは、途中からなんだけど、やたらとキャラクターが立っているだけあって、続編であるぶぶ漬け伝説の謎にも出てくるみたい。
うーむ、ムンちゃんが出てくるのならば、続きもちょっと読んでみたいなぁ、とまぁ、そんな感じ。時に少々後味の悪いお話もあれど、全体的にはライトにライトにさっくり楽しむお話群。

 
北森 鴻
ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー 
スポンサーサイト

「境界線上の動物たち」/今、「境界」にいる生き物たち

 2006-06-28-22:26
多田 実
生きていた!生きている? 境界線上の動物たち


目次
第一章    高知カッパ狂騒曲 ?  ニホンカワウソ
第二章     戦争が滅ぼした魚 ?? ?クニマス
第三章 ????? 天狗たちの黄昏 ???? ?イヌワシ
第四章 ???? ?亜熱帯のUFO ???????? オガサワラアブラコウモリ
第五章     ウドの大魚??????????  ? ウケクチウグイ
第六章 ????? 神と呼ばれた鳥 ?????? シマフクロウ
第七章     四万十の怪魚 ?????? ?アカメ
第八章     追われる野獣 ????????? ツキノワグマ
第九章     瑞鳥は孵化した ????? ?コウノトリ
第十章  ??? 昭和に消えた海獣 ??? ニホンアシカ
第十一章???? 忘れられた風景 ?????? オオヒシクイ
第十二章???? 溜め池の絶滅危惧種 ウシモツゴ
第十三章???? 五色の「火の鳥」 ????? ヤマドリ
第十四章???? 有明海の珍味 ??????????エツ
第十五章???? 古代島の妖精????????   アマミノクロウサギ
第十六章???? 飛べないアガチ(あわてもの) ヤンバルクイナ
第十七章??? ?長良川の妖怪 ????????? サツキマス
第十八章???? 基地と人魚 ????????????? ジュゴン
第十九章???? あとがき
参考文献

ニホンカワウソやイヌワシ、シマフクロウなどメジャーで見栄えのするものから、ウケクチウグイ、ウシモツゴなど、かなり地味~なものまで。

これらに共通するのは、古来より日本に生息する生き物だったけれど、今では絶滅寸前、「境界線上」にいる生き物たちだということ。見栄えのするものであれ、そうではないものであれ、絶滅してしまうのはやはり淋しい。

その生き物の最前線を見に行く、どの取材においても、在野の研究者、猟師さん、漁師さんたちの努力は素晴らしい。まさに、この努力は、「いつ果てるともない闘いの日々」なんだけど。

対して、良く言われていることだけれど、農林水産省、林野庁など、関連省庁の政策の出鱈目な事。ダムや道路政策など、これらの政策により、犠牲を強いられた生き物たちも数多い。

仕事がない→公共事業どっかんどっかん!とならずに、仕事がない→山や川、海を守る方向の仕事!となればいいのに。仕事と環境のサイクルが、きっちり回るようにならないもんなのか。開発するな、という気は全くないけれど、きちんと管理すれば、それがまた新たなビジネスになるのでは、と思った。「開発するだけ」では、その開発が終わった段階で、仕事もなくなっちゃうわけだしねえ。?

「お湯のグランプリ」/ウチ風呂のヨロコビ

 2006-06-26-21:56
パラダイス山元
お湯のグランプリ―誰も書けなかった入浴剤文化論

お風呂、好きですか? 楽しんでますか?

上げ膳据え膳の温泉旅館もいいですが、あれはやっぱり値の張るもの。
そうそう足繁く行けるものではござりませぬ。

そこで、登場するのが入浴剤!この表紙画像の「風呂ーリスト・パラダイス山元」さんの、なんと幸せそうなことよ。

「はじめに」から引用いたしますと、こんな感じ。

ウチ風呂の魅力はなんといっても、なんでもアリなことです。やれ、お風呂は11時半で終了!とか浴槽内飲食厳禁!などとワケわからないことも言われませんし、体毛を剃ろうが、大声で「アーーーーーーッ、うっ!」とか叫ぼうが、若干家族からシロい目で見られるだけで、なんの問題も起こりません。

さぁ、夢の世界平和、大型レジャー時代が再び到来するまで、贅沢は入浴剤ぐらいにして質素な生活をエンジョイしましょう!

いや、大声で叫ぶのはどうよと思うけど、確かに何でもアリなのは、やっぱりウチ風呂。プライベートな空間だしね。

さて、ここに紹介されるは、「温泉入浴剤編」では北海道~九州のエリア別、及び幻の温泉入浴剤の8つのカテゴリ、「非温泉入浴剤編」では、漢方・鉱石編発泡系など6つのカテゴリに分けられた、全百種類の入浴剤。

お子さんがいらっしゃる方であれば、「子どもがよろこぶ楽しい入浴剤アラカルト」なんかも、いいかもしれませぬ。平成十三年初版とのことなので、内容がちょっと古いのかもしれませんが、キティーちゃんからセーラームーン、ウルトラマン、デジモンなど、キャラクターものも何でもアリっぽい。今であれば、もっと色々増えているのかな。

さて、私がこの本の中で興味を持ったのは、松村酒販による「甲州ワインの湯、同じく松村酒販「地酒の湯 濁り酒牛乳石鹸共進社「乳華の湯 牛乳風呂。・・・・あれ、食べもの系ばかり?笑

いや、温泉系も実際には良く使うのですけどね・・・。でもさ、温泉系の入浴剤の色って時々不思議ですよね。何でその色?、と思うことが多々。笑 (この本の中では、「~の爽やかな雰囲気を表した」などと、全般的に好意的であるんだけどさ)

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「風の竪琴弾き」/物語を紡ぐということ

 2006-06-24-10:28

パトリシア A.マキリップ, 脇 明子
風の竪琴弾き

第二巻 の終章において、モルゴンとレーデルルは、手に手をとって旅立つ事を約束した。争いは既に周辺各国へと飛び火し、農民の国であり、戦う事を知らないヘドの領民たちを心配したモルゴンは、まずはアンの国の死者たちを連れ、ヘドへと向う。死者たちにヘドの国を守って貰おうというのだ。

そんな彼らの元に、既に死に絶えたかと思われた、古の魔法使い達がランゴルドの都に集っているとの噂がもたらされる。第一巻にて 、エーレンスター山で一年間もの苦闘の日々を送っていたモルゴン。それは「偉大なる者」の玉座の空席を狙った、ギステスルウクルオームとの闘いに他ならなかった。彼が何とか、かの魔法使いギステスルウクルオームとの繋がりを断ち切った時、モルゴンからはヘドの領国支配者としての本能が奪われ、各地に留め置かれていた古の魔法使いたちは、ようやくその実体を取り戻せたのだ。そう、闘うべきは、大学におけるモルゴンの師匠であり、魔法使い学校の創立者であった、ギステスルウクルオーム。

ところで、「偉大なる者」の竪琴弾きとして、王国の皆に絶大な信頼を寄せられ、また第一巻においてはモルゴンを導き旅をしていたデス。彼は一巻におけるモルゴンのギステスルウクルオームとの一年間の苦闘の日々、モルゴンを助けることなく、ひたすらに竪琴を弾くのみであった。そのために、デスは王国中の人々から裏切り者の烙印を押されるのであるが・・・。

ギステスルウクルオームの企み、モルゴンとレーデルルを追うデス、三つの星が煌く竪琴を作った古の魔法使いイルス、「偉大なる者」の長きにわたる不在、レーデルルに近づく変身術者たち、またモルゴンとレーデルルに流れる血、運命・・・。この最終巻では全てが収束し、山ほどあった全ての謎に対し、答えが与えられる。

一巻では謎だらけの話に???となり、頑固者で石頭のモルゴンに苛苛し、三巻途中まではモルゴンとレーデルルの言い争いにもうんざりしていたのだけど、全ての物語が語られた後には、この頑固だけれど誠実なモルゴンが好きになっていた。謎に包まれていた「偉大なる者」の竪琴弾き、デスもね。
レーデルルに関しては、その登場からラストに至るまで天晴れ!の感に堪えないんだけど。この物語は、誇り高き女性陣の魅力も実に大きい。豚飼い女でもあった、魔法使いナンも好き♪

物語を紡ぐというのは、こういうことなのかと、ラスト、唸ったのでありました。

「海と炎の娘」/姫君たちの旅路

 2006-06-22-21:56
パトリシア A.マキリップ, 脇 明子
海と炎の娘

前作「星を帯びし者」 で、モルゴンと「偉大なる者」の竪琴弾きが、エーレンスター山に消えて一年、彼らの行方はようとして知れなかった。

そんな中、モルゴンの世継ぎである、彼の弟エリアードは、モルゴンの死の気配を感じ取る。「偉大なる者」が支配するこの王国においては、領国支配者はその領国に強く結び付けられ、その土地の木や風の動きまでもはっきりと感じ取ることが出来る。 エリアードはそれまでも、モルゴンの苦闘の様を夢の中で感じていたのだが、ある日、自らが領国にしっかりと結び付けられ、領国支配者となった事を感じる。それは即ち、それまでの領主であったモルゴンの死を意味する。

ヘドの領主、モルゴンの死の知らせは、王国内を駆け巡る。さて、アンの国の領国支配者マソムの娘であり、モルゴンの婚約者であるレーデルルは、アンの国で彼の帰還を待っていた。彼女の元にも、彼の死の知らせがやって来る・・・。さて、彼女はどうでるのか。

モルゴンの死の知らせが届いてから、王国は不穏な空気に包まれる。皆は「偉大なる者」に信頼を寄せていたというのに、彼は自分の王国の中で、ヘドの領主、モルゴンを守ってはくれなかった! アンの国の領国支配者のマソムは、鴉に姿を変えてエーレンスター山へと向かい、街道では変身術者たちがうごめくようになる。

レーデルルは、モルゴンに死をもたらした者を、「偉大なる者」に問いただそうと、エーレンスター山へと旅に出る。勿論、レーデルル一人で旅に出られるわけではない。彼女はヘルンのモルゴルの娘であり、近衛隊長でもあるライラとともに、船長ブリ・コルベットを脅し、船を乗っ取ってエーレンスター山へと向う。そして、そこにはさらに、モルゴンの妹であるトリスタンまでもが、密航してきて・・・。

この三人の娘たちがそれぞれに魅力的で、この旅の様子が私は好きだったな~。彼女らに乗っ取られた形の、船長ブリ・コルベットもまた良くって。「乗っ取られた」とはいえ、本当に抵抗出来なかったわけではなく、レーデルルたちの身を案じ、自分の船を愛しているからこその行動なんだよね。主人公であるモルゴンが出てこない前半の方が、前作に比べするすると読み進められる始末。この道中の様子は楽しかった。

ところで、この第二巻のタイトルは、「海と炎の娘」。星を帯びし者<スター・ベアラー>の隣にいる事になるだけあって、レーデルルもまた、ただ美しいだけの娘ではありえない。彼女は強い力を持った、アンの国の海と炎の娘。最終巻に向けて、物語は進む。

「星を帯びし者」/その額に三つの星を帯し者は

 2006-06-20-23:24
オンライン書店ビーケーワン:星を帯びし者
パトリシア A.マキリップ, 脇 明子
星を帯びし者

王国の片田舎、ヘドの領主モルゴン。彼はこれまでの他の領主たちとは少し違っていた。ヘドは頑固な農民の国。この国から一歩たりとも出ずに死ぬ事だって珍しくない。

ところが、モルゴンときたら、ケイスナルドの謎解き博士たちの大学で三年を過ごし、ヘドに戻ってきてからも、命をかけたペヴンとの謎かけの試合により、古のアウムの王冠を手に入れる始末。

「偉大なる者」が治めるこの王国においては、領主、つまり領国支配者というのは、文字通り、その領国に身も心も結び付けられた存在。モルゴンの弟、エリアードや、妹トリスタンは、領国をないがしろにするような、モルゴンの行動に我慢が出来ない。

ところで、古のアウムの王冠を手に入れたものには、アンの支配者マソムの娘、レーデルルが与えられる事になっていた。モルゴンは、「偉大なる者」に仕える竪琴弾き、デスとともに、アンの国へと向うのであるが・・・。

所謂、児童書のファンタジーは良く読んでいたんだけれど、大人になってからは、ファンタジーではなく現実を描く物語を読むことが多かった。というわけで、こういった物語にあまり馴染みがなく、今回のこの本も、当初は読み進めるのに苦労した。でも、分からないものを、そのままザバザバ流し読むような読み方に変えてみたら(どのみち、読んでると後で分かる事もあるしね)、読み進めるのが随分楽になった。うーん、会得したこれが、ワタクシ的大人版ファンタジーの読み方なのかも。

でもって、ドラクエやFFなどの有名どころのRPGは、一通りやったことがあるんだけど、こういったファンタジーはまさに、RPG的なんだな~、と思った。というよりは、RPGがファンタジーを模倣してるんだろうけど。あちらに旅し、こちらに旅し、色々な人から話を聞き出し、その一つ一つのピースが最後にぴたりとはまる。

この「星を帯びし者」は、イルスの竪琴」シリーズの、全三巻中のまだ第一巻。「偉大なる者」に会う為に、エーレンスター山に向ったモルゴンを迎えたのは、さて何者であったのか。

一巻においては、頑固者の主人公、モルゴンをまだ好きになる事が出来なかったのだけれど、脇の人物、王国の歴史、それぞれの土地の風景が魅力的な物語だった。そもそも、タイトルの「星を帯びし者(スター・ベアラー)」という言葉自体が、魅力的だよね。

山岸涼子さんによる、美麗な表紙、挿絵も実に魅力的。

「ハサミを持って突っ走る」/オーガステン少年の危うくイカれた、サバイバルな青春

 2006-06-19-21:47
 
オーガステン バロウズ, Augusten Burroughs, 青野 聡
ハサミを持って突っ走る 

バジリコ株式会社

表紙とタイトルに惹かれて、図書館で借りてきた本。
ん、目に間違いはなかったと思う。

これもまた、一つの現代のアメリカなんだろう。
(ちなみに著者は、1965年生まれ)

これは、著者、オーガステン・バロウズの、十三歳から十八歳までの五年間の回想記。多感な時期を、まさに「ハサミを持って突っ走った」、そんな日々のお話。

父はアル中、母は狂気の詩人。争い事の耐えない両親は離婚し、オーガステンは母親に引き取られる。しかし、母は自分のことだけで手一杯。心の病も定期的に繰り返す。また、父親はオーガステンのコレクトコールを、一度だって受けてくれた事がない。要するに、彼の周りには、自分勝手で、彼の事など全く気にかけない大人ばかり。

オーガステン少年を持て余した母、ディアドレは、掛かりつけの精神科医、フィンチ先生の家庭へと、彼を追っ払う。フィンチ家の人々もまた、かなりイカれているのだけれど、彼ら彼女らとの関わりの中で、オーガステン少年は少しずつ変わっていく。みんなほんとに好き勝手やっているし、フィンチ家のイカれっぷりは、読んでいてかなり引く部分もあるんだけど。聖書占いに、フィンチ先生の糞便占い!(巻きは、向きはどうだ?) 神は実に様々な方法で、フィンチ家に啓示を与えたもう。

イカれて、狂気の淵を歩いていて、不潔で、なのに明るく、からりと乾いて、楽しい日々。勿論、「書く」という行為により、昇華した部分もあるんだろうけど。

その境遇だけを見ると、オーガステン少年はかなり悲惨だ。十八歳以下にして、既にマリファナ、ビール、煙草、何でもござれ。フィンチ家の人々の他、友達はいないし、学校でだって浮いてしまって不登校から退学へ、おまけに幼い頃から自覚したゲイで、十三歳にして三十三歳のボーイフレンドがいる。ちなみに、このボーイフレンドとの始まりは、無理矢理結ばされた肉体関係。また、母親と、その友人とのレズビアン的現場を目撃してしまったりもする。

「なにかを追っかけてるように感じることって、ない? なにか大きなものを。わかんないんだけど、なにかあんたとあたしだけにしかみえてないもの、みたいなんだ。それを追っかけてんの、走って、走って、走って」
「そうだね、ぼくたちは確かに走ってる。ハサミを持って突っ走ってる」

そう、まさにそんな風に、オーガステン少年は走って、走って、走って、走って・・・。

この会話を交わした、フィンチ家の娘、親友ナタリーとの関係は、母とフィンチ先生の長い蜜月的期間が終わったせいで、ギクシャクしてしまうけれど、彼女たちと生き抜いた日々の輝きは変わる事がない。

どんな形であろうと、関わってくれる人がいれば、人は生き抜いていけるのかもしれない。人間は強い。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「となり町戦争」/戦争のリアル、生のリアル

 2006-06-16-22:22
三崎 亜記
となり町戦争

主人公の「僕」は、町の広報誌、[広報まいさか]により、自分の住む町がとなり町と戦争を始めたことを知る。「僕」にとってこの町は、ただ寝に帰る所。特に愛着があるわけではないが、となり町を経由して通勤する都合上、この「戦争」が一体どんなものなのか、自分にどんな影響があるのか、「僕」は不安を覚える。戦争が始まっても、「僕」の目に見える範囲では、何かが起こっている気配はないのだが・・・。

目次
第1章 となり町との戦争がはじまる
第2章 偵察業務
第3章 分室での業務
第4章 査察
第5章 戦争の終わり
終章

「僕」の変わらぬ日常に変化が訪れる。となり町を経由して通勤しているため、舞阪の役場から偵察業務を命ぜられたのだ。「僕」は自分のレポートがどんな事に使われるのか、どんな影響を及ぼすのか、理解が出来ないままに、偵察業務をこなす。「偵察」業務についたとはいえ、「僕」にはやはり戦争の様子をかけらも見る事が出来ない。

しかし、戦局は進む。[広報まいさか]には戦死者の数が載せられ、「僕」は更に一歩進んだ分室での業務を命ぜられる。役場の女性、香西さんと偽装結婚をし、となり町に住む事になった「僕」。料理、掃除などの[業務分担表]を作成し、香西さんとの共同生活が始まる。

役場で戦争の事務的手続きを担う香西さんには、戦争の姿が見えているようであるが、ここに至っても「僕」にはやはり戦争の姿は見えない。それは、戦争となる地区への「地元説明会」に出席しても同じ事。「現代の戦争」は事務的に進む。事前に戦闘の実施時間や予定地区、戦時負担金の納入や建物等に損害が出た場合の補償などについて、「住民の皆さん」にきっちり説明しなくてはならないのだ。

しかし、とうとう、「僕」の近くにも戦争がやって来る。彼らの「分室」に、となり町の査察が入るとの情報が入ったのだ。「僕」は香西さんの指示で、となり町から脱出を図る。

「あなたはこの戦争の姿が見えないと言っていましたね。もちろん見えないものを見ることはできません。しかし、感じることはできます。どうぞ、戦争の音を、光を、気配を、感じ取ってください」

辛くも難を逃れた「僕」であるが、それはやはり実感を伴うものではなかった。

そして、戦争は終わる。「僕」の住む町ととなり町は、互いの栄誉を讃えあう。曰く、互いの協力により、この「戦争事業」を上手く進めることが出来た。曰く、この戦争により地域事業の振興が出来た・・・。しかしながら、この戦争には死者が出ている。それは、「僕」や香西さんの身近な人であった。

この戦争により「僕」が失ったのは、香西さんへの淡い恋。身体には触れることが出来たけれど、彼女の心の奥にまで触れることが出来たのは、最後の場面だけだったんじゃないのかなぁ。香西さんは、この戦争後、となり町の町長の息子と、正式な結婚をするのだという。そう、役場の人間の中では、戦争は決して終わっていないのだ。

「戦争」への視点は三つ。何が起こっているか分からない「僕」、起こっている事を把握している香西さん、かつて戦争が日常であった「主任」。「主任」は、「僕」の勤める会社の変り種。ある小国の内戦を経験して、大恋愛の末、作った家庭を失い、奇襲攻撃を得意とする部隊に所属したのだという・・・。

何が起こっているか分かっているけれど、何のためにこの戦争をするのか。その視点がすっぱり抜け落ちている、香西さんをはじめとする役場の人々。ある場所から見れば、殺すのも殺さないのもまったく一緒だという「主任」。彼に言わせれば、殺すということは、相手から奪うことではなく、相手に与えることなのだという。

香西さんは、この戦争後も、「次の戦争」を意識して生活していくのだろう。「主任」は痛みに麻痺し、既に「あちら側」へ渡ってしまって、平凡な日常へ戻ることは出来ないだろう。戦争のリアルからは、一番遠かった「僕」のみが、変わらぬ日常、生のリアルさを感じて、生きていくことが出来るのだろうか。

淡々と静かに進む物語。読む人それぞれで、読み取ることは違うんじゃないかなぁ、と思った。私は戦争のリアルからも、生のリアルからも遠かった、主人公の「僕」が、戦争による個人的な痛みにより、生のリアルを感じ取れるようになったと感じた(全然、違ってるかもしれないけどね)。

勿論、近い将来、地方自治、地方分権が進んだ社会で、あるかもしれない一つの形として、この「戦争」を見ることも出来る。そう考えると、かなり怖い。

何が起こっているか分からない「僕」の視点で語られるためか、読み終わった後も、何だかもやもやが残った。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「世界の車窓から」/またまた鉄道の旅

 2006-06-15-21:33

世界の車窓から―あこがれの鉄道旅行〈VOL.2〉大自然を駆け抜ける
テレビ朝日

Vol1 の副題は「遺産と古都をめぐる」。対する今回のVol2は、「大自然を駆け抜ける」Vol1とは、また違った良さがあった。ま、いずれにせよ、どちらもページを繰りながら、「うっとり」ではあるんだけど。

スイス鉄道に見られる湖の青と木々の緑も良いし、中国・モンゴル鉄道の果て無く広がる茶色の世界も面白い。単純に美しい大自然だけではなく、フランスはトゥールーズの赤レンガ、キューバ鉄道の砂糖きび畑、セネガル・マリのバオバブの中を走りぬける鉄道など、その土地ならではの車窓の風景が素敵。

Route1 アルプスと湖が織り成す絶景を行く
      スイス鉄道の旅
Route2 光あふれる幻想的な世界を駆ける
      モロッコ鉄道の旅
Route3 豪華列車でロッキー山脈へ向かう
      カナダ大陸横断鉄道の旅
Route4 地方色豊かな田舎をめぐる
      フランス鉄道の旅
Route5 果てしなく続く砂漠から草原の国へ
      中国・モンゴル鉄道の旅
Route6 手つかずの自然あふれる海岸線を走る
      ニュージーランド鉄道の旅
Route7 プラハ発ルーマニアの原風景を訪ねて
      東ヨーロッパ鉄道の旅
Route8 砂糖きび畑の大地を走る情熱の列車
      キューバ鉄道の旅
Route9 秋色に染まりゆく森と湖の国
      フィンランド周遊鉄道の旅
Route10 バオバブの林を抜けアフリカ内陸部へ
      セネガル・マリ鉄道の旅

ルートマップ
[特集1]  イギリスの保存鉄道
[特集2]  中南米の秘境鉄道

この番組は映像も素敵だけれど、本にしてもまた違った良さがある。特集のタイトルも気になるでしょ?(イギリスのまるでおもちゃのような保存鉄道の可愛らしいこと!) 番組の裏話を知ることの出来る、「ディレクター日誌」がまたいいんだ(しかし、やはり色々苦労しているのね・・・)。丁寧な作りの本書は、美しいイラストによる行程図や、印象的な写真が特徴。この行程図には、その土地の名物なども、非常に分かり易く載せられている。なんと、今amazonを見たら、vol3もあるではないですか。こちらの副題は「歴史街道を走る」。うーん、これもまた魅力的だなぁ。

さて、vol2とは異なり、本書にはDVDがついている。これにより文章で表現された、Route1~10までの全ルートの車窓の風景を映像で見る事が出来る。ただし、テレビ放映されている同名の番組とは異なり、ナレーションは付けられていない。やはりあの番組は、あの短さとナレーションが魅力的なのだなぁ、と改めて思った。ちょーっとDVDは間延びした感じ・・・。ルートが見られるのは嬉しかったんだけどね。ま、これは単純に、私が映像よりも、活字の方に傾いているからかもしれませぬ。

「かび」/平凡な人間がキレたその先には?

 2006-06-14-21:36
山本 甲士
かび

主人公、伊崎友希江はごく平凡な主婦。彼女の夫は、地域一帯を支配するヤサカという企業の研究所に勤め、一人娘は幼稚園に通っている。友希江自身は、気が向いた時にパート勤めをするくらい。目下、気になるのは、近くに住む義母の、マイペースで迷惑とも言える、彼女の家族への関わり方。

しかしながら、彼女の決まった日常が、ある日決壊する。夫、文則が脳梗塞で倒れたのだ。文則は休日出勤を繰り返し、業務上の飲み会も多く、また帰宅してからも、中間管理職のストレスからか、飲酒を欠かさなかった。食生活も良好とは言い難かったが、新婚の頃とは異なり、また、文則の女性関係のトラブルが続いたせいで、彼女は夫に対する関心を失っていた。

彼女は夫が倒れたその事にショックを受けたわけではない。彼女に結婚退職を迫った「ヤサカ」が、その時と同じ顔をして夫に退職を迫る事にキレたのだ。小さい頃はクラス委員をしたり、また生家では妹が先に爆発するために、いつも爆発し損なっていたような彼女が、自分達を切り捨てようとするヤサカに復讐を誓う。

このキレ方が、方言の影響もあって、また凄まじい。日常感じていた苛立ち、全てに対してキレるキレる・・・。彼女は幼稚園の母親の間でも浮いた存在になり、義母もまた彼女を恐れるようになる。そして、若い頃に嫌がらせを受けた女性に、こんな風にまで言われるように。

「十年前のあんたとほんまに同一人物とは信じられへんわ。言うことも、やることも、顔つきまで違う感じや。時間は人間を変えるっちゅうことか」

彼女はついに、地元の大企業「ヤサカ」の不祥事をすっぱ抜き、社長の愛人宅までにも忍び込むが・・・。

桐野夏生さん描くところの、突き抜けた悪意に似たものを感じた。読んだ事はないのだけれど、平凡な主婦が・・・というフレーズからは、桐野さん著のOUT」を思い出した(こちらは一人、OUT」は仲間の主婦みんなでだから、結構違うのかもしれないけど。ううむ、やはり、OUT」もこの際、読んでみよう)。

この突き抜け方は凄まじいし、一気に読んでしまった作品なのだけれど、決して気持ち良い読後感ではない。突き抜けた先に何があるのか? それが今ひとつ見えてこないような気がする。でも、凄い迫力のある文ではあるので、後一作くらいは読んでから、この作家さんの判断をしたい感じ。

一度そこにいると知ってしまったら、もやはなかったことにはできない。

それが、「かび」。

(でも、同作者の「どろ」もあらすじを読む限り、救いのない感じ・・・。
ああ、次は何を読めばいいのだ?)

?← こちら、文庫。
                  単行本の表紙の方が怖くてイメージです

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫ 次ページへ ≫
プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
05 | 2006/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。