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「つきねこ」/夜のこねこ

 2006-02-27-21:07
アルベルティーヌ ドゥルタイユ, Albertine Deletaille, ふしみ みさを
つきねこ
パロル舎

ある夜、ひとりぼっちの子猫は、同じくひとりぼっちに見えた「お月さま」と出会う。
どこまでも、ねこについてくるお月さま。こうなったら、お月さまと追いかけっこだ!
さあ、お月さま、ついてこられる?

水面にうつったお月さまに「落ちてしまったの?」と吃驚したりしながら、ねこはあちこちをお月さまと共に駆け回る。そして、とうとう人間の住む家の中へ。美味しそうなミルクの入った壷を見つけたねこは、当然そこに頭を突っ込むけれど・・・。

騒ぎを起こしてしまったねこは、その家の子供たちに出会う。もう、一人ぼっちじゃないよ! その様子も、お月さまは優しく見守っている。

何ということはないストーリーかもしれないけれど、ねこがとっても愛らしく、美しい絵本。ねこを見守るかのようなお月さまもいい。このお月さまはしゃべらないけれど、もしも話せるのなら、アンデルセンの「絵のない絵本」 のようになるのかなぁ、などとも思った。空にいるお日さまとお月さま。月にはお日さまのような温かさはないけれど、そっと見守ってくれるような優しさがありますよね。

さて、これは実は、「星の王子さまミュージアム 」の図書室で読んだ本。「ペネロペ」シリーズなんかも、沢山置いてありました。映像放映までの時間つぶしだったのですが、一人だったら、結構腰を据えても楽しめてしまいそうでした。

アン グットマン, Anne Gutman, Georg Hallensleben,
ひがし かずこ, ゲオルグ ハレンスレーベン
ペネロペひとりでふくをきる
← これ、オチがとっても可愛かったです。服を着るって、
  子供の頃は、何であんなに大変だったのでしょう??

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『』バトン

 2006-02-26-16:30
喋喋雲 さんの所から頂いてまいりました、『』バトン。そう、バトンの中身は空欄なのです。お題を考えて、次の人に回すらしい。
喋喋雲さんが回答されていたのは、TMNについて。→こちら

TMネットワーク、滅茶苦茶懐かしいです! 喋喋雲さんも上げておられる、「RAINBOW RAINBOW」。これ確か、中学校の美術の時間に、音楽LP(そう、あの頃は多分、LPだったような気がする・・・。汗)のジャケットを作りましょう、という課題があって、ピンクの背景に虹を書いたデザインで作ったなぁ、なんて事を思い出しました。
 ←実際のジャケット
             (多分、ピンクを合わせたつもりだったんだ・・・)

さて、喋喋雲さんから頂いたお題は、『好きな名台詞(言葉)』
ふふふ、台詞フェチ(笑)の喋喋雲さんらしいお題ですね~。では、いきます。

Q1. パソコンまたは本棚に入っている『好きな名台詞(言葉)』は?

◆PC◆
パソコンに入っている、というかブログ上にあるのは、恩田陸さんの名台詞が多いかな。恩田さんは人間観察に優れ、ある現象、行動を言葉で切り取るのが非常に巧みだと思います。 例えば、何度か触れていますが、「麦の海に沈む果実 」における、ヨハンの美少女考(「名台詞」というには、ちと長いですが)など。

◆本棚◆
ヘルマン・ヘッセ「デミアン」からは、主人公シンクレールへのデミアンの言葉。
「鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという」

ドン・ウィンズロウ「ストリート・キッズ」からは、減らず口探偵ニールと擬似親子グレアムのやり取り。「よくやったな、坊主」「ありがとう、父さん」

W・サローヤン「パパ・ユーア クレイジー」からは、息子と父との会話。
「僕たちお互い、人を笑わせるようなものを書こうよね、お金になんかならなくてもいいからさ。だって、人人が笑わなかったら、人生なんて何の意味もありゃしないじゃない?」

梨木香歩「西の魔女が死んだ」からは、舞とおばあちゃんのやり取り。
「おばあちゃん、大好き」「アイ・ノウ」

そしてやはり、この台詞ははずせないでしょう。京極夏彦京極堂シリーズからは、「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」
このシリーズを読んでるときは、すっかり自分が朦朧とした「関口君」になってる気がします・・・。

うーん、本から取っていると、きりがないですね。赤毛のアン」宮沢賢治における、豊かな言語イメージも好きです。

Q2. 今妄想している『好きな名台詞(言葉)』は?

これは、掲示板で喋喋雲さんと熱くテレビドラマ「ごくせん」について語り合っていたときに思い出した台詞。2ではなくて、1の方です。
「悪いけど・・・・4人だ」
いや、ドラマをご覧になってない方には、何のこっちゃだと思うのですが、ヤンクミ争奪戦に名乗りを上げる、沢田慎の最終回での台詞です。これのせいで、松本潤くんに落ちたんですよね。これが表情といい、間といい、妄想を掻き立てて、暫く「ごくせん」にはまりっぱなしになりました。笑

Q3. 最初に出会った『好きな名台詞(言葉)』は?

うーん、最初に出会ったのは、やはり児童文学?
絵本もあったはずなのに、どうも失念。

「クマのプーさん プー横丁にたった家」からは、プーとクリストファー・ロビンのやり取り。これはプーがクリストファー・ロビンに語る言葉。
「ぼくが、世界じゅうでいちばんすきなのはね、ぼくとコブタで、あなたに会いにいくんです。そうすると、あなたが『なにか少しどう?』っていって、ぼくが『ぼく、少したべてもかまわない。コブタ、きみは?』っていって、外は歌がうたいたくなるようなお天気で、鳥がないてるってのが、ぼく、いちばんすきです。」

「ナルニア国ものがたり」の第一巻「ライオンと魔女」からは、アスランのこの台詞。
「ナルニアに王、女王となったものは、永久にかわらず、王、女王である。その位をつくせ、アダムのむすこどの。そのつとめをはたせ、イブのむすめごたち」
この言葉どおり、子供たちは、この後ナルニアのために尽くすことになる。

ゲド戦記シリーズからは、エアの創造より、
「ことばは沈黙に 光は闇に 生は死の中にこそあるものなれ 飛翔せるタカの 虚空にこそ輝ける如くに」

「風にのってきたメアリー・ポピンズ」からは、マイケルの不運な一日を描いたわるい火曜日より、メアリー・ポピンズの台詞。
「けさは、ベッドの、わるいほうのがわから起きたんですよ」
名台詞かと言われると、ちょっと違うかもしれませんが、これを読んでから暫くは、ベッドのどちら側から降りるか、なんだかドキドキしたものです。いや、片側は壁についてたので、実際の所、どちら側からも何もなかったのですが・・・。

まだ色々忘れているようにも思うけど、とりあえずこんなもん?

Q4. 特別な思い入れのある『好きな名台詞(言葉)』は?

特別な思い入れというわけではないんですが、ガンダム「ガラスの仮面」にも、名台詞が非常に多いですよね。この二つは日常会話で使えてしまう(?)所が凄いと思います。ケロロ軍曹」を理解するためにも必須ですし。笑 (ケロロの月影先生にうけてました)
ガンダムといえば、takam16 さん、お元気でしょうか~?(私信:ガンダム名台詞を散りばめたコメントがなくって淋しいです。まだお仕事お忙しいのでしょうか?新ジャンルでのブログ更新も、楽しみに待ってまーす)

ちょっと真面目にいうと、台詞ではなく祈りの言葉ですが、こちら。
 
 闇に光を
 悲しみのあるところによろこびを
 なぐさめられるよりはなぐさめることを
 理解されるよりは理解することを
 愛されるよりは愛することを
 わたしが求めますように
   「平和の祈り 聖フランシスコ」

Q5. 次に回す5人とお題

・・・私、クリエイティブ能力、果てしなく低いのです。というわけで回しませんが、台詞フェチの喋喋雲さんが選ばれる『好きな名台詞(言葉)』にも興味があります。って、これではブーメランになってしまって、バトンじゃない?笑

*黄色い文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「ソウルで新婚生活」/ある日本人妻の韓国での暮らし

 2006-02-24-19:31
たがみ ようこ
ソウルで新婚生活。―新妻ヨーコちゃんの韓国暮らし
大和書房

これは文字通り、国際結婚をした新妻「ヨーコちゃん」の、韓国での暮らしを4コマ漫画と文で綴ったもの。

表紙で汗をたらたら流しているのが、新妻であり著者である「ヨーコちゃん」。
なかなか微笑ましい感じでしょ?

目次
? ヨーコの韓国暮らし<入門篇>
 「天敵」~「ばんざい!」まで、全43篇
?ヨーコの韓国暮らし<初級篇>
 「春だから・・・」~「あとがき」まで全41篇

多分、これは著者「ヨーコちゃん」の性格によるものだと思うのだけれど、その筆致はあくまで柔らかく温かい。「はじめに」と題した文章の中で、「日本嫌いというイメージから想像していたよりずっと温かく接してくれる韓国人の中で、少しずつ韓国生活になじんでいったのです」とあるけれど、これはこの「ヨーコちゃん」の心の温かさによるものも多いのでは、と思った。勿論、表紙の通り、汗をたらたら流すようなお話も載っているんだけどね。

切符売り場で「ヨーコちゃん」が、正しい発音を出来るまで、発音を正してくれる切符売り場のおじさん、散々話した後、互いに間違い電話だったと気づく会話、道を聞いたら、自分も最近引っ越したばかりなのに、「ヨーコちゃん」の目的地を探し出してくれた女の子、バスのエアコンの強風に晒された「ヨーコちゃん」に、上着を貸そうとしてくれた隣の席の男性、など、情厚い韓国の人たちとの触れ合いが描かれる。

ちょっとしたことで、へぇ~、と面白かったのは、日本では野菜とされるミニトマトが、韓国ではかき氷にもケーキにも乗っかっているということ。フルーツ扱いなのでしょうか? そして、かなり怖いのが、韓国のバス。「スリル」というタイトルの漫画と文が載せられているのだけど、「ヨーコちゃん」は初めて韓国でバスに乗った時に、あまりに速くて腰が抜けるかと思ったそう。凄まじい交通渋滞の中を、バスの運転手さんは、すり抜けのテクニックを駆使し、猛スピードで走る!走る! 更にこのバスは乗り込むのにも一苦労らしく、並ばないで待つ中、他の乗客たちとの水面下の競争と緊張感を得ることが出来るらしい・・・。乗るのも大変なら、降りるのも大変。「ドアが閉まる前に走り降りなければならないこの焦燥感・・・・・・」。いや、私はあまり味わいたくないぞ。最初は怖がっていた「ヨーコちゃん」、今では好んで乗っており、更にちょっとスピードが遅いとイライラするくらい、韓国生活に馴染んだそう。

あまり詳しく書いてなかったけれど、ちょっと気になるのが、韓国男性の結婚前と結婚後の違い(どうも韓国の留学生は、韓国の女性に言わせると、条件が悪い人が多いらしい? ちなみに「ヨーコちゃん」と旦那さんは留学先で知り合った)や、最後のページ「憂鬱な新妻たち・・・」にあった、「韓国人のおくさんも大変だというミョンジョルが近づくと、慣れない外国人妻たちの心も重くなる・・」という一枚の絵。

日常の楽しかったこと、良かったこと、ちょっと困ったことはこの一冊で十分分かったのだけれど、もっとディープな韓国も知りたいなぁ、と思った。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「櫻の園」/ 美しく短い季節

 2006-02-23-22:44
吉田 秋生
櫻の園 白泉社文庫

桜に囲まれた女子高では、毎春の創立祭において、チェーホフの「櫻の園」を上演するのが慣わし。彼女たちが通う学校は、桜の季節ともなれば花に霞み、まるで薄紅の花の冠を被せられたよう。

目次
花冷え
花紅
花酔い
花嵐
---------------------------
スクールガール・プリンセス

点線で区切った「花」シリーズまでが、「櫻の園」のお話。花に囲まれた乙女たち。桜の花には、やはり少々妖しいイメージが付きもの。彼女たちはそれぞれ何かに縛られ、まるで呪いをかけられた囚われの姫君のよう。

「花冷え」の中野敦子は、ボーイフレンドの「シンちゃん」と、付き合ってもう一年。「シンちゃん」は「その先」に進みたいようだけれど、敦子はまだその決心が付かない。敦子の気持ちを固めさせたのは、10歳年上の結婚を控えた姉の言葉。
誰かを好きになるというのは、その一瞬一瞬が貴重な時間で、同じ時はもう二度と来ない。

「花紅」は「フツーの子」たちから、「ハデな人たち」と認識されている杉山紀子のお話。ハデな人たちと呼ばれるものの、本人にもいまいち「ハデ」の意味は分からない。声を掛けてきた男の子たちとちょっと遊びに行ったり、時々授業をフケるくらい。ほんとは「フツーの子」たちも、そういうことをやりたいのではないの? 自分は男の子の思い通りになんかならないし、押し切られたりしない。うまく切り抜けてみせる、と考えていた紀子だったけれど、ボーイフレンドの俊ちゃんに「思い上がり」を指摘される。紀子は、「ハデな人たち」のひどい噂を流さずにはおられなかった「フツーの子」たちの気持ち、男の子たちの気持ちを思い遣ることが出来る様になる。

「花酔い」は、倉田千世子を見つめる優等生、志水由布子のお話。潔癖な少女のまま成長したような由布子が、次の一歩を踏み出せるようになるまで。

そして、ラスト「花嵐」では、いよいよ「櫻の園」が上演される。今度の主人公は、倉田千世子。彼女は背が高く、演劇部ではいつも男役を担っていた。女子高だけにファンも多く、その気にならないでもなかったけれど、実際の彼女は体も心も実は女らしい。自分がもっと小さくて女らしかったら、誰かが好きになってくれるのだろうか。最後の場面には、「櫻の園」の上演を見に来た、敦子の姉と婚約者が現れる。

「スクールガール・プリンセス」は、それまでの女子高生たちからうって変わって、主婦乃々子のお話。大切なことを思い出す話。どうして夫のことを好きになったのか。いつか忘れることがあっても、きっとまた思い出せるはず。

「櫻の園」の話は自分にとっては既に喪われた時間なわけで、それがまたなんとも懐かしい痛みを感じさせ(ちょっと、「胸キュン」?)、「スクールガール・プリンセス」はそうだなー、しみじみ。感覚が似ているって、やっぱり重要だよなぁ。
これ、チェーホフを読んでいると、更に楽しめたのでしょうか。そこはちょっと残念。

☆関連過去記事 「ラヴァーズ・キス」

「犬のウィリーとその他おおぜい」/あなたは誰と、又は何と暮らしていますか?

 2006-02-22-19:37
ペネロピ ライヴリー, Penelope Lively, David Parkins,
神宮 輝夫, ディヴィッド パーキンス
犬のウィリーとその他おおぜい
理論社

目次
1  迷い犬ウィリーの巻
2  ネズミとティーポットとひもの玉の巻
3  ワラジムシ・ナットの浴槽大登攀の巻
4  レース用のハトとロンドン動物園の巻
5  サム・ネズミ、ホンダに乗るの巻
6  ワラジムシ・ナットがクモの戦いを知るの巻
7  ウィリーと大きな穴の巻
8  サムとネズミ・マンションの巻
9  クモと真珠の巻
10 サムとディクソンさんとハンカチとテレビの深夜映画の巻
11 ウィリーとハンバーガーとバス無賃乗車の巻

パヴィリオン・ロード五十四番地には、ディクソンさん一家が住んでいる。しかし、ここに住んでいるのは、「人間」のディクソン一家だけではないわけで・・・。

気はいいけど少々頭の足りない、白いテリア犬のウィリー、陽気でこれまた少々思慮の足りないネズミ、サムたち一家(ネズミたち全員がそうであるわけではなく、思慮が足りなく騒ぎを起こすのは、いつだってサム)、この中では一番思慮深いとも言え、自分の頭で考えることの出来るワラジムシのナット、ナットの友達で、美しい巣を作ることの出来るクモ。彼らがディクソンさんたちのいない所、目に見えない所で、それぞれの生活を営んでいるというわけ。彼らに気づくのは、ディクソン家の赤ちゃんくらいのもの。大人たちは少々おかしいなぁ、と思いつつも、彼らとばったり出くわすことはあまりない。

タイトルを見ると大体その内容も分かるけれど、1、7、11は、まさに、可愛いんだけれども頭の足りないウィリーが、巻き起こす騒動のお話。2、4、5、8、10は、夢見がちなサムが引き起こす騒動。ネズミたちは本来、決まりを守って危ないことをせずに一生を過ごすもの。不可抗力とはいえ、サムはネズミの中ではかなりの冒険家ともいえる。彼は自分が主役を張った事件が、勇気と大胆の物語として一家の伝説になるように、お話を都合の良いように作り変えるのに余念がない。ちなみに、ネズミたちに伝わる決まりはこんな感じ。

洗濯する衣類の中で眠るな。
犬をからかうな。
マッチは食べるな。
赤ん坊には愛想よく。
テレビの後ろには入るな。 トーマス大おじが入ってつくづく後悔した。
空の牛乳びんをいたずらするな。 中に落ちることがある。
オーヴンは料理をするもの。 料理されたネズミはいただけない。

どれも、ちょっとネズミとしては、くわばら、くわばらな感じでしょう?

3、5、9はワラジムシ、ナットとその友達クモのお話。一寸の虫にも五分の魂。ワラジムシにもなかなか立派な魂が宿っている。ネズミたちの暮らしは、ワラジムシからすると自由で屈託なく、気まぐれで楽しいことばかり。ワラジムシは姿かたちと同じように、固く不器用に生きるべき生き物。自分が言いたい事を口にしたり、仲間と違っていたり、目立つことは好まれず、これが年配者たち、チーフ・ワラジムシがいつまでも続いて欲しいと思うワラジムシの生き方なのだ。そんな中で、ナットは自分の頭で考え、意見を言えるワラジムシだった。この少々毛色の変わったナットが、一人気まぐれに生きているクモと友達になり・・・、というお話。

ウィリーに比べ、ネズミたち、ナットについての記述が多くなるのは、やっぱり彼らが自分の力で生きているから。そこへいくとウィリーは飼い犬であり、常にディクソンさん一家の世話になっているわけで、少々筆も鈍っている気がする。
いや、愛らしいんですけどね、ウィリー。

さて、この本の訳者は、実は「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の訳者でもある。本書「犬のウィリーと~」は原題を「裏返しの家」といい、一軒の家に住む生き物の立場を文字通りに裏返して、小さな生き物たちを主役とした物語。社会性をもった生き物という意味で、ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」と通じる所があるのかもしれない。神宮さんは、非常に楽しんで面白がって、翻訳されたそう。自分たちの身近にも、小さな生き物たちが、一生懸命暮らしているのかもしれないなぁ。いや、やっぱり、虫はちょっと・・・、などとも思うわけでもありますが。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「憧れのまほうつかい」/絵本作家エロール・ル・カインを知っていますか?

 2006-02-21-19:43
さくら ももこ
憧れのまほうつかい

これは、さくらももこさんの、エロール・ル・カインへのラブレター。さくらさんにとって、ル・カインは、長い間まさに「憧れのまほうつかい」だったのだ。

エロール・ル・カインについては、ほるぷ出版 のこちらの特集ページ に詳しい(ほるぷ出版の該当ページにリンク)。

◆エロール・ル・カインは、東洋と西洋の絵画様式を巧みに織り交ぜた、ユーモラスでドラマチックな絵本を次々に生み出した作家なのだという。また、BBC放送が制作した大ヒットアニメーション映画、「雪の女王」や「階下の幽霊」などのイラストを担当したのも彼◆

そんなル・カインの絵本に、さくらさんが初めて出会ったのは高二の冬。記念すべきその絵本は、「おどる12人のおひめさま」。美しい絵、ロマンチックなストーリーに、さくらさんはすっかり魅せられたのだという。

オンライン書店ビーケーワン:おどる12人のおひめさま
(↑この本です。緻密で美しい絵が分かりますよね)

その後も店頭でル・カインの本を見かける度に、レジへと向かう日々が続く。出版業界に身を置くようになって、「いつかル・カインに会えたらいいな」という夢に近づいたかと思えたけれど、言葉の壁など、さくらさんにとっては、ル・カインへの道はなかなか敷居が高かった。

ところがある日、さくらさんは本屋で衝撃的なニュースを知る。ル・カインは癌によって、47歳でその短い生涯を終えており、彼の絵本には「遺作」の二文字が・・・。ここにきて、さくらさんは行動を開始し、ル・カイン縁の人々と会うための旅に出る。?

目次
第1回 ル・カインとの出会い
第2回 原画をみにいく
第3回 ウェジウッドの町
第4回 イアン・キールさんの家に行く
第5回 ロンドンの街とペニー・シブソンさん
おまけ ライカのこと
 エロール・ル・カイン 著作目録

第3回
「ウェジウッドの町」のみは、どうせロンドンに行くのだったら!、という観光的イベントなので、ル・カインとはあまり関係がない(ただし、さくらさんによる絵付けの写真を見ることは出来る)。

遅れてル・カインが住んだロンドンに渡ったさくらさんだけれど、生前のル・カインを知る人々の知己を得る事で、生前の彼に触れたように感じる。ほんとは勿論、生きているカインに出会えれば、それが一番良かったけれど、タイミングってきっとそういうものだ。ル・カインの原画の散逸を防ぐために、かなりの量を買い取り、未亡人の面倒まで見た、という第2回に登場する渋谷さんも凄い。

ル・カインは才能に溢れ、多くの作品を残したけれど、その生活は決して楽なものではなかったそうだ。なんと、彼のお墓ですら、この時点では確りとはしていなかったそうなのだ。さくらさんは未亡人に点が辛いけれど、芸術家の配偶者としては、この未亡人のようなタイプというのも、分かるように思います。半端に分かるよりも、徹底的に配偶者の仕事を理解しない方が、うまくいくこともあるのでしょうか・・・。

さくらさんのル・カインへのオマージュのような絵、ル・カイン自身の絵が豊富に載せられた、美しい本です。ル・カインの絵本、今度探してみようと思います。また、出版社別のテーマにするようになって、出版社を注意してみるようになったのですが、ほるぷ出版はなかなかいい本を出していますよね(ル・カインの絵本は、日本ではるぷ出版から数多く出されているようです)。

← こちらは文庫

「幻獣の書-パラディスの秘録」/醜き獣

 2006-02-20-20:35
タニス リー, Tanith Lee, 浅羽 莢子
幻獣の書―パラディスの秘録

目次
緑の書
 
エメラルドの瞳
巻の一 学徒
巻の二 花嫁
巻の三 ユダヤびと
巻の四 贖罪山羊
巻の五 寡婦
紫の書
 
紫水晶を出でて
巻の一 ローマびと
巻の二 自殺者
緑の書
 
エメラルドの瞳
巻の六 狂人
巻の七 魔物

この世界には、流れるような鱗のモザイクからなる金属(かね)のような肌を、黒い嘴からは細い黒蚯蚓めいた舌が見える、鳥の頭を持った獣がいる。其の瞳は美しい緑の玉、しかしそこには知性のかけらも見られない。それはウトゥク。変身と化生により生を受くるもの。ウトゥクは官能において、血と肉の略奪を欲し、喰らい、貪るもの。おのが種を通じ、他の女に同様の怪物を孕ますことも出来るが、人に宿りてある限り、ウトゥクそのものを害することは出来ない。この獣は、女を引き裂き、犯し、男を引き裂き、その腸を引きずり出す。

ヨーロッパのとある幻想の都市、パラ・ディスにやって来た学徒ラウーレンは、没落貴族ディスカレの屋敷に宿をとることとなった。パラ・ディスは公爵が統治し、教会や貴族一門の館がならぶ街。その中でラウーレンの下宿先、ディスカレの館のみは、零落のさま激しく、また、誰もがその名を忌み嫌う。屋敷には老婆と馬丁しかいないというのに、ラウーレンは若く美しい娘を幾度か見かける。磁器を思わせる面、美しい淡い金髪、心持ち吊りぎみに刻まれた、澄んだ一対のエメラルドのような瞳。若く、才気走ったラウーレンには、恐れるものなど何もない。ラウーレンはこの娘、<エリーズ・ディスカレ>が語る物語を聞くことになる。それが恐ろしい結果をもたらすことも知らず・・・。

若きエリーズ・ラ・ヴァルが嫁いだのは、許婚、エロス・ディスカレのもとであった。あの一族は魔の眷属、一皮剥けば人間ではないという、土地の侍女の言葉に怯えるエリーズであったが、エロスはほっそりとした伸びやかな体、エリーズの初恋である、教会の壁に描かれた美しい苦悩の殉教者ヨハネスにも似た面差しを持つ、美しい若者であった。エリーズは彼に恋焦がれるが、彼女の夫は指一本たりとも、その身に触れることはなかった。それどころか夫は彼女の元を離れ、都に旅立つという。彼女の身に一度として触れることもないまま!とうとう彼女はサタンにその身を売り渡し、夫を陥れる策略を練る。一度でいいから、この身に触れて欲しいのだ。彼女の願いは叶ったけれど、その代償は大きかった。エリーズの話を全て聞き、彼女と交わったラウーレンとて、それは同じこと。

途中に挿入される「紫の書」では、時代はローマ時代へと遡る。運に無縁の百卒長、ウスカに与えられたのは、紫水晶の護符だった。妖しき娼婦がいうことには、この紫水晶の護符には、非常な利益があるのだという。確かに利益はあったのだが、この護符は途中で凶へと転ずるもの。紫水晶の力に喰われる前に、為すべき事はその石自体を喰らうこと。ウスカは難を逃れたかに見えたが、ああ、その力は完全に封じ込められたわけではなかったのだ。

この獣、魔物を迎え撃つのは、ユダヤ人の魔術師ハニナと、その娘ルケル。彼とウトゥクは、太古よりの仇敵であるのだという。「あれ」とハニナの原始の記憶には、幾多の戦の種が燻っている。それは砂漠の都であり、戦車であり、鎖の記憶である・・・。此度の戦に、ハニナは勝つことが出来るのだろうか。美しき娘、ルケルの助けを得て、ハニナは戦いに臨む。

幻想的で美しくエロティックな世界に、くらくらと酩酊する一冊。醜き獣も何とも哀切きわまりない。タニス・リー。遅ればせながら、この妖しい世界にはまりそうです。

「書斎の料理人」/翻訳家・宮脇氏は料理もこなす

 2006-02-19-19:13

宮脇 孝雄
書斎の料理人―翻訳家はキッチンで… 


コリン・ウィルコックス「容疑者は雨に消える」
(文春文庫刊)、クライヴ・バーカー「ミッドナイト・ミートトレイン」(集英社文庫刊)、パトリック・マグラア「血のささやき、水のつぶやき」(河出書房新社刊)などの訳者である、この本の著者、宮脇氏は料理する翻訳家である。

この本には、英米のクッキング・ブック掲載のレシピを参考にして、宮脇氏が料理された、数々のレシピが載せられている。真面目に冷静に書いておられるのだけれど、文章にも独特のおかしみがあって面白い。いやー、こんな風に料理出来る男性って、格好いいよなぁ。しかも連載途中で、彼の元に「女の同居人」がやって来るのだけれど、「こんな面白いことを女に独占させておくつもりなどなかった」のであり、「そんなわけで、今でも夕方になると食事の支度にいそしんで」おり、「できることなら、買い物かごの似合う男と呼ばれたいものだ」なんだそうだ。実に格好いい大人の男性で、宮脇氏が訳されているような本は、これまで読んだことがないんだけど、ちょっとファンになりそう。

目次
第1章 翻訳家とは料理する生き物である
 私が料理を作るようになった理由
第2章 翻訳家の料理はインターナショナルである
 ホラー小説の翻訳家に「オカルトの血」は流れているか
第3章 翻訳家の料理はときにメイワクである
 世紀末のよく晴れた日には干物を作ろう

宮脇氏は翻訳の仕事の気散じのために、料理を始めたのかもしれないと書く。材料の買出しに始まり、どの順番で何をどう切るか。二つのガス台でどの手順で鍋、フライパンをかけるのか。脳みその普段使わない部分を使っているのが分かるのだという。宮脇氏の場合、料理に興味があるといっても、それはうまいものを食べることが出来ればそれでいい、評判の店の食べ歩きで事足りるというわけではない。問題はその過程にあり、「タマネギの成分が熱で変化して刺激臭が消え、次第に甘い芳香を発するときの媚態にも似た化身のさま」、「しょうがの薄切りを酢に漬けたときの、だんだん薄紅色に染まっていく様子」を心ゆくまで楽しむのだという。「料理は、メランコリーの妙薬であり、美しい思い出であり、楽しい理科の実験でもある」(以上、私が料理を作るようになった理由より)。

たいていの料理は英米のクッキング・ブック掲載のレシピからとられているのだけど、少々毛色の変わったところでは、Writers' Favourite Recipesという本と、Grand Dictionnaire de Cuisine(料理大百科)という本があげられるだろう。

Writers' Favourite Recipes の方は題名通り、英米の作家が自分の得意料理を披露したレシピ集。現役の作家の場合は書き下ろしのエッセイが入っているし、物故作家の場合は、その作品の中から食事や料理のシーンを抜き出して紹介してあるのだそう。作家の幅も、純文学系、ミステリ、SFと幅広く、例えばSF作家のマイケル・ムアコックは、胃にやさしいレタスのスープという得意料理を披露している。ここで本命として取り上げられているのは、ハードボイルド・タッチの冒険小説を得意とするギャビン・ライアルによる中華風蟹スープ。この作家は、台所に立って料理をしながら、活劇シーンの構想を練るんだそうな。包丁持ってる所が、活劇にいいんですかね。ちょっと怖いような気もするけど・・・。(物書きと料理の密接な関係について-第1章-より)

Grand Dictionnaire de Cuisine(料理大百科)は、「三銃士」「鉄仮面」「モンテクリスト伯」でお馴染み、父デュマ(「椿姫」を書いた息子と、この父と、アレクサンドル・デュマは二人いる)によるもの。実は父デュマは大の料理好きで、書き溜めておいた料理に関する原稿が、亡くなった後に出版されたそうなのだ。ここからとられているのは、固ゆで卵のオニオンソース添え。卵は半熟で食べるのが一番おいしいけれど、中には気持ちが悪くて半熟の卵が食べられない人がいる。これはそんな人たちでも、美味しく卵を食べられるように開発された類の料理。(文豪デュマはどのようにして卵を食べたか-第1章-より)

翻訳家であるだけに、イカの解体は楽しきスプラッターであるの節などでは、イカの部位の英語の説明もさらりと付け加えられている(sac(胴:袋)、tentacles(脚:触手)、sword(イカの軟骨:剣))。

雑学としても楽しめ、著者自身の文もまた楽しむことが出来るという、なかなかに良い本でありました。料理も美味しそうだったしね。 ハードボイルドな人たちは、碌な食べ物を食べていないイメージがあるけれど、やっぱり美味しいものを食べている方が、幸せそうだよね。しかも、そんな美味しい料理を自分で作ることが出来れば、こんなに幸せなことはない。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「クラッシャージョウ」/高千穂さんと細野さん

 2006-02-18-20:05
私のスペオペ暦は、高千穂遙に始まり、高千穂遙に終わる。
(なぜか、海外モノは読まないまま)

クラッシャージョウ・シリーズに時々見られる、昏い闇のような部分や(勿論、通常は壊し屋である「クラッシャー」の部分を楽しんでいたんだけど)、ダーティペア・シリーズのはちゃめちゃな中のお色気なんかを楽しんで読んでいた。

で、今日のこの本は古本屋で見つけて、ほとんどネタ的気分で、ついつい購入してしまったもの。

細野 不二彦, 高千穂 遙
クラッシャージョウ
メディアファクトリー

原作が高千穂遙さん、作画は細野不二彦さん!

細野さんといえば、私にとっては「ギャラリー・フェイク」なんだけど、「さすがの猿飛」、「GU-GUガンモ」なんかも、細野さんの作なんですね(本作には古い作も含まれているので、その時代の絵を彷彿とさせる物もある)。

で、この文庫には「スターダスト・ストーリー」「セント・ジェルミの伝説」「宿命のパンドーラ?世」の三篇が収められている。勿論、主人公はジョウ。

「あとがき」によると、「クラッシャージョウ」の漫画化企画が持ち上がった時に、高千穂さんが指名したのが、当時無名の新人だった細野さん(スタジオぬえ時代?)だったのだそう。 この文庫に収められている「宿命のパンドーラ?世」が、まさにそのデビュー作。というわけで、やっぱり絵柄には若干難があるともいえる(ご本人も「あとがき」で、全部描き直したかった程、と書かれている)。第一話「スターダスト・ストーリー」は、近年のビデオ化のための書き下ろし短編ということで、絵柄には違和感なし。第二話は10年以上前に描いた、単行本のための描き下ろしで、高千穂さんが温めていた短編のシノプスを拝借したとのこと。

話の内容でいうと、第一話はクラッシャー稼業と、ジョウたち主要人物の説明を兼ねたお話。まさに宇宙の便利屋となったクラッシャーであるジョウたちは、ギャラクテック・ガーデン社のお求めに応えて、星屑のような花粉を散らす、超珍種アルデバ・蘭を採取する。ジョウとアルフィンは蘭の採取に向かうけれど、実はアルデバ・蘭は、ワライ火竜(サラマンダー)の好物で・・・。

第二話は、幽霊船となった鉱物輸送船<セント・ジェルミ>のお話。宇宙海賊も出てくるし、ジョウの父親クラッシャーダンの引退秘話(これ、本編でもこうだったのか、ちょっと覚えていないけど)など、なかなかお話が詰まっている。酒乱気味のアルフィンと、もう一つの「酔い」が巧くリンクしたお話。

第三話は、少々昏く悲しいお話で、これが一番本編に近く感じた。銀河系屈指の天才科学者の臨終に立ち会ったジョウは、ある依頼を受ける。テロリスト「銀河解放戦線」の手に渡る前に、自分が開発した「パンドーラ?世」を破壊して欲しいのだという。博士は自分の娘エリーナに会うようにと言い残して、事切れる。果たして「パンドーラ?世」とは何のことなのか??先ほども書いたけれど、これが細野氏のデビュー作とのことで、絵柄にはかなり違和感がある(所々、新しい絵に突然差し替えられている)。タロスなんて、可哀想に、完全にフランケンシュタインになっている。でも、お話としての完成度は高いと思う。

これまで、クラッシャージョウといえば、安彦さんの絵だったんだけど、細野さんのジョウも楽しんで読みました。

更に「あとがき」から引きますと、この作業をしながら、細野さんは自分の原点が「ジョウ」にあることに、改めて気づかれたのだそう。細野さんの漫画には、特殊技能者、あるいは職人が依頼された仕事を能力を駆使して全うする、というパターンが多く、またならず者には、なぜかお姫様のような可愛い娘が付きまとう。「ギャラリーフェイク」の藤田、サラなんかは、まさにこのパターン。そんなこんなで、「あとがき」まで楽しめてしまうという、なかなかお得な一冊でした。

「続・オマエラ、軍隊シッテルカ!?」/韓国徴兵制の実態?

 2006-02-17-10:06
イ ソンチャン, 裴 淵弘
続オマエラ、軍隊シッテルカ!?―愛と憎しみの軍人編
バジリコ株式会社

さて、前回、無事に憲兵学校を卒業した 、イ・ソンチャン。今度はとうとう、軍隊の前線に配属される。とはいえ、彼が配属されたのは、軍人の警察たる「憲兵」(さらに詳しく言うと国防部)であり、38度線などに配属された人たちとは、また違う経験をしているのかもしれない。ちなみに、憲兵となるには体格や家族構成など、色々な条件があるそうで、幸か不幸か、前回イ・ソンチャンはこの審査にパスし、希望したわけではないのに憲兵候補となっていた。というわけで、これ一冊で韓国の徴兵制度や、またその影響を知ろうとした、私の試みの甘さに今更気づく。「韓国徴兵制の実態」なんてタイトルを付けてしまったけれど、この本だけではやっぱり無理。また、韓国の職業軍人と、徴兵制による軍人との割合も、いまひとつ理解出来なかった。

これは、前編に当たる「オマエラ、軍隊シッテルカ!?」の時に理解しておくべき事だったのだけれど、「徴兵」といっても、私にはまだ何となく「軍人たる心得を知る」とか、「訓練」というイメージが強かった。でも、そうではない。陸軍で二十六ヶ月、海軍で二十八ヶ月、空軍で三十ヶ月という、長い年月は決して伊達ではない。徴兵されるということは、訓練を経て立派な軍人となり、軍人としての責務を果たすということ。普通の大学生であった若者が軍人となり、同じ大学生からなるデモ隊を鎮圧することもある。場合によっては、任務中に死亡してしまうことすら考えられる。だから、韓国の若い男性にとって、世界情勢というものは、決して自分と無縁の世界ではない。

  軍隊で勤務中に発生した事故
  :1992年度 3282件 / 1993年度 7328件
  軍隊での死亡者 300~400人/y

  訓練中の事故の死亡補償金
  :月額×12(これは、人知れず死亡した場合。ただし、航空勤務中の空軍
  操縦士の場合や、階級によって若干異なり、また世間に知られた場合は、
  より多くの補償金、慰労金が支払われた)

  軍隊での記憶に残る事件(イ・ソンチャン入隊当時)
  :1993年 武装した脱走兵が、ソウル市内で一般市民まで殺傷した
  (民間人七人が重軽傷、一人が死亡)

                                  以上、本書より抜書き

この本の中でも、著者イ・ソンチャンが徴兵されている間に、金日成が死亡し、非常警戒令が出され、韓国軍は戦争準備体制に突入する。約二週間でこの非常警戒令は解除され、戦争になることはなかったけれど、全ての軍人が非常に恐怖を覚えたことは間違いない。戦争になれば、前線に出て行くのは間違いなく、その時たまたま徴兵されていた自分たちなのだから!

前編「オマエラ、軍隊、シッテルカ!?」の、辛いながらも多くの同期がいて、ある意味で連帯感をもって、がむしゃらに訓練していた時の明るさは、この本にはない。どれだけ辛くても、やはり訓練は訓練であり、実際に配属され、軍人として勤務するのとは、また違った意味を持つ。軍人としての責任は、訓練の時の比ではない。もちろん、例の「オル・チャリョ(シゴキ)」は健在であり、階級が下っ端の頃などは、目も当てられないほど、ひどい待遇を受けているのだけれど。

そして、除隊後の日々。入隊してから軍隊生活に適応するのに苦労したのと同じように、今度は除隊してから社会生活に適応するのに相当な苦労があるよう。連日悪夢に悩まされ、語尾に「であります」がつき、問いかけにはついつい復命復唱してしまう。女生徒には「おじさん」扱いされ、すっかり老け込んだ自分を感じる。頭だって当然、錆び付いているわけで、大学の授業も辛い・・・。

巻末には【イ・ソンチャンの軍隊恋愛相談】なる付録がある。いや、韓国の恋人たちって大変だと思います。長期にわたって会えない中、詳細を知ることのない、男性の軍隊生活の苦しみを受け止めなければならない女性も大変、もちろん男性も大変。こういう本が出版されて、これまでよく分からなかった軍隊での生活を、韓国の若い女性が理解出来ることは、よい事だなぁと思った。

目次
プロローグ いざ、国防部へ
第一部   二兵のころ
第一章   避けることができないなら楽しめ
第二章   新米憲兵、トイレで暗記地獄
第三章   新米憲兵、駐車場で白鳥の水かき
第四章   初めての外泊、これぞ自由だ!
第二部   一兵のころ
第五章   試練はまだまだ続く
第六章   死んで花実が咲くものか
第三部   上兵のころ
第七章   童貞憲兵、小さな恋の物語
第八章   上官になってはみたけれど
第九章   軍隊生活で最悪の思い出
第十章   そしてまた悲劇が起こる
第四部   兵長のころ
第十一章  気がつくとバカになっている
第十二章  夢にまで見た除隊を迎える
エピローグ そして社製人に戻った?
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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