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「太陽の村」

 2010-03-31-23:53
太陽の村太陽の村
(2010/01/28)
朱川 湊人

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内容紹介
父親の定年を祝うハワイ旅行に出かけた坂木一家は、帰りの飛行機で事故に遭う。
意識を取り戻した主人公・龍馬は、自分がタイムスリップして過去の世界に来てしまった事を悟る。
どうする俺??? おたくで引きこもりの龍馬は、やがて農作業や素朴な村民との触れあいにより、
現代とは正反対の生活に喜びを見出していくのだが…。
「都市と田舎」、「過去と未来」、「バーチャルとリアル」、「文明と未開」の狭間に揺れる青年の葛藤と成長を直木賞作家が描く。
著者新境地のタイムスリップ・エンタテインメント!

えええ、朱川さんってこんなのも書くんだーという、非常にギャグ寄りの文体です。あのノスタルジー溢れる情景はどこに? ここにあるのはノスタルジーの欠片もない、陽光の下のお話(ま、太陽の村、だし)。

どうなんだろう。ギャグな文体は普通に面白かったんだけど、この本の主張するところは一体どこなんだ? ラストの竜馬の選択がそうだとしたら、それはちょっと賛同しかねるのです。
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「推定少女」「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

 2010-03-31-23:33

推定少女 (角川文庫)推定少女 (角川文庫)
(2008/10/25)
桜庭 一樹

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Prologue 少女A
Vol.1 雪みたいに白い
Vol.2 Φ!
Vol.3 ララの銃
Vol.4 秘密基地
Vol.5 ドール
Vol.6 FOUND DEAD
Vol.7 シンジケート
EndingⅠ 放浪
EndingⅡ 戦場
EndingⅢ 安全装置
 ファミ通文庫版あとがき
 あとがき
 解説 高野和明

「ぼく」な少女、カナの語り口が少々辛い。十五歳だった!!!、ってことですね。思春期のもやもや~~~。
エンディングがこんなにあるのはずるくないすか?、と思ったら、大人の事情でファミ通文庫版に書き換えたものがEndingⅡだそう。

EndingⅠ → 最初に書いたもの
EndingⅢ → ハッピーエンドに書き換えたもの
EndingⅡ → Ⅲを短く更に書き換えたもの

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)
(2009/03/25)
桜庭 一樹

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 辻斬りのように
一話 遺憾ながら
二話 犬です
三話 朝は戦場
四話 冬は白く
五話 機関銃のように黒々と
六話 死んでもゆるせない
 五月雨のような
七話 やたら魑魅魍魎
ゴージャス
解説 古川日出男

男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。

こちらは侍のような、少女七竈にぐっときました。あまりに美しすぎる異形のかんばせ。少女はどんな大人になるのだろう。

「お狂言師歌吉うきよ暦」

 2010-03-04-23:01
お狂言師歌吉うきよ暦 (講談社文庫)お狂言師歌吉うきよ暦 (講談社文庫)
(2008/12/12)
杉本 章子

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内容紹介
路考(ろこう)お粂(くめ)と謳(うた)われた水木歌仙の下で踊りの稽古に励むお吉。十三で「歌吉」の名をいただいて5年、ようやく大名家の奥向きで踊りを披露するお狂言師の一座に加えてもらえることになった矢先、嫉妬した相弟子に小鋸(このこ)で頬に一生消えない傷をつけられる。そんな折、公儀の隠密より姉弟子を探れという密命が……。

目次
鋸の小町
藤娘の夜
出合茶屋
その夜の客
お糸の祝言

仕掛け花火
消し幕
解説 縄田一男
若干流し読んじゃったんですが、”お狂言師”という踊りを披露する一座の世界が面白かったです。旅の一座と混合してたんですが、お吉はきちんとした所の娘(駕籠屋なので、もちろん武家の娘というわけにはいかないけれど)。町娘のお稽古事の延長に、お狂言師の世界があったんですね。

顔に一生消えない傷を付けられた彼女は、踊りで生きていくことを覚悟するのだけれど、隠密の日向とは何やら良い雰囲気なのだし、どうにかならないのかなぁ。続きもあるようなので、さっくり予約してしまいました。しかし、良く考えると、ただの町娘に隠密もどきの働きをさせるなんてひどいな。次作でもお吉は働かされているのかしら。時代はちょうど水野忠邦の天保の改革あたり。時代物を読んでいると、水野忠邦、いつもあんまり恨まれていて、ちょっとかわいそうになってしまいます。

杉本章子さんという方、全然知らなかったんですが、直木賞作家なんですねえ(89年に受賞)。さすがの手堅さでありました。

「製鉄天使」/赤朽葉家の伝説スピンアウト

 2010-03-04-22:00
製鉄天使製鉄天使
(2009/10/29)
桜庭 一樹

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内容(「BOOK」データベースより)
辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース“製鉄天使”の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す―あたしら暴走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ!中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作。一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける。

かなり楽しみにしていたんですが、これは残念だったなぁ。”鉄を操る”ところ、どうやら誰かの語りを聞いているようであること、その辺りは新しいんだけど、あとは「赤朽葉家の伝説」を読んでいれば事足りてしまうのです。

ドブスの集団エドワード族とか、漫画的な面白さには溢れているけど、そこに新しさはないんだよねえ。うーむ、これは何を楽しみに読めばいいのでしょうか。ちょっと本気で分からなかったです…。何か読み損なってんのかなー。

「赤朽葉家の伝説」の感想にリンク
目次
一章 鏖のメロディ
二章 エドワード族の最後
三章 スーパー・デリシャス・アイアン・ガール
四章 灼熱のリボン野郎
五章 えいえんの国、さ!
エピローグ

「大きな約束」「はるさきのへび」「ニューヨークからきた猫たち」

 2010-02-14-01:56
大きな約束大きな約束
(2009/02/05)
椎名 誠

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単行本、文庫合せて累計230万部を越え、今も読み継がれる『岳物語』から24年。ライフワークともいえるシーナ家の物語に、ついに「孫」が誕生!「風太」と「海ちゃん」の二人の孫の「じいじい」となった作者が描く”家族” のいま…。
サンフランシスコに住む息子・岳に「風太」と「海ちゃん」が生まれた。三歳の孫からの国際電話に、すばやく「じいじい」の声で対応しながらシーナは思う。幼かった頃の岳のこと。ニューヨークに住む娘のこと。チベットに旅行中の妻のこと……「家族が揃って食事するありふれた風景はじつはほんのうたかたのものなのだ」。
親子の関係、老い、近しい人の死と新しい命など、世代を越えてアピールする作品。


はるさきのへびはるさきのへび
(1994/05)
椎名 誠

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朝起きて窓の外を見ると、海が見える家に住む、そんな夢を持つぼくは、夏のある日、3人の少年と会った…。陽だまりの中をにょろにょろいくへびのように少しのんびりして少し笑える小さな愛の小説集


ニューヨークからきた猫たちニューヨークからきた猫たち
(2002/11)
椎名 誠

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ある朝、母の死んでいく夢を見た。12時間後におきる予知夢であった。「ふゆのかぜ」の中をそれぞれ生きるさまざまな人生の屈曲点。夫婦、親子、そして子供が巣立ち離れて暮らす家族の絆を、おだやかな筆致で描く家族小説集。

予約に失敗して貸出の枠が余っちゃったので、困った時の椎名本とばかりに、一気に借りちゃった本3冊です。椎名さんは本も沢山あるので、似た話もあったりして、書いとかないと忘れちゃいそうなので、メモメモ。

「大きな約束」では、最初の「こんちくしょうめ」の狭い道での車の擦れ違いを巡るトラブルに、こんなこと書いちゃっていいのかしらん、と思ったり、でもここで若い時分に初めて逮捕された時の、留置場の話に持っていくあたりがすごいよねえ、と変に感心してみたり。周知のことなのかもしれませんが、これくらいでは週刊誌だのネットだので、スキャンダラスに書かれたりはしないのかな。

「はるさきのへび」では、椎名さんとは似て非なるサラリーマン、塩田勇のお話「階段の上の海」が印象深かったなぁ。玉川上水近くの家とか、義母が経営することになり、妻が手伝うようになった保育園の話とか、うまーく真実が滑り込ませてあるのでしょうね。奥さんが、家のことも手を抜かずに、勉強に仕事にと奔走してたのは、本当のことなんだろうなぁ。理想に燃える義母と妻に置いていかれて、なんだかぼーっとしていた椎名さんも。そこで、”諸見里先生”のような存在があったのかどうかは、読み手にはあずかり知らぬことですけれども。

あとは、山田早苗なる女性が主人公となる「海ちゃん、おはよう」も、やはり形を変えた私小説で興味深かったです。あとがきによると、これは育児雑誌の編集部に異動したP・タカハシさんの頼みで連載を引き受けたものだそう。育児雑誌と椎名さん、普通は結びつきそうもないもんねえ。そんなわけで、母親から見た考え方で書くという、今までやったことのない手法で挑んだのがこのお話なんだそう。若くして親となった父と母の戸惑いや奮闘が面白いです。

こうやって読んでいくと、奥さんがずっと働いていたことも大きくて(とはいえ、奥さんは家の中のことは物凄くきっちりとやっていたようだけれど)、たぶん三十年以上経った現代でも、子育てに関しては、椎名さんは進歩的な考えを持っているような気がします。「ゼロ歳児からの集団保育は、最終的にその子供の自主性や社会性に大きくプラスする筈だ」。今でこそ、ゼロ歳児を預けることも珍しくはありませんが、私も話を聞くとなんだか可哀そうな気がしちゃったり、育児休業がとれるなら取っちゃえば~、と思っていたんですよね。そういう意味では、実際、椎名さんの長女、葉さんは、母・一枝さんが働く保育園に、早くから預けられていたのでした(朝、家を出て、また裏から入るような感じだったみたいだけど)。

子供がいないので、その方面、私は明るくないのですけれど、しかしやっぱり国がやるべきことは、子供手当などではなくて、無認可保育園を“認可”するとか、援助するとか、そういう方面なんじゃないんですかねえ。”無認可保育園」の活動家保母だった一枝さんと椎名さんは、若き日に離婚の危機もあったのだそうな。

P・タカハシさんと、「大きな約束」の「熱風の下」における、腹膜の癌になった”親しい友人高橋”は同一人物なのだっけ…。

「はむ・はたる」/その出会いは…

 2009-10-12-11:07
はむ・はたるはむ・はたる
(2009/08/20)
西條 奈加

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内容(「BOOK」データベースより)
心に傷を負った若き侍と、江戸の下町でたくましく生きる孤児たちの、強い絆とままならぬ過去への思いを描く青春時代小説。

amazonから引っ張ってみましたが、うん、これ、ほとんど何も書いてないに等しいですよね。

「金春屋ゴメス」シリーズ(感想)の西條奈加さんの時代物。そういえば、「烏金」(感想)というのもあったよねえ、と思いつつ読んでると、あれ?あれ?となるところが出だしから何回も。

そう、これは「烏金」のあの子供たちのその後のお話なのでした。装丁の雰囲気が全然違うから、全く気付かなかったよ! 「烏金」の浅吉は、あの時、彼らの罪を代わりに着て、既に江戸を払われてしまっています。しかしその後も、彼ら孤児たちは浅吉の残したプランに沿って、しっかり自活していたのです。

そんな彼らの周りにいる大人は、お馴染みのものもいれば、新顔もいて。その新顔が、内容紹介に書かれている「若き侍」。旅暮らしから江戸へと戻ってきた、長谷部家の次男、柾。飄々とした姿の裏に、彼は秘密を隠しているようで…。それは、孤児たちが、順繰りに語る短編の間に、徐々に明かされていくのです。

気になって、もう一回、「烏金」を借り出してきたのだけれど、孤児たちのリーダー格である勝平をのぞくと、孤児たちの名前はすべて片仮名で表記されていたのですね。こちら、「はむ・はたる」では、一転、彼らに漢字が与えられます。人別帳にあげるときに、長谷部家の母君がつけてあげたのですね。正直、一編一編の物語の中で、彼らの話す物語の他に、しっかりキャラが立っているとは言い切れないんだけど、漢字が与えられることで、ぐっと一人ひとりの存在感が増したような気がします。

はむ・はたるとはファム・ファタル(運命の女)のこと。子供たちの物語に、不似合いなタイトルにも思えるけれども、運命の出会いと考えれば、これはこれでいいのかも。

おれが見込んだ大人は、みいんな江戸からいなくなる。

与力の高安が言うとおり、三年もたてば、彼ら孤児たちもみな大人になる。浅吉の帰った村の様子も気になるし、いつかみなが再会を果たせるといいな。
目次
あやめ長屋の長治
猫神さま
百両の壺
子持稲荷
花童
はむ・はたる

「サロメの乳母の話」

 2009-08-11-10:04
サロメの乳母の話 (新潮文庫)サロメの乳母の話 (新潮文庫)
(2003/03)
塩野 七生

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目次
貞女の言い分
サロメの乳母の話
ダンテの妻の嘆き
聖フランチェスコの母
ユダの母親
カリグラ帝の馬
大王の奴隷の話
師から見たブルータス
キリストの弟
ネロ皇帝の双子の兄
饗宴・地獄篇 第一夜
饗宴・地獄篇 第二夜
史実を脇の人物から見て、通説とはちょっと違った見方をしてみましょう、という本。それでも、おおっ、新しい!面白い!、と思うことはあんまりなかったかも。饗宴なんかは、なんか倉橋さんの文でこういうのがあったなぁ、と思ったり。などと文句をいいつつも、私の好みだったのは、「サロメの乳母の話」と「聖フランチェスコの母」。

美しく怜悧な姫って好みなんですが、例の洗礼者ヨハネの首を願ったサロメが良いんです。母親は関係なく、サロメがヘロデ王を助けたことになっています。

とんでもないこと。お姫(ひい)さまが自分の頭で判断したことしかやらないかたであるのを知れば、こんな根も葉もない作り話は、話す気にもなれないでしょうに。


聖フランチェスコと言えば、小鳥に説教をする姿なんかも有名ですが、陽気で美しいものが大好き、愉しいことなら時間の経つのも忘れてしまうという、フランス人の母の語りに何だか絆されてしまうのです。

「あの子は、小鳥たちに向って、むずかしい説教などしたのではない。ただ、優しく話しかけたのよ。幼い頃に、母親と一緒にしていたのと同じように」

「それは私です」/柴田さんの妄想ワールド

 2009-08-06-21:09
それは私ですそれは私です
(2008/04)
柴田 元幸

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日常から妄想にずれて、もしくは日常から妄想的な一癖ある小説の話に流れて~、ないつもの柴田さん節。

三部構成になっていて、あとがきから引用すると、

この本の第Ⅰ部と第Ⅱ部は、『大航海』に二〇〇〇年~二〇〇八年に書いた文章を集めたものである。第Ⅰ部と第Ⅱ部のあいだに絶対的な区別基準はない。第Ⅰ部の方が比較的(あくまで比較的ですが)律儀に現実とつきあっているが、それでも、ともすれば妄想に流れがちである。
(中略)
第Ⅲ部は、『赤旗』をはじめとするいくつかの媒体に寄稿した文章を集めた。こっちははじめからテーマをいただいている場合が多いということもあって、妄想度もわりあい低い。

まぁ、通常のエッセイの場合、”妄想”なんて言葉はあまり出てこないんだろうけど、柴田さんの場合は、やっぱりこの”妄想”がキーワードになるんだろうねえ。

同じくあとがきから、ちょっと興味深かったのが、次の部分。

妄想は、自分をめぐるものが多い。妄想度の低い文章でも、読み直してみると要するにだいたい自分のことを書いている。お前、自分のことしか頭にないのか、と呆れられそうであるが、どうやら、自分のことしか頭にないみたいです。小説家の人たちと自分とは、ほかにもいっぱい違いはあると思うが、この点が一番違っている気がする。「他人になる」能力が決定的に欠けているのである。翻訳に関しては、「自分を消す」とか偉そうなこといつも言ってるんですけどね……。

”小説家には他人になる能力がある”。なんだか良く分からないながらも、納得してしまう言葉であります。

柴田さんのエッセイを読んでいると、ちょっと前に読んでいたら、↓の本を思い出しました。
古典落語 志ん生集 (ちくま文庫)古典落語 志ん生集 (ちくま文庫)
(1989/09)
古今亭 志ん生

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「古典落語 志ん生集」
←全部覚えてられるかは、とっても不安だけれど、一度読んでおけば何かの折に出てきた際に思い出せそう。
柴田さんのエッセイはなんだか夢落ちの落語みたい。

エッセイの中で気になった本。
夢の絵本―全世界子供大会への招待状夢の絵本―全世界子供大会への招待状
(1991/05)
茂田井 武

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私の絵日記 (学研M文庫)私の絵日記 (学研M文庫)
(2003/01)
藤原 マキ

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柴田さんの場合、時々、嘘っこの本の話を書かれるので若干不安になったんですが、これはちゃんと実在するんですね。

「青空の卵」/卵の外の青空は

 2009-08-03-14:46
青空の卵 (創元推理文庫)青空の卵 (創元推理文庫)
(2006/02/23)
坂木 司

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内容(「BOOK」データベースより)
僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。

主人公は作者と同名の坂木司。覆面作家だという作者ご自身の姿にも、興味が沸いちゃいます。こんなやさしく、かつ変った物語を書いたのは、どんな人なのでしょう。
目次
夏の終わりの三重奏
秋の足音
冬の贈りもの
春の子供
初夏のひよこ
 文庫版あとがき
 解説        北上次郎
ミステリーとしては、所謂日常の謎的系譜に連なるもの。しかし、この物語が特異なのは、探偵役の鳥井と、ワトソン役の坂木ふたり、それぞれが負っているもの。

やさしい坂木はとにかく良く涙を流す。それまで冷徹に推理を繰り広げていた鳥井は、坂木の涙を見た途端、まるで幼い子供に戻ったように落ち着きをなくしてしまう。自分を平凡極まりないと感じる坂木は、異能の人である鳥井と関わる事で自分の存在意義を感じ、中学生の頃のいじめから鳥井を救った坂木は、鳥井にとって神にも等しい存在となる。有体にいえば、二人は共依存の関係にある。だから、坂木の涙は鳥井を動揺させるし、人の良い坂木を利用しようとする輩を、鳥井は許すことが出来ない。

夏から初夏にかけての一年間、二人は様々な謎と様々な人たちに出会い、少しずつ成長していきます。「春の子供」においては、鳥井はとうとう確執があった父親との和解も果たす。ひきこもりでぶっきらぼうだという鳥井だけれど、大人の策を弄さないだけで、彼はきちんと人間関係を形作る事が出来る。だから、かつて謎に関わった人々が、料理上手な鳥井の部屋に集ったり、その関係は終わる事がない。

大人の視点で推理し、子供の純粋さで語る、という鳥井。坂木と鳥井の関係も、物語が進めばいつか変っていくのでしょう。それでも、彼らの周りには、彼らがそれまでに作ることが出来た人たちとの関係がある。白か黒か、子供と大人が溶け合う中間部分がないという鳥井。潔癖と鷹揚の境界線。それもまた、いつか変っていくのでしょうか。

坂木のいい人ぶりが鼻につく向きもあるかもしれませんが、私は坂木に付き合いたいと思うのです。

「心の中に棲む人と暮らせば、幸せも不幸せも、本物が手に入るぞ」

僕は、本物が欲しい。
僕は、本物になりたい。


続きはこっちだ↓
仔羊の巣 (創元推理文庫)仔羊の巣 (創元推理文庫)
(2006/06/17)
坂木 司

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動物園の鳥 (創元推理文庫)動物園の鳥 (創元推理文庫)
(2006/10/11)
坂木 司

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「月神の浅き夢」/その裏側には

 2009-04-29-10:33
月神(ダイアナ)の浅き夢月神(ダイアナ)の浅き夢
(1998/02)
柴田 よしき

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とうとう、遡り始めてしまいましたよ、RIKOシリーズ。市内の図書館にあるのが、この「月神の浅き夢」だけみたいなので、図書館本でいく限りはもう遡りようがないんですが・・・。

えーと、先日の「私立探偵・麻生龍太郎」の巻末に、amazonよりも良い既刊シリーズの解説が載っていたので、まずはそちらから引いちゃいます。

「RIKO-女神(ヴィーナス)の永遠-」
 男性優位主義の警察組織に屈することなく、凄惨な事件に敢然と立ち向かう女性刑事・村上緑子。そのひたむきな姿を描いた横溝正史賞受賞作。
「聖母(マドンナ)の深き淵」
 ある女性の失踪事件に関わった緑子。母親となった彼女は、錯綜する事件の真相を解明するために、元・警部の麻生龍太郎と接触をはかるが・・・・・・。
「月神(ダイアナ)の浅き夢」
 若い刑事ばかりが殺されていく凄惨な事件。緑子は捜査を通して、愛する人が関与した冤罪事件と、美貌のヤクザ・山内練と麻生の過去の因縁に突き当たる。
「聖なる黒夜」
 聖なる日の夜に、一体何が起こったのか。そして、麻生と山内の運命の歯車はいつ狂ってしまったのか・・・・・・。人間の原罪を問うて深い感動を呼ぶ傑作長編。

そして、本書の目次に行きます
目次
処刑
突破口
留菜
ムーンライトソナタ
犯行声明
月の場合
背徳
鮮血
莢加
グラシア
長い夜の果て
 あとがき
ネタバレ満載でいくので、続きは隠します。

「月神の浅き夢」/その裏側には の続きを読む

「私立探偵・麻生龍太郎」/龍太郎、出直しの一歩

 2009-04-24-23:54
私立探偵・麻生龍太郎私立探偵・麻生龍太郎
(2009/02/28)
柴田 よしき

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夜の埠頭(?)に佇む二人の男性。ちょっといやーんな感じですが、RIKOシリーズのスピンオフシリーズ、麻生と山内の物語再び!なのです。

麻生と山内の物語と書いたけれど、これは麻生が警察をやめて、私立探偵を開業したあたりのお話。麻生の私立探偵業がメインのお話なので、山内の影がちらちらは見えるんだけど、「聖なる黒夜」(感想)のように、二人の関係ががっつり描かれるお話なわけではありません。あくまで、「私立探偵」の「麻生龍太郎」のお話なのです。

最初はねー、これ、短編集だと気付かなかったので、こういう何でもないような依頼が、とんでもない事件に結びつくのよねえ、とわくわくしてたんですが、短編だったので、事件としては割と普通のところに収まってました。いや、そこは柴田さんなので、人間のふかーい悪意を、一瞬覗きみてしまったような、鋭い切れ味なんですけど。とはいえ、今までのとんでも事件を考えると、事件としては若干小粒? 「所轄刑事・麻生龍太郎」(感想)のように、同僚が出てくるわけでもない、一人の探偵業だから、余計にそう感じてしまうのかも。

しかし、麻生が事件にかかずりあってる間に、明らかに山内からSOSが出ているのが切ないです。龍太郎はもっと、田村の忠告を聞くべきだったと思います。この段階では、山内はまだヤクザではないんですねえ。間の物語だからこれは仕方がなくて、山内はこの後、ずぶずぶのヤクザになっているので、それはもう、ゴールが見えている、「スターウォーズ」のアナキン・スカイウォーカーを見るかのようなんですが。

えー、最初にRIKOシリーズを読んだとき、こんなにこのシリーズ(というか、追っかけてるのは、既にこちらが本シリーズなのでは?、と思われるこの二人なんだけど。でも、RYUTAROシリーズとかRENシリーズとかも、やだよなぁ。あ、みんな”R”だ!)にはまるとは思わず、しばらくしてから文庫本を手放しちゃったんですよねー。文庫本なんだし、持っとけば良かったなぁ。いやー、RIKOシリーズの麻生と山内の場面だけでも、読み直したいっす。麻生は結局、事務所をこの殺風景な場所から引っ越せたのかなぁ、とか色々気になるー!

うろ覚えですが、RIKOシリーズの最後の方では、緑子が山内の例の事件に迫ってませんでしたっけ? うだうだと悩む男たちに比べ、異常に強い突破力とアクの強さを持つ緑子(なのに、すっかり影は薄いですけど)。緑子が例の事件を調べ始めれば、麻生、山内、二人の関係にも変化が訪れるんじゃないのかなー、などと思ったり。

次は久々に緑子の活躍を見たいなぁ。麻生なんかは、すっかり人間味溢れるキャラになっちゃって、それに比べると、緑子が何だかサイボーグにも思えてくるんですが…(犯されても犯されても立ち上がる…)。

巻末に、シリーズの時系列についての記述がありました。

この物語の主人公である麻生龍太郎は他作品にも登場します。
それぞれ独立した物語で、どれがどれの続編ということはありませんが、
物語の時系列的に並べると以下のようになります。

所割刑事・麻生龍太郎(新潮社)
聖なる黒夜(角川書店)〔文庫〕角川文庫*上下巻で刊行
本書(角川書店)
聖母(マドンナ)の深き淵(角川書店)〔文庫〕角川文庫
月神(ダイアナ)の浅き夢(角川書店)〔文庫〕角川文庫

やっぱり次はRIKOシリーズが読みたいです!(でも、RIKO自身はあまり好きになれない…)
contents

OUR HOUSE
TEACH YOUR CHILDREN
DEJA VU
CARRY ON
Epilogue

「私の男」/血の、人形

 2009-04-20-23:14
私の男私の男
(2007/10/30)
桜庭 一樹

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表紙からして、何だかねっとりした感じなんですが、ここで扱われるのは、ずばり、近親相姦。

もうすぐ尾崎花になる、腐野花と、花の結婚相手である尾崎美郎、花の義父、腐野淳悟。かつて淳悟との結婚を考えていた、大塩小町。それぞれが語る、花と淳悟の物語。

北海道南西沖地震により家族を失った少女、花。花を迎えに来たのは、遠い親戚であるという、まだ25歳だった淳悟だった。二人は淳悟が暮らす、紋別の地に居を移し、地域の共同体にも受け入れられるのだが・・・。

はじめに不審の念を感じたのは、当時、淳悟と付き合っていた大塩小町だったのかもしれない。彼女は女性特有の勘でもって、この父娘の危うい関係に気付く。地域社会に暖かく受け入れられながらも、互いさえいればそれでいいというような排他的な関係を築き上げていた、花と淳悟。そこには、既に恋人であった小町の場所すら残されていなかった。

桜庭さんの話を書く時に、ついつい毎度「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」(感想)について書いてしまうんですが、「砂糖菓子~」は大人が本来、子供に与えるべきである安全から零れ落ちた少女たちを描いていましたが、「私の男」で描かれるのもまた、家族というものから零れ落ちてしまった少年と少女

淳悟にもまた、両親を失った過去があり、彼はまるでその隙間を埋めるかのように、花に縋りつく。互いが互いにとって、大海で縋りつくべき唯一の浮き輪のような…。その身に流れる血の中に、自分の父を、母を感じることは、ぐるっと遡りつつも、自分の尻尾を噛んで環となったウロボロスのよう。

これは正しいこととはとても言えなくて、でも、やり直すとしたら、淳悟が両親を失ったところから始めなくてはならなくて。そして、それはもはや不可能で。周囲の優しさや思いやりがあって尚、堕ちていきたいと思う人たちを止めることは出来ないんだよなぁ。

花の結婚相手である美郎は、非の打ちどころのない、実に現代的な青年で、現実社会を巧みに回遊できるだけの、財力や知力、性格の持ち主なんだけど、彼にもまた、巧みに生きられてしまうが故の虚しさがある。その虚しさが、彼の周囲にはこれまでいなかったであろう、花のような女性との結婚を決意させたのだろうけど、なんだか桐野夏生さんの「ローズ・ガーデン」(感想)における、ミロの夫、博夫を思い出してしまいました。健全な人がそうやって危ういところに近づくと、飲み込まれちゃうかもよー?などと思ったり。

時系列はずんずんと遡っていく。二人でひとつだった関係を解消し、別れた花と淳悟。失ってはじめて気付くこと。「私の男」である淳悟を失った花は、これからどう生きていくのでしょう。子供には分からないこと。越えてはいけない、してはいけないこと。大人になった花は、その関係を断ち切ったはずだけれど、そこから先は、描かれては、いないのです。
目次
   第1章
 2008年6月
花と、ふるいカメラ
   第2章
 2005年11月
美郎と、ふるい死体
   第3章
 2000年7月
淳悟と、あたらしい死体
   第4章
 2000年1月
花と、あたらしいカメラ
   第5章
 1996年3月
小町と、凪
   第6章
 1993年7月
花と、嵐

「赤朽葉家の伝説」/ファミリー・サーガ桜庭ver.

 2009-04-09-23:35
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
(2006/12/28)
桜庭 一樹

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目次
第一部 最後の神話の時代
 一九五三年~一九七五年 赤朽葉万葉
第二部 巨と虚の時代
 一九七九年~一九九八年 赤朽葉毛毬
第三部 殺人者
 二〇〇〇年~未来     赤朽葉瞳子
桜庭さん描くところの、三人の女三代記。

扉より引きます。

”辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の”千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の姿を、比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。
ようこそ、ビューティフルワールドへ。

表紙の赤が鮮やかで、「赤」朽葉家の物語でもあることから、読んでいる間中、「赤」がとにかく印象的な本でした。三代遡るといえば、たとえばジェフリー・ユージェニデスの「ミドルセックス」(感想)があり、ナンシー・ヒューストンの「時のかさなり」(感想)がある。三代を遡ると、世界情勢とか、その国の歴史がぐっと浮かび上がってくるんですよねえ。山口瞳さんの「血族」(感想)なんかも、自らのルーツに迫る話なんですが、こういうファミリー・サーガって、ぐいぐいと読み進んでしまいます。

赤朽葉家が製鉄業で財をなした家であることから、赤朽葉家の歴史はそのまま重工業の歴史でもあるし、万葉を置いて行き、ある時期からほぼ姿を見せなくなってしまった、”辺境の人”の話は、山陰地方における「サンカ」の歴史でもある。

歴史のように語られる万葉の章、毛毬の章に比べると、現代の瞳子の章は、まだ何者でもない彼女を反映してか、ちょっと迫力に欠けている。歴史ものを読んでいる気分になっていたら、突然瞳子と彼氏の探偵物語になっちゃったりね。でも、この軟弱さも含めて、これが現代のわたしたちの時代なのでしょう。

ようこそ。ビューティフルワールドへ。悩み多きこのせかいへ。わたしたちはいっしょに、これからもずっと生きていくのだ。せかいは、そう、すこしでも美しくなければ。(p307より引用)

世界を美しくするために、これからも桜庭さんは物語を紡いでくれるのでしょう。webでチェックするところによると、母、毛毬の漫画、『あいあん天使(エンジェル)!』(タイトルはごっつく『製鉄天使』になって、とーぜん小説だけれども)が、スピンアウト作品として出版されるようですね。こちらも楽しみ!

この物語でビューティフルだったのは、赤朽葉家のお屋敷に至る坂道とか、溶鉱炉の赤(あ、これは何となく、高村薫さんの「照柿」(感想)も思い出しちゃうな)とか、豊寿の職人気質とか、トコネン草を燃やした時の細くたなびく紫の煙とか、”辺境の人”が若い不慮の死者を連れていく山奥の渓谷とか。章ごとに違うけれど、流れる空気もビューティフルなんですけどね。

ところで、web(リンク)にある、推定体重44、5キロで、茶色っぽい長髪、芸人であるという桜庭さんの旦那さんって誰なんでしょう。気になるー。

あ、さらに桜庭さんのweb話をすると、旦那さんの部屋からの荷物の引っ越しにおける、この部分、なんだかすごく分かるー!!

わたしたちはもう女の子なんてフワフワしたかわいい生き物じゃなくて、だから、労わられて重い荷物を肩代わりされるより、がんばってるところを見てもらって「がんばったね」と褒められたいのだ……。
 と、そんな面倒くさい大人子供の心理を説明するのは、明日か、来月か、もしくは10年後かにブン投げて後回しにする。

こういうの、やっぱり大人子供なんですかねえ。周りからすると面倒くさいかもしれませんが、とっても共感してしまうのでした。

「語り手の事情」/言葉と肉体?

 2009-03-14-23:04
語り手の事情語り手の事情
(1998/03)
酒見 賢一

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「後宮小説」(感想)以来、ご無沙汰の酒見さん。「後宮小説」とはまた違っているのですが、これまたけったいな本を読んでしまったなー。嫌いじゃないんですけど、ね。
目次
Circumstance.1 Adolescence fancy
Circumstance.2 Mutated trance sexual
Circumstance.3 Reciter's world
Circumstance.4 Marriage with a succubus
Circumstance.n Never foreber
語り手が語るところによると、舞台はイギリスはヴィクトリア朝の、とあるお屋敷。妄想を育てたものだけが、この屋敷の主人に招待される…。年上のメイドに童貞を奪われることを望む少年、人品卑しからぬ中年紳士(しかし、心は女性になることを熱望している)、性奴隷という妄想を育て、手作りの拷問道具を持ち込んだ荒くれ型の紳士など、いずれ劣らぬ妄想の持ち主が、この屋敷を訪れる。

なんだなんだこの話は、と思う内に、すこーし流れが変わってくるのは、メイドのチッタが呼び出した、霊魂(?)ルーが出てくる辺りから。肉体的な事を書いた小説って色々あるとは思うのだけれど(やたらと五感が刺激される、古川日出男さんとか)、おー、こういうのもあるんだ、と面白かったのです。なんだろう、語られるのは、忘れ去られている肉体感覚? 肉体感覚を失ったら危ないよ?ってこと? いや、教訓とかを見出すお話じゃあないんでしょうけど。

互いにサッキュバスにもインキュバスにも成り得るという意味です。相手に与えたものがその質と量だけ返ってこなかったら、一方が精力を盗むことになるのです。結婚生活はそのバランスの上にあります。ですがもし必ず相手に与えたものよりもちょっぴり多めにお互いが返してもらうならば、二人はサッキュバスに堕さなくてすむのです。そしてそれは不可能なことではないのです。

そうして、テラ・インコグニタ。未知の領域へ。うーん、ヘンな小説だー。

「天使のとき」/家族の神話

 2009-01-25-21:34
天使のとき天使のとき
(2008/12/05)
佐野 洋子

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童話のような神話のような?
生殖や死の匂いが濃厚なところは、童話というよりも神話に近い雰囲気かな。

チチとハハから生まれたアニと私。ひ弱なアニに比べ、私はどこまでも力強い。アニはハハに愛され、私はチチに愛される。

やがてアニと私は、チチとハハを捨てるために家を出る。カミの住まう家で、チチの臨終のときを見せてもらうが・・・。

親から生まれた子は、いつか親のもとを離れ、更に時が過ぎれば、親を看取り、親を介護する。

描かれているお話はシンプルで、プリミティブ&力強い筆運び。読むタイミングによっても、読み取ることが違うんだろうなぁ。私にとってはまだ切実な問題ではなく、ただただ圧倒された感じでしたね。佐野洋子さん、今度は本屋で立ち読みしたエッセイを読んでみたいな。

■関連過去記事■
・「食べちゃいたい」/あなたを喰らう、わたしを喰らう

「かえっていく場所」/宴のあとに

 2008-07-25-00:49
かえっていく場所 (集英社文庫)かえっていく場所 (集英社文庫)
(2006/04)
椎名 誠

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目次
1 桜の木が枯れました
2 高曇りの下のユーウツ
3 窓のむこうの洗濯物
4 東京の白い夜景
5 冬の椿の山の上
6 屋上男の見る風景
7 エルデネ村の狼狩り
8 アザラシのためのコンサート
9 波止場食道のノラ犬たち
10 雪山の宴。キタキツネの夜。
11 イイダコの水鉄砲
12 プンタ・アレーナスの金物屋
 解説―吉田伸子
椎名さんと息子、岳君の日々を描いた「岳物語」などに連なる、椎名さんの私小説的なお話です。娘と息子は成長し、日本を離れて暮らしている。もうきっと、この先彼らと共に暮らすことはない。妻と二人暮らしになってしまった椎名さんは、住み慣れた武蔵野の家から、都心へと居を移す。この本は、そんなシーンから始まっています。

以前と同じように取材旅行をこなしてはいても、東ケト会の面々と焚き火をしていた頃の勢いは既にない。椎名さん自身も不眠に悩まされ、アルコールでどうにか眠りにつく日々を過ごしているし、妻の渡辺一枝さんも体調が芳しくない。あんなに精力的に過ごしていたのに、肉体的にも精神的にも、人生の下り坂に差し掛かっている。そんなときに、「かえっていく場所」とは…。

あくまでも「私小説的」なものであって、そうはいっても、やはりこれはフィクションなんだろう。書いてあることをそのまま信じ込むほど、私ももう子供ではないけれども、前半の陰鬱な感じにはハラハラし、徐々に光が差し込んでくる後半ではほっとしました。手放しの身内(家族)自慢はちょっと気になるけど、公の場面できちんと家族を褒めることが出来るのはいいことだなぁと思います。

にしても、あれだけ精力的に好きなことをして過ごしていたように見えた椎名さんが、こんな風になっちゃうんだなぁ、というのがちょっとショックでした。下り坂に差し掛かった時、人は自分の好きな場所、愛する場所、時間に帰っていくのだろうけれど、自分はそういう場所を持てているのかなぁ、と思いました。人生には色々な段階があるんだろうけど、宴のあとのような時間をどうやって過ごしていくのか。宴が派手であればあるほど、大変なのかなぁ。

一点、残念というか、どうかな~と思ったのが、古い友人に関するくだり。この本の中では、椎名さん自身も、多少壊れ掛けているのだけれど、それは若き日の冒険というか旅を共にした友人も同じ。アルコールに溺れ、椎名さんを詰る姿は、書かない方が良かったんじゃないかなぁ。

「岳物語」「続・岳物語」の次には、「春画」があって、その後にこの「かえっていく場所」が続くんだそうな。前の二冊は読んでいたんだけど、「春画」はその存在すら知らず。ついでだから、「春画」も読んじゃおっかなー。

「ミノタウロス」/けだものの子ら

 2008-07-11-00:40
ミノタウロスミノタウロス
(2007/05/11)
佐藤 亜紀

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最近思うに、その世界に吹いている風が感じられるような小説が、私は好き。

表紙にもどこまでも広がる麦畑が見えますが、これはこの草原に吹く風が感じられるような物語でした。爽やかな風ではなく、それはむしろ荒涼たる風なんだけど。

語り手は、”しみったれた出のどん百姓”から地主に成り上がった父を持つ、少年ヴァシリ。母親は父の地所であるミハイロフカに慣れることなく、キエフへと去って行った。兄もまた、幼年学校から士官学校へと進み、ミハイロフカを出て行った。ヴァシリは父と、父の共同事業者とも言える土地の大旦那シチェルパートフと、ミハイロフカの地所、麦畑を見て育つ。お気に入りの兄の他に、もう一人息子がいたことを思い出した母により、教育のためキエフに呼び出されるまでは。

人間の尊厳なぞ糞食らえだ。ぼくたちはみんな、別々の工場で同形の金型から鋳抜かれた部品のように作られる。大きさも、重さも、強度も、役割もみんな一緒だ。だからすり減れば幾らでも取り換えが利く。彼の代わりにぼくがいても、ぼくの代わりに彼がいても、誰も怪しまないし、誰も困らない。

早熟で多分に厭世的でもあった少年ヴァシリ。勿論、地方の大旦那の家の次男としては、これは特に問題のない考えであったのだけれど…。

時代は変わっていく。砲弾によって顎半分を失った兄は、ミハイロフカへと帰ってくる。ペテルブルクのツァーリが帝位を追われても、ミハイロフカの生活はそう変わらなかったけれど、父の死はヴァシリの生活を変える。当初はシチェルパートフの協力を得て、父の遺産の上でぬくぬくと無為に過ごしていたのだけれど…。

身の不始末と”革命”騒ぎが重なって、ヴァシリは父の屋敷を焼け出される。ヴァシリ兄弟は、シチェルパートフの屋敷に身を寄せるが、更なる不幸が彼らを襲い、またしてもヴァシリの前から、一人の人間が去って行く…。

このあたりから、早熟でこまっしゃくれていて、口ばかりで誠意がないヴァシリの本性が段々とあらわれてくる。時代が時代であれば、ヴァシリもこのまま生きていくことが出来たのだろうけれど、情勢はそれを許さず、この後ヴァシリは色々なものを剥ぎ取られ、その本性のみが明らかになっていく…。

ミハイロフカを追われたヴァシリは、二人の同行者を得る。ドイツ人ウルリヒ、百姓の子、フェディコ。あとはひたすらに殺しと略奪の日々…。彼ら三人には奇妙な連帯感はあるものの、友情と呼べるものはない。動けないほどの大怪我となれば、たぶん彼らは躊躇なく仲間を捨てていくし、自分を助けるために仲間を裏切りもする。そうして、終にこのある意味で高揚した彼らの生活も終わりをつげる。残されたものは何だったのか??

正直、例によって、歴史的背景を理解して読めたとは言えず、ひたすらに続く殺しと略奪には、一部引いてしまうところもある(いっそ陶酔したヴァシリによって語られるその様は、実は時に美しかったりもするのだけれど)。何が言いたいのか、汲み切れなかったところもある。それでも、どこか心惹かれてしまうところがあるんだよな~。佐藤亜紀さん、また他のものも読んでみたいと思います。

「フリッカー式」/このコワレタ世界で

 2008-06-03-23:20
フリッカー式―鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)フリッカー式―鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)
(2001/07)
佐藤 友哉

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主人公は大学生の鏡公彦。
家族はみんな壊れているけれど、妹の佐奈だけは別。
幸福な一日を思い出せば、それは妹、佐奈が独り暮らしの僕の部屋を訪れ、寝汚い僕を実に妹らしい態度できゃいきゃいと非難するところから始まる。

そんな妹、佐奈が、レイプされた上、自殺した。衝撃を受ける公彦のもとを訪れたのは、佐奈が凌辱されたビデオを持った大槻と名乗る男。さらに大槻は公彦に、佐奈を犯した男たちの娘の写真と住所、詳細なスケジュールを渡すのだった。公彦の復讐が始まるのだが…。

今一人の主人公と言うべくは、公彦の幼馴染の明日美。彼女はいつからか、イカれた殺人鬼、「突き刺しジャック」と視界を共有し、その殺人場面を見るようになってしまっていたのだ。友人、冬子が突き刺しジャックに殺され、明日美は突き刺しジャックを追い詰めることを心に誓うのだけれど…。突き刺しジャックに殺される少女たちが最後に見せるのは、これから殺されていくというのに笑顔。これは一体なぜ?

こちらの謎も、鏡家の自殺した長女、癒奈、長男でロボット工学の天才、潤一郎、同人書きで予知の出来る次女、稜子、なぜか公彦の行動を読む次男、創士といった、鏡家面々の謎も全て綺麗に解かれます。

最初はね、福井には舞城王太郎の奈津川家が、北海道にはこの佐藤さんの鏡家が!、といった感じの、鏡家サーガなのかなぁ、と思ったのですよ(つか、この後も、鏡家のお話は続いているみたいなので、実際サーガなんだろうけど)。でも、これはひたすらに暗い方を向いているのだな。同じように避けられない暴力が描かれてはいても、愛を謳っていた「煙か土か食い物」とは異なり、クローズアップされるのはひたすらに壊れた自意識。

「最大の不幸を目前にして、どれだけ気丈でいられるかの覚悟だよ。お兄ちゃん……それじゃあ、ギターが壊れるくらいの覚悟をしておいてね」

饒舌な語り口には、西尾維新さんをも思い出すのだけれど、なんだろうな、「魔法少女りすか」の創貴だって殺人をおかしているのだけれど、こんな脆弱じゃないんだよなぁ。饒舌な語り口は巧みだし、お話としてはするする読めて(一部、グロいけど)筋にも興味は持てるけど、でも、ちょっとそれだけーな気がしてしまいました。鏡家の他の話にも興味はあるけど、まぁ、機会があれば読むかなぁ、くらい。なんだろうな、自分だけの世界、自分の意志だと思っている世界すら、確保するのは難しいのかもしれないけれど。でも、そんなことを小説で追体験させられてもなー。うーむ、なのです。
目次
第一章>>>>取り敢えず足を滑らせて
第二章>>>>そこはかとなく動いては
第三章>>>>まだそこに目を向けずに
第四章>>>>間違ってみせた
第五章>>>>強がってみせた
第六章>>>>繋がってみせた
終章>>>>|||||||||||||||||

「食べちゃいたい」/あなたを喰らう、わたしを喰らう

 2008-06-02-22:55
食べちゃいたい食べちゃいたい
(1992/07)
佐野 洋子

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食べちゃいたいほど好き、という言葉もあるけれど、ねぎ、れんこん、だいこんなどの野菜から、りんごやみかんなどの果物までをモチーフにした短編集です。

二、三ページでさらりと描かれる世界は、時にコミカルで、時にエロティック。

たとえば、どんな宝石や着物にも負けない、ねぎのつやつやとした透明な白い肌、お湯に入ってはじめて現れる、ブロッコリーの透き通るような鮮やかな緑色、一人、また一人と食べられていくばなな、かわいいけれどぶちゅっと潰れて、みんなを紫色の染めるブルーベリーなどなど。擬人化された野菜、果物たちの物語。

一篇一篇につけられている装画は、佐野洋子さんご自身によるもの。表紙を見てもおわかりかもしれませんが、少々エロティックでもあり、これまた独特の世界が形作られています。

「雨ふり花さいた」/座敷わらしとの旅

 2008-04-22-22:33
雨ふり花さいた雨ふり花さいた
(1998/04)
末吉 暁子、こみね ゆら 他

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これまた、こみねゆらさんの絵に惹かれて借りてきた本。蛍袋と思われる花が咲く原っぱの上を、女の子が赤い着物のわらしに手を引かれて飛んでいる。表紙はそんな絵です。

主人公は小学校六年生のユカ。六年生とは言え、都会の現代っ子であるユカは、なかなかに大人びている。六年生の夏、ユカはフリーライターの父、謙介と共に東北にある、とある旅館にやって来る。今ではすっかりさびれてしまっているけれど、この旅館は実は座敷わらしが出る旅館として有名であった。ユカは早速何かの気配を感じるのだけれど…。

今一人の主人公と申しましょうか、それは座敷わらしの茶茶丸。表紙の赤い着物の彼ですね。そう、お気に入りの茅葺屋根をトタンにされてから、すっかり座敷わらしとしての本分を果たす気は失っているけど、この旅館にはほんとに座敷わらしがいたのです。茶茶丸はユカに出会い、「風に飛ばされていった先で出会う”とりこ”」に似ているユカに興味を持つ。何とか言葉を交わせるようになった茶茶丸とユカの二人。茶茶丸は”とりこ”に伝え忘れたことがあることを思い出し、ユカは茶茶丸の手助けを買って出るのだが…。

三番目の風に乗って飛び立つとき、茶茶丸は時空を越えてゆく。だけに、茶茶丸の話は、時系列もまるでバラバラなんだけれど…。ユカもその旅に付き合い、東北地方の貧しい村に生まれた”とりこ”の生涯のある部分を辿っていく。

自身も若干の問題を抱えているとはいえ、現代っ子であるユカが、自分の中にある優しさに気付いていくというか、だんだん素直になっていく過程がいいなぁ。なーんて、ちと教育的な観点は無視しても、優しい座敷わらしとの出会いが羨ましい。

ここに出てくる不思議は、座敷わらしの茶茶丸だけではなくって、ほんのちょっぴり登場する、茶茶丸の幼馴染の花坊河童もまたいいのです。以後は、座敷わらしではなく、茶茶丸と花坊河童の夫婦漫才が名物になるのかも。
目次
1 屋根の上の茶茶丸
2 歌声のぬし
3 月あかりの下で
4 風にのるユカ
5 雨ふり花の咲く野辺
6 足にむすんだ紙の謎
7 金のベコのゆくえ
8 今淵の館
9 ありがとう、茶茶丸
 あとがき
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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