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「失われた町」

 2012-01-28-10:35
失われた町 (集英社文庫)失われた町 (集英社文庫)
(2009/11/20)
三崎 亜記

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内容(「BOOK」データベースより)
ある日、突然にひとつの町から住民が消失した―三十年ごとに起きるといわれる、町の「消滅」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった…。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。


理由もなく失われること。自ら使命を選び取り、それに抗うこと。希望を繋ぐこと。そして、失われるが故に、今を生き、いとおしむこと。
設定の巧みさに唸る。三十年ごとに、一つの町から忽然と住民が消失する、町の「消滅」という現象。古奏器、異郷である西域、奥行きがありそうなお茶の話。私たちが住む世界とは、微妙にずれた世界もまた魅力的。
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「ペンギン・ハイウェイ」

 2012-01-28-10:25
ペンギン・ハイウェイペンギン・ハイウェイ
(2010/05/29)
森見 登美彦

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内容紹介
小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした。未知と出会うことの驚きに満ちた長編小説。


モリミー描くところの腐れ大学生を愛するものであるが、かしこい小学生もまた良き哉。ボーイ・ミーツ・お姉さん&不思議。アオヤマ君のかわゆいこと! 大人になるまで三千と七百四十八日。少年はペンギン・パイウェイの果てに、再びお姉さんと出会う事が出来るのか。

「西城秀樹のおかげです」

 2010-03-23-23:47
西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)西城秀樹のおかげです (ハヤカワ文庫 JA)
(2004/11/09)
森 奈津子

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内容(「BOOK」データベースより)
「ありがとう、秀樹!わたくしとお姉様は、あなたのことを決して忘れませんわ」―謎のウイルスにより人類が死滅した世界で、ひとりの百合少女の野望を謳いあげる表題作、前代未聞のファーストコンタクト「地球娘による地球外クッキング」、1979年を舞台にした不条理青春グラフィティ「エロチカ79」ほか、悩める人類に大いなる福音を授ける、愛と笑いとエロスの全8篇。日本SF大賞ノミネートの代表作、待望の文庫化。

目次
西城秀樹のおかげです
哀愁の女主人、情熱の女奴隷
天国発ゴミ箱行き
悶絶!バナナワニ園!
地球娘による地球外クッキング
タタミ・マットとゲイシャ・ガール
テーブル物語
エロチカ79
 あとがき
 文庫版のためのあとがき
 解説/柏崎玲央奈
「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」のみ、「笑壺-SFバカ本ナンセンス集」(感想)にて既読でありました。「哀愁の~」も間違った方向に情熱を燃やす人々の滑稽さが面白かったんですが、こちらも変わらずパワフル。

人類滅亡を目の当たりにしながらも、自分たちがルールを決められることにヨロコビを感じる、自称・お姉さまにいじめられるのを待つ可憐な乙女(その実態は三十四歳、身長二百センチにして体重二百キロ)とドラァグ・クイーンのわがままなオンナっぷり(「西城秀樹のおかげです」)とか、性欲と食欲プラス変態味覚欲とSF欲を満たすべく奮闘する三人娘(「地球娘による地球外クッキング」)、など。官能的表現がぜっっっっったいに入ってはくるんだけど、それが入るまでのベースがバリエーションに富んでいるので、なかなかに楽しかったのです。

でも、この後に読んだ「ゲイシャ笑奴」は、官能表現がかなり前面に出てきて、かつそのシチュエーションがほぼおんなじだったので、ちょっと辛かったかなー。ま、表紙とレーベルからも分かりますかね…。やっぱり、アイディアとかバリエーションって大事だな、と思った次第でありました。

ゲイシャ笑奴 (徳間文庫)ゲイシャ笑奴 (徳間文庫)
(2009/06/05)
森 奈津子

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「ビッチマグネット」/私を形作るのは…

 2010-02-08-00:11
ビッチマグネットビッチマグネット
(2009/11/27)
舞城王太郎

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内容(「BOOK」データベースより)
なんだか妙に仲のいい、香緒里と友徳姉弟。浮気のあげく家出してしまった父・和志とその愛人・花さん。そして、友徳のガールフレンド=ビッチビッチな三輪あかりちゃん登場。成長小説であり、家族をめぐるストーリーであり、物語をめぐる物語であり…。ネオ青春×家族小説。

これもまた、舞城さんが描く一つの家族のかたち。でもって青春小説。漫画を描こうと思い立ったけれど、何も描くことがなかった事に初めて気付いた十八歳の私。そんな私が原稿用紙百三十枚くらいの小説を書けるようになるまでの数年間の軌跡。

たとえば自分の状態にもある名前を付けてしまう事で、その情報が固定されてしまったり、人からの見方に縛られてしまったりもする。主人公の香緒里が辿り着いた結論は、人間のゼロは骨であるということ。そこに、肉と物語をまとっていく。

歴史と記憶と想像と思い込みと願いと祈りと連想と創造。物語を物語が飲み込んで、時に思わぬ飛躍も起こる。
私は今のこの私になり、お母さんは広谷になってから菅井に戻って今度は後藤田になる予定だ。お父さんはお父さんとして複雑な何かを抱え込んでいる。友徳はビッチマグネット。
でも弟よ、それは物語で、自分もしくは他人による捏造の可能性もあるのだ。
そしてその可能性は私もお母さんもお父さんも全ての人間が抱えているものなのだ。
(p206より引用)

結局、自分を形作るものは自分しかなくて、力強くそこに向かっていく彼女が眩しいです。

「~~」を多用したゆる~い会話文や、なのだ!なんだ!という香緒里の心の動きに沿った展開(というか、舞城ヒロインは、いつも考え過ぎるほどに考え過ぎる一人称?)が、実に舞城さんらしいんだけど、この辺が芥川賞を逃した所以なのかしらん。実際は真面目に人生考えてる小説だと思うんだけどなー。誰もが憧れる職業とか、その職についたら一生幸せ!なんて職業が見えない時代だけど、とりあえず興味のあった所から始めて、戦略を立てて働き始めた香緒里の生き方は、若い人にこそ読んで欲しいなぁと思うんですが(香緒里が選んだ職業は、ここでは臨床心理士)。…でも、芥川賞だからって若者が読むわけじゃないか。

正しさで人は動かせないとか、正論は潜水艦(=自分)の周囲の状況を確かめるために発信するソナーだとか、今回も私にはおおっ、と思う表現が沢山でした。人はそう簡単には変わらないから、ソナーの影響を受けるとしてもとてもゆっくり。それはとてもゆっくりだから、通り過ぎた地形が変わったとしても、既にその場を離れた潜水艦には関係ない、とかね。「ディスコ探偵水曜日」みたいに疲れないで、うんうんと素直に読めちゃう本でした。今回は暴力的シーンも(ほとんど)ないし、人死になんか全くないしねえ。女子高生といえば、「阿修羅ガール」もあったけど、今まで私が読んだ舞城さんの本の中では、一番ぶっ飛び度が低かったです。

「ビッチマグネット」というタイトルに、このえらくファンシーな表紙だったので、ちょっと違和感があったりもしたのですが、読んでみれば確かにこれでいいんだよね。フォントといい、舞城さんって装丁などにもこだわりがありそうに感じるんだけど、実際どうなんだろうなぁ。ぶっ飛び度は低くても、読後の爽快感はやっぱり共通。読んだばっかりですが、また次の作品も楽しみです。

「夏雲あがれ」「藩校早春賦」/小藩の若者たちの青春

 2009-09-26-01:20
いっつもこういう話ばっかりしている気がしますが、またしてもシリーズものを逆に読んじゃったんです! NHKでドラマ化してたよなぁ、と思って手に取ったのが、「夏雲あがれ」(関係ないけど、初代の「ごくせん」ファンなので、「ごくせん」メンバーにはつい目がいっちゃうんです。確か、石垣くんが出ていましたよね)。

しかし、これは「夏雲あがれ」、単品では非常に厳しい仕上がり。何かというと、「あの春の…」「あの時の…」という説明が入ってしまうので、「藩校早春賦」を読まないことには、主人公三名の性格も何もかもが薄ぼんやりとしてしまうのでした…。

というわけで、ざっくり「夏雲あがれ」を読んだ後、慌てて「藩校早春賦」を借りてきました。ざっくりとか言ってますけど、設定をきちんと知りたい!、と思うほどには魅力的であったみたい。

しかし、シリーズ物の順番って悩ましいですね…。分かりづらいものには、きちんと何々続編、などと書いておいて欲しいものであります。

藩校早春賦藩校早春賦
(1999/07)
宮本 昌孝

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夏雲あがれ夏雲あがれ
(2002/08)
宮本 昌孝

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何といっても小藩ののどかな風景と(この点ではほぼ江戸を舞台としている、「夏雲あがれ」は若干不利かな)、純粋な若者たちの友情が爽やかなのです。映像化するのも分かるけど、このお話、結構ややこしいのではないのかしらん。

一応、これにて大団円みたいなんですが、冷や飯食いの新吾のその後が気になります…。大活躍だった新吾。報われているといいな。

「道絶えずば、また」/そして、またいつか…

 2009-09-06-14:57
道絶えずば、また道絶えずば、また
(2009/07/03)
松井今朝子

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内容紹介
中村座炎上から五年、長きにわたって江戸歌舞伎の中心であった中村座は太夫元の十一代目中村勘三郎と立女形の荻野沢之丞が皆をまとめ、その地位を守ってきた。しかし沢之丞が老いて引退を表明し、現役最後の舞台の上で不審な死を遂げた。疑われた大道具方の甚兵衛だが数日のうちに首を吊った姿で見つかった。今度は沢之丞の跡目として有力視されている次男・宇源次に疑いの目が向けられた。北町奉行所同心・薗部理市郎が探索に当たるも糸口が掴めない。水死体で発見された大工と甚兵衛の共通点が浮び上がり、大奥を巻き込んでの一連の事件のつながりが見えてくる。舅・笹岡平左衛門の協力を得て事件解決に立ち向かう理市郎。多彩な人物の生き方のなかに芸の理を説く長編時代ミステリー。「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」に続く三部作完結編。

「非道、行ずべからず」(感想)、「家、家にあらず」(感想)に続く、三部作であるそうです。完結といわれちゃうと惜しいな~。もう少し、あの宇源次を見てみたいと思うのです。

こたびはなんと、あの三代目荻野沢之丞(しかし、あそこで宇源次に四代目を継ぐと言っていたのに、まだ粘ってたんですねえ)が、一世一代の舞台の上で亡くなってしまう。覚悟の上の自害なのか、それとも殺されたのか?

今回はあのお虎魚(ネットでオコゼの顔を見たら、すごい顔でした~)もほとんど活躍しないし、探偵役の薗部理市郎もずばずばと事実に切り込んでいく感じではないので、ミステリーとしてはうずうずするというか、フラストレーションが溜まる感じ。

ここは芸には太鼓判を押されながらも、心弱く、酒に溺れがちな沢之丞の次男、宇源次に沿って読むのが良いのでしょう。

最後の兄弟対決(?)がいいんだー。やっぱり私は、この道を行った先の役者、宇源次をもうちょっと見せて貰いたいなぁ。

道絶えずば、また、天下の時に会う事あるべし―「風姿花伝」

読んだ後にもう一度扉に戻ってみるこの言葉もいいな。

「一の富」/並木拍子郎種取帳1

 2009-08-03-14:14
一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
(2004/06)
松井 今朝子

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内容(「BOOK」データベースより)
「ちと、面白いことがござりました」―人気狂言作者・並木五瓶の弟子・拍子郎は、“町のうわさ”を集め、師匠のうちに報告にくるのが日課だ。大店の不義密通事件、出合茶屋の幽霊騒動、金貸し老婆の首括り事件…拍子郎は、遭遇する事件の真相を、五瓶とその妻の小でん、料理茶屋のおあさ、拍子郎の兄で北町奉行所に勤めている惣一郎などを巻き込んで、次々と明らかにしていく―。江戸の四季と人の心の機微が織りなす、粋でいなせな捕物帳の傑作シリーズ第一弾。

松井さんの歌舞伎ミステリーを何冊か読んでいたので、その勢いでこちらも。しかし昨今は、近藤史恵さんの「巴之丞鹿の子」とか、所謂捕物帳とは若干違った歌舞伎ミステリーというジャンルが確立されてるみたいですねえ。
目次
阿吽
出会い茶屋
烏金
急用札の男
一の富
 解説  細谷正充
拍子郎だなんてちょっと変な名前ですが、これは師匠の狂言作者、並木五瓶に貰った名前。本名は筧兵四郎という、れっきとした武士の若者なのです。この拍子郎の兄、筧惣一郎が北町奉行所に勤めている関係で、捕物帳としても機能しちゃうわけ。これに化粧もせず、料理が大好きなバラガキ娘、料理茶屋のおあさが加わって…。おあさ坊の作る料理がまた旨そうで。捕物とは関係ないところでも、楽しみがあるのです。

最後の「一の富」では、拍子郎にはある迷いが生じます。この先、彼はどうなるんだろうなぁ。続巻も読もうと思いますー♪ 「一の富」はね、人との縁を語る、五瓶の言葉も良いのです。

「ハートブレイク・レストラン」/お困りのようでしたので、ちょっと

 2009-07-30-14:20
ハートブレイク・レストラン (光文社文庫)ハートブレイク・レストラン (光文社文庫)
(2008/07/10)
松尾 由美

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内容(「BOOK」データベースより)
フリーライターの寺坂真以が仕事場代わりにしているファミリーレストランには、名探偵がいた。店の常連ハルお婆ちゃんは、客たちが話す「不思議な話」を聞くと、真以を呼び寄せ、たちどころに謎を解いて見せるのだ。そんなお婆ちゃんにも、ある秘密があったのだが…。可愛くって心優しいお婆ちゃん探偵が活躍する、ハートウォーミングな連作ミステリー。

目次
ケーキと指輪の問題
走る目覚まし時計の問題
不作法なストラップの問題
靴紐と十五キロの問題
ベレー帽と花瓶の問題
ロボットと俳句の問題
 解説 大矢博子
こういうの、大好きー!な、ハートウォーミングな連作ミステリー。時間軸は繋がってるんですが、一見、ただ謎を並べたように見えながら、最後に持っていく手法も心憎い。

「ハートブレイク」なんてついてますが、実際はみなさん、恋を実らせる方にいくわけで、タイトルの響きに感じる哀しさなんてのは、まったくありません。一応ね、お婆ちゃんのある秘密のために、主人公のフリーライター、寺坂真以は「心のさびしい人、ないしは幸薄い人」がこのファミレスに集まるのでは?、と疑ってはいるのだけれど…。最後のお婆ちゃんの言葉も、なかなか深いんじゃあないでしょうか。確かに、「好きな殿方や女性とうまくいけば、それだけで何もかもさびしくなくなるというものでもございません」のですよなぁ。続きがあってもいいようなお話なんだけど、どうなんでしょう、シリーズ化はして貰えないのかな? 幸田ハルお婆ちゃん、いいキャラしてるんだけどなぁ。

「恋文の技術」/なにはなくとも書くのだよ

 2009-06-10-23:28
恋文の技術恋文の技術
(2009/03)
森見 登美彦

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内容(「BOOK」データベースより)
京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた男子大学院生が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れ―。

目次
第一話  外堀を埋める友へ
第二話  私史上最高厄介なお姉様へ
第三話  見どころのある少年へ
第四話  偏屈作家・森見登美彦先生へ
第五話  女性のおっぱいに目のない友へ
第六話  続・私史上最高厄介なお姉様へ
第七話  恋文反面教師・森見登美彦先生へ
第八話  我が心やさしき妹へ
第九話  伊吹夏子さんへ 失敗書簡集
第十話  続・見どころのある少年へ
第十一話 大文字山への招待状
第十二話 伊吹夏子さんへの手紙
手紙で綴られる物語と言えば、三島由紀夫の「三島由紀夫レター教室」(感想)なんかを思い出しちゃうんですが、「レター教室」では五人の書き手がそれぞれ手紙を書くことによって、人間関係が浮かび上がるところが面白いのだけれど、反してこちらの「恋文の技術」では手紙の書き手はただ一人(「大文字山への招待状」だって、たぶん書き手は彼だよね?)。

書き手たる守田一郎は、ひたすらに書いて書いて書きまくる。だって、研究室でただ一人、淋しい臨海実験所に送られてしまったのだもの。置いてきた(?)親友の恋の行方が気になり、決して勝てはしないお姉様が気になり、家庭教師をしていた少年が気になり、本質を突きすぎる妹が気になり、学生時代に縁のあった森見登美彦氏が気になり、恋する伊吹夏子さんの様子が気になり…。

それぞれに宛てた手紙は、無論その相手への感情、立場によって、それぞれ違った物言いとなる。守田一郎、しょーもなー、と思う部分もあるんだけど、通して読むと愛しくさえあるんだな、これが。そう、彼の妹の言うとおり、「みんながお兄ちゃんの手紙にこたえて、手紙を書いてくれるっていうのは、とてもすごいこと」なんです。同じく妹の言葉を借りると、彼はワガママで偏屈で、何かというと威張ったり、ふてくされてばっかり、なんだけどね。

なにはなくとも書く。文通武者修行。こんな友人がいたら、厄介な…、と思うかもしれないけど、きっと楽しいのだと思います。携帯メールなんかだと、私はついつい心の中で返事をしてしまって、うっかり返信するのを忘れちゃうんですが、とりあえず書きまくって繋がる守田一郎のように、自分のメッセージはやっぱりきちんと届けてこそ、ですね。

あと、これはあんまり本質的ではないし、そう具体的に書いてあるわけじゃないんだけど、社会に出る前、自分の研究室時代を懐かしく思い出してしまいました。エバポレーターの陰で泣くとか、椅子を並べて仮眠とか。かつ、揃えた靴の中に、ゴ○ブ○とか。学校って、なんだってあんなにあいつらがいるんだ~。

「家、家にあらず」/自分の道を掴め

 2009-04-13-23:21
家、家にあらず家、家にあらず
(2005/04)
松井 今朝子

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「非道、行ずべからず」(感想)の美しき化け物(女形)、沢之丞の若き日が出てくるとのことで、借りて来た一冊です。

とはいえ、バリバリの芝居物である「非道、行ずべからず」とは異なり、こちら「家、家にあらず」が舞台とするのは、大名屋敷の奥。主人公瑞江は、北町奉行所の同心を父に持つ娘。母亡きあと、御殿女中として出世を遂げた「おば様」を頼って、砥部家に勤めることになったのだが・・・。

瑞江という名も奪われ、「うめ。切米五石。金五両」として、楽な部屋子ではなく、三之間勤めとなった瑞江。日々の勤めに追われ、良縁を用意される気配もない。おば、浦尾が瑞江を砥部家に招き入れたのはなぜなのか? 

そして、お屋敷に落ちる影。安全なはずの屋敷の奥で人が死ぬ。町奉行の同心である父は、本来、大名家のことに首を突っ込んではならないのだけれど…。町中でおきた人気役者と水茶屋の娘の心中事件もまた、砥部家の事件と関わっているようで…。父は娘を心配して内情を探るのです。ここに絡んでくるのが、若き日の沢之丞なんですね。あ、あと、薗部理市郎の父、薗部理右衛門も出てきます。

全ての種明かしがなされた後の(実はこの瑞江自身が、ある意味、信頼出来ない語り手だったりするんだけど)、瑞江の語りがいいのです。女は道を選ぶことが出来ないと思っていたけれど、屋敷の奥で様々な女の道を見て、更に自分で道を選ぶだけの力をいつしか得ていた瑞江。瑞江はどんな道を選んだのでしょう。「非道、行ずべからず」の笹岡平左衛門の妻は、同心の妻らしくないとか言われてましたが、瑞江関連でお嫁に来たのでしょうか。「非道、行ずべからず」で、瑞江の話って出てきましたっけ?? 出てこなかったように思うんだけどなぁ。

タイトル、「家、家にあらず」というのは、「女三界に家なし」というのもそうなんだけど、町奉行所に勤める同心にもかけてあるんですね。町方の同心は譜代の臣ではなく、その身一代限りのお抱えなんだそうです。大晦日の夜に、支配役の与力の家を訪問し、「此度もまた重年を申し付くる」といい渡されて、やっと翌年のお勤めが許される。みながみな、黙って受け継ぐことが出来る家を持っているわけではない。

そういえば、「非道、行ずべからず」では、芝居という継ぐべきものが出てきましたが、どうなんでしょうね、継ぐべきものを持っている方が幸せなのか、好きな道を選べる方が幸せなのか。どちらにもそれぞれの幸せがあるとは思うのですが・・・。「非道、行ずべからず」の歌舞伎の話も面白かったですが、「家、家にあらず」の大名屋敷の奥の世界も面白かったです。浦尾のように御年寄まで出世した場合、それまでの功績ゆえに女だてらに家を興すことも可能なのだとか。

↓文庫も。
家、家にあらず (集英社文庫)家、家にあらず (集英社文庫)
(2007/09/20)
松井 今朝子

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「非道、行ずべからず」/非道とは何か

 2009-04-02-23:10
非道、行ずべからず非道、行ずべからず
(2002/04)
松井 今朝子

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火事に遭った中村座の楽屋裏から出て来たのは、見知らぬ老人の死体だった。老人は火事で亡くなったわけではなく、首を絞められ、行李に入れられていた。

場合によっては中村座自体が取り潰しにあうことだってある。太夫元である十一代目・中村勘三郎は、北町奉行所同心・笹岡平左衛門と、同心見習の薗部理市郎の取り調べに応じるのだが・・・。

老人は、楽屋に出入りする、担ぎの小間物屋の忠七であった。楽屋に出入りする者を知らないはずのない、楽屋頭取の七郎兵衛はなぜ知らぬ存ぜぬを通したのか。この殺人は、三年前の火事で亡くなった、幼い姉妹に関係するのか。

更に殺人は続く。同心の命を受け、事件を探っていた座敷番の右平次が殺され、また、頭取の七郎兵衛は自害を装って殺される。おぼろげに見えてくるのは、中村座の立女形、三代目荻野沢之丞の襲名を巡る、荻野家の争い。名跡、沢之丞は、長男市之介のものとなるのか、また生意気な弟、宇源次のものとなるのか。

忠七、七郎兵衛、右平次に共通するものとは何か。連綿と続く芝居者の世界。一つの嶮しい道を行くならば、一筋にその道を歩む者を大事にすると同時に、芸の道を外れて非道を行うことを堅く忌む。「非道」を行ったものとは誰なのか。

勘三郎が語る芸の道もわかるけれど、三日月の旦那、笹岡の言葉もまた沁みるのです。

「狭い一本道を大切に思うあまり、人は往々にしてまちがいを犯す。狭い道にこだわって、人間(ひと)としての大きな道を踏みはずすんだ。俺にいわせりゃ、それこそが、非道を行ずってェもんだぜ」  (p343より引用)

さて、犯人なんですがー。わたくし、ほとんど最後になるまで分かりませんでした。後で考えると、とってもフェアに書いてあるんですけど。ミステリー部分もしっかりしてるんですが、そこはそれ、黙ってついていけば、きちんと犯人の元に辿りつくわけですし(しかも、松井さんの語りはとっても巧みだし)、むしろ芝居の世界や、芸の道の話なんかが面白かったです。

還暦を過ぎた女形、沢之丞のとんでもない迫力が、とっても印象的でした。二人の息子に舞の稽古をつけるところなんか、圧巻でしたわー。もう一人、忘れてはならないのが、こちらは「出たな、化け物」の、沢之丞の弟子、虎魚(おこぜ)の荻野沢蔵。女形としては、頂けない御面相のようですが、立役としてはいけるのでは、との師、沢之丞の見立て。右平次亡きあと、沢蔵が笹岡たちの手先となるんですが(右平次とは違って、すっごい嫌々なんだけど)、いつもつるんでいる、瀬川菊江、岩井乙女などの同じくいまいちな女形たちとの話なども楽しいんです。

ラストの笹岡のセリフでん?、と思って探してみたら、微妙にリンクした「家、家にあらず」という、沢之丞の若き日のお話があるんですね。沢蔵が華麗に立役に転身して、売れっ子となって事件を解く、なんて話も読みたいなー、と思いました。松井さん、書いてくれないもんでしょうか。私、沢蔵が気に入っちゃったんです。

↓文庫も
非道、行ずべからず (集英社文庫)非道、行ずべからず (集英社文庫)
(2005/04)
松井 今朝子

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「架空の球を追う」/人生のスケッチ

 2009-03-24-22:55
架空の球を追う架空の球を追う
(2009/01)
森 絵都

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目次
架空の球を追う
銀座か、あるいは新宿か
チェリーブロッサム
ハチの巣退治
パパイヤと五家宝
夏の森
ドバイ@建設中
あの角を過ぎたところに
二人姉妹
太陽のうた
彼らが失ったものと失わなかったもの
日常を切り取りつつも、舞台は様々。ロンドンで働くアイルランド人の女性だったり(母親に出そうとしている手紙で心情を出すところが巧いな)、ドバイを旅する婚約中のカップルであったり、難民キャンプに暮らす女性だったり、バルセロナ空港で見かけた英国人夫妻であったり。ほんの短いスケッチのような文章からも、ふわりと物語が立ち上るのです。特にすごく前向きだ!とか元気になる!、とかそういうお話ではないのだけれど、さらりと読めてほんのちょっと何かが残る、一服の清涼剤のような短編集ですかね。

なんでもいいけど、大不況の今はともかく、観光地としてすごいと聞いていたドバイ。やっぱり暑いんですね…。

この街に移り住み、ホテルや建設会社、観光会社などで働く日本の若者たちを追ったテレビのドキュメンタリー番組を見たことがある。日本よりも給料は少ないけれど夢がある。それがおおまかな彼らの総意だった。蒸し器のように暑く、澄んだ空も見えないこの街で、彼らは一体どんな夢を描いているのだろう。
「私は現実だけでいい。夢なんかクソくらえだわ」(p118より引用)

五家宝のWikipediaの記述にリンク。おお、これなのね。思い浮かばず、ちょっと苦労しちゃったんです。

「巣立ち」/お鳥見女房第五弾

 2009-03-04-22:59
巣立ち お鳥見女房巣立ち お鳥見女房
(2008/11)
諸田 玲子

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「狐狸の恋」(感想)に続く、おなじみお鳥見女房シリーズです。タイトルは、「巣立ち」。子供たちの珠世母さんからの巣立ち、そしてまたある人物の巣立ちが描かれます。
目次
第一話 ぎぎゅう
第二話 巣立ち
第三話 佳き日
第四話 お犬騒ぎ
第五話 蛹のままで
第六話 安産祈願
第七話 剛の者

他人を思いやる心さえあれば、まぎれもない、矢島家の一員である。

えくぼの珠世母さんワールドは健在です。珠世さんに任せておけば、なんだって収まるところにきちんと収まるのだもの。

珍しくも据わりの悪いのは、「蛹のままで」かなぁ。天下一品の厚かましさを持つ源太夫に、いつものように頼みごとをされた矢島家の面々。源太夫の昔の恩人の息子を泊めてくれと言うのだが…。藩命を受け、遠く長崎に学業の旅に出る前に、気がかりだった人捜しをしたいという、小田原藩医の息子、賢次郎。生みの親探しを手伝う内に、珠世さんも何だか絆され、二人で遠出をすることにも、珍しくも迷いが出るのだが…。本当に母親代わりに見おくって欲しかったのか、それとも…というのは微妙な所だけれど、二人ともきちんと大人だったのが良かったのですね。殻を破って飛び出さなかった、蛹のままの心…。据わりが悪いとは言ったけど、結局は母は強しということで、源太夫の妻、多津の話にも繋がるところはお見事でした。

「人くい鬼モーリス」/ひと夏のミステリー 少女ver.

 2008-11-03-20:20
人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)
(2008/06)
松尾 由美

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「バルーンタウン」シリーズが有名な松尾さん。「フリッツと満月の夜」(感想)はいまいちだったんだけど、こっちは良かったよー。

フリッツが少年二人をメインとし、海の近くを舞台とする、比較的明るめの作風だとすれば、こちらは美少女二人がメイン、携帯も圏外となる避暑地の別荘を舞台とし、何人かの「死」が出てくるという、そういう条件からしても、森の苔とか、湿り気を感じるような、しっとりした少し暗めの感じ。

聡明な美少女って好きなんだけど、このわずか十歳の芽理沙という少女の、浮世離れしたキャラクターがいいなー。彼女の家庭教師を務めることになる、語り手の高校二年生、村岡信乃は実にまとも。このわけのわかんない事態に真正面から悩んで、芽理沙にぶつかっていく姿も好もしい。

あの夏の一週間に足らない出来事から七年後、「エピローグその2」もいいです。

かいじゅうたちのいるところかいじゅうたちのいるところ
(1975/01)
モーリス・センダックじんぐう てるお

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ミステリーとしての出来は、ええっ?その動機?という気もするんだけど(そんな理由で殺されちゃあかなわんなー)、これは絵本作家、モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」へのオマージュ作品だそう。この本の中の「モーリス」は、「かいじゅうたちの~」の表紙の「かいじゅう」とはちょっと違うイメージを受けるんだけど、この中には黄色い目のモーリスがいるのかしら?

これは絵本作品へのオマージュであるわけですが、二人の少女への、つまりは誰もが通った道である(少女、と限定すると、当然女性になっちゃうけど)少女時代への感傷でもあると思うのです。

十歳と、十七歳。七年後は、十七歳と二十四歳。見様によっては生意気なくそガキであったこと、直情的な行動には、誰だって覚えがあるでしょう? なんだか、そんなことを懐かしく思う一冊でもありました。

目次
プロローグ
1 水曜日
2 木曜日
3 金曜日
4 土曜日
5 日曜日
6 月曜日
エピローグ(その1)
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「美女と竹林」/森見・Bamboo・登美彦、ミッション、コンプリート??

 2008-10-21-23:22
美女と竹林美女と竹林
(2008/08/21)
森見登美彦

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やみくもに好きなものについて書いてみようとしたら、そこで出てきたのが「美女」と「竹林」だったという、森見さんによる、エッセイとも何ともつかぬ本。でも、小説ではないよね? 読み終わって、たぶんみんな、美女はどこだ?!と思うのだろうけれど、これだけ何も進まない話を面白く読ませちゃう術は流石だなーと思います。

学生時代の研究対象であり、また今でも大好きだという竹林。作家として行き詰った時の保険として多角的経営を考えると、今後は竹林が来る! というわけで、森見氏は職場の先輩、鍵屋さんなる女性のご実家の竹林を預かることになったのです。以前は鍵屋さんの祖父が手入れをされていたというこの竹林。今では荒れ果てているようで…。森見氏は、学生時代からの盟友、明石氏の手を借りて(だって、一人じゃ淋しいから)、この竹林に手を入れることになったのです。

なんだけど! 実際は本業の仕事があったり、執筆活動があったり、執筆にかかわる諸々のお仕事があったり、明石氏は司法試験の受験生であったり、にっくき薮蚊が登美彦氏らを襲ったり、と竹林整備は遅遅として進まないのです。というわけで、途中に挟まるのは、妄想であったり、森見氏の日常&竹林整備が進まない言い訳であったり。

実際手入れが進み始めるのは、担当編集者の方々の手を借りるようになってから? 道具も毎度毎度ホームセンターで購入されているようなんだけど、前回に購入したはずの道具たちはどうなってんでしょ。ノコギリなんかは、消えてなくなるわけもなく。この後も、ほんとに「竹林部」が結成されたんですかねえ。

なんだか、分かるなーと思ったのが、青春のしょうもなさを表現している以下の部分。

ただし明石氏はその能力を、専門たる法律の勉強に傾注するだけに飽きたらず、とにかくもう、お年玉のつかい道を知らない子どものように、めったやたらと浪費した。その余人の追随を許さない圧倒的なお大尽ぶりが、大学内の学生たち(主として男)の繊細で高貴なハートを撃ち抜いた。  (p23より引用)

そういうの嫌いじゃないんだけど、大学に長くいた人って、なんかどこか独特なんだよねえ。無駄であればある程良し、というのも、やはり実社会とはまた違った価値観が支配している場所である証拠な気がします・・・。この明石氏と森見さんのお話は、ほとんど森見さんの描く腐れ大学生のお話そのまま。

面白かったのが、「森見登美彦(MBC最高経営責任者)今、すべてを語る」の部分。妄想って、スバラシイ! 竹林だけでこんだけ妄想出来るのは、作家さんはたくさんいるけど、やはり森見氏をおいて他にないのではないでしょうか。どうでもいいけど、森見さんってセグウェイ好きなのかなぁ。セグウェイには、私はあまり心惹かれないよ…(嵐がCMで楽しそうに乗ってるけども)。
目次
登美彦氏は如何にして竹林の賢人となりにしか
ケーキと竹林
竹林整備初戦
机上の竹林
森見登美彦氏の弁明
登美彦氏、清談に耽る
T君の話
登美彦氏、外堀を埋めて美女と出逢う
竹林は遠きに在りて想うもの
竹林へ立ち向かう四人の男
登美彦氏の夏’07
紳士たちの反撃
孟宗竹分解法講義
腰と竹林
森見登美彦(MBC最高経営責任者)今、すべてを語る(前編)
森見登美彦(MBC最高経営責任者)今、すべてを語る(後編)
大団円の発掘

「ディスコ探偵水曜日・下」/舞城王太郎、総決算?

 2008-10-02-00:40
ディスコ探偵水曜日 下 (2)ディスコ探偵水曜日 下 (2)
(2008/07)
舞城 王太郎

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のっけからページ数の話をするのはどうかと思うけど、下巻は書き下ろしの「第四部 方舟」だけで構成され、ページ数も452ページと、だいぶ常識的な厚さ(?)に落ち着いています。

下巻はいきなり、ディスコ(っていうか、孤児の日本人、踊場水太郎)の高校時代の話から始まります。上巻では比較的ポピュラーな方のグループにいた、という話だった水太郎は、ここでは上巻で馬鹿にしていたギーク(オタク)なグループの地味~な存在。ん??、って感じなんだけど、これにもまた一つの説明がなされます。

<パインハウス>に戻ったディスコは、梢を襲った相手に打ち勝つべく、名探偵たちと共に、時間と空間の外にあるものを考えます。ディスコは時空を曲げることが出来るようになったけれど、それでも起こった出来事を変えることはまだ出来ない。ところが、敵にはそれが可能ならしいのだ。

人間の≪好き嫌い≫は≪意識≫にも≪知≫にも縛られずにあるまさしく根本だ。「≪好き嫌い≫が世界の中心なんだ。そこから≪倫理≫も≪美的感覚≫も生まれるし、≪知≫も≪意識≫も制御され、≪世界≫の形ができあがる」。そして自分の持つ≪好き嫌い≫の感覚から生まれる≪こうあるべし≫≪こうあってほしい≫≪こうなってほしい≫という気持ちは、つまり≪意志≫なのだ。ならば≪意志≫のあるところに≪出来事≫が生じる以上、この世の全ては≪好き嫌い≫に誘導されるのだ…その≪好き嫌い≫の強さに応じて。≪鉄の意志≫によって。俺は梢を救う。そのために全てを曲げてみせる。(p96-97より引用)

梢を救うために未来へと飛んだディスコは、「梢式(Cozue-method)」なる忌まわしきシステムを知る。子供を虐待すると、その子供たちは苦しみから逃れようと人格を分裂させる。分裂した人格は、サブチャイルドの体の中に入り込む。サブチャイルドに入り込んだ分裂した人格は、10年もすればすんなりと癒されて消えてしまう。JJ率いるスタイロン社は、その空っぽになった身体を売っているのだ。クローン人間ともまた違う、ボディを丸ごと新しくしてしまうという、その斬新な仕組みは爆発的な成功を収めているのだが…。

子供たちを傷つける者は許さない。ディスコはどうやら未来の世界で、三億人の子供たちを攫い続ける運命(十三年で三億人。一秒に一人ずつ毎日十七時間ずうっと誘拐し続ければ可能な数字)にあるようなのだ。そして、この未来では、全員が失踪宣告を受け、死亡が確定していた、「パインハウス」事件の名探偵たち。ディスコは何と、<ラグナレク>にて世界を折り曲げ、「新世界」を名探偵やエンジェル・バニーズたちに任せ、自分は「旧世界」に残って、滅びゆく世界でひたすら子供たちを攫い続けることにしたのだ。

って、書いててもすっごい設定なんですが、たとえ矛盾があろうとも、大風呂敷過ぎて、この世界についていくのが精いっぱい。突っ込みようがないよーー。それでも、上巻で感じたメッセージと同じものを感じます。すなわち、子供は守るべきものであること、意志の力が世界を変えること、弱いことは悪いことだなんて決めつけんな!ってこと、気持は実際に力を持つこと、とにかく愛!とかそういうこと。更に強く感じるのは、世界への希望とか。

とりあえず、ディスコはそんな世界の中、愛する者とともに踊り続けるのです。舞城さんの世界は、グロかったりえぐかったりするのに、最終的にはすんごく明るくて、真っ当なところも特徴だよね。それこそ強い意志とか希望を感じるのです。

「ディスコ探偵水曜日・上」/舞城王太郎、総決算?

 2008-09-30-23:18
ディスコ探偵水曜日 上 (1)ディスコ探偵水曜日 上 (1)
(2008/07)
舞城 王太郎

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何の前情報ももたずに、ぽちっと図書館の取り寄せをした私は、この本が届いて思わず仰け反りましたよ。だって、上下巻だっつーのに(結果的に下巻は上巻に比べると、大したボリュームではなかったんだけど)、上巻はなんと621ページ!(背表紙の厚さを思わず測ってみたら、37mmくらい?) お前は京極本か!、と突っ込みたくなるのは、私だけではありますまい。

大爆笑カレーとか、コテージ奈津川とか、ルンババ12とか、桜月淡雪とか、「THE WORD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS」とか、九十九十九とか、暗病院終了(あんびょういんおわる。清涼院流水みたいじゃない?)とか、東京都調布市とか、福井県西暁町とかとか、たぶん私が見逃してるのも含めて、懐かしのキャラクターだとか設定がバシバシと出てくるのですが、このあんまりな情報量にクラクラと目眩がします。また凄いのが、途中から始まる<パインハウス>で起こった作家、暗病院終了の密室殺人の名探偵たちによる解釈なんですが、推理を展開していった名探偵たちは、途中から真実がすり抜けていくことで、その推理は間違ったものとなり、続々と左目に箸を突っ込んで絶命しちゃうのです。えっぐー。

まぁ、でも、そういった色々な物が詰め込まれていても、やっぱり舞城さんが言ってることは、ごくごくシンプルなんだと思うんだよなー。
ディスコ探偵水曜日。DISCO Wednesdayyy(お前は、終りにeがつくanneかっつー気もしますが)、もしくはディスコ・アレクサンダー・ウェンズデイ、ディスコ水曜日、時にウィリアム・イーディ、時に踊場水太郎は、迷子探しを専門とする探偵。

彼はある事件で取り戻した、六歳の山岸梢と一緒に住んでいる。ところが、梢の体に変化が起こる。十七歳の梢を名乗る、未来の彼女がやって来る時、六歳の梢の体は、本当に伸び縮みしているのだ。同時に起こる、少女たちの魂を盗むとされる「パンダラヴァー」事件。また、小さい梢が体を追い出される時に行くという、「パイナップルトンネル」。西暁町の「パインハウス」事件を聞いたディスコは、梢を守るために、ディスコと同じくらいぶっ飛んだ名前の(そして、ぶっ飛びっぷりは、決して名前だけでは終わらない)、水星Cと共に「パインハウス」に乗り込んでいく。そこでは名探偵たちの推理と死が連続していた。果たして、ディスコは梢を救えるのか?
筋としてはこんな感じなんだけど、タイムトラベル的要素を含むからか、ワームホールだの量子論的な話が出てきたり(下巻では宇宙論なども)、図もバシバシ出てきたり、舞城さんらしいといえば実にらしい作り。突然の太字とか(ジャスト ファクツ)、「待て待て。」とかで展開していくお話も。

で、私がシンプルだと思う、この小説から伝わって来たことは、子供は守るべきものであること、意志の力が世界を変えること、弱いことは悪いことだなんて決めつけんな!、気持は実際に力を持つこと、とにかく愛!とかそういうことなのです。

ラスト付近では、ディスコは時空を曲げて自在に時を行き来できるようになっちゃうし、パンダは喋るし、まぁ、本当に何でもあり。とはいえ、ラスト、これにて無事解決か?と思いきや、まだまだディスコは休むことが出来ません。上巻で振り落とされなければ、下巻は一気に行っちゃえます。

でも定められているとは言え俺は努力を続けなければならないのだ。思うこと、感じること、求めること、願うこと、欲しがること、そういうものをすべて強く持つことだけが運命を引き寄せる。誰よりも強いそれらを持つことだけが運命を現実化させる。 (p618より引用)

本筋とは異なるけれど、気になったことと言えば、「ら抜き」言葉! 新潮社のチェックをくぐり抜けているわけだし、わざとだよねえ。でも、なんでー? あとは私はやっぱり舞城さんの擬音が好きだな~。電話の音、ルサムサムサムサム……とか、ぶぶーという笑い声とか。梢が読んでるのが、「大どろぼうホッツェンプロッツ」なんてところも。しかし、ディスコは何で、宇野千代の桜の花びらナイフとフォークなんて持ってたんでしょう。笑 そりゃ、あんまりにファンシーだ。
目次
第一部 梢
第二部 ザ・パインハウス・デッド
第三部 解決と「○ん○ん」

「フリッツと満月の夜」/ひと夏のミステリー

 2008-09-23-23:19
フリッツと満月の夜 (TEENS’ENTERTAINMENT 1)フリッツと満月の夜 (TEENS’ENTERTAINMENT 1)
(2008/04)
松尾 由美

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夏休みの間、小説家の父さんと共に、海の近くの小さな町で過ごすことになった、カズヤ。こう来ると、フリーライターの父に連れられ、座敷わらしのいる旅館に泊まることになる、同じく夏休み中のユカ(@「雨ふり花さいた」)なんかを思い出しちゃうわけですが、こういうのは、ある意味定番のティーンのお話とも言えるのかな。ティーンの頃のひと夏の冒険、実際に体験したかったかも?

私がこの本に興味を持ったのは、あちこちで評判だけは耳にしていた松尾由美さんの作であることと、この可愛らしい表紙。

えー、実際はお話の作りは、ちょっとやっぱりティーン向け?という感じで、期待していたのとは違ったんだけど、今度は「人くい鬼モーリス」を読んでみたいなぁ、と思うくらいには楽しみました。

気の進まないまま、小さな港町へとやって来たカズヤは、近くの食堂、「メルシー軒」の息子、ミツルと友達になります。最初は無愛想で太ったミツルとは到底友達になれない、と思っていたカズヤだけれど(なんだって、周りの大人ってのは、年が同じならば友達になれると簡単に考えるんだ?)、この町の秘密をきっかけに仲良くなるのです。

ゴルフ場建設に燃える町長、偏屈な老婦人の消えた遺産、耳にピアスをつけたの謎、門扉に描かれたダビデの星の謎…。これがひと夏のミステリー

ラストはもう一つの謎も解かれまして、カズヤとこの町との付き合いも、また夏ごとに続きそう? そうすると、シリーズ化なんかも出来ちゃいそうな感じがしますが、どうなのかなー。でも、方向音痴の泥棒、という設定はちと苦しいかも。安全な方に逃げたつもりが、泥棒と出くわしちゃうなんて、迷惑だわ…。

満月の夜、暗がりに光るきんいろ。それはやっぱり魅力的だもの。他のメンバーも含めて、彼らが活躍する様をもう少し見てみたい気がします。

「白蝶花」/咲いて散るのが花なのサ

 2008-09-08-23:21
白蝶花白蝶花
(2008/02)
宮木 あや子

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目次
天人菊
凌霄葛
乙女椿
雪割草
実際、この「白蝶花」というのは、こんな花なのだって。

よく撓る花茎に白や薄紅の、親指くらいのちいさな花をたくさん付けます。
風に吹かれると、あえかな白い蝶々が舞っているように見えます。
花はすぐに枝から落ちてしまいますが、次の日には新しい花が咲きます。
花茎が倒れても、枯れずに次々と花を咲かせつづけます。

そんな白蝶花のように、次々と花開く若い娘たち。そして、たとえ散ったとしても、散らされたとしても、それでもまた、きっと力強く花咲かせるのだ。無名であろうとなかろうと、これはそんなふうに精いっぱい花を咲かせた若い娘たちのお話。
「天人菊」は、置屋に売られた菊代と雛代姉妹の話。

「凌霄葛」は、事業に失敗し自殺した父に身を売られ、女学校を退学し、十七にして、親子ほども年の離れた男の愛人となった泉美の話。

「乙女椿」はこの中でも最もボリュームが多いんだけど、その分だけ、なかなかに力作です。長らく音信のなかった人物から、手紙を受け取る場面から、一気に物語は老女の回想へ。千恵子が少女だったころの、奉公先の屋敷での生活。気難しいお嬢様、和江の相手がつとまるのは、千恵子だけだった…。奉公仲間の伸子の恋、そして、千恵子自身の恋…。そうして、全てを覆い潰そうとする、あの戦争…。

「雪割草」は、今では現とあらぬ世界を彷徨うようになった、和江の話。和江の心は、今では過去も現在も自在に行き来する。
実は、これらの短編は全て繋がっています。あそこに出てきたあの人が、あの家が、とずるずると関係しているの。「乙女椿」、「雪割草」が良かったな~。ちょっと愚かな伸子も、誇り高い和江も、真摯な知恵子も、みな、美しい花を咲かせていました。

著者、宮木あや子さんは、「花宵道中」で第5回R-18文学賞大賞と読者賞を受賞し、デビューされたとのこと。もちろん、官能的な場面もあるけれど、いやらしいというよりは、むしろ綺麗な描写だし、父なし子を産むことになる、千恵子の事情もやむにやまれぬもの。必死に生きた、彼ら彼女らの姿が清々しいです。

「吉原手引草」/手練の時代小説

 2008-04-03-23:05
吉原手引草吉原手引草
(2007/03)
松井 今朝子

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第137回直木賞受賞作です。ええと、図書館というところは、直木賞をとった作品なんかだと、やたらと冊数を仕入れているのですよね。で、とった直後は予約がいっぱいでなかなか借りられないのだけれど、ほとぼりが冷めるとこれが存外すっと借りられるようになっている。というわけで、ちょうど良い頃合いとなった本書を借りてまいりました。
目次
引手茶屋 桔梗屋内儀 お延の弁
舞鶴屋見世番 虎吉の弁
舞鶴屋番頭 源六の弁
舞鶴屋抱え番頭新造 袖菊の弁
伊丹屋 繁斎の弁
信濃屋茂兵衛の弁
舞鶴屋遣手 お辰の弁
仙禽楼 舞鶴屋庄右衛門の弁
舞鶴屋床廻し 定七の弁
幇間 桜川阿善の弁
女芸者 大黒屋鶴次の弁
柳橋船宿 鶴清抱え船頭 富五郎の弁
指切り屋 お種の弁
女衒 地蔵の伝蔵の弁
小千谷縮問屋 西之屋甚四郎の弁
蔵前札差 田之倉屋平十郎の弁
詭弁 弄弁 嘘も方便
どうやら、見目の良い若い男らしい、ある人物のインタビューにより浮かび上がってくるその姿とは…。うわー、これは実にうまい、手練の小説ですねえ。

吉原の妓楼、舞鶴屋の呼出しの花魁、葛城なる人物が、忽然と姿を消したようなのだが…。花魁の周囲の人々の弁により、徐々に浮かび上がってくる、葛城その人の人となりも魅力的だし、ラストの「詭弁 弄弁 嘘も方便」で一気に明かされる花魁の事情は、ミステリーとして読んでも、十分に面白い(途中で底が割れちゃう、という向きもあるかもしれないけれど。まぁ、ここは語りを楽しもうということで)。

吉原に生きる様々な役を持った人物それぞれから聞き取りを行うことで、吉原の事情について特に詳しくなくとも、するりと読めてしまうという親切さ。私は安野モヨコさんの「さくらん」や杉浦日向子さんの本を思い出しながら読みました。

いやー、松井さんのこの本って、今度こそ北村さんが直木賞だろ!!、と思ってた時の、直木賞受賞作だったので、何となく悔しいような心持ちがしていて、実は微妙な感情を持っていたのだけれど、ちゃんと面白い本でした。凛と立つ一人の女と、町人の意地とでもいいましょうか、覚悟が潔い、すっきりとした一冊でした。時代物で安心して読むことの出来る作家さんに、また一人出会えたような気がします。
□著者松井今朝子さんのHPにリンク
□次に読みたいのはこの辺。ずっと前から、店頭でこの表紙が気になっていたのよ。
一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
(2004/06)
松井 今朝子

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読みながら、脳内でこの絵に変換されてしまいました。これ、話もそうだったけれど、絵もなかなか強烈だよね。
さくらんさくらん
(2003/11)
安野 モヨコ

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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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