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「にょっ記」/そんな日常

 2010-02-27-21:54
にょっ記にょっ記
(2006/03)
穂村 弘

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内容(「MARC」データベースより)
他人の日常って、ほんとうに奇妙なもの。ましてや鬼才ホムラヒロシともなれば…。くすくす笑いとハイブロウな後味のウソ日記。挿絵はフジモトマサルのひとこま漫画。『別冊文芸春秋』連載に加筆して単行本化。

どうでもいい、しかしそれがいい。

ときどき、穂村さんと会話をしている「天使」はところで誰?(誕生日のプレゼントに木のうろを欲しがったり、第一礼装=おめかしで行くかどうかを聞いたりする。一瞬、彼女的な人のことなのかな、と思ったんだけど、もうもうと土煙りのたつヘッドスライディングを見せてくれたりするので、やっぱり実在ではない不思議な相方のようなものなのかしらん)

大正時代の学習帳とか、綴り方のお手本は純粋に面白そう~~。でも、自分の使ってたものが、後の世の人に見られるのはちょっとやだな。笑
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「ワイルド・サイドを歩け」

 2010-02-14-02:30
ワイルド・サイドを歩け ~『このミス』大賞・シリーズワイルド・サイドを歩け ~『このミス』大賞・シリーズ
(2004/03/13)
東山 彰良

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相浦理一、18歳―昼は進学校に通う優等生、夜は博多の街角に立つ男娼。ある晩、はずみで客を殴り倒した理一は、男のバッグを持ち逃げする。バッグの中身は、大量の台湾産ドラッグ「百歩蛇」と拳銃一挺。理一は悪友の馬素たちと相談し、「百歩蛇」をストリートギャング・ラプターズに売り付けようと企む。井島勝義、26歳、通称イジー―組員一人の超弱小零細暴力団、井島組の組長。上納金の締めつけにあえぎ、上部団体に内緒でガキ相手のドラッグ密売に乗り出すが、ホモの台湾人運び屋が商品と拳銃を奪われるトラブルが発生、ドツボ一歩手前。通称ユーリ(本名不詳、20歳くらい)―ラプターズを束ねる、ユーリ・アルバチャコフ激似のストリートギャング。ドラッグ商売をめぐって井島組と衝突する。理一とイジーとラプターズ、三つ巴の抗争はさらにヒートアップ。

このミス2010年版を読んで、気になっていた「ジョニー・ザ・ラビット」。そちらがまだ図書館に入っていないようなので、とりあえずはあるものを借りてこようと借り出してきたんですが…。うーむ、感想としては、私はワイルド・サイドを歩きたくない!、という感じですかね。

最初のシーンを除けば、主人公の理一が男娼である必然性もないし(もしかして、ヘモXのせい?)、他の登場人物たちも、やたらと特徴があるのに、いまひとつキャラが立っているとは言い難い。ばたばたと人も死んでいるけど、クライム・ノベルとしての突き抜けた爽快感もない。うーん、これは何を描きたかったのでしょう??? そして、福岡が滅多矢鱈と危険な街になっていることも気になります。確かにその点は思いっきりワイルドだったかもしれません。しかし、同じ若干キケンな匂いのする福岡なら、北森さんの「親不孝通り」シリーズの方がいいよなあ。こうなってくると、興味を持った「ジョニー・ザ・ラビット」もちょっとあやしいよなーー。

「ぼくと、ぼくらの夏」/夏に死んだ

 2009-07-30-14:05
ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)
(2007/05)
樋口 有介

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内容(「BOOK」データベースより)
高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らすぼくは、友達の麻子と調べに乗り出したが…。開高健から「風俗描写が、とくにその“かるみ”が、しなやかで、的確であり、抜群の出来である」と絶賛され、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した、青春ミステリーの歴史的名作。

新しい作品かと思っていたら、私が手に取ったのは新装版だったらしく、実際には88年の作品なんですね。解説には「古びていない」とあるんですが、私は時代を感じちゃったなぁ。途中までは、ん?これって時代はいつ?、と思いながら読んでたんです。つまりは古いことに気付かなかったとも言えるので、ある意味では「古びていない」のかもしれないんだけど…。

美人教師、美少女のガールフレンド、バイクを駆る、喫煙、お酒だって飲んじゃう(主人公たちは高校二年生)、なーんてあたりに時代を感じたんですが、如何でしょう? 今の「青春ミステリー」には、あまりないだろうキーワードな気がするなぁ。

男の子と父が二人で住んでる家で、シャワー借りたり、Tシャツ借りたり、あれがどうのこうのって、言わないと思うんだけどなー。とってつけたように、生理の話が出るお話って、あんまり好きじゃないんです(さばけてる女の子、とかそういう面を出したいの?)。

地の語りでは、「麻子さん」と読んでるのに、実際に彼女を呼ぶときは「酒井」と呼ぶ、主人公の戸川くんもなんだか不思議ー。し、しまった、一つもいいことを書いていない! なんかね、でも、この表紙とタイトル、「青春ミステリー」という単語から惹起された自分のイメージだけでも、ま、良かったかな。

「おまけのこ」「ちんぷんかん」

 2009-05-20-23:56
おまけのこおまけのこ
(2005/08/19)
畠中 恵

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ちんぷんかんちんぷんかん
(2007/06)
畠中 恵

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「しゃばけ」→「ぬしさまへ」→「うそうそ」→「ねこのばば」と、1→2→5→3の順番で読んでしまったわたくし。「おまけのこ」と「ちんぷんかん」を図書館で見つけ、これで間が埋められると小躍りして借りて来たわけですが、「おまけのこ」が4、「ちんぷんかん」が6。更に、既に第7弾である「いっちばん」が出ているんですね…。いやー、実は「うそうそ」が最新刊だと思っていたし、今回の二冊で「うそうそ」までの間を埋めたつもりでいたんです。ああ、全然順番が分からないですよ…。
 おまけのこ*目次
こわい
畳紙
動く影
ありんすこく
おまけのこ
 ちんぷんかん*目次
鬼と小鬼
ちんぷんかん
男ぶり
今昔
はるがいくよ
「うそうそ」でちょっとしゃばけシリーズから心が離れていたんですが、これはやっぱり順番通りに読まなかったせいなのかも。今度はね、割とすんなりこの世界に入っていくことが出来ました。このシリーズ、短編の方が好き、という自分の好みもあるかとは思うのですけど。

「おまけのこ」では、若だんなと栄吉の幼き日の絆が語られる、「影女」が良かったです。確かに寝込んでばかりの若だんなだものね。たとえ近所に住んでいたとしても、まだ幼く外で活発に遊んでいる他の子どもたちにとっては、こういったことでもないと、若だんなの存在に関心すらわかないよねえ。不思議なタイトル、「ありんすこく」は、吉原の禿、かえでの足抜けの話。

「ちんぷんかん」では、「鬼と小鬼」にて、若だんなはとうとう死出の旅へ! いやー、若だんなも忙しい人ですよね。「ちんぷんかん」を読んでいる時に、「うそうそ」→「ちんぷんかん」だと思っていたので(実際は、「ちんぷんかん」→「うそうそ」)、腹違いの兄、松之助の縁談話におかしいなぁと思ってたんですが、なるほど、これはこれで良かったんですね。マンネリとも思われるこのシリーズ、そうはいっても、若だんなの周囲も何かと変わっていくのだなぁ、と思いました。

変わらぬというか、今回改めて可愛いなぁ、と思ったのが、鳴家たちのきょんぎゅーとか、ぎゅんいーっなどの叫び声。何だか和みますよねえ、この叫び。袖に鳴家を忍ばせてみたい♪

「水族」/大人の絵本

 2009-04-09-21:54
水族 (Coffee Books)水族 (Coffee Books)
(2009/01)
星野 智幸小野田 維

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岩波書店の「Coffee Books」シリーズなるものの一冊のようです。他のラインナップも見たけど、そっちはちょっと食指が動かず。目指すところは大人の絵本? 綺麗な本ですよー。

代々木動物園の夜間警備員として雇われた、雨利潤介。ちょっと変わっているのは、彼の職場が湖底にあるということ。湖底にある分厚いアクリル板でできた直方体の小屋の中で暮し、やはり全面アクリル板でできた中トンネル内の廊下を見回る。そこからは、銀色の小魚の群れや、サメやマグロなどの大型魚、海亀、イルカ、アシカ、ペンギンが泳ぐさまを眺めることが出来る…。

何やら曰くありげな潤介の生い立ち、自らを劣っていると信じ込む潤介。様子のおかしい魚たち。

最初の休園日に、潤介はカバの飼育係だという浜麦さんと東京電波塔に上る。やたらと人から見られる潤介、都会に慣れない内は、人の目を気にしないことだと浜麦さんは言うのだが…。
SF的なお話でもあります。「植物診断室」(感想)のベランダに作った「自然林」といい、星野さんの本を読むと、沈黙のまま生命力に溢れたような、妙に迫力ある描写に呑まれちゃいます。なんとなく、気持ち悪くもあるんだけどね。

眼下には狂暴なほどの緑が繁茂し、ジャングルを形成している。それが都心の平野部一面に連なり、遠くに行くに従って迫り上がって、柔らかい緑のビロードに変わっていく。平野部はその緑の斜面に囲まれたすり鉢の底にあった。(p26から引用)

あれ、ここはあんまり気持ち悪くないかな。人ではないものの無言の迫力は、この人の持ち味なのかしらん。無機質と有機物が混じり合ったような不思議な味わい。でも、ラストの様子は美しいです。

「星の綿毛」/すべて、泡沫の夢

 2009-03-16-23:28
星の綿毛 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)星の綿毛 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
(2003/10)
藤田 雅矢

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裏表紙から引いちゃいます。

どことも知れぬ砂漠の惑星。そこでは<ハハ>と呼ばれる銀色の巨大な装置が、荒れた大地を耕し、さまざまな種子を播きながら移動を続けていた。<ハハ>に寄生する人々のムラで、少年ニジダマは暮らしていた。どこかに存在するというトシに憧れる彼は、ある日、トシからの交易人を名乗る男ツキカゲを迎える。それは、世界に隠された大いなる秘密と、ささやかな約束へとみちびく出会いであった―植物育種家にして叙情SFの名手が描く、とある世界の発芽と収穫の物語。

SFは苦手だったはずなのに、もろ日常の本を立て続けに読んじゃうと、最近、何だか苦しくなってきちゃうんです。読書に求めるのが、完全にトリップになってきてるのかなぁ。で、さらにSFとはどれだけ美しいイメージを見せてくれるかだと思った次第。

砂漠をぽくぽくとした黒い土に変え、ゆっくりと進んでいく、銀色に輝くムラの<ハハ>と呼ばれる物体。<ハハ>の下流での少年たちの落ち穂拾いのさま。灼熱の砂漠。灼熱の砂漠に耐えるために、クロモサックなる腰についた瘤に、クロモチップ<人造染色体片>を差し替え、後天的に身体を作り変える交易人。交易人が操る、七本脚のジャランガたち…。太陽の光を受けて発電する、イシコログサの大群落。淡く光るヒカリゴケ。ニジハノチョウの目眩く色彩。

うーん、とっぷりと美しい想像力に浸ることが出来ました。

お話もね、二転三転。あ、こういう物語なのかな、と思った瞬間裏切られ、その感覚が快かったです。
SF

「ゆめつげ」/視えてるんです

 2008-12-18-00:18
ゆめつげ (角川文庫)ゆめつげ (角川文庫)
(2008/04/25)
畠中 恵

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時は風雲急を告げる幕末の世。弱小神社、清鏡神社を護る神官兄弟、川辺弓月、信行は、裕福な札差の生き別れた後継ぎを探す騒動に巻き込まれる。

清鏡神社とは別格の神社、白加巳神社の権宮司、佐伯彰彦に頼み込まれ、また礼金にも(主に兄弟の父親が)心惹かれ、兄、弓月は、気が進まぬまま、夢告げを行うことになったのだが…。辻斬りに襲われたり、集まった三組の親子が襲われたりと、白加巳神社の周辺は何かときな臭く、兄弟の身にも危険が及ぶ。

神社を根城にしているらしき浪人たちの目的は?、また権宮司、彰彦の狙いとは?、三組の親子のうち、本物の後継ぎは誰なのか?、札差をたたむ決意をしている青戸屋の意図とは?

お話は謎仕立て。これにおっとりした兄と、その兄を叱咤激励するしっかり者の弟が絡むわけです。

でもねー、いっそのほほんとした雰囲気なら、それはそれで良かったんだけど、この夢告げ。人の体には悪影響を及ぼすらしく、夢告げを繰り返す度に、お兄ちゃんは何度も血を吐いたり、死にそうな目にあってしまうのです。実際、浪人たちの目的にしても、そんな迂遠なやり方しないだろう、と思ってしまうし、なんだかお兄ちゃんの血のにおいばかりが印象に残るのでした…。結構、人死にも出てしまうしなぁ。もう少し柔らかい謎で、この兄弟の掛け合いを見たかったです。

タイトルだって、平仮名で「ゆめつげ」。表紙といい、もう少し柔らかい物語を期待してしまっただけに、ちょっと残念。

「清談 佛々堂先生」/粋にいきましょ

 2008-09-22-22:27
清談 佛々堂先生 (講談社文庫)清談 佛々堂先生 (講談社文庫)
(2007/09/14)
服部 真澄

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仏のようだからと言う人もいれば、ブツブツ文句を言うからだ、と話す人もいる佛々堂先生の名の由来。確かなのは、先生の物を見る目と、物事を好い塩梅に持って行くその力。

佛々堂先生は、特に身分を隠しているわけではないんだけれど、その現れ方は少々水戸黄門的とも言えるかも。擦り切れたシャツと作業着のようなズボンという見てくれに、ハンガーに服がぶら下がり、家財道具が詰め込まれているような目立つワゴン車。到底名のある人物には見えないけれど、これが実は関西随一の数寄者なのだとか。

「控えおろう!」なんて叫ぶ、助さん格さんは居ないけれど、京橋の美術商「知恩堂」なんかは近いものがあるんじゃないかな。人を助けるだけではなく、自らの楽しみも忘れない、佛々堂先生の最後のネタ明かしを聞く所なんかも含めてね。
目次
八尾比丘尼
雛辻占
遠あかり
寝釈迦
私が好きだったのは、「遠あかり」と「寝釈迦」。

「遠あかり」は、飛騨高山の料亭、『かみむら』を舞台としたお話。勇壮な起こし太鼓もいいし、段々と洗練されていく『かみむら』の様子もいい。女ものの着物のそんな秘密。全然知りませんでしたよー。しかし、ここでの佛々堂先生の手配は、ちと殺生でもある。芽吹きの遅い男に、”起こし太鼓”の音が聞こえるといいな。

「寝釈迦」の舞台は、山守りをつとめる民宿『わだ』。丹精込められた松の木である肥松、見てみたい気がします。きっと私が見てるようなのは、肌荒れしてるような松なんだろうな。虫は松の油を好いているんだそうな。

服部真澄さんといえば、これまで読んだことはなかったのだけれど、ハードな国際推理小説を書かれる方とのイメージでした。それとは全然タイプが違うこういう本も書かれるんだな、とちとびっくり。

私が読んだのは単行本なんだけど、amazonの表紙画像を貼ろうと思ったら、そちらの情報は出てこずに、文庫本の情報が出てきました。なぜなんだー。続きも出てもいい作りなんだけど、このあと続きはないのかしら?? 飄々とした佛々堂先生、またどこかでお目にかかりたいものです。
四季さんに教えてもらいました。単行本の表紙はこちら↓。こっちも雰囲気あるよね。
清談 仏々堂先生清談 仏々堂先生
(2004/03)
服部 真澄

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「愛の領分」/愛には領分があるのか?

 2008-08-10-23:37
愛の領分愛の領分
(2001/05)
藤田 宜永

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わが図書館で、直木賞特集の本棚が出来てまして、そこから借り出してまいりました。ということで、第125回の直木賞受賞作であります。

藤田宜永さん、初読みです。帚木蓬生さんの、現代離れしたほのぼのとした恋愛小説を読んだ直後だったからか、この情念の世界がなかなか面白かったなぁ。じっとりと濃い。若いころの友情と、自分でも何ともし難い感情の世界が描かれることから、宮本輝さんの「青が散る」を思い出しました。
宮”武”淳”蔵”(テーラー・ムサシ経営)は、妻に先立たれた男やもめ。若いころは随分と遊んだものだったが、今では息子と二人、静かに暮らしている。いつものように静かな仕事場に、若き日に共に遊び歩いた、高瀬昌平が突然現れた。淳蔵は、昌平の妻、美保子にその昔、恋をしており、彼女の手酷い裏切りにあって以来、それまでの交友を断ち、四半世紀ほども高瀬夫妻に会うことはなかった。探偵を雇ってまで、淳蔵を探し出した昌平の真意とは…。

手広く商売をやっている家に生まれ、羽振りが良く、如何にも陽性の坊ちゃんだった昌平は、商売に失敗し、心身ともに別人のようになっていた。美しかった美保子も、重症筋無力症を発症し、衰えを隠せない。淳蔵は昌平のスーツの仕立てを頼まれ、東京から上田に住む高瀬夫妻の元を訪れることになるのだが…。四半世紀を経ての再会により、淳蔵、昌平、美保子、更にもう一人の女性を加えて四人の人生が再び絡まり合う。

もう一人の女性とは、淳蔵、昌平共通の知人である太一の娘、佳世のこと。五十三になる淳蔵と三十九歳の佳世。年齢は若干離れているものの、共に独身の二人。二人の交際には、何の支障もないはずなのだが、この恋にはどこか秘密の匂いが付きまとう。若い日に、不倫相手が自殺した過去を持つ佳世。彼女の書く植物画は、精密で美しいけれど、どこか淋しさが付きまとう。淳蔵と体を重ねるようになっても、その欠落した様子は埋まらず、時に浴びるように酒を飲む。彼女の闇には何があるのか。対する美保子の闇も深い。現実に幸福を見いだせない彼女は、淳蔵に愛された過去に縋り付くようである。

それぞれの人物の陰影が濃いです。淳蔵の亡くなった妻のことを、淳蔵は激しい情愛ではないけれども、愛していたと信じていた。しかし、彼女はおっとりとしたその顔の下で、淳蔵と美保子の繋がりに嫉妬しており、淳蔵の愛は通じていなかったようでもある。また、その母に夫への不信を告げられていた息子も、抑うつを抱えたまま、どこか歪に成長していた。なんか考えちゃうとくらーいし、みんな、もっと思ってることちゃんと発散しようよ!、って感じなんですが、こういうじっとりしたお話も、たまには悪くないなぁ、と思いました。

だけど、悪縁だろうが良縁だろうが、縁には違いない。

人が何を考えているのか、他人には本当の意味で分かることは決してないけれども、それでも人は繋がって生きていく。時にそれは思いがけない因果をもたらすものだけれど、それもまた人生、なんですかねー。昌平と淳蔵のような繋がりは、さすがに一般的とはいえないと思うけれども。淳蔵の職業が、仕立て屋というのもまた素敵です。刹那的なものを抱えつつ、若き日から静かな生活を求めていた淳蔵に、実に相応しい職業と言えるでしょう。キャバレーのボーイから仕立て屋の弟子になる、若き日の選択も凄いけど。

「千日紅の恋人」/帚木蓬生さんの恋愛小説

 2008-08-10-01:12
千日紅の恋人 (新潮文庫 は 7-18)千日紅の恋人 (新潮文庫 は 7-18)
(2008/03/28)
帚木 蓬生

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帚木蓬生さんといえば、まだそういう話が珍しかった頃から、医師であるという特性を生かした医療ミステリや、社会派のお話が多かったと思います。ロマンスはあっても、それは決して主役ではなく、ほんのちょっと、ひっそりと華を添えるような、そんなイメージ(まぁ、でも、きっとロマンチストなんだろうなー、と思う箇所はいくつかありましたが)。ところが、そんな帚木さんのこの本の帯には、「辛い別離を経験した時子さんに、素敵な恋が訪れた」とあります。

主人公の仕事を通して老人介護の話や、人間の日常生活の心持ちの話、そんな話もちらりとは出てきますが、他の作品では、脇役に追いやられていた「恋愛」の方がぐーっと押し出されている感じ。とはいえ、それは生々しいものではなく、あくまでほのぼのとしたものなんだけど。
死別、離別と二回の別れを経験した、三十八歳の時子さん(でも、見た目は若い)。ホームヘルパーの資格を持っている彼女は、ヘルパーとしての仕事と、亡き父が遺した扇荘の管理人という二つの仕事で生活している。住宅街にあるアパートのこと、周辺住民との間にも何かとトラブルがあったり、個性豊かな住人たちにも色々と問題はあるけれども、時子は母に代って、もう十五年も管理人としての務めを果たしてきた。個性豊かだけれど、正直、あまり立派な人が多いとはいえない扇荘。そんな古いアパートに、ある日、これまで扇荘の住人の中にはいなかったような、感じのよい若い男性(しかも、第一印象は「美男子」)が入居してくるのです。

とくれば、時子さんの恋愛の相手はもう決まったようなものなんだけど…。恋愛とはいっても、時子さんと母が出演する、カラオケの発表会を見に行ったりとか、時子さんの母を交えた一泊旅行とか、この青年、有馬さん、若いらしいのに(年齢が見つけられなかったんだけど、二十代後半なのかな?)、なかなかすごいアプローチをするんだよね。

いやー、時子さんは前の夫を偲んでるわけでは全然ないんだけれど、なんだか「めぞん一刻」の響子さんと五代君を思い出してしまいましたよ。管理人さんって、その人が魅力的な若い女性の場合、ぐっと魅力ある職業になっちゃうんでしょうか。

時子さんは扇荘で亡くなった高齢者のお通夜・お葬式を扇荘から出してあげたり、壊れた個所があればすぐに気付いて工務店に連絡したり、とその働きぶりはとてもマメマメしく、管理人の域を超えて情のあるところを見せるのだけれど、どーも細かい箇所で時子さんの性格が気になっちゃって。家賃を滞納するわ、洋服ダンス代りに外の洗濯紐を占有するわの、頂けない店子に対しては、心中では思いっきりその人だけ呼び捨てだったりとか、ある店子の商売に対して「小判鮫商法」と何度も出てきたりとか、ちょっとなんだかなーと思ってしまいました。要介護認定をきちんともらえるように、わざと惚けたふりをするんだ、と老母に指導したりする箇所とかもね(ま、これはこういう実情があるという話だったのかもしれないけれど)。

舞台が九州に設定されているので、私には正しい会話がわからないのだけれど、あと気になったのが、会話文がほとんど体言止めのように感じること。もともと帚木さんの会話文って、あまりこなれていない印象を受けていたんだけど、今回は字も大きく、会話も多かったことから、妙に気になってしまいました。

なんだかいちゃもんばかりつけてるような感想になっちゃったけど、決して悪い話ではないんです。さくさく読めるし、ほのぼのもする。でも、なんだか現代の話とは思われないし(というか、この時代設定は一体どの辺なんだー?)、正直なところ、帚木さんでこのお話を読まなくてもいいんじゃないか、という気がしました。なんというか、この本のテーマが良く分からなかったんです…。恋愛だけではなく、それぞれの癖のある住人たちが、なんとかまとまって暮らせるようになっていくシーンもある。そういう場面も含めて大人の童話なんでしょうか…。

「雑居時代」/どたばた同居生活

 2008-06-07-22:04
雑居時代 上 (1) (集英社文庫 52-G)雑居時代 上 (1) (集英社文庫 52-G)
(1982/07)
氷室 冴子

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雑居時代 下    集英社文庫 52-H雑居時代 下  集英社文庫 52-H
(1982/07)
氷室 冴子

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氷室冴子さんのコバルト文庫には随分お世話になりました。当時、小遣いのほとんどを注ぎ込んでは買ってたなぁ。そして、その内何冊かの本は実は未だに手元にあったりします。「シンデレラ迷宮」を手放してしまったのは、今思うと勿体なかった。一般に”明るくてたくましい少女”を描いたとされる氷室さんだけれど、氷室さんの描く少女たちは、実は明るいだけではなくって、「さようならアルルカン」、「白い少女たち」のようなある意味暗いお話もあったし、例えば瑠璃姫のお人好しで涙脆いところなど、その幅のある人物像が魅力でした。何よりも、お話の中の彼女たちは、生き生きと活躍していたしね。

さて、私の手持ちのこの「雑居時代」は、なんと昭和61年発行の第34刷のものだったりします。何がすごいって、こんな古い本の表紙があのamazonでしっかり出るということ!(新刊だって、出ないやつもあるのにさ) たぶん、この表紙は私が持ってるものと同じもの。それだけ、ロングセラーだと言えるのでしょうか。…amazonで表紙が出る出ないの基準も良くわからないけど。

さて、雑居時代は、才媛にして強烈な二重人格者「倉橋さんちの数子ちゃん」と、漫画家を目指す三井家弓、地方派クリスタルにして、能天気ハンサムボーイ、安藤勉の三人が営む共同生活を描いたコメディです。これ、今読んでも、キャラが立ってて好きだなぁ。数子が二重人格となった原因である憧れの譲叔父、彼の妻となった数子を数段上回る曲者の清香、譲の教え子にして彼を狙って数子と共同戦線を張っていた山内鉄馬など、脇の人物も抜かりなし。ま、譲については、憧れの君であるからして、他の強烈な人々に対して、キャラという程のことはないような気もするけど。

基本は数子を主人公としているんだけど、番外編の家弓の事情とか、鉄馬の事情も面白い。氷室さんは脇役をもとっても愛している気がして、それは「ジャパネスク」における小萩や守弥の日記もそうだし、「なぎさボーイ」「多恵子ガール」はいいとして、さらに「北里マドンナ」、「蕨ヶ丘物語」まで出ている所にも表れていると思うのです。広い世界に出ていく物語ではないのかもしれないけれど、そういう人の関係性を色々な面から描き出すという点で、得難い作家さんだったのではないかなぁ。何よりも自分が作り出したキャラに愛情たっぷりだった気がして、「ブンガク」としてはそれはプラスには働かないかもしれないけど、同じく少女だった読者としてはその世界を共有出来た気がして大好きでした。

「ジャパネスク」もいつの日か再開されるんだと信じていたのだけれど…。氷室冴子さんは6月6日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。冊数が手ごろなところで、「雑居時代」を再読してたんだけど、これから「ジャパネスク」も引っ張りだしちゃおうかな。
目次
(上巻)
第一話 かくして雑居生活は始まるのだった
第二話 (番外編)家弓(あたし)には家弓(あたし)の事情があった
第三話 とりあえずハッピーエンド―嫁小姑戦争に終わりはあるか?
第四話 彼はジャムしか愛さなかった
第五話 買われた花嫁は紅バラを拒んだ
第六話 人生は百万のリハーサルと体力を要求する芝居だ
(下巻)
第七話 漫画家ほど素敵な商売はない!……と思う
第八話 哀愁のトム―その時、彼はキャベツを買った
第九話 ヒロインの条件は”絵になる”ことなのだ
第十話 (番外編)嗚呼、受難の日々―鉄馬(ホモ)には鉄馬(ホモ)のいわくいいがたい苦しみがある
第十一話 続・嫁小姑戦争
あとがき

「狼と香辛料4」/豊作の神と行商人の旅4

 2008-05-26-23:59
狼と香辛料 (4) (電撃文庫 (1390))狼と香辛料 (4) (電撃文庫 (1390))
(2007/02)
支倉 凍砂

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ホロの故郷の情報を求め、ロレンスたちが訪れたのはテレオという村。ところが、この村がどうにもきな臭い。商人としての勘を信ずるならば、さっさと村を後にするに越したことはないのだが…。ホロの故郷の昔馴染みの神々のことを知るために、ホロとロレンスは危ない道を渡ることに。

案の定、村を襲った麦をめぐる災厄に巻き込まれたロレンスたちは、テレオの村人たちのために、自らの身の安全と引き替えに、力を貸すことになる。しかしながら、状況は八方塞がり。三十六計逃げるに如かず。余所者であるロレンスたちの次に、いけにえとして差し出されそうなけなげな聖職者、エルサと、粉挽きのエヴァンと共にテレオの村から逃げ出すのだが…。

首尾よく逃げ出したというのに、エルサは村人達のために村に戻るのだという。彼女の状況に、ホロは自分が居ない間に滅ぼされた故郷を思う。自分が故郷の状況を知っていれば、間に合っていれば…。ホロの悔恨は苦いけれど…。

エルサとエヴァンの二人が実にさわやか。ホロが暴れまわっても、巧くまとめるのはロレンスの役目。麦の「奇跡」、異端の神であるトルエオ様の始末の付け方もお見事。そうして、旅は続くのです。「寄り道」になってしまっても、ね。

「とっても不幸な幸運」/その缶が見せるのは…

 2008-04-14-23:33
とっても不幸な幸運とっても不幸な幸運
(2005/03)
畠中 恵

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「しゃばけ」シリーズの畠中さんの現代物です。新宿の地下に古くからある、滅法腕っ節の強いオーナー店長+赤と金色に髪を染め分けたウェイター二人で切り盛りする酒場、その名も「酒場」。酒場の名前が「酒場」だなんて、ひねくれ者の証拠だと常連客は言うのだが…。三十代半ばの店長がひねくれ者なら、常連客たちもこれまた癖のある人物ばかり。さて、常連客ばかりのこの「酒場」で語られるのは…。
序章
第一話 のり子は缶を買う
第二話 飯田はベートーベンを聴く
第三話 健也は友の名を知る
第四話 花立は新宿を走る
第五話 天野はマジックを見せる
第六話 敬二郎は恋をする
終章
腕っぷしも強いけれど、なかなかの推理力を見せる店長。これは良くある料理+ミステリの小説か?、と思ったのだけれど…。タイトルにもなっている「とっても不幸な幸運」という名の缶詰、実はこれがカギとなっているのでした。ただの現代物ではなく、妖こそ出てこないものの、「しゃばけシリーズ」と同様、この本にも実は「不思議」が詰まっている。

第一話にて、店長の義理の娘、のり子によって「酒場」に持ち込まれたこの缶詰。のり子はこの缶詰を百円ショップで見つけたというのだが…。その缶を開けたとき、居合わせた者たちは幻を見る。さて、この缶は不幸を呼ぶのか、幸運を呼ぶのか?

実際、それぞれの章で語られる、「酒場」に纏わる人々の話は、結構ヘビーだったりするのだけれど、そこはそれ、少々漫画チックでもある人物造形にも助けられているというか…。なんというか、「世にも奇妙な物語」のような一話完結のドラマを見せられている感じ?

まるで見ざる聞かざるのような、表紙の妖精にも見えるイラスト。うーん、缶の中には彼女たちのような妖精が詰まっていたのかしら? 缶の不思議については、明かされることがないのだけれど、第六話「敬二郎は恋をする」のみは、昔の「酒場」の話が語られ、そこにはこの「とっても不幸な幸運」の缶詰は登場しない。それでもやっぱり、ここでもキーになるのは「缶」。「酒場」はどうにも「缶」と縁が深い場所のよう。

すごい面白いか?、と言われると、本としてそこまで面白いわけではないんだけれど(料理も美味しそうだけど、ものすごく美味しそうかと言えば、これまた微妙)、これ、ドラマにしたらいいんじゃないかなぁ、と思いました。「とっても不幸な幸運」。こんな缶があったら、やっぱり開けたくなっちゃうかな。
とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1)とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1)
(2008/03/13)
畠中 恵

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文庫も。ちょっと芋虫のようにも見えますね。

「狼と香辛料3」/豊作の神と行商人の旅3

 2008-02-07-23:42
支倉 凍砂
狼と香辛料〈3〉 (電撃文庫)

二人の旅は、ホロの生れ故郷ヨイツにぐっと近づき、彼ら二人は冬の大市と祭りで賑わうクメルスンの町へとやって来た。

今度の危機は、ホロとロレンスの仲を裂こうというもの。ホロに一目惚れした、魚商人アマーティが、ロレンスに対するホロの借金を完済し、ホロにプロポーズすることを宣言したのだ。

常であるならば、二人の絆にそんな輩が入って来ることは有り得ないのだけれど…。ホロとロレンスは、例によって微妙な仲違いの最中であり、ロレンスはホロを信じ切ることが出来なくなってしまう。

この巻でクローズアップされるのは、神であるホロの時の長さと、ただの人間、行商人であるロレンスの時の違い。二人は今この時を共にしているけれど、二人の持ち時間は決して同じではない。ましてや、行商人から町商人を目指すロレンスにとって、行商をしながらとはいえ、ホロの故郷への旅に付き合うという道草に使える時間はおのずと限られているわけで…。この物語は、手触りが感じられるような服の描写、美味しそうな食べ物の描写には非常に優れていると思うのだけれど、どうも季節の変化、外界の変化はいま一つ分かり辛い気がいたします。なので、その辺の切迫感はロレンスの言う台詞からしか読みとれないんだけどさ。や、麦の収穫から冬の大市なんだから、1巻から3巻までは大した時が流れていないと見るべきなのか。

今回の危機に対しても、ロレンスはやはり商人として立ち向かうことになる。黄鉄鉱の取引に絡むこの勝負。私、きちんと理解出来たわけではないような。汗

さて、ロレンスにとってホロはどんな存在なのか? またホロにとってのロレンスは? ロレンスも少々腹を括らねばならないのかも。異種婚についても聞いちゃったりしているわけだし、読者もそれを待ってると思うよ。笑

■関連過去記事■
狼と香辛料 」/豊作の神と行商人の旅
狼と香辛料? 」/豊作の神と行商人の旅2

「狼と香辛料2」/豊作の神と行商人の旅2

 2008-02-06-22:36

支倉 凍砂

狼と香辛料〈2〉 (電撃文庫)


1巻 での危機を乗り越えた、行商人ロレンスと、賢狼ホロの旅は続く。

前作では、銀貨の取引に絡み、ホロの正体を知るものたちが、彼ら二人を陥れようとしたのだけれど、本作の危機はもっととてつもなくヤバイもの。

なぜならばロレンスは、商人としての息を完全に止められることになる、破産の一歩手前にまでいってしまうのだから!

さて、ロレンスがなぜこんな羽目に陥ったかと言えば、ポロソンの町、ラトペアロン商会で、胡椒の取引におけるいかさまを見破った代わりに、欲をかいて強引に仕入れた武具が思わぬ大暴落をしていたから。得をしたつもりで、実はロレンスはラトペアロン商会に嵌められていた。さあ、ロレンスはこの危機をどう乗り切るのか? ロレンスは、故郷を共にする者たちと、ローエン商業組合に所属している。組合や各地にある商館は、異国で災難に襲われた者、不当な扱いを受けた者を助けてはくれるけれど、個人的な失敗や負債はそれには当たらない。今回の場合、まさに頼りになるのは、己とホロのみ。

二人の才覚と、リュビンハイゲンの町へと入った時の出来事から導き出された此度の逆転劇は、羊飼いの娘、ノーラを使った金の密輸。密輸の共犯者であったはずが、ロレンスよりも切羽詰っていたレミリオ商会の裏切りなどに遭いつつも、ロレンスは何とかこの災いを乗り越える。レミリオ商会への落とし前をつけつつ、儲けを引き出す手腕は、流石商人。


ホロとロレンスとの間の進展と言えば、彼ら二人の間の小さな諍いは、考え過ぎのロレンス(商人だけに、頭も回っちゃうんだよね~)のために、大きなものになりがち。ホロの次の台詞も、まったくそうだよなぁ。

「次からはわっちを怒らせてくりゃれ? ぬしが色々考えてくれるのは嬉しいが、場合によっては互いに怒って怒鳴り合ったほうが早く問題が片づくこともある」

時に愛情をこめて、時に揶揄いながら言う、ホロの「お人好し」という言葉。商人とお人好しは相容れないものにも感じるのだけれど、ロレンスの場合、商売以外になるとからっきしだからか、これが不思議と両立しちゃうんだよなぁ。勿論、ホロだからこそ、ロレンスも「お人好し」になっちゃうかもしれないけれど。

さて、おそらくは中世の時代をイメージしていると思われるこの作品。教会のイメージがとてつもなく悪いのには、ちょっと苦笑してしまいます。「羊飼い」って聖書に何度も出てくるキーワードだし、そんなに怪しげに見える職業だとは全く知りませんでしたよ…。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

・「狼と香辛料 ?」/豊作の神と行商人の旅3

「狼と香辛料」/豊作の神と行商人の旅

 2008-02-05-23:50

支倉 凍砂

狼と香辛料 (電撃文庫)


遅ればせですが、機会があって読むことが出来ました。結果、楽しい~!!

行商人ロレンスは、とある事情から豊作の神である賢狼ホロと道行きを共にすることになる。数百年の時を生きているという、この賢狼。耳付き、先のみが白いふさふさの尻尾付きではあるものの、人としての姿は可憐な乙女そのものである。けれど自ら「賢狼」を名乗るだけのことはあり、ホロは独り立ちして七年にもなり、行商人としては一人前であるロレンスを、すっかり手玉に取ってしまう。

馬を除けば話し相手など居るわけもない行商の旅。互いに憎からず思いながらのそんなやり取りが心楽しくないはずもない。互いの憎まれ口も、時にホロにドキドキしてしまうロレンスの心情もまた楽し。「助けて……くりゃれ?」、なーんて小首を傾げられたら、女性に慣れていないロレンスでなくとも、ちょっとぐらりと来てしまうのかも。

ホロが操るのは、「わっち」、「ありんす」など吉原を連想させる言葉なんだけど、これがまたホロの雰囲気にぴったりで、巧いなぁ。また、それが利益になるならば、靴の裏を舐めることすら厭わない、という商人としてのロレンスの考え方も面白い。ただし、商人としては優秀でも、ホロに言わせれば、ロレンスは「良き雄」としてはいま一つのようだけれど…(でも、食事や服、櫛などなど、ロレンスはなかなかやさしいおのこだと思うけど)。

一巻の旅は、麦畑実るパスロエ村から、港町パッツィオまで。ホロの生れ故郷である北の大地へはまだ遠い。くっつきそうでくっつかない、二人の関係もそうだけれど、旅が終わってしまうのが淋しくもある。って、現時点で7巻まで出てるみたいだから、まだまだ心配には及ばないようだけれど、ね。

まずは顔見世。身に降りかかった危機を一つ乗り越えて、二人の旅は続くのです。

・「狼と香辛料?」/豊作の神と行商人の旅2
・「狼と香辛料?」/豊作の神と行商人の旅3

「へび女房」/明治維新を生きた女性たち

 2008-01-08-22:15

蜂谷 涼

へび女房


なんでか、気になってしまって借り出した本です。かつ、タイトルにも、蜂谷 涼さんという作家にも見覚えがなかったはずなのに、一部はどこかで読んだような気が。連載とも書き下ろしとも書いてなかったんだけど、どこかで連載されてたのかなぁ。

さて、時代物であることが分かるこの表紙に、「へび女房」というタイトル。読む前はちょっと怖い話を想像していたんですが、これは幕末から明治にかけて時代が激変する中、懸命に生きた女性たちの物語なのでした。明治維新によって時代ががらりと変わる中、ある者は武家から的屋を経て薬屋へ、妾腹とはいえ姫君から芸者へ、「らしゃめん」と呼ばれ、謗られる異人の妻へ…。

一つ一つの短編はゆるい繋がりを持っており、あちらに出てきた人がこちらにもというわけで、その時語られなかったその人の事情が語られることで、その前後の短編もより味わい深くなる。

目次
へび女房
きしりかなしき
雷獣
うらみ葛の葉


強いけれど、悲しみ、悔しさを胸に秘めた女性の四様の生き方。
印象深かったのは、「きしりかなしき」と「うらみ葛の葉」。

きしりかなしき」は、めだまとおでこという、ユーモラスなお座敷名を持つ芸者二人の話。幼いころから色里で育ったたまが「めだま」、松平侯のご落胤、糸子が「おでこ」。アメリカ人軍事顧問に、日本人の妻を所望された大隈重信が、糸子の血筋を頼んでお座敷へとやって来るのだが…。
花街に沈むも苦海、将軍夫人となるのも地獄。留まるも行くも辛い道。まるで双子のような、めだまとおでこ。それぞれに、それぞれの辛い人生があったのだけれど、誇り高いおでこは、めだまを己の影とし、今一人の己と戦っていた…。

うらみ葛の葉」は、怖かったなぁ。文部大臣、森有礼の妻、常子が生んだ赤ちゃんは、金髪に白い膚。この生まれるはずのない子供を産んで以来、常子の心はどこかへ行ってしまった。親交があった、東京大学医学部教授、ベルツの妻である花は、彼女を見舞い、彼女の事情に心を砕くのであるが…。ここでは、森有礼が滅茶苦茶ひどい奴なんですが、実際のところ、どうだったのでしょうか。

しかし、もともとこの辺の話って、漫画で読むこともあるせいか、書きこまれれば書き込まれるほど、なぜだか漫画チックにもなってしまうように思いました。…という私の突っ込みは、突っ込みまくりの「百年の誤読 」を併読してた弊害か??

「探偵ガリレオ」「予知夢」/ガリレオ

 2007-12-25-22:28
探偵ガリレオ (文春文庫)探偵ガリレオ (文春文庫)
(2002/02/10)
東野 圭吾

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予知夢 (文春文庫)予知夢 (文春文庫)
(2003/08)
東野 圭吾

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言わずと知れた月9ドラマ「ガリレオ」の原作です。

福山雅治が扮していた湯川助教授とコンビを組むのは、新人女性刑事ではなく、湯川の同級生であった警視庁捜査一課の草薙刑事。とはいえ、この草薙刑事、同じ帝都大学出身とはいえ、彼が出たのは社会学部であり、在学中は湯川助教授の研究室がある理工学部の方にはほとんど足を踏み入れることもなかったのだとか。

理系オンチを自称する草薙刑事、不思議な現象があるたびに、湯川助教授の元を訪れ…。さて、その不思議な現象には、現実的な説明をつけることが出来るのか??

「探偵ガリレオ」の解説は、俳優の佐野史郎さんが書いておられるのだけれど、実は東野さんが湯川を創り出した時、そのイメージは佐野さんだったのだとか。佐野さんと福山さんでは、だいぶ違うけれども。笑 ま、月9的には福山さんなんでしょうね。私はドラマを毎回見ていたわけではないのだけれど、たまーに出てきた北村一輝さんが扮していた刑事が、草薙刑事なんですよね? それこそ、月9的には華がないのかもしれないけれど、福山&北村コンビで見たかったなぁ、などと思うのでした。本の中でも、この二人のじゃれ合いのような空気が良いのだもの。

本の中の湯川助教授は、同級生だった草薙刑事とのシーンが多いからか、ドラマよりも若干お茶目。同じなのはスポーツ万能なところでしょうか。とはいえ、ドラマでは福山さんが様々なスポーツに挑戦されていたけれど、本の方では学生時代から続けているバドミントン一本槍ですかね。

「容疑者Xの献身」の図書館予約もだいぶ落ち着いた数字になっていたので、こちらも読んでみようかなぁ、と思いました。

苦手意識を持っていた東野さんですが、ドラマのお陰で、割合楽しく読むことが出来ました。警察小説として読むと、草薙刑事一人で聞き込みに行っちゃったり、民間人である湯川が現場に入れちゃったり、ちょっとおかしいような気もするけれど、これはだから探偵小説なんですよね。

目次
探偵ガリレオ

第一章 燃える もえる
第二章 転写る うつる
第三章 壊死る くさる
第四章 爆ぜる はぜる
第五章 離脱る ぬける
解説・佐野 史郎


予知夢
第一章 夢想る ゆめみる
第二章 霊視る みえる
第三章 騒霊ぐ さわぐ
第四章 絞殺る しめる
第五章 予知る しる
解説・三橋 暁

「いつか王子駅で」/待つということ

 2007-12-09-23:04
堀江 敏幸
いつか王子駅で

各所で好評の堀江敏幸さん、初読みです。

数ある著作の中で「いつか王子駅で」を選んだのは、荒川の風景が表紙になっていたことと、どうも都電の近辺が舞台になっているようであったから。

私が新卒で入った会社は、荒川に縁がある会社で、それで初めて東京都内に路面電車が残っていることを知りました。本の中に出てくる飛鳥山公園も、研修中にそこで花見をしたんだよなぁ、などと懐かしく思いました。

字も割と大きめで、頁数だってそう多いわけでもない。直ぐに読めてしまうかと思ったら、これがなかなかそうはいかなくって。筋と言う筋があるわけでもない、とても静かなこの小説は、読み手にゆっくりとしたスピードで読むことを求めているように感じたのです。

言うならば、日本の伝統的な私小説風の味わい。勿論、これはあくまでフィクションの巧妙に創られた「私」小説であり、この小説の中の「私」は、堀江さん自身とは微妙に重なり、微妙に違うのでしょうけれど。

主人公は、翻訳や時間給講師をして暮らす「私」であり、これは彼の生活圏内で知り合った人々との交わりの話。背中に昇り龍を持つ正吉さん、小さな居酒屋「かおり」のママ、小さな旋盤工場の社長で、私の家主でもある米倉さん、米倉さんの娘の咲ちゃん、米倉さんの工場で働く林さん、古書店を経営する筧さん…。偉い人は出てこないけれど、皆が皆、しっかりとした「手」や仕事を持つ人だということが出来る(まだ年若い、「咲ちゃん」だけは、陸上部に所属するだけに、彼女が持つのは「手」ではなく、その伸びやかな肢体かな)。

物語の序盤において、「私」が一目置く「正吉さん」は早々に姿を消し、不在のまま物語が進んでいく。「私」は行きがかり上預かってしまった荷物のために、「正吉さん」をひたすら待つ。語られるのは、待つ間の「私」の身近で起こる、小さな出来事、不在であっても尚強い正吉さんの影…。

この小説の中で、最も印象深かったのは以下の部分。

 私に最も欠落しているのは、おそらく心の「のりしろ」だろう。他者のために、仲間のために、そして自分自身のために余白を取っておく気づかいと辛抱強さが私にはない。いま咲ちゃんと、ダイジェストというのかあきらかなリライト版でたどっているトム木挽きあらためトム・ソーヤーの、「待つこと」を知らぬせわしない動きが『あらくれ』のお島が見せたせわしなさと似て非なるものだと感じられるのは、後者の心に細い点線で区切られた「のりしろ」がないせいではないか。そこに糊をきちんと塗らなければ形が整わない、最後には隠れてしまう部分にたいする敬意を彼女が有していなかったせいではないのか。                        (p146より引用)

何かとせわしない世の中だけれど、自分も心の「のりしろ」が足りていないのかも、とふと思いました。最初に静かな小説だと書いたけれど、実際は静かな部分ばかりでもなくて、過去の歴史的な競馬の部分などは、生き生きと爆発的。ラストもいいです。

さて、この小説の中で、島村利正、瀧井孝という作家の小説が多く引用されるのだけれど、私にはきっとこの人たちの小説を読むことは出来ないだろうなぁ。それこそ、静かに待ち、余白に敬意を表する、本読みとしての実力が問われるわけで…。実は堀江さんの文にしても、味わうのにちょっと自分の実力がギリギリかなぁ、とも思うのだけれど、時にこういう文章に触れるのもいい経験だと思いました。とんとんと、焦っていた心がならされて落ち着くのでしょう。

最初に新卒の時の話を少し書いたのですが、あれから○年、実はこの12月からまた「新入社員」となりました。それまでと同じ場所で働いているので、環境がそう変わるわけではないのだけれど、働き方の形態が変わると、やはり少し焦ってしまう部分もあって。気ばかり焦って本も落ち着いて読めなかったりしたのですが、心の「のりしろ」を大事に楽しく働いていきたいなぁ、と思いました。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

←こちらは文庫。都電が可愛いですね。

「ねこのばば」/しゃばけシリーズ3

 2007-11-19-22:54
畠中 恵
ねこのばば (新潮文庫)

途中、すっ飛ばして、その時点での最新刊であった「うそうそ」を読んでしまった私ですが、図書館で「ねこのばば」の文庫を見つけたので、やっぱり借りてきちゃいました。

相変わらず、長崎屋の若だんな、一太郎は体が弱く、佐助や仁吉は若だんなには甘甘で…。以下、5つの短編が語られます。

目次

茶巾たまご
花かんざし
ねこのばば
産土
たまやたま


うーん、やっぱり、このシリーズは短編がいいような気がします。それでも、現時点で一番好きなのは、登場人物それぞれの事情が巧みに描かれた感のある「ぬしさまへ」で、(一太郎の腹違いの兄、松之助の話、「空のビードロ」や、仁吉の千年にわたる片思いを描いた「仁吉の思い人」など)、今回のは悪くはないけど、特筆すべき出来ではないようにも思います。人気シリーズだけに、ちと点が辛くなってしまうのかも。畠中さん、わが図書館でも人気でして、つくもがみ貸します」なんかも、すごい予約数なんですが…。

「産土」は、犬神である佐助の話。犬神である彼だけれど、「佐助」と呼んでくれる人のあるありがたさ、居場所のあるありがたさ。

「たまやたま」では、一太郎の幼馴染、栄吉の妹、お春に縁談が…。さて、一太郎はお春の謎かけを解くことが出来るのか??

メディアミックス流行りの昨今ですが、この週末にはこの「しゃばけ」のドラマが放映されますね。楽しみなような、怖いような。予約しておかなくっちゃ。

☆関連過去記事☆
・「しゃばけ 」/妖(あやかし)
・「ぬしさまへ 」/やっぱり妖(あやかし)
・「うそうそ 」/若だんな、箱根で湯治・・・・のはずが?
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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