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「世界の涯まで犬たちと」/やさしい世界

 2010-03-16-23:59
世界の涯まで犬たちと世界の涯まで犬たちと
(2007/09)
アーサー ブラッドフォード

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内容(「BOOK」データベースより)
犬、猫、様々な動物と人間が織りなす、ねじれてゆがんだ不思議ワールド。O・ヘンリー賞受賞の新鋭作家が紡ぐ、全米大絶賛の短篇集。

目次
キャットフェイス
軟体動物
テキサス盲学校
冬を南で
マットレス
アラン・マシューズの家
六匹の犬のクリスマス
ビル・マクウィル
スノウ・フロッグ
リトル・ロドニー
ピーチ・トリップ
チェインソー・アップル
ドッグズ
ロズリンの犬
この短編はすべて繋がっているのかなぁ。「ぼく」の無責任なまでのやさしさ、ある意味でのピュアさ(短編によっては、大麻をすっちゃったりしてますけど)が際立つ短編集です。

繰り返し出てくるモチーフは、奇形や障害など、どちらかと言えばマイナス、ネガティヴに寄っているもの。それが「ぼく」のやさしさやピュアさに触れる事で、ただのマイナスではなくなるとでもいうか…。見慣れた世界が、ちょっと違って見えるかも? 綺麗は汚い。汚いは綺麗。ほんとの輝きは、思いもよらぬところにあるのかも。

ほんとの輝きかどうかは分かりませんが、変わった輝き、美しさとして強く印象に残ったのは「スノウ・フロッグ」。「ぼく」と一緒に牧場で働くエリザベスは、変わった能力の持ち主のよう。彼女はどうも飲み込んだものを、お腹の中で孵すことが出来るみたい。例えば卵を飲み込めば、彼女の口からは生まれたてのヒヨコが、牧場で見つけたゼリー状の物に覆われた緑に発光する虫(巨大なツチボタルらしい。ツチボタル自体は実在するのよね)からは、とてもキレイなカエルが…。

そう、いまでは、もとの種よりもはるかに大きいスノウ・フロッグたちがいる。なかには大型猟犬の成犬ほどの大きさのものまで。そして、冷えこんだ冬の晩、明るく光りながら雪のなかをはずんでいくスノウ・フロッグたちの姿は、ノースカントリーや高山地域ではごく当たり前になった。そうした田舎の町や村の子供たちが、気立てのいいこの生き物たちと雪原で仲良く遊びたいから夜更かしをさせて、とよく両親におねだりする声が聞こえてくる。クリスマスのころ、子供たちが雪のなかで、温かく、丸々として光り輝くカエルたちと戯れる姿ほど素晴らしい眺めを、ぼくは見たことがない。(p131「スノウ・フロッグ」より引用)

”DOGWALKER”が”世界の涯まで犬たちと」。タイトルもいいですよね。
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「遥か南へ」/辿り着く場所

 2010-03-16-23:32
遙か南へ (文春文庫)遙か南へ (文春文庫)
(2000/01)
ロバート・R. マキャモン

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内容(「BOOK」データベースより)
はずみで人を殺してしまったヴェトナム帰りのダンは、余命いくばくもない身ながら逃避行に出た。道連れは顔半分に痣のある美少女に、ダンを追う三本腕の賞金稼ぎとプレスリーのそっくりさん。アウトサイダーにされてしまった者たちは、癒しを求めてひたすら南へ向かう。温もりと恐怖が混ざり合う不思議なロード・ノヴェル。

1 よくできた息子
2 死を刻む音
3 カインのしるし
4 クリントの手
5 進むべき道のり
6 ペルヴィス登場
7 大きな蛙
8 不可解な業
9 時は盗っ人
10 射線上に立つ
11 夜の旅
12 ジュピター
13 悪魔の天国
14 小さな頭骨
15 真実
16 黄色に黒
17 迷路
18 もっとも危険な土地
19 地獄のわが家
20 キングの流す赤い血
21 音もなく動く影
22 鱗の音
23 髑髏
24 象と虎
25 爬行動物
26 窮地
27 酷暑のなかへ
28 エイヴリエッタの島
29 ブライト・ガール
 訳者あとがき
「少年時代」(感想)の興奮そのままに、借りてきた本です。

しかし、目次を見てもお分かりの通り、とにかくなっがい! しかも、実は途中まではそんなに面白くはなかったのです。「よい子」「良い兵隊」であったダンの事情に同情こそすれ、エンタメとして面白くなんて読めない…という感じ。良い兵隊として、上官の命ずるままに任務を果たした彼に与えられたのは、枯葉剤を浴びたことによる脳腫瘍や白血病。彼が思い出すのは、枯葉剤の銀色の雨に、ヴェトコンにより焼かれる子供のにおい。そうして、”Gone South(南へ行っちまった)”、つまりは気が狂ってしまった仲間たちの姿…。

物語が俄然息を吹き返すのが、プレスリーのそっくりさん、ペルヴィスが出て来るあたり。その前に、三本腕の男、フリント(&クリント)も出てくるんだけど、この彼の事情も可哀そうで…。やっぱり面白くなんて読めないよーと思っていたんだけど、ペルヴィスの場合はね、彼なりの事情があるようなんだけど、その事情が後から出てくるからか、読んでてそんなに辛くなかったのです。彼の楽観性もあるんだろうけど。

逃げるダンに、追う賞金稼ぎのフリントとペルヴィス。更には顔のあざを治すために、”ブライト・ガール”なる癒し手を探す娘、アーデンが絡んできて…。彼らは南へと進むのです。そう、”Gone South(=気が狂ってしまう)”とのダブル・ミーニング。

よい子、良い兵隊であり続けたのに、頭に血が上ったその一瞬に人を殺してしまったダン。三本腕のためにまともな仕事に就くことも出来ず、孤独を好んでいたフリント。エルヴィス・プレスリーとして生きることに情熱を注いでいた、セシル・ペルヴィス。顔のあざに苦しんでいたアーデン。南に行った彼らは救いを得たのか?

ラストはなんだか意外でした。”ブライト・ガール”の正体、ダンの元々の仕事の理由(ま、これはラストまで行くと、ああ、それでこの職業だったのね、と分かるんだけど)、おー、そうくるか、という感じ。警察の無能っぷりとか、この懸賞金の額で賞金稼ぎなんて商売がなりたつのかなー、とか色々疑問もありますが、ラストに辿り着いた時、このロード・ノベルに付き合って良かったと思ったのでした。

「少年時代」におけるほど魔法が前面に出ているわけではないけれど、”ブライト・ガール”の存在とか、島の修道院の様子などにほのかな魔法の香りを感じました。ダンたちを助けた、沼地にすむ元海軍部隊ののトレインなんかも、そういえば魔法の存在かもね。

「少年時代」上・下/魔法のボーイズ・ライフ

 2010-02-27-22:40
少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)
(2005/07)
ロバート マキャモン

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少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)
(2005/07)
ロバート マキャモン

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(↑読んだのは版元も違うハードカバーなんですが、表紙が素敵だったこちらを)

これは、すっごく良かったです。夢中になって読みました。あまりにもパーフェクトな少年時代!アメリカ南部の片田舎、黒人差別が残る小さな町、貧しい家庭、超人ではなくとも、子のためにも恥ずべき行いはすまいと勇気を振り絞る父。
第一部 春の薄闇
第二部 悪魔と天使の夏
第三部 燃える秋
第四部 冬の冷酷な真実
第五部 いまのゼファー
 謝辞
 訳者あとがき
縦糸となるのは、牛乳配達の最中、父と子が遭遇した殺人事件。底なしの湖に沈んでいった車の中の死体をめぐる謎。ワイヤーで首を絞められ、ひどい暴行の跡もあったその死体は、運転手を助けるために湖に飛び込んだ父を夜毎苛む。いっしょに来い、下の暗いところへ…。父の夢の中で死体はこう囁く。

横糸は、少年コーリーが一年間に出会う様々な出来事。父の失業、友の死、爆弾騒ぎなどなど。少年コーリーは成長していくのだが…。更に重要なキーワードは、冒頭の読者への語りにもある「魔法」という言葉。コーリーが暮らす町ゼファーを、彼は魔法の町だという。

あれは魔法の土地だった。
わたしの内には、あの素晴らしい魔法の王国で過ごした少年時代(ボーイズ・ライフ)の思い出がしまわれている。
わたしはおぼえている。
こうしたことをわたしはこれから語ってみたい。

「少年時代」上・下/魔法のボーイズ・ライフ の続きを読む

「文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?」

 2010-02-24-23:40
文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈上〉文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈上〉
(2007/01)
ジャスパー フォード

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文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈下〉文学刑事サーズデイ・ネクスト〈3〉だれがゴドーを殺したの?〈下〉
(2007/01)
ジャスパー フォード

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内容(「BOOK」データベースより)
わたしはサーズデイ・ネクスト。ついこのあいだまで、イングランドで暮らす一介の「文学刑事」だった。ジェイン・エアを誘拐した文学破壊凶悪犯ヘイディーズを倒し、ポーの『大鴉』の中で、卑劣な巨大企業ゴライアス社と対決したのはいいが、ひきかえに愛する人をうばわれてしまった。しかも記憶を操る怪女エイオーニスから、兄の仇と命を狙われる始末。そんなわたしに『大いなる遺産』の豪快なブックジャンパー、ミス・ハビシャムが助け舟を出してくれた。普通は現実世界の人間が入れない“ブックワールド”に匿ってくれるという。『ロビンソンクルーソー』の島で過ごすか『高慢と偏見』の中で優雅なドレスをまとうか迷ったが、怪しげな未完の小説のなかでしばらくのんびり身を隠すことにした。しかし運命はわたしに休息をゆるしてくれないらしい。小説世界でも刑事をやるんだよと、ミス・ハビシャムのしごきが始まった…。ヒースクリフから植物怪獣トリフィッドまで、文学オールスター勢揃いの“文学刑事シリーズ”第三弾。

内容(「BOOK」データベースより)
“ブックワールド”に身を潜めてのんびりするはずが、こっちの世界でも、刑事もどきをつとめるハメになったわたし。相変わらず厳しいミス・ハビシャムの叱咤を浴びながら、マクベス三婆の押し売りに耐え、脇役たちのストレス解消セラピーにつきあい、誤植ウイルスを撃退する忙しい日々がはじまった。あるとき、ミノタウロスの逃走を追いかけていた現場で、どうやら小説OSのアップグレードをめぐる陰謀が進行していることに気づく。このままでは型にはまった小説だけが量産され、文学世界が破壊されてしまう!いったい黒幕はだれなのか?わたしから夫ランデンの記憶を完全に消そうと執拗に狙う、怪女エイオーニスの攻撃を必死でかわしながら、相棒となった作中人物仲間とともに捜査に乗り出したが…。

メモメモ。これって、目次を書き写すだけでも満足しちゃうんだなー。
1 朝食の欠如
2 『カヴァーシャム・ハイツ』のなかで
3 三人の魔女、多項選択、嫌み
4 ランデン・パーク=レイン
5 ロスト・プロットの泉
6 グラマサイトの夜
7 ミノタウロスに餌をやる
8 A419号線で一六〇マイル
9 アップル・ベネディクト、針鼠、ブラッドショー隊長
10 第四万三百十九回ジュリスフィクション会議
11 ウルトラワードTMの導入
12 『嵐が丘』
13 セント・スティーヴンの教会近くの貯水池
14 ジェネリックの教育
15 ランデン・パーク=サムボディー
16 ネモ艦長
17 ミノタウロス騒動

18 安らかに眠るスネル、そしてルーシー・ディーン
19 牧羊犬シャドー
20 名前をもらったIbbとObb、『ハイツ』ふたたび
21 パイ泥棒は誰だ?
22 クリミアの悪夢
23 第四万三百二十回ジュリスフィクション会議
24 誓約、ジャンル委員会、ディーン捜索
25 ミス・ハヴィシャム―最後の挨拶
26 ポスト・ハヴィシャム・ブルース
27 わが心の果ての灯台
28 ローラの旅立ち、『ハイツ』ふたたび
29 ブラッドショー夫人とソロモン(審判)社
30 暴露
31 形勢逆転
32 第九百二十三回ブックワールド賞
33 ウルトラワードTM
34 未解決の問題
34a 荒天
今回はヘイディーズ一族のエイオーニスとの戦いもあるんですが、背景にずーっとあるのは、小説OSのアップグレード! ウルトラワードTMの導入を巡り、ブックワールドは何やらきな臭い…。妊娠中にのんびりしようったって、そこはサーズデイのいるところ。そうは問屋がおろしません。

ヒースクリフやロチェスターのようなメジャーどころだけではなく、マイナーな作中人物から、まだ生まれ出ていない小説の作中人物まで、それぞれに個性が溢れていて楽しい~。このシリーズは作中の小ネタも楽しくって、教育を受けて作中人物を演じるようになる”ジェネリック”という存在も面白かったな。彼ら彼女らは色々な役を演じるためのコースを受けるんだけど、一時期誤って、『レベッカ』のダンヴァース夫人が量産されちゃったそうです。ひたひたと迫る、ダンヴァース夫人の一団…。こわーーーーい。実は『レベッカ』読んでないので、あくまでこの本を読んでの想像なんですけど。

有名作品を色々取りこぼしているので、小ネタに十分に反応しきれないところもあるんですが、珍しくイヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』は分かったよ!(私が読んだのは、『回想のブライズヘッド』だったけど) あー、そして、やっぱりあれはクマなんだよね。

しかし、全部読んでも、サーズデイの愛しのランデンは、相変わらず根絶されたまんまなんです。一応現実の世界に(多少は)リンクしていた、1から比べるとどっぷりとブックワールドなる完璧フィクションの世界だった3。次作はどうなるのかなーー。というか、きちんと4は訳されるのか??

「文学刑事サーズデイ・ネクスト〈2〉さらば、大鴉」

 2009-12-06-16:14
文学刑事サーズデイ・ネクスト〈2〉さらば、大鴉文学刑事サーズデイ・ネクスト〈2〉さらば、大鴉
(2004/09)
ジャスパー フォード

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内容(「BOOK」データベースより)
わたしはサーズデイ・ネクスト。一介の“文学刑事”だったが、古典文学破壊犯ヘイディーズから『ジェイン・エア』を救ったことでいまはインタビューに忙殺される日々。そんなわたしのもとに、また悪い知らせが舞い込んだ。最愛の夫ランデンがこの世界から忽然と消えてしまったのだ。ご丁寧にも彼は二歳で死んだことになっている。軍事産業と遺伝子ビジネスを牛耳るゴライアス社のしわざだった。ランデンを助けたくば、ポーの『大鴉』のなかに閉じこめられた幹部ジャック・シットを連れ出してこいという。いっぽう、時空を飛び回る父からは、もうすぐ地球上の生命がピンクのべたべたになって絶滅するという恐ろしい警告が…。「本世界」の強者たちわ巻き込みながら、必死の捜査がスタートした。英文学へのオマージュを搭載し、ブリティッシュ魂が炸裂する“文学刑事シリーズ”第二弾。

前巻ではランデンとの結婚を果たし、幸せを手に入れたサーズデイ。お腹には小さな命も宿り、幸せを噛み締める日々のはずだったが…。サーズデイに平和な幸せなんて似合わない!、とばかりに此度もとんでもない事件に巻き込まれてしまうのです。世界の破滅に、愛する夫、ランデンの”根絶”。いったい、お腹の子はどうなっちゃうの? サーズデイ、さあ、どうする?!

実は1巻にきちんと伏線が張ってあって、サーズデイが「ジェイン・エア」の世界で出会った、ナカジマ夫人(なぜかオオサカ出身!)もこの巻では大きな役割を果たしますし、1巻ラストで思わせぶりな言葉を落して行った、ネアンデルタール人(! ゴライアス社のクローン技術は、ネアンデルタール人をも復活させていたのです)のスティギンズにもきちんと意味があるのです。そう、まさにこの巻では、サーズデイの<技能と才能>が必要とされるのです。

1巻では、マイクロフトの<文の門(プローズ・ポータル)>を使って、本の世界に入って行ったサーズデイ。しかし、プローズ・ポータルは既に破壊され、それを使っての行き来は出来ません。必要に迫られたサーズデイは、ナカジマ夫人をとっかかりに、ミス・ハヴィシャム(『大いなる遺産』のなかに住む永遠の花嫁)の弟子となり、<ブックジャンパー>の技術を磨きます。

前巻のロチェスターも素敵でしたが、今回は本の世界がもっと前面に出てくるのです。なんてったって、まるで自治組織のような、ジュリスフィクションなる”文学内務保安機関”というものが存在し、本の登場人物たちも、ただの登場人物ではなく、内務保安員として別の一面を持っていたりもするのです。サーズデイが最初に飛び込んだ図書館で出会うのはチェシャ猫。ジュリスフィクションについて教授してくれるのが猫なんだけど、それもまた楽しいでしょ? 作中人物である彼らとの連絡は、脚注電話(フットノーターフォン)で取る。主文に突然、脚注が入った時は面喰いましたが、これもまた慣れると楽しい!

この巻の楽しいアイテムとしては、これまたマイクロフト伯父の発明による<エントロポスコープ>に、重力輸送システム<グラヴィチューブ>でしょうか。確かに、飛行船だけでは、世界各地に輸送網が整ってるとは言い難いですもんね。<グラヴィチューブ>を使えば、理論上一回のドロップの所要時間は、行き先に関係なく四十分ちょっと。<エントロポスコープ>は、”エントロピーは増大する”という法則を利用した、とてもあり得ない偶然が起こるタイミングを察知する装置。しかしこれが、ただ単に米とレンズ豆が入ったジャムの瓶ってのも楽しいのです。米とレンズ豆がきっぱりと別れた時、その時とんでもない偶然が起こるわけ。

図書館で、このシリーズがずっと気にはなってたんだけど、元になっている本について詳しくないしなぁ、と躊躇していたんですが、二冊読んではっきりと言えます。訳者あとがきにもあったけれど、このシリーズを楽しむのに、文学的教養は全く必要なし! ここには書けなかった色々なアイディアがいっぱいで、目を回しながら楽しめちゃいます。小さな遊びが好きな人は、楽しく読めるんじゃないかなぁ。

1 エイドリアン・ラッシュ・ショー
2 スペシャル・オペレーションズ・ネットワーク
3 解き放たれた『カーデニオ』
4 偶然が五つ、アーマ・コーエンが七人、混乱したネアンデルタール人ひとり
5 消えうせるヒッチハイカー
4a 偶然が五つ、アーマ・コーエンが七人、混乱したネアンデルタール人ひとり
6 ファミリー
7 アフィントンの<白馬>、ピクニック
8 スティギンズ氏とSO-1
9 変わらぬもののほうが多くて
10 残った記憶
11 ネクストおばあちゃん
12 記憶を抱いて家に
13 マウント・プレザント
14 グラヴィチューブ(TM)
15 奇妙れきてつ!奇妙れきてつ!大阪にて
16 インタビュー・ウィズ・ザ・キャット
17 ミス・ハヴィシャム
18 N嬢の裁判
19 バーゲン・ブック
20 ヨリック・ケイン
21 スウィンドン現代美術展(レ・ザール・モデルズ)
22 父との旅
23 スパイクと楽しむ
24 能力給、マイルズ・ホーク、ノーランド私園(パーク)
25 ジュリスフィクションでの点呼
26 初任務『大いなる遺産』のブループホールを埋めよ
27 ランディ、ジョフィ、ふたたび
28 『大鴉』
29 救出
30 とりもどされた『カーデニオ』
31 ドリームトッピング
32 あの、生命の終わり
33 あの、生命のはじまり
34 ロスト・プロットの泉
訳者あとがき

「文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!」

 2009-12-06-01:49
文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!
(2003/10)
ジャスパー フォード

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出版社/著者からの内容紹介
主人公を見つけなければ、物語は終わらない……
文学史上最大の捜査が、はじまった。
事件のはじまりはディケンズだった……
わたしはサーズデイ・ネクスト、27課所属の<文学刑事>だ。元<時間警備隊>の父は、いまは時空のなかを逃げまわる身の上、最愛の兄はクリミア戦争で疑惑の死を遂げた。
わたしはといえば、昔の恋をひきずったまま、地道な捜査ひとすじ。ふだんは原稿紛失や盗作など冴えない時間ばかりで殺しとは無縁のリテラテック(文学刑事)のわたしが、いくつもの顔を持つ凶悪犯アシュロン・ヘイディーズを追うことになった。特別捜査機関の同僚の心配をよそに、わたしは単身<現場>へ向かった。
英米でベストセラーの<文学刑事シリーズ>第一弾!

私の中の感覚で言うと、「犬は勘定に入れません」(感想)+V・I・ウォーショースキーシリーズという感じ。「犬は勘定に~」への連想は、主人公・サーズデイ・ネクストの父が時間警備隊(クロノガード)であることと、微妙に現実の世界とはずれた世界がきっちりと構築されていることから、ヴィクへの連想は、精神的にも肉体的にもタフな女刑事であることから。最近はヴィクシリーズを追い切れてはいないんですが、「犬は~」もヴィクシリーズもどっちも好きなお話なんです。で、結果、とっても面白かったです! 微妙にずれた世界に乗り切れるまで、ちょっと時間が掛かったのも、「犬は勘定に~」と同じかもしれません。

訳者あとがきから引用してしまいます。

それにしても、なんという設定だろう。
舞台は一九八五年のイギリス。と言っても、われわれの世界とはちがう時間線をたどる、過去であって過去ではない”もうひとつ別の現代イギリス”だ。とっくに終わっているはずのクリミア戦争がいまだ終結せず、帝政ロシアとのその戦争は百三十一年めを迎え、イギリスはゴライアス社なる超巨大企業に事実上支配されている。しかも、第二次大戦でドイツに占領されたこともあり、ウェールズは共産化して独立。タイムトラベル術を会得して過去・未来を自由に行き来できる者たちがいる一方、マクロチップが発明されていないのでコンピューターはなく、ジェットエンジンも存在しないので空の旅はもっぱら飛行船に頼る。ところが、クローン技術は発達していて、それによって製造される絶滅種ドードーが一番人気のペットになっている。テクノロジーが現実とはちがう進化をとげた、ヴィクトリア王朝風味のレトロな現代社会。

最初はその設定に、ん?ん?、と思うんだけど、はまってくるとこれが楽しい。飛行船の空中散歩も羨ましい!

主人公ネクストの職業は、特別捜査機関(スペックオプス)の文学刑事(リテラテック)。スペックオプスは警察では扱わない事件、もしくは特殊な能力を必要とする事件を扱う組織で、全部で三十部局存在する。数字が若い方が重大事件を追っていて、サーズデイの所属する文学刑事局(リテラテックス)は、数字が大きい27。サーズデイとしても、リテラテックスよりもっと上の組織に行きたいという気持ちがある。

そうしてサーズデイは、世紀の悪人、ヘイディーズと闘うことになったのだけれど…。一旦、この設定に乗り始めてからはノン・ストップ。どんどん読み進めてしまいましたよ。リテラテックとはいえ、普段は鑑定、著作権、泥棒が主な相手なんだけど、こたびはなんと、伯父のマイクロフトが発明した<文の門(プローズ・ポータル)>で、文字通り本の中に入ってしまうのです。いやー、こんな冒険ってあり? 本の世界に入ることで、文字通り結末が変わってしまう可能性もあるんですよね。本の登場人物とサーズデイの会話も面白いんです。一人称小説と三人称小説の違いとか、出番がない時の彼らの様子とか。

文学がやたらと力を持っている世界というのも面白かったです。凶悪犯ヘイディーズの最初の声明は、ディケンズの「マーティン・チャズルウィット」から登場人物の一人を抹殺するというものだったんだけど、これが脅迫になる世界だなんて! シェイクスピアの正体について議論を交わしたり、街角にはシェイクスピアの一節を聞かせるヴェンディングマシンがあったりと、古典文学の人気が全く衰えていないのです。ちょっとレトロでアナーキーな世界を楽しみました。

1 サーズデイ・ネクストという名の女
2 ギャズヒル
3 デスクにもどって
4 アシュロン・ヘイディーズ
5 罪ある者を捜し、罪なきものを罰する
6 ジェイン・エア―小説世界への小旅行
7 ゴライアス社
8 飛行船でスウィンドンへ
9 ザ・ネクスト・ファミリー
10 フィニス・ホテル、スウィンドン
11 胸の内に、ポリー、屡々、ひらめく
12 SO-17―文学刑事局(リテラリー・ディテクテイヴズ)
13 カペル・イ・フィンの教会
14 ボーデンとの昼食
15 ハロー・アンド・グッドバイ、ミスター・クウェイヴァリー
16 スターミー・アーチャーとフィリックス7
17 SO-27―吸い噛み
18 ランデン、ふたたび
19 なまぐさ牧師のジョフィ・ネクスト
20 ランシブル・スプーン博士
21 アシュロン・ヘイディーズとゴライアス社
22 待機
23 受けわたし
24 マーティン・チャズルウィット、救われる
25 熟慮の時
26 アースクロッサー
27 ヘイディーズ、別の原稿を見つける
28 ハワース・ハウス
29 ジェイン・エア
30 世論のうねり
31 ウェールズ人民共和国
32 ソーンフィールド館
33 書かれていく本
34 彼らの本はもうすぐ終わる
35 この本ももうすぐ終わる
36 結婚
訳者あとがき

「また会う日まで」/喪失と再生

 2009-12-05-23:52
また会う日まで 上また会う日まで 上
(2007/10/30)
ジョン・アーヴィング

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また会う日まで 下また会う日まで 下
(2007/10/30)
ジョン・アーヴィング

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内容(「BOOK」データベースより)
【上巻】
父ウィリアムは教会のオルガニスト。体じゅうにバッハやヘンデルの楽譜を彫りこんだ刺青コレクターでもあり、弾き応えのあるオルガンと腕のいい彫師に吸い寄せられるように、北欧の港町を転々としていた。母アリスは、幼いジャックの手をひいて、逃げたウィリアムの後を追う。コペンハーゲン、ストックホルム、オスロ、ヘルシンキ、アムステルダム…。街々の教会信徒と刺青師のネットワークに助けられ、二人は旅をつづけるが、ついに断念。トロントに落ち着く。父を知らないジャックは、「女の子なら安心」という母の信念のもと元女子校に入学し、年上の女たちを(心ならずも)幻惑しながら大きくなってゆく―。現代アメリカ文学最強のストーリーテラーによる怒涛の大長篇。
【下巻】
小学生時代から、女役もこなす男の子として演劇の才能を発揮したジャックは、アメリカに渡り、女ったらしの二枚目俳優となる。ジャック5歳のとき12歳だった親友のエマは、長じて人気作家に。二人はおさわりしあうだけの清い関係のまま、ロサンゼルスでともに暮らしはじめる。やがて手にするハリウッドでの栄光と、それでも満たされない心。腕のいい刺青師としてならした母亡きあと、ジャックはふたたび、不在の父を探す旅に出る。三十年ぶりに再会した北の街の刺青師、音楽家、娼婦たち…。そしてジャックがついに知ることになる愛は、思いもよらないかたちをしていた―。現代アメリカ文学最高のストーリーテラーによる、愛と幸福、記憶をめぐる物語。作家が全人生を賭けた自伝的長篇。

なんだか長くて突き抜けた小説が読みたい!、と思って借り出してきたアーヴィング。確かに長くて、刺青、港町、オルガンなどなど、蠱惑的なアイテムがてんこ盛りなのだけれど、色々取っ払ってしまうと、実は割と素直でシンプルな物語だったように思います。私が言う「長い」というのには、一族の歴史的なものへの期待もあったんだけど、これはひたすら母と子、転じてからは父と子の物語なのでした。あ、エマという同志もいたけど…。

途中から物語の様相ががらりと変わるんだけど、ある人物にそうさせた、その背景も気になるなぁ。あの赦しにあっては、そんなことは関係ないのかもしれないけど。

読み終わった後に、ちょこちょこっと一部分が頭をよぎりそうな、そんな物語でした。「UNTIL I FIND YOU」。「あなた」を見つけた主人公ジャックは、これから「自分」をも発見していくのでしょう。

 第Ⅰ部 北海
1 教会の人々、およびオールド・ガールズの世話になる
2 小さな兵士に救われる
3 スウェーデンの会計士に助けられる
4 不運続きのノルウェー
5 うまくいかないフィンランド
6 聖なる騒音
7 またも予定外の町
 第Ⅱ部 女の海
8 女の子なら安心
9 まだ早い
10 一人だけの観客
11 内なる父
12 普通ではない「ジェリコのバラ」
13 いわゆる通販花嫁にはならないが
14 マシャード夫人
15 生涯の友
 第Ⅲ部 幸運
16 凍上減少
17 ミシェル・マー、そのほか
18 クローディア登場、マクワット先生退場
19 つきまとうクローディア
20 天使の都に二人のカナダ人
21 二本のロウソクが燃える
22 いい場面
 第Ⅳ部 針に眠る
23 ビリー・レインボー
24 ボタンのトリック
25 お嬢アリス、故郷へ
26 薄情息子
27 司令官の娘、その弟
28 彫り間違い
29 真相
30 取引
 第Ⅴ部 ガルシア博士
31 療法
32 見ようとする
33 困った兆候
34 ハリファックス
35 簡単に忘れられる
36 クローディアの亡霊
37 エジンバラ
38 チューリヒ
39 音楽家
訳者あとがき

「やんごとなき読者」/読書の楽しみ

 2009-09-26-03:14
やんごとなき読者やんごとなき読者
(2009/03/11)
アラン ベネット

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内容(「BOOK」データベースより)
英国女王エリザベス二世、読書にハマる。おかげで公務はうわの空、側近たちは大あわて。「本は想像力の起爆装置です」イギリスで30万部のベストセラー小説。

前評判でものすごく期待しちゃった分、実はそこまではまったわけではないんだけど、読書の楽しみに目覚めていく女王がキュートでした。地がしっかりしている分、振り回される周囲の人々は、「キュート」だなんて言ってられない感じなんだけど…。恐る恐る踏み出したという割に、その読書道はやっぱり女王然としているのです。

他にやらなきゃいけないことがあるのに、はまってしまう読書。本好きなら経験ありますよね?

そうして、読書の体力をつけた女王はまた次の次元へ。この切り替えがなかなか素敵。本を読んで得られるのは純粋な楽しみだけではなくって、時に何かの結論。ただし、それは自分でも気付かないうちにしていた決意に裏付けを与えるだけのもの。「本はいわばけりをつけてくれる」。なるほどねえ。

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」/思春期の堂々巡り?

 2009-09-26-00:20
キャッチャー・イン・ザ・ライキャッチャー・イン・ザ・ライ
(2003/04/11)
J.D.サリンジャー

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村上春樹といえば、世間は「IQ84」で盛り上がっているわけですが、私はたまたま図書館で見掛けたこちらを。
でも、これはちょっといまいちだったかなー。amazon見たら、昔の野崎訳「ライ麦畑でつかまえて」の方が評判いいみたいですね。私は未読なので良く分かりませんが…。

ほんの短い間のお話なのに、ホールデン少年の語りのあまりの長さに辟易してしまいました。これがまた、微に入り細に入りびっちり!、なんですわ~。自分の周囲から全く離れない話し方がかなりきつかったです。大体、ホールデンはすぐ「気が滅入っちまう」し、とにかくやたらとめげてるんです(しかも、自分からめげるような状況に飛び込んでる!)。

村上春樹の翻訳はいいなー、と思っていたんですが、春樹訳だからといってなんでもいいわけじゃないんだな、と思いました。ま、多感な思春期が遠い昔に過ぎ去ってしまったせいで、のれなかったのかもしれませんが…。読んでて、君には自分の周囲のことしか関心がないのか!と突っ込みたくなったんだけど、思春期なんてそもそもそんなもんなのかもしれないし。こうやって感想書くにあたり、ちらほらページを拾ってみると、ま、ホールデンの口癖もそんなに嫌いじゃなかったかなぁ。通勤中にハードカバーを持ち歩いてた(しかもこれが結構重かった!)恨みのせいかもしれません。機会があれば、も一度野崎訳にチャレンジしてみます。

この本で気になるのは、原著者の要請と契約の条項に基づき、加えることが出来なかったという、訳者の解説。どんな解説が載せられるはずだったのでしょうか…。

「内なる宇宙」/星を継ぐもの三部作プラス一

 2009-08-10-22:04
内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
(1997/09)
ジェイムズ・P. ホーガン

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内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)
(1997/09)
ジェイムズ・P. ホーガン

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今度は上下巻!
しかも、ホーガンによる「日本語版への序」がついてますよー。

コールドウェルをして、異星人の木乃伊を調べに遣れば生きた異星人を宇宙船ごと連れ戻り、星間宇宙船を出迎えに行けば異星文明と修好の扉を開け放ったと言わしめた、お馴染みヴィクター・ハント博士。今度ハントが連れて戻るのは別の宇宙ではないか?、とコールドウェルは肩を竦めるのだけれど…。

そう、タイトルは内なる「宇宙」。ハントはお見事、別の「宇宙」の存在を知らしめるのでした。

ハードSFが表芸だというホーガンが描くところのファンタジー的世界も面白くって! かつ、この神話的世界にも、ばっちりハード的な説明がつけてあるところもすごいよね。そして、ある種の人々への礼賛もいつものごとく。こういう健全さがいいところだよなぁ、と思うのです。

彼らは世界に向かって判決を申し渡すような真似はせず、自分に合った場所を見付けて現実と折り合い、与えられた機会をもっともよく活かすことを知っている。避けることのできない死を正面から見据え、自分が小さな存在でしかないことを認め、なおかつ、世のため人のために働くことに満足を覚える。バウマーたちにはそれができない。だから世の中に対して恨みを抱くのだ。自分では何一つ意義あることを成し遂げられず、他人の行為を否定することにいじけた喜びを見出すしかない。
何よりも、世のハントたちは自分の生き方に迷いがない。

「巨人たちの星」に比べると、ハント博士、今度はばっちり活躍しています。でもって、どうしたって理屈を捏ね回すやつではなく、前向きに行動する者が正義なのです。
SF

「巨人たちの星」/星を継ぐもの三部作

 2009-08-06-21:24
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))
(1983/01)
ジェイムズ・P・ホーガン

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前二作を読んでから、結構時間が経っちゃったので、細部を忘れてしまっているよ、と心配しながら読んだんですが、ホーガンってばとっても親切! プロローグにて、ばっちりおさらいをしてくれているので、全く自然に世界に戻ることが出来たのでした。

今回も、生物学者のダンチェッカーが、いい味を出しているんだなー。これまで分からなかったことに、当たり前のような澄まし顔をして、ずぱんと解決策を出してくるあたりは、前二作を彷彿とさせます。ま、今作は結構政治的な話も出てきちゃうので、彼個人だけではなく、国連合衆国代表カレン・ヘラーの力もあるんですが。今回、逆に原子物理学者のヴィクター・ハントは、コールドウェルの秘書リンとのいちゃいちゃを除き、いま一つ見せ場がなく、その点はちょっと残念。

かくてミネルヴァと初期ガニメアン、ランビアンとセリアンを含めたルナリアン、チャーリーとコリエル、地球のホモ・サピエンス、そしてジャイアンツ・スターを結ぶ円環を閉じた。


ほんと、お見事ー!なんだけど、また一つ謎が繰り越されるのです。あそこで彼らがあそこに行っちゃわなくても良かったのに、わざわざそうしたってことは、ホーガン自身がやっぱり続きを書きたかったのかしら(って思って、次の「内なる宇宙」も読んだけど、この謎については、全然関係なかったのですね…。嗚呼、勘違い。)。

しかし、ジェヴレン人たちに翻弄される、心優しき巨人たちの姿に何だか申し訳ない気持ちになってしまうなぁ。謀略とか疑うことを知らない人たちが本当にいるとするならば、まぁ、こういうことになってしまうよね。

■関連過去記事■
・「星を継ぐもの」/人類が受け継いだもの
・「ガニメデの優しい巨人」/人類はどこから来たのか?
SF

「たったひとつの冴えたやりかた」

 2009-08-04-14:26
たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
(1987/10)
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー浅倉 久志

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目次
第一話  たったひとつの冴えたやりかた
       The Only Neat Thing To Do
第二話  グッドナイト、スイートハーツ
       Good Night, Sweethearts
第三話  衝突
       Collision
 訳者あとがき
川原由美子さんの表紙がずーっと気になっていたのに、読んでなかったSF名作であります。

内容(「BOOK」データベースより)
やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。元気少女の愛と勇気と友情をえがいて読者をさわやかな感動にいざなう表題作ほか、星のきらめく大宇宙にくり広げられる壮大なドラマ全3篇を結集!

内容紹介に詳しい表題作も勿論いいんだけど、私は第三話を推したい。さらにまた素敵なところが、これらの三つのお話は、”連邦草創期の人間(ヒューマン)のファクト/フィクションを選択して欲しい”という、コメノの若いカップルの希望に応えて、水陸両生の主任司書モア・ブルーが選び出したものなんですね。「こんなふうにして歴史の断片を綴っておく」。物語ってやっぱり素晴らしい!

連邦草創期ということだからか、三つの物語には、いずれも<リフト>近くの辺境基地、連邦基地九〇〇が出てきます。SFではあるけれども、バリバリにハードなものではなくって、どちらかというとスペオペな感じ。”カセット”なんかが何度も出てくるところもご愛嬌かなー。宇宙を航行できる時代に、カセットで記録するというのはどうかと思うの。

私が推す第三話は、ファーストコンタクト(実際は、ある不幸な出会いのせいで、純粋なファーストコンタクトとは言えずに、色々ややこしくなってるんだけど)もの。若きジーロ、ジラノイの好奇心溢れる姿がいいのです。クリムヒーン艦長の頑なさには、ラストが不安になって、先をこっそり薄目で見てしまいましたが…。

なんとなーくイメージがわかない部分があっても、川原さんの挿絵がそれを補ってくれるのですね。異星人の姿がやたらと可愛らしいところには、何やらファンタジー的風味も感じてしまうのです。

↓第一話だけを改訳したバージョンもあるんですねえ。でも、このお話、三話揃ってこそだと思うんだけどなぁ。だって、あの司書さんと学生カップルがいてこそ、でしょう?

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版たったひとつの冴えたやりかた 改訳版
(2008/08/22)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

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SF

「天使と悪魔」/科学か神か

 2009-07-30-13:49
天使と悪魔 (上) (角川文庫)天使と悪魔 (上) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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天使と悪魔 (中) (角川文庫)天使と悪魔 (中) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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天使と悪魔 (下) (角川文庫)天使と悪魔 (下) (角川文庫)
(2006/06/08)
ダン・ブラウン

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勢いでガーっと読んじゃったままに、ブログ上に感想を書くことをしなかったんですが、「ダヴィンチ・コード」は読んでるんです。あれは、本→映画の順だったんですが、こちら「天使と悪魔」は、映画→本の順番。ダヴィコーは本の方が面白かったんですが、結論から言っちゃうと「天使と悪魔」は映画の方が良かったなぁ。

ほとんどがセットだったらしいですが、映画の方はローマの名所や、ヴァチカン内部をバリバリと見せてくれるわけですし。CERNの内部(いや、どこまでが本物だったのか、私には分からないけど)が見られたのも、映画に軍配な感じです。だって、普通見られないものねえ。

同じラングドン教授による謎解きとはいえ、今回はタイムリミットもシビアに切られてるし、謎解き自体が簡単に言っちゃうと、「この像はあっちの方向を指している!」とかそういう程度なんです。この辺りも、映像の方が強い所以かも。本を読んでると、細かい設定はちょっとずつ変ってる部分もあるけど、うまーくエピソードを繋いで、映画化したことが分かって、これは原作を掬いとった脚本家が巧かったのかしら。しかし、生物物理学者のヴィットリア、とても魅力的なんですが、ダヴィコーには出てこなかったよねえ?(メモってないんで、ほとんどを忘れてしまったよー)

おお、と思ったのが、以下の部分。エネルギー問題は難しいですよね。

新たなエネルギー源を生み出すために、営利主義を避けることはできない。反物質には、経済的で汚染と無縁のエネルギー源としての底知れぬ可能性があるが、公表する時期を早まれば、原子力や太陽熱のエネルギーと同様、政策や宣伝上の失敗によって台なしにされかねない。原子力の場合は安全性を確立する前に量産され、事故が多発した。太陽熱の場合は効率を高める前に量産され、人々は金銭的な損害をこうむった。 (上巻 p148より引用)

太陽電池の変換効率も、まだまだ低いものなんだよねえ。

↓映画が見当たらなかったのでサウンドトラック。
天使と悪魔 オリジナル・サウンドトラック天使と悪魔 オリジナル・サウンドトラック
(2009/05/13)
サントラ

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「シャムロック・ティー」/絡まる蔓

 2009-07-06-21:29
シャムロック・ティー (海外文学セレクション)シャムロック・ティー (海外文学セレクション)
(2009/01)
キアラン カーソン

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内容(「BOOK」データベースより)
ことによるといつの日か、自分が最初にいた世界へ戻れないともかぎらない。だから、とりあえず今は、そちらの世界について書きつけておきたいと思う。こんな言葉ではじまる奇妙な手記。めくるめく色彩の万華鏡、聖人たちの逸話、ヤン・ファン・エイクのアルノルフィーニ夫妻の肖像、ドイル、チェスタトン、ワイルド…。読み進むうちに、詩人カーソンが紡ぎ出す、交錯し繁茂するイメージの蔓にいつしか搦め取られる、摩訶不思議な物語。

一つ一つは細い蔓を手繰っていくようなお話で、それらが実は繋がっていることに気付くのは、物語が中盤に来た辺りから。

「1 ヒ素系鮮緑(パリスグリーン)」から「100 聖書の黒」、「101 空白」の101にわたる小さなピース。ファン・エイク兄弟の絵があって、少年と少女がいて、寄宿舎があって、「シャムロック・ティー」なるものを探すというストーリー。全体像が見えてくるのは結構後になっちゃうので、ああ、この細かい話は一体どこに繋がんのさ、と思いながらその細かい欠片のようなお話に付き合ってくんですが、こういう小さいお話もなかなか面白かったのかも。しかし、聖人の日っていっぱいあるよね・・・。

普通に起伏のあるストーリーを読むのとは違う喜びというか、どこに連れられていくんだか分からないまま、作者に引き摺られていく喜びを久しぶりに感じる本でした。

翻訳文学ブックカフェ2翻訳文学ブックカフェ2
(2007/10/23)
堀江 敏幸岩本 正恵

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←こちらにも、訳者の栩木さんの「シャムロック・ティー」に関する文章が載ってます。

「黒龍とお茶を」/ティータイムをどうぞ

 2009-06-02-00:13
黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)
(1988/07)
R.A. マカヴォイ

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表紙も超可愛いのに、出ないんですねー、残念。タイトルと表紙に惹かれて古本屋にて購入(ブックオフの100円本って大好きだーーー!!)

内容(「BOOK」データベースより)
娘のリズからの突然の電話。どうやら何かやっかい事に巻き込まれたらしい。母親のマーサは娘の窮状を救うため、はるばるニューヨークからサン・フランシスコへとやって来た。だが、リズの姿はどこにも見あたらない。娘の身にいったい何が起きたのか。不安を胸に娘を捜すマーサの前に一人の中国人が現われた。名をロングというこの初老の男、実は自分は太古の龍の化身だと言うのだが…。〈魔法の歌〉三部作で知られるマカヴォイが、奇妙な初老のカップルをシャレた会話とユーモアあふれる筆致でほのぼのと描いたモダン・ファンタジイの秀作。J・キャンベル新人賞受賞。

マーサは母親なんだけど、えらく軽やかで、言動だけ取ると、不思議ちゃんスレスレでもある。そんな彼女に、メイトランド・ロングは惹かれるのだが・・・。

ロング、ウーロン、彼は黒龍の化身でもあるのです。なんだけど、それですっごい強いかとか、ピンチの時に龍に変身するかというと、決してそんなことはなく。普通の人より丈夫(失血死しそうなところで、きっちりまだ動きまわってる)だったり、手の力がやたら強かったり(鉤爪なの??)はするんだけど、誘拐されたマーサを追う際にも、決して万能ではないんだな。

むしろすごいのは、彼を助けるPCオタクのフレッドなんじゃあ、と思ったり。でも、龍は物を収集するのがお仕事。コレクターたるロング氏の専門は言語なんです。言語繋がりで、コンピューター関連の言語も巧みに操っちゃうんですね。その辺り、む、やっぱり凄いんだな、ロング氏も。

思いっきりファンタジーしているかと言えばそうでもなく、それでも生々しくない恋情とか、コンピューターのお話とか、原語のエキスパートたる黒龍とか、程よくブレンドされた具合がとってもいい感じ。初老のカップルという辺りも、洒落てますよね。大森望さんの解説によれば、本書の続篇にあたる長編『縄をなえば』(Twisting the Rope)が発表されているそうなんですが、うー、amazonにはないみたい。昭和63年に発行されているこの本には、”本書ですっかりメイランド氏やマーサの魅力のとりこになってしまった人は、ハヤカワ文庫FTの編集部に続刊希望のお便りをどうぞ”とあるんですが・・・。ここで言っても仕方ないけど、続刊希望しますー!

次は、有名だという、〈魔法の歌〉三部作を読んでみたいなー。

「火を熾す」/それぞれの闘い

 2009-05-31-23:56
火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
(2008/10/02)
ジャック・ロンドン

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目次
火を熾す|To Build a Fire
メキシコ人|The Mexican
水の子|The Water Baby
生の掟|The Law of Life
影と閃光|The Shadow and the Flash
戦争|War
一枚のステーキ|A Piece of Steak
世界が若かったとき|When the Worlld Was Young
生への執着|Love of Life
 訳者あとがき

柴田元幸翻訳叢書”でございます。そうじゃなかったら、きっと読まなかっただろうな~。

実際、最初はそのあまりの救いのなさ(というか、自然の厳しさ?)に辛くなって、途中で読むのをやめちゃったりしてたんだけど、実は割とバラエティーに富んだセレクトだったので、読み進めている内に、だんだんとのめり込んでいきました。最初に、あ、こういうお話なのね、と見切った気になったんだけど、そこで読むのをやめてしまったら、勿体ない事をするところでした。

「火を熾す」では人間側が自然に敗れ去るけれど、全てがそういう話ではないのです。極寒の地が描かれたかと思えば、革命に燃えるメキシコが描かれたり、マウイ島の老漁師が描かれたり。「影と閃光」、「世界が若かったとき」などは奇妙な味わいで、現代英米作家によるもの、と言われても納得してしまう感じ。

ジャック・ロンドンの生涯は、四十一年に満たない短いものだったのだとか。短いけれど、きっと濃密なものだったのでしょう。人は死から逃げることは出来ないけれど、それまでの対峙の仕方には、色々あるんだよね。

本書では、一本一本の質を最優先するとともに、作風の多様性も伝わるよう、ロンドンの短篇小説群のなかから九本を選んで訳した。また、同じテーマを扱っていても、人間が敗北する場合と勝利する場合のなるべく両方が示せるように作品を選んだ。まあ勝利とは言っても、いずれは誰もが自然の力に屈する生にあっては、一時的なものにすぎないのだが……ロンドンの短篇の終わり方は、個人的に非常に面白いと思っていて、時にはほとんど冗談のように、それまでの展開をふっと裏切って、ご都合主義みたいなハッピーエンドが訪れたりする。そうした勝利の「とりあえず」感が、逆に、人生において我々が遂げるさまざまな勝利の「とりあえず」さを暗示しているようでもいて、厳かな悲劇的結末とはまた違うリアリティをたたえている気がする。  (「訳者あとがき」より引用)

老獪さを備えたときには既に若さはなく、若さに輝くような対戦相手を、少しずつその老獪さで削り取っていくものの…、という「一枚のステーキ」は切ない。名誉のためではない、生活のための試合。そして彼には、既に試合前に一枚のステーキを食べることも、タクシーに乗って会場に行くことも出来ない…。若さと強さだけではない、何かを備えたものだけが、成功者となるのでしょうか。彼の対戦相手は、成功者となれるのでしょうか。

どうしようもない現実が描かれても、どこか納得出来てしまうところも、また特徴なのかなぁ。それはもう仕方のないことなのだもの。それでも、一瞬の輝きが切り取られていれば、それでいいんだ、という気になっちゃいました。

「水の子」は自然の中であっても、南の島を舞台としているからか、極寒の地を描いた他のものとは違う味わい。水の輝きの中、老漁師の語りが伸びやかです。理屈を言う、常識を言う側がばからしくなってしまって、老漁師が言うようにすべては夢なのかもしれないなぁ、などと海面の輝きに幻惑されます。

「ボトムズ」/テキサス東部、大恐慌の時代に

 2009-05-12-00:08
ボトムズ (ハヤカワ・ノヴェルズ)ボトムズ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
(2001/11)
ジョー・R. ランズデール

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ボトムズ。テキサス東部の田舎の低湿地帯。八十歳を過ぎた私が老人ホームで思い出す、一九三三年から一九三四年にかけて起こったあの一連の事件…。

ジョー・R・ランズデールは、「モンスター・ドライヴイン」(感想)を読んだきりだったので、この「ボトムズ」表紙の”アメリカ探偵作家クラブ賞受賞”に、「えええ?」と思いながら借りてきました。「モンスターズ・ドライヴイン」、好きだったんだけど、いい意味でとってもB級な感じだったので、”探偵”という言葉に何だか違和感を感じたのでした。でもでも、これがまたしてもいい意味で裏切られて、面白かった~。事件自体は、面白いというものではないのだけれど…。

amazonから引きます。

内容(「BOOK」データベースより)
暗い森に迷い込んだ11歳のハリーと妹は、夜の闇の中で何物とも知れぬ影に追い回される。ようやくたどり着いた河岸で二人が目にしたのは、全裸で、体じゅうを切り裂かれ、イバラの蔓と有刺鉄線で木の幹にくくりつけられた、無残な黒人女性の死体だった。地域の治安を預かる二人の父親は、ただちに犯人捜査を開始する。だが、事件はこの一件だけではなかった。姿なき殺人鬼が、森を、そして小さな町を渉猟しているのか?森に潜むと言われる伝説の怪物が犯人だと確信したハリーは、密かに事件を調べる決心をする―鬼才が恐怖の原風景を描き、最高の評価を得た傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

暗い森の中でハリーと妹トム(トマシーナ)が目にしたのは、死体だけではありませんでした。半身が山羊、半身が人間の姿をしたゴート・マン。大人はその存在を認めないけれど、彼らは確かにその頭に角を見、哀しげな甲高い声を聞いたのです…。

オカルトめいた雰囲気、猟奇的殺人…。こう書くと暗いばっかりなんだけど、裕福とは言えない暮らしの中、テキサス州東部というこの場所で、自分の為すべき事をする、父や母の姿がいいんだなぁ。黒人を差別するのが当たり前のこの土地で、ハリーの父も母もそういった考えは持ってはいないのです。父がこういう考え方や行動を起こす事になった、彼が少年の頃の出来事はやり切れないのだけれど…。

犯人が見つからない中、「二ガー」の死体を調べる父の立場は悪化していきます。二ガーのことはニガーに任せておけ。それがこの土地の一般的な考えなのだから…。黒人の老人、モーズが被害者の遺留品を持っていたことから、父は彼がやっていない事を確信しつつ、事件の進展としてモーズを逮捕します。ところが、このことが漏れたことから、モーズはリンチにより殺害されてしまいます。そうして、強かった父は陰鬱な物思いに沈んでいってしまう…。かつての父の親友であり、母を巡っての恋敵であったという、受け持ち区の違う治安官の警告…。道を見失いかける父でしたが、母やボトムズに骨を埋めたいと、伯母のもとから帰って来た祖母の力もあって、何とか立ち直ります。そうして、対峙した真犯人は…。

それなりに本を読んできちゃうと、やっぱりこいつ胡散臭いな~と思う人間がいるわけで、そういう点ではそう意外な犯人と言うわけではありません。それでもね、ハリーやトムと一緒に暗い闇を歩いた気分になったし、電気も水道もない中、贅沢なんかしようとも思わず、ただひたすら己の仕事をなす姿に打たれました。エピローグで語られる、その後の消息も決して明るいものではないのだけれど、それもまたリアルな人生なのかもしれません。エピローグの最後の台詞がまたいいんだ。これらは恐ろしい出来事だったけれど、楽しいこともまた沢山あった。この恐ろしさ、暗さがきちんと描いてあるから、その楽しさもきっと素晴らしいものだったんだろうなぁ、と感じるのです。川を渡るヌママムシの頭とか、ひーとか思うけど、とってもリアル(あ、これ、楽しい出来事じゃないけど。そして、さらにネットでヌママムシを検索して、その姿に恐れ戦く。Wikipediaにがっつり画像が載ってます)。

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/03/24)
ジョー・R・ランズデール

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「鏡は横にひび割れて」/ミス・マープル8/12

 2009-05-07-00:30
鏡は横にひび割れて (クリスティ文庫)鏡は横にひび割れて (クリスティ文庫)
(2004/07/15)
アガサ・クリスティ

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ポアロは結構読んだんですが、実はこれが初ミス・マープルなのです。お話としては面白かったんですが、ミス・マープルものとしては、後半に入っているのでしょうか。何せねえ、ミス・マープルってば、ほとんど家から出ないんです!(あれ、でも、ミス・マープルって、そもそも安楽椅子探偵でしたっけ?) 甥に雇われた付き添いのおばさん、ミス・ナイトには文句たらたらながら、通いのメイドを雇って一人暮らしというわけはいかなくって、ミス・マープルの思い通りにならないことばかり~。

ほとんど家を出ることがないといっても、たまーに家から出た時に、うまいこと(?)後の被害者に出会ったり、肝心な場面に友人がちょうどい合わせたりと、ミス・マープルが推理を行うのに、困ることはないんですけどねえ。ミス・マープルが暮らすセント・メアリ・ミード。もう少し田舎ならではの美しさとか、庭の話とか、そういうのを期待して読んでいたら、古き良きセント・メアリ・ミードにも、古くからの住民が眉をひそめる”新住宅地”が出来ていたりと、既に変化が起きてしまっているのです。今度はもう少し遡って読んでみようかな~。

文庫裏表紙より引用。

穏やかなセント・メアリ・ミードの村にも、都会化の波が押し寄せてきた。新興住宅が作られ、新しい住人がやってくる。まもなくアメリカの女優がいわくつきの家に引っ越してきた。彼女の家で盛大なパーティが開かれるが、その最中、招待客が変死を遂げた。呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵ミス・マープルが挑む。
解説:新津きよみ

そうそう、あと残念だったのが訳の口調。最近のウッドハウス並みの訳の口調だったら、もっと絶対面白かったのにー! 事件自体は今読んでも、なるほどねえと思うし、「鏡は横にひび割れて」という、テニスンの詩からの引用(読んでませんが)も素敵。ふとした瞬間に見えてしまった、人生の裂け目。そこには何があったのか?

口調の何が気に入らないって、老若男女にかかわらず、どの登場人物も「~でしたねえ?」とか「~ですがねえ」とかいう話し方を突然混ぜてくるので、なんだか間延びした感じがしちゃうんです。ダーモット主任警部による、会話が中心の聞き取りになるので、この辺の処理が難しいとは思うのですが、もう少しそれぞれのキャラクターに合わせた話し方にしてくれないものかしら、と思ってしまいました。ウッドハウスのキャラ立ちまくりの会話文を読んだ後遺症かもしれませんが…。
自分の参考に、<ミス・マープル>シリーズの順番をメモ。
・牧師館の殺人
・書斎の死体
・動く指
・予告殺人
・魔術の殺人
・ポケットにライ麦を
・パディントン発4時50分
・鏡は横にひび割れて
・カリブ海の秘密
・バートラム・ホテルにて
・復讐の女神
・バートラム・ホテルにて
・スリーピング・マーダー
ミス・マープルは、「鏡は横にひび割れて」の前に健康を害した感じだったのですが、最後の方では気力も大分復活してきたよう。付添いも叩き出す決心をしたみたいだし、ちょうどこの頃がミス・マープルが一番弱っていた時なのかなぁ。やっぱりぼちぼち読んでみようっと。それでも、家から出ない安楽椅子探偵が、ミス・マープルの正しい姿なのかもしれませんが・・・。

「ブランディングズ城は荒れ模様」/原稿は誰の手に?

 2009-04-26-21:24
ブランディングズ城は荒れ模様 (ウッドハウス・スペシャル)ブランディングズ城は荒れ模様 (ウッドハウス・スペシャル)
(2009/02/25)
P G ウッドハウス

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「ブランディングズ城の夏の稲妻」(感想)の続編です。あれはあれで綺麗に終わっていたような気もするし、読んだのも大分前なので、続編があるなんて思ってなかったんですが、読み始めたらするすると懐かしのメンバーを思い出してきましたよ!

前回は、ブランディングズ城の城主、エムズワース卿の輝けるブタ、エンプレス・オヴ・ブランディングズを巡るドタバタ劇だったんですが、今回も若い二人の結婚の行方を絡めつつも、ドタバタ劇は健在です。今回の騒動は、ギャリー伯父さんの原稿を巡るもの。この原稿は、今ではすました顔で現在の地位に納まっている、貴族のご歴々を震えあがらせるに充分の代物。今さら若き日の愚行を暴露されては堪らない! しかしながら、こういった代物がお金になることも事実なわけで…。どうしてもこの原稿を出版したい者、日の目を見せたくない者、様々な思惑が駆け巡る!

前回、コーラスガール、スー・ブラウンとの婚約をしたエムズワース卿の甥、ロニー。しかしながら、二人の結婚生活を始めるためには、後見人であるエムズワース卿の資金援助が必要で…。ところが、エムズワース卿は、甥のことなど眼中になく、ブタに夢中。エムズワース卿の妹、ロニーにとっての恐るべき伯母レディー・コンスタンスは、ギャリーの本を出さないことを条件に、スーの滞在を認めざるを得ない状況になっていたのだけれど…。

ターミネーターばりにそこにやって来たのは、ロニーの母、レディー・ジュリア。貴族のお仲間からはじかれることを恐れるレディー・コンスタンスとは違い、レディー・ジュリアはそんな事を恐れはしない。許せないのは、自分の息子がコーラスガールなどと結婚すること! レディー・コンスタンスとは、また違った恐ろしさを持つレディー・ジュリア。若い二人は、周囲の反対をおして、首尾よく結婚することが出来るのか?

レディー・ジュリアと同着で、ブランディングズ城に新たにやって来たのは、過去、スーと婚約していたこともある、めかし屋、モンティ・ボドキン。嫉妬深いロニーを慮って、スーとモンティの二人は、二人の過去を隠すことに決めたのだけれど…。やはり二人の仲を疑った、ロニーとスーの仲はすっかりぎくしゃくしてしまう。

さて、モンティの登場は、エムズワース卿にとっても脅威であった。なぜなら、彼はエンプレスを盗み出そうとした(と、エムズワース卿が信じている)、サー・グレゴリー・パースロー=パースローの甥であったから。エンプレスを再び危険な目に合わせはしないと、エムズワース卿は誓うのだった…。
目次
1. ティルベリー卿の不幸
2. モンティ・ボドキン登場
3. 憂愁のスー
4. ギャリー伯父さんの恋の妙薬
5. 危険な再会
6. レディー・ジュリア
7. ブランディングズ城楼上より
8. 回想録をめぐる愛と策謀
9. ブランディングズ城は雨模様
10. 恋人たちの和解
11. チョビひげ探偵の奸計
12. 探偵暗躍
13. 消えた原稿
14. から騒ぎ
15. から手形
16. ポスト回想録時代の福祉と正義
17. ブタでどう儲けるか
18. 大団円
 ブランディングズ城の魅力 佐藤多佳子
 本当のブランディングズ城 N・T・P・マーフィー
 訳者あとがき 森村たまき
あくまで強烈な個性の伯母や母。口を開けば若き日の面白話が出てくるギャリー伯父さん(大抵の時は、その話を最後までしたいという欲求に逆らえない、非常に情熱的な語り手でもある)、「チキショー!」のティルベリー卿、気はいいんだけど、誰かを苛立たせることと来たら、一級品に思えるモンティ、探偵というかこそ泥のようにも思えてしまうピルビーム、執事のビーチ。みんなみんな、楽しいです。相変わらずの物言い、言い回しもくすくすと笑えてしまいます。そして、スーがどこに惚れたのか分かんないくらい、今回、見事に情けないロニーだけれど、ラストはちょっとカッコイイのです。みんなみんな、お見事な大団円!

レディー・コンスタンスの「クラレンス!」というエムズワース卿を呼ぶ声や、ティルベリー卿の絶叫、愛すべきモンティなんかが、印象的です。いくら愛すべきといっても、社主に対して「よしきたホー」はないだろ、と思うけど。ま、彼は「心優しきめかし屋」だからね。

「おまえはしじゅう<クラレンス!>と言い続けじゃ」エムズワース卿は不機嫌に言った。「<クラレンス……クラレンス>とこうじゃ。わしがペギニーズ犬か何かかと人は思うぞ。さてと、今度は何じゃ?」(p123より引用)

「チキショー!」ティルベリー卿が言った。精神的ストレスの際に彼が常用する絶叫である。(p7より引用)

マンモス社出版社の社主は若きジャーナリストの理想型を言葉には表現できないものの、しかしそれはどちらかというともっとむさ苦しい、できればメガネを掛けているようなモノで、金輪際スパッツなんぞは付けていない。それでその時のモンティ・ボドキンは実際にスパッツをしていたわけではなかったのだが、しかし彼の周囲にはまごうかたなきスパッツ・オーラが漂っていた。(p22より引用)

「ディビザデロ通り」/断片

 2009-04-24-22:13
ディビザデロ通り (新潮クレスト・ブックス)ディビザデロ通り (新潮クレスト・ブックス)
(2009/01)
マイケル オンダーチェ

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amazonの内容紹介から引いちゃいます。

血のつながらない姉妹と、親を殺された少年。一人の父親のもと、きょうだいのように育った彼らを、ひとつの恋が引き裂く。散り散りになった人生は、境界線上でかすかに触れあいながら、時の狭間へと消えていく。和解できない家族。成就しない愛。叶うことのない思いが、異なる時代のいくつもの物語を、一本の糸でつないでいく―。ブッカー賞作家が綴る、密やかな愛の物語。

血のつながらないアンナとクレア。二人の姉妹と共に育ち、アンナと恋に落ちたクープ。そして、二人を許せない父親。共に育った彼らは、ある嵐の日に引き裂かれる…。

そこから描かれるのは、その後の彼らの人生だったり、彼らが出会った人の人生。なんというか、普通の物語だったら、クモの巣を張り巡らす方向に進む所を、既に張られているクモの巣の、細い一本を辿っていく感じというのかなぁ。辿りきったところでぷつっとその糸は終わってしまって、今度は同じ円環上にある違う方向の糸を辿っていく感じ。だから何というか、クライマックスはそこにはなくて、どうなっちゃうのーー?!と思うところで、終わってしまう事もある。

そこがちょっと消化不良の感もあるんですが、これはそういう物語なんでしょうねえ。沢山の人生の断片が、少しずつ重なって響き合っていく。全てを辿ったわけではないから、しっかりと強烈に印象付けられることはなかったのだけれど、なんとなーく、それぞれの人生の一部が自分の中に残る感じ。こういう小説もあるんだなぁ、と思いました。でも、こういう物語物語してないタイプは、私にはちょっと読み辛かったです。
目次
1 アンナ、クレア、そしてクープ
   孤児/赤と黒/マヌーシュ/過去から抜け出す/かつてはアンナとして知られていた人物/名前につまずく
2 荷馬車の一家
   家/アストルフ/旅路/二枚の写真
3 デミュの家
   マルセイヤン/到着/広大な世界/犬/シャリヴァリと夜なべ/恋文/夜の仕事/親類/マゼールの森/畑/考え/戦争/休暇/帰還/さよならを言うがいい

 謝辞
  訳者あとがき
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つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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