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「火星ダークバラード」

 2010-03-31-23:48
火星ダーク・バラード火星ダーク・バラード
(2003/11)
上田 早夕里

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 プロローグ
第一章 安息の地
第二章 プログレッシヴ
第三章 孤立
第四章 破壊の天使
第五章 焦熱の塔
 エピローグ
 あとがき

すっごく良かったんですが、なんと目次しかメモしてなかった…。

これはもろにSFなんですが、上田 早夕里さんはミステリーも書いていて、以前「ショコラティエの勲章」(感想)を読んだことがありました。ミステリーも決して悪くはなかったんですが、やっぱりこの方、SFの方なんですね。迫力が違いましたー。

内容(「BOOK」データベースより)
火星治安管理局員・水島烈は同僚の神月璃奈とともに、凶悪殺人犯ジョエル・タキを護送中、襲撃を受けて意識を失うが、それは、肉食恐竜の姿をした生物によるものだった!意識を取り戻した水島を持っていたのは、ジョエル・タキ逃亡の知らせと璃奈の無惨な死体―。捜査当局から疑いをかけられた水島は自らの潔白を証明するため、個人捜査を開始するが、その矢先、アデリーンという美少女と出会う。事件の真相を知っていると語る彼女は他人の精神と共振することのできる「超共感性」と呼ばれる特殊な脳機能の持ち主だった。だが、すでに事態は二人の力だけではどうしようもない方向へと向かっていたのだった…。サスペンスに満ちた展開で息つく間も与えないSF巨篇、堂々の誕生!第4回小松左京賞受賞作。

不器用な男、水島につられて、読んでる間、なんだかハードボイルドな気分になりました。ピュアなアデリーンの方ではなく、水島に同調してしまうのはなぜに。
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「Heart Beat」/青春音楽小説アンソロジー

 2010-02-24-23:43
Heart BeatHeart Beat
(2008/10/29)
芦原 すなお伊藤 たかみ

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内容紹介
ビートルズも四人、ベンチャーズも四人。なら、アーゴノーツも四人でなくちゃならない。(「アルゴー号の勇者たち~短い叙事詩~」)。
実質的には文化祭の打ち上げっていうより、50ccの解散パーティーになる(「シャンディは、おやすみを言わない」)。
エレキギターのフレーズが聞こえてきた。吹奏楽部の新しいレパートリーだ(「peacemaker」)。
おれはあんまり気乗りしないまま、生まれて初めてライブハウスってところに行った(「おれがはじめて生んだ、まっさらな音」)。
指定されたとおりの場所を押さえて弾くと、ちゃんとブルースに聞こえるではないか(「フランソワ」)。
そのとき僕は、自信過剰で感傷的な、チェロ専攻の高校二年生だった(「再会」)。


「船に乗れ!」が巷で評判の藤谷さん。わが図書館には他にあんまりおいてないようだったので、アンソロジーを借りてきました。これ、読んだことない伊藤たかみさんの短編も入ってたので、ちょうどいいなー、と思って。しかし、伊藤さんてば、いつの間に角田さんと離婚されてたんでしょう。角田さんの再婚のニュースにびっくりでした。


Peacemaker
小路幸也
シャンディは、おやすみを言わない
伊藤たかみ
おれがはじめて生んだ、まっさらな音
楡井亜木子
アルゴー号の勇者たち~短い叙事詩~
芦原すなお
再会
藤谷治
フランソワ
花村萬月
小路さんは流石の手堅さ、伊藤さんのはちょっと甘かったかなー。昔良く読んだ、喜多嶋隆さんをちょっと思い出す感じ。もう少しぴりりとした所が欲しいです。期待の藤谷さんは、これ、どうも「船に乗れ!」の番外なんじゃないかな。これだけだとぜんっぜん分かりませんでした。やっぱりほとぼりが冷めた頃に読もう…。
この中で好きだったのは、「おれがはじめて生んだ、まっさらな音」。高校生のゴツゴツした「おれ」。彼はモンスターに出会えるのかな。この真っ直ぐさで、彼をはじめて夢中にさせたバンドの音と同じくらい、彼を圧倒するモンスターを見つけられるんじゃないかな。

「イニシエーション・ラブ」

 2010-02-13-23:38
イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)
(2004/03)
乾 くるみ

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大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって…。

仕掛けのある本だとは聞いておりましたが、なっるほどねーーー。しかし、いまひとつ勘の鈍い私は最後にえーーー!、っとなった挙句、ネットの旅に出てしまいました。しっかり解説してくれているページを見つけたので、思わずじっくり読んでしまいました。

目次
A面
1 揺れるまなざし
2 君は1000%
3 YES-NO
4 Lucky Chanceをもう一度
5 愛のメモリー
6 君だけに
B面
1 木綿のハンカチーフ
2 DANCE
3 夏をあきらめて
4 心の色
5 ルビーの指輪
6 SHOW ME

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「卵のふわふわ」/お江戸のある夫婦の形

 2009-12-06-00:42
卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)
(2007/07/14)
宇江佐 真理

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内容(「BOOK」データベースより)
のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ―。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。忠右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。

まだ子がないことが問題とはいえ、舅と姑とは仲が良い様子が見えるものの、夫、正一郎はのぶにとっても冷たい。一般人とは別の方に頭が動いているようだけれど、生活面ではゆるゆるな舅、忠右衛門は、いざとなれば養子をとればいい、気にするなと言うのだけれど…。全く改まらない正一郎の態度、開くばかりの夫婦の距離に、のぶはどんどん追い詰められていくのです。章の最後に、そっと顔をしかめたり、「~も嫌い」と呟くのぶに、はらはらしつつ読み進めてしまいました。

しかし、一方からの言い分ではなく、逆側から見て分かることもある。実際、のぶにはちょっとひどいところもあるんだよね。結局、のぶが正一郎に反旗を翻すことで、状況が変わっていき、正一郎も歩み寄りを始めるのだけれど、きっかけがなければ、正一郎はあのままだったのかしらん。父、忠右衛門は、正一郎の気持ちをきちんと見抜いていたようだけれど…。

奉行所の同心の屋敷なのに幇間の今助が足繁く出入りしていたり、舅もひと癖あれば姑のおふでもやたらと気風が良かったり、時代物としてはちょっと変わっているなぁ、と思いました。これまで私が読んだ中には、嫁のことを「のぶちゃん」とか言って、かわいがる舅はあまり出てこなかったような…。

途中までは正一郎の冷たさが辛かったんだけど、これはこれで女子の夢なのかもしれませんね。「卵のふわふわ」の章での、鰹節を掻きながらの正一郎の告白には、不器用な男性の精いっぱいの心を感じて、ぐっときました。のぶのために、「卵のふわふわ」を拵える場面にも。人が目の前で自分のために作ってくれるんだもの。それは絶対美味しいはず。

黒豆のちょろぎ。そういえば、祖父母宅のおせちにも入ってたのかな。それとも、牛肉のしぐれ煮とかに付け合わせてあったのだったかな。ちょろぎ単品でも食べてたような気がするけど、あれって結構癖になるんですよね。
秘伝 黄身返し卵
美艶 淡雪豆腐
酔余 水雑炊
涼味 心太
安堵 卵のふわふわ
珍味 ちょろぎ
 解説 塩田丸男

「食堂かたつむり」/小川糸

 2009-12-06-00:03
食堂かたつむり食堂かたつむり
(2008/01/10)
小川 糸

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内容紹介
トルコ料理店でのアルバイトを終えて家に戻ると、部屋の中が空っぽになっていた。突然、同棲していた恋人に何もかもを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、主人公の倫子はさらに声をも失う。たったひとつ手元に残ったのは、祖母から譲り受けたぬか床だけ。山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな小さな食堂を始める。一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂。次第に食堂は評判になるが――五感をくすぐる瑞々しく繊細な描写と、力強い物語運びで話題を呼んだデビュー作。

しばらく前に話題になっていた本ですよね。借り出しも落ち着いたようで、図書館に置いてあったので借りてきました。

しかし、これはちょっと駄目でした、私。ブログ放置期間中に、面白かった本のことも沢山書き逃しているんで、わざわざ面白くなかった本について書くのもなんなのですが…。

初恋の人、身近な人物の死、料理、外国人の恋人(これは違うかなぁ)。なんというか、出来の悪い吉本ばななを読んでいるようなんですよね。主人公が開くことになる、「食堂かたつむり」のおとぎ話のような浮世離れっぷりは、そうは気にならないんだけど(なんだかんだ言って美味しそうだしさ)、なんとなーく感情の流れが気持ち悪いんだな。御都合主義的というか…。

と、文句言いつつ、最後の辺りではやはり涙してしまうわけですが…。そういう流れに持ってかれると、涙腺はそれはそれで反応しちゃうんだよね。

「ドラゴン・ティアーズ―龍涙」/IWGPⅨ

 2009-10-26-22:35
ドラゴン・ティアーズ──龍涙ドラゴン・ティアーズ──龍涙
(2009/08/07)
石田 衣良

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内容(「BOOK」データベースより)
茨城の奴隷工場から中国人少女が脱走した。250人の研修生の強制送還まで、タイムリミットは一週間。捜索を頼まれたマコトは、チャイナタウンの裏組織“東龍”に近づく。

目次
キャッチャー・オン・ザ・目白通り
家なき者のパレード
出会い系サンタクロース
ドラゴン・ティアーズ―龍涙
内容紹介にあるのは、表題作でもある「ドラゴン・ティアーズ―龍涙」のことですね。相変わらずのマコト、相変わらずのトラブル。春の風が官能的だ、というマコトの台詞ももう何度目なんだろう。もういい加減、似た様な話も多いし、一回りしているけど、それでも下に引用したようなマコトの台詞が好きなんだよね。

 なあ、おれは思うんだけど、自分の値打ちを決めるのは、結局自分だよな。人に発見されるのをぼんやり待つ人間は、最後には誰かさんのいいカモになる。それがジャングルみたいになった二十一世紀の高度消費社会のニッポンだ。
 自分の値札くらい自由につければいい。売れるか売れないかの問題じゃない。あんたも東京の女なら、ガッツのない男たちにそれくらいの度胸を見せてくれ。 (「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」p11より引用)

 出会いなんて、だいたいは最低の場所に転がってるに決まっているのだ。
 みんな立派な場所ばかり探しすぎ。(「出会い系サンタクロース」p116より引用)

 おしゃれでハイセンスな高度消費社会では、ものを買うことはすでに経済学から倫理学の領域に問題点をシフト済みなのだ。
 百円ショップでカップ麺を買うとき、おれたちは胸に手をあて考えたほうがいい。
 この濃厚とんこつ味一杯に、誰の涙がどれくらい注がれているかをね。(「ドラゴン・ティアーズ」p162より引用)

前回もマコトの母さんの告白に、さすが母さん、パンチが効いてんなー、と思ったんだけど、またまた今回もかっこいいのです。伊達に一人でマコトを育ててないよねえ。そして、”マコトなんていくらこの街でちやほやされても、まだまだガキ”なのです。この後も、彼女は出てくるのかなぁ。”おふくろ”を除けば、IWGPの女性レギュラーって皆無に近いよね。マコトのためにも花を!、とこれまた毎回思っているような気もするのです。

「笑壺(えつぼ)-SFバカ本ナンセンス集」/おバカ万歳!

 2009-08-03-13:54
笑壺-SFバカ本ナンセンス集笑壺-SFバカ本ナンセンス集
(2006/06/06)
岡本 賢一岬 兄悟

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出版社/著者からの内容紹介
奇想天外! 脳ミソとろける笑いの8連発
1996年から、12冊が刊行された「SFバカ本」シリーズ。この伝説の短編集の百を越える作品の中から、ナンセンスさに秀でた8篇を厳選。『この胸いっぱいの愛を』の梶尾真治、「ぶたぶた」シリーズの矢崎存美、新田次郎文学賞の谷甲州、TM NETWORKや鈴木亜美の作詞で知られる小室みつ子……。彼らのまったく違う一面が見られる。アンドロイドと女主人、大阪人と宇宙人、おやぢと吸血鬼が登場して……。脳ミソとろける笑いの連続!

目次
哀愁の女主人、情熱の女奴隷   森奈津子
怒りの搾麺               梶尾真治
インデペンデンス・デイ・イン・オオサカ
 (愛はなくとも資本主義)      大原まり子
家庭内重力               岬兄悟
12人のいかれた男たち        岡本賢一
スペース・ストーカー          谷甲州
はなのゆくえ              矢崎存美
フロム・オヤヂ・ティル・ドーン     小室みつ子
 解説 笑いのツボ           岬兄悟・大原まり子
おバカSFなので、どーしても体の一部に話が偏りがちなんですが、ただただ楽しー!、という点で、入院中にはぴったりの本でした。

早熟化が進んだ世界の中、精子が意思を持ってしまった青年の話(「怒りの搾麺」。そう、これは、”ざーめん”と読むのです)、異星人とのコンタクトに行き違いが生じ、切羽詰まった12人の男たちがとった方法とは…というお話(「12人のいかれた男たち」)、家族の内、たった一人違う重力に支配されるようになってしまったお父さんの話(家庭内暴力ならぬ「家庭内重力」なんです)、宇宙を股にかけたストーカーに追われる妻をもった夫のお話(「スペース・ストーカー」)などなど。

森奈津子さんは初めて読んだんですが、まさに”情熱的な女奴隷”にウっときたり、大阪人のたくましき商魂にくらりと来たり(「インデペンデンス・デイ・イン・オオサカ」。大阪人に比べれば、姿はあれでも異星人なんて、赤子のよう~)、耽美なヴァンパイアの世界にやって来たオヤヂの姿には、お耽美ヴァンパイアにちょっと同情してみたり。

面白いのは色々あったし、やっぱり初めて読んだんだけど、矢崎存美さんの「はなのゆくえ」が一番好きだったな。「はなのゆくえ」とは、「鼻の行方」。慣れ親しんだ自分の鼻に家出をされてしまった私。鼻はどこへ行ってしまったというのだ? 鼻の夢が何とも可愛らしい一品なのです。
SF

「ヨーロッパ退屈日記」/美意識三昧

 2009-07-30-15:27
ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)
(2005/03)
伊丹 十三

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この表紙もお洒落でしょう? カバー装画も著者自装ってことなんですが、一つ一つは短いこのエッセイを読んでいても感じるのが、とんでもなく高い美意識! こんな美意識を掲げて、それに準じて生きるなんて、疲れちゃうよー、とゆるゆる時代の私なんては、思ってしまうのだけれど…。

「正装の快感」の次の箇所に見られるように、

正装する、ということは愉しいことである。社会の掟に、進んで身をまかせ、自らを縛する、というところに、一種の快い、引緊まった安堵がある。タクシードを着て凛々しい快感を覚えぬ男があるだろうか。

規律や規範の中の愉しさを指向しているのかなー。タキシードではなく、タクシード、ジャガーではなく、ジャギュア、とかそういうところにも、拘りがあるよねえ。私なんて、どこへでも適当な格好で行ってしまうので(特に会社に行く時がいい加減)、良く母親に怒られるんですが、でもさ、みなが上昇志向ではなく、また西欧社会を目指しているわけでもなく、ある意味では足るを知ってしまった、こういう今の日本を、伊丹さんなんかはどう見るのかなぁ、と思ってしまいました。

「女性の眼で見た世界の構造」なんてのは、ちょっと女性蔑視の気もあるんですが、まぁ多少のことは許そう、と思えるダンディっぷり。えーと、今、その場所を探せなかったんですが、黙って任せてくれれば、これぞ!というオーダーをしたのに、女性にバンバンとオーダーされてしまい、しおしおとする、なんて箇所があった(と思う)んですが、黙っていればダンディなおじさまが極め尽くした美を提供してくれるんだもの、多少のことは良しとしようと思えてしまいます。伊丹さんが既にこの世にいないことが、惜しまれます…。

「リチャード・ブルックスの言葉」における、演技論も面白かったです。映画には、俳優の眼を、ありありと奥まで覗き込むという、演劇にはない特権がある。俳優は、ただ「正しく感じる」ということだけを考えればいい。それ以外に、観客を信じさせる方法なんてない、ということ。

↓新潮文庫と文春文庫から、同じ本が出ているみたい。最初に上げたものは、帯が邪魔なのでこちらも~。「この本を読んでニヤッと笑ったら, あなたは本格派で, しかもちょっと変なヒトです」というコピーは、初出誌の編集者だった山口瞳によるものだとか。

ヨーロッパ退屈日記 (文春文庫 131-3)ヨーロッパ退屈日記 (文春文庫 131-3)
(1976/01)
伊丹 十三

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「虚構機関」/年間日本SF傑作選2007

 2009-07-27-11:15
虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)
(2008/12)
不明

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目次
 序文  大森 望
グラスハートが割れないように   小川一水
七パーセントのテンムー       山本 弘
羊山羊                 田中哲弥
靄の中                 北國浩二
パリンプセスト
 あるいは重ね書きされた八つの物語
                      円城塔
声に出して読みたい名前       中原昌也
ダース考 着ぐるみフォビア      岸本佐知子
忠告                   恩田陸
開封                   堀 晃
それは確かです            かんべむさし
バースディ・ケーキ           萩尾望都
いくさ 公転 星座から見た地球   福永 信
うつろなテレポーター          八杉将司
自己相似荘(フラクタルハウス)    平谷美樹
大使の孤独               林 讓治
The Indefference Engine       伊藤計劃
 解説                  日下三蔵
 二〇〇七年の日本SF界概況    大森 望
宇宙を舞台にした、もろにSFっぽいものから、ん?、ちょっと不思議?、というものまで、バランス良く収められている一冊です。

■岸本佐知子■
「ダース考」と「着ぐるみフォビア」の二本立て。共通するのは、あの中にあるものは一体…、ということ。実に岸本さんらしいなぁ、と思うお話でした。
 ダース・ベイダー こわい
 ダース・ベイダー くろい

アナキンの物語をすでに知ってしまった私たちは、あのマスクの下にあるものも、想像できるようにはなりましたが、あのテーマ曲が確かにこう聞こえちゃうかも!

■円城塔■
アイデアが分かり易かった「オブ・ザ・ベースボール」は大丈夫だったけれど、同時収録されていた「つぎの著者につづく」でギブアップした円城さん。今回も分かるものもあれば、さっぱり~、なものもあり。これ自体が短編なんだけれど、この短編は、「砂鯨」「涙方程式始末」「祖母祖父祖母祖父をなす四つの断章」「紐虫をめぐる奇妙な性質」「断絶と一つの解題」「縞馬型をした我が父母について」「波蘭あるいはアレフに関する記憶」という七つの小さな物語を内包する。小さいと言えそれぞれ独立した世界観があって、分かるものについては面白かったです。一部、話が繋がっているのかなぁ?と思う部分もあったけど、深くはわからんです…。

■伊藤計劃■
まるでルワンダの内戦のようなこの舞台には、ちょっとんーーーと思ったし、ラスト(というか、これが最初の部分に繋がっているんだけど)はそうきちゃうのかー、とちょっと残念にも思ったんだけど、気になってる「虐殺器官」は、やっぱり読もうっと。伊藤さんのブログ「第弐位相」を読んで、壮絶だなぁ、と思っていたんですが、若くして既に亡くなられてしまったんですよね。残念です…。

SF

「おとぎ話の忘れ物」/おとぎ話はお好き?

 2009-03-24-22:04
おとぎ話の忘れ物おとぎ話の忘れ物
(2006/04)
小川 洋子

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表紙はまるで、ヨハネの首を所望したサロメのような少女。ただし、こちらの少女は赤い頭巾をつけ、その盆に乗せるのは、狼の首。とくれば…、というわけで、これは樋上公美子さんという方の絵に、小川洋子さんがおとぎ話をモチーフにお話をつけた本なのです。いかにも少女ー!な絵なんですが、時にエロチックなものがあったりしつつも、少女のクールな目が素敵です。上質な紙に沢山の絵、なかなか贅沢な本ですよ。
目次
ずきん倶楽部
アリスという名前
人魚宝石職人の一生
愛されすぎた白鳥
……あとがき……
小川洋子
樋上公美子
……画題一覧……
製菓会社の先々代が、とあるきっかけから世界各地を旅して蒐集し、美々しく製本した世界でたった一冊の本。スワン・キャンディーが名物のこの店にはそんなわけで、レジの後ろにおとぎ話を収めた[忘れ物図書館]がある。キャンディーとおとぎ話。二つの組み合わせの妙は、いつしか静かな人気を呼び…。そうして、読者たる私たちも、[忘れ物図書館]の中へ…。キャンディーが溶けるのをゆっくりと楽しむように、ひとつひとつのお話を楽しむことが出来るのです。

「アリスという名前」は、え、そんなちょっとダジャレ的お話?という感じなんですが(ま、それもおとぎ話的と言えるのかもしれませんが)、あとは美しく残酷であるという、おとぎ話の定石を守っているように思います。「ずきん倶楽部」の会長(ずきん倶楽部万歳!)のクールさとか、「人魚宝石職人の一生」の宝石職人の奉仕などが良かったです。

■関連リンク■
樋上公美子さんの、公式サイトにリンク
おお、古川さんの「沈黙/アビシニアン 」の表紙もこの方だったんですね。人物じゃないから気付かなかったよ!

「実さえ花さえ」/今生限りの命にあらば

 2009-03-18-23:27
実さえ花さえ実さえ花さえ
(2008/10/21)
朝井 まかて

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全然、知らない作家さんだったんだけど、これは良かったー! これが初めて書き上げた作品で、初応募での受賞(第三回小説現代長編新人賞奨励賞)、デビューとなったのだとか。他にも読みたい!、と思ったんだけど、そんなわけで出版されているのは、まだこの一作だけみたい。
舞台は向嶋の小体なお店、なずな屋。夫婦二人+αで切り盛りする小さなお店だけれど、種苗の質の良さ、花つきの良さには定評がある。それは、江戸城お出入りの植木商、霧島屋で育種の腕を磨いた花師の新次の力量によるもの。また、なずな屋では売った種苗の手入れについても抜かりがない。手習いの先生をしていた妻、おりんの手による、一つ一つの鉢につけた「お手入れ指南」も、いつしか評判となっていた。

ある日、なずな屋に持ち込まれたのは、日本橋駿河町の太物問屋、上総屋の隠居、六兵衛による桜草のまとまった注文。こうして、六兵衛の知己を得た新次とおりん夫婦。第一章で登場した六兵衛は、実力者だけあって、この後にも何かと新次とおりんの夫婦の前に現れるのです。

その他、彼らに絡んでくるのは、新次の昔馴染みの留吉とお袖一家。新次が若き日に共に修業した霧島屋の一人娘で、女だてらに才能ある花師である理世。六兵衛の孫で、上総屋の跡取り、辰之助。ひょんな事から、新次とおりんがあずかることになった、少年、しゅん吉。このキャラクターがみんな良くてねえ。シリーズ化だって出来そうなのに、途中から時の流れはぐんぐんと早くなってしまって、完全に終わってしまうのが勿体ないです。ま、デビュー作からシリーズ化などは考えないものなのかもしれませんが・・・。

 育種とは樹木や草花の栽培のことで、種から育てる実生はもちろん、挿し芽や挿し木、接ぎ木で数を増やしたり、性質を強くする品種改良や様々な種類を交配して新種の作出まで行なう。
 徳川の時代に本草学が盛んになったことから江戸の植木職人の育種技術は飛躍的に高まり、それを専業とする者が分かれて話を名乗るようになった。梅や椿、菖蒲などは、後世に残る品種のほとんどがこの時代に誕生し尽くしている。   (p7より引用)

「花師」というあまり知らない世界を、分かり易く面白く描き出してくれるところには、諸田玲子さんのお鳥見女房シリーズを思い出します。巻数を重ねているお鳥見女房シリーズとは異なり、こちらは一旦、綺麗に終わってはしまったんだけど、もう少し長くこの世界を楽しみたかったなぁ、と思いました。若干ね、妻おりんの方に感情移入して読むと、「えええ!」と思うところなんかもあったりして、後半は誰を頼りに読んだらいいのさ、と思ったりもするんですが・・・。でも、純粋に花師の世界が面白かったし、また、それぞれに矜持ある人々の生が良かったです。

【メモ】
・松平定信 (Wikipediaにリンク
・染井吉野 (Wikipediaにリンク:これを読むと作中のあの記述は、創作なのかなー。ま、確かにそうだとしたら、ちと出来過ぎですな)
目次
第一章 春の見つけかた
第二章 空の青で染めよ
第三章 実さえ花さえ、その葉さえ
第四章 いつか、野となれ山となれ
終章   語り草の、のち

「風の邦、星の渚」/街をつくろう

 2009-03-04-23:20
風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記
(2008/10)
小川 一水

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中世ヨーロッパ+地球外生命体(ただし、本体は地縛霊並みにその場所を動けない)。とある街を、志ある青年が興すまで。その街の名は、レーズスフェント…。

amazonから内容紹介引いちゃいます。

父親と対立して、辺境に追いやられた若き騎士ルドガーは、赴任した領地でカエサルと古代ローマを知っているという、不思議な街の守護精霊「レーズ」と出会う。実は彼女の正体は遠い星の彼方からやって来た巨大な異星生命体の対外感覚器官だった。ともに故郷を亡くし、固陋なキリスト教の因習に反発する二人は、中世ヨーロッパの海に面した三角洲に、今までなかった街「レーズスフェント」を作り、帝国自由都市を目指す。だが、街が発展するにつれて辺境伯やハンザ同盟の怒りを買い、同じく異星生命体と接触を持ったデンマーク国王との戦いへとつながっていく……。はたしてレーズスフェントの未来は?俊英・小川一水が、初のハードカバーで描く歴史SF!

うーんうーん、小川一水さん、「老ヴォールの惑星」(感想)はとっても好きだったんだけど、これはちょっといまいちだったかな。なんつーか、ラノベを無理やりハードにしちゃった感じ。いや、ラノベはラノベで、好きなものは好きなんだけど。

二段組みで388頁、それなりにボリューミーだと思うし、それなりのスパンで描かれるんだけど、読み終わっても、印象が何だか軽いんだよなぁ。流通に関しても、「狼と香辛料」(感想)を読んだ時のように、「おおっ!!」と思うこともなく。なんというか、知ってるエピソードで繋がってる感じというか、新しい物の見方がなかったのが残念。小川一水さんが中世ヨーロッパを描くならば、新しい切り口で見せて欲しかったなぁ。せっかくの設定、守護精霊「レーズ」とその伴侶たる「ラルキィ」に関しても、遠い星からやって来たというのに、あまり生かしきれていないように思いました。

守護霊の助けがあるとはいえ、たった一人の騎士が街を興すというのは、実際には難しいとは思うんだけど、その辺の物語は齟齬があまりないというか、綺麗な感じだったんだけど。でも、ちゃんちゃんと進んでいくので、どちらかというとゲームっぽいというか、アニメを見てるような感じもしました。

「はさんではさんで」/等身大?

 2009-02-26-22:39
はさんではさんではさんではさんで
(2008/09/25)
甘木 つゆこ

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表題作の「はさんではさんで」と「コンビニエンス・ヒーロー」の二編。
「はさんではさんで」
高校時代の友人、貴之に恋しているといってもいい、私。しかし、貴之には、幼少時の経験により、女性との接触に対し、極度のトラウマがあった。同様の体験をしていた私に対し、ある意味では気を許した貴之は、他の誰にも心を許さない私に、「タロウ」と渾名を付ける。

大学に入ってもこれといった友人も作らず、貴之との時間を何よりも心待ちにする、愛犬「タロウ」として生きる私。他に実感があるのは、ヤフオクで買った鉗子で自分の肉を挟む時ぐらい…。

これといった出来事が起こるわけではないけれど、一歩前進、なのかなぁ。
「コンビニエンス・ヒーロー」
就職活動から突然降りてしまい、休学してコンビニバイトに励む僕。僕に付きまとうのは、「何も僕じゃなくてもいい」という言葉。ついつい自分を軽んじてしまう僕なのだが…。

自ら店長に働きかけ、デリバリーサービスを始めた僕。こちらもやはり、これといった出来事は起こらないのだけれど、そうして僕は身の程を知るのだ。
どちらも物語が始まる以前の物語な気がするのです。なんだろうなぁ、可愛い表紙につられて読んじゃったけど、うーん、特に読まなくても良かったような気がいたしまする。

「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」/ゲンジを巡る九つのお話

 2009-02-24-21:57
ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
(2008/10/31)
江國 香織松浦 理英子

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あの光る君の物語から、九つの帖を選んで、現代の作家がその世界を描きます。まんま源氏物語そのものの世界であるようなものから、舞台をすっかり現代に移してしまったものまで。

でもって、こちらもメモを消してしまったので(涙)、amazonの内容紹介をお借りいたします。

内容紹介
現代の人気作家九人が新たに織りなす、もうひとつの源氏物語。

異国の男相手の店から幼い少女が抜け出そうとする角田光代流若紫。真実の愛を求める源氏がベニーちゃんにとまどう末摘花by町田康。尼となった女三の宮がみずからの生涯を昔語りする桐野夏生の柏木――ほかに松浦理英子の帚木、江國香織の夕顔、金原ひとみの葵、島田雅彦の須磨、日和聡子の蛍、小池昌代の浮舟、の九篇。

それぞれ素敵な世界だったんだけど、私が好きだったのは、町田さんの「末摘花」と、金原さんの「葵」、小池さんの「浮舟」でした。

金原さんのが好きなのは、自分でも意外だったんだけど、源氏の正妻としてちょっとお高いイメージすらあった葵の上が(って、完全に自分のイメージだけど)、 淡々とさばさばした感じで新しい命を育むところが良かったなぁ。そして、一方の光の役に立たなさっぷりも。

「浮舟」は、心ならずも二人の男の間で揺れることになった、女の心情が良かったです。心情だけなのに、実にダイナミック!

そしてそして、町田さん。「権現の踊り子」(感想)の、「逆水戸」を思い出しちゃうなぁ。題材も「末摘花」であるからして、ところどころ、ちょっと吹き出しそうになってしまいました。「末摘花」って女性の立場からすると、何を?!と思う面もあるんだけど、これは源氏のしょうも無さもあって、その辺あまり気になりませんでした。べらべらしゃべる平安貴族。町田康の文体に意外にハマるのかも~。

「マルドゥック・ヴェロシティ・1」「2」「3」/加速する物語

 2009-01-11-23:30
マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/08)
冲方 丁

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マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/15)
冲方 丁

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マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/22)
冲方 丁

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あの「マルドゥック・スクランブル」(感想)以前。少女、バロットとウフコックが出会う前。ウフコックと大男ボイルドの因縁が語られます。ボイルドは、なぜあんなにウフコックに拘ったのか。ウフコックはなぜあんなに自らの存在価値に拘ったのか、使い手を待ち望んでいたのか。すべてが語られます。

そして、この物語の、惚れ惚れするようなソリッドさ。読む前に想像していたのよりもとても良くて、加速するこの物語にぐっと引き込まれました。早川文庫から出ていても、何となくラノベ風の文法で書かれ、筋も比較的シンプルだった前作と比べ、書き込まれた物語の重さは尋常ではなく増している。それは主人公たる人物が、少女バロットから、重力(フロート)を自在に操る大男、ボイルドに変わったからだけではなく。ギャング一家、ネイルズ・ファミリー、あのオクトーバー一族、研究所の三博士、最初の09メンバー、ほぼフリークスなカトル・カール…。詰め込まれた情報量も半端ではない。

しかし、09メンバーの活躍を、その絆を見せつけられれば見せつけられるほど、読みながら切なくもある。だって、「スクランブル」を読んでしまった読者は、既にその絆が失われていることを知っているから。少しずつ削り取られていく09メンバーたち。「バック」がなかなか割れないことに、引かれた絵図の大きさに、徐々に疲弊し、虚無に飲み込まれていく残されたメンバーたち。

その中でやはり他のメンバーとは違うのは、ボイルドの良心でもあった、金色のネズミ、ウフコック。研究所から街へと出た、最初のその気持ちを持ち続けたのは、ウフコックだけだったんではないのかなぁ。悩み続けること、虚無に飲み込まれないこと、ライセンスが交付された際の、ウフコックの宣言文が胸を打つ。ウフコックは救済を諦めない。

しかし、それもこれも、ウフコックは全ての事情を知っていたわけではないから、とも言えるんだけどねえ。詳しく描かれたボイルドの事情、こりゃもう、そうせざるを得なかったと思わないでもない。ただ、それでも、ウフコックの使用者として、ボイルドとバロットはやはり違うとは思うんだけど。

すべてが奇麗におさまった時、冲方さんはここまで予測して「スクランブル」を書いたのかしら、と不思議でした。「スクランブル」のあの事件自体も、なーんと既に約束されたというか、設定されたものだったわけで…。これはもう立派な大河ドラマ。緑の眼をしたあの子の今後だって気になるし、バロットとウフコックのその後だって気になる。この物語にはどんどん増殖していって欲しいものであります。本書は、”/”を多用した箇条書きのような文章が、この凄まじい加速度に貢献しているんだけど、ラノベ的文法も手法も全部無視して、実験的手法でも何でも、冲方さんの書きたいように書いていって欲しいなぁ。

大男、ミスター・モンスター、ボイルドの爆心地(グラウンドゼロ)。迫力かつ胸を打つ物語でありました。

ときとして暴力は、素晴らしい効果を発揮するのだと公言する意義は。
そんなものはない。そう言い切れる楽観こそ、本書の意義であって欲しい。
最善であれ最悪であれ、人は精神の血の輝きによって生きている。
そしてエンターテイメントは、最悪の輝きさえも明らかにするのだ。
残された虚無―その輝きを。
 (たぶん、後書きにあたる「精神の血―その最悪の輝き」より引用)

SF

「マルドゥック・スクランブル・1」「2」「3」/ネズミ&少女&…

 2008-12-27-22:05
マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/05)
冲方 丁

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マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/06)
冲方 丁

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マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/07)
冲方 丁

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自分の中で、最もかっこいいネズミといえば、それは「冒険者たち」のガンバだったんですが(そして、最も怖い白いものといえばノロイ)、ここに出てくる金色のネズミ、ウフコック・ペンティーノもまた、ガンバに匹敵するかっこ良さ! みなさんが、良い良いと仰っていた頃からは、かなーり遅れてしまいましたが、ようやく私も読むことが出来ました。

時はSF的近未来。戦争が終わり、軍事と密接に結び付いていた科学技術が禁じられたものとなって以来、ある者は科学技術発祥の地である”楽園”に閉じ籠ることを選び、ある者は快楽に特化した技術を持って会社を興し(*)、またある者は科学技術を民間で生かしていくことを主張した。発達し過ぎた科学技術は怖れの元、民間でこの技術を生かしていく道は決してたやすいものではなく、その技術によって生み出されたネズミ、ウフコックは常に自分の「有用性」を証明し続けてはならないのだ。

シェルという男に焼き殺されかけた少女、バロットはスクランブル-09によって蘇生を果たし、ウフコック、ドクターと共に事件の解決に当たることになる。スクランブル-09は緊急事態においてのみ、科学技術の使用が許可されるという法。人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得たバロットは、なんにでも変身可能なウフコックを「道具」として使い、ドクターとウフコックに協力するのだが・・・。

てきとーに粗筋を書きましたが、実はもっと色々とややこしいのです。体内の亜空間を利用して、どんなものにも変身出来るウフコックは、増大し過ぎていつかは死んでしまうという運命を持っているし、敵方としてバロットたちの邪魔をするのは、ウフコックのかつての相棒ボイルドだし、少女、ルーン・バロットには、彼女の深い絶望がある。

バロットは生命の危機に瀕していたこと、また自分自身の身を守る必要性が高いと予測されたことから、彼女はそういった特殊な体になったわけなんだけど、そうやって特殊な体質になった人というのは、その後どうやって生きていくのかなぁ、とちょっと不思議に思いました。バロットはものすごく適性があるし、ウフコックの相棒として生きていくのだろうなぁ、と思うけど、そうじゃない場合ってもう以前と同じように普通には生きていけないよなぁ…。

続く「ヴェロシティ」では、「スクランブル」以前。ウフコックとボイルドの過去が描かれているのですね。それも勿論楽しみなんだけど、ウフコックとバロットの未来も読んでみたいなぁ。

著者入魂のカジノの場面。わたくし、ちょっと読み流してしまいました…。カジノの場面って、力が入る人が多いですよね。後書き読んで、読み流してゴメンナサイとは思ったんだけど、確率論とか精神的駆け引きとか苦手さ…。この場面、色々かっこいい人たちも出てくるんだけどね。
1巻 The First Compression―圧縮
Chapter.1 吸気 Intake
Chapter.2 混合気 Mixture
Chapter.3 発動 Crank-up
Chapter.4 導火 Spark 
 後書き
2巻 The Second Combustion―燃焼
Chapter.1 活塞 Piston
Chapter.2 噴出 Injection
Chapter.3 回転 Rotor
Chapter.4 爆発 Explosion
 解説 鏡明
3巻 The Third Exhaust―排気
Chapter.1 曲軸 Crank Shaft
Chapter.2 分岐 Manifold
Chapter.3 合軸 Connecting Rod
Chapter.4 導き Navigation
 後書き
*続編、「マルドゥック・ヴェロシティ」(感想)を読んで、間違い発見。会社を興したわけではなく、その技術を持って元々あった企業に入り込んだんですね。
冒険者たち―ガンバと十五ひきの仲間冒険者たち―ガンバと十五ひきの仲間
(1982/01)
斎藤 惇夫薮内 正幸

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「年下の男の子」/あいつはあいつは…

 2008-11-08-20:12
年下の男の子年下の男の子
(2008/05/16)
五十嵐 貴久

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目次
出会いについて
メールについて
ディナーについて
会議について
引っ越しについて
デートについて
告白について
紹介について
ご褒美について
×××について
交際について
別れについて
神様について
三十七 マイナス 二十三 イコール 十四。

この年齢差の恋愛はありやなしや?

それも、女性の方が年上だったとしたら?

というお話。


いやー、これが実に楽しいんですよ。

児島クンの懐きっぷり、晶子の逡巡。リアルかどうかは良く分かりませぬが、楽しませて頂きました。
三十七歳、独身。このたび、ついにマンションを購入までしてしまった、食品会社宣伝部広報課勤務、川村晶子。結婚を諦めたわけではないけれど、四年前に彼がいたきり、交際している男性もいない。

代り映えのしない日常の中、先方のミスとは言え、会社人生初とも言えるトラブルが起きてしまう。ミスを取り戻すため、徹夜のシール張り作業をともに行うことになった、取り引き先PR会社の若い男性、児島達郎。深夜の難作業を行う中、ある種の感情が芽生えるけれど、それは危機をともに乗り越えたからだと思っていた。その後の彼の、お詫びを兼ねた食事の誘いも、社交辞令だと思っていたのだが…。

なんだかまめにメールを送ってくる児島くんに絆され、食事を共にする晶子さん。話も合うし、好感のもてる青年である児島クン。晶子の引っ越しも重なり、晶子と力仕事が得意な元・山岳部の児島くんは関係を深めていくのだが…。
有川浩さんの「ラブコメ」ともまた違うんだけど、読みながらなんだかニヤニヤしてしまうんだなぁ、これが。

晶子とも年齢が釣り合い、彼女の憧れの人でもあった、秋山部長の離婚話とか、児島くんに好意をもつ、晶子の後輩小川弥生とか、二人の障害(?)も出てくるんだけど、ここらは割とあっさりしているような気がしました。小川弥生なんて、応援してるよ~!、と言いながら、実際は晶子がとってしまったわけで、もうひと波乱あるのでは?と怯えながら読んでたんだけど、彼女は割とただ大人しいだけの女の子でしたね。いわゆる女性の恋愛小説だと、このあたり、恐ろしい復讐に打って出たりするもんですが、あまりどろどろせず良かったです。

ファンタジーといえばファンタジーなのかもしれないし、ラストはそうきちゃうか!、というのもあるけど、それでも読んでる間、私は楽しかったなー。児島くんの懐き方には、なんだか大型犬を思わせるものもありますが、いいよねえ、こんだけ気が利く児島くん。こんな子が、周りにいたら楽しいだろうなぁ。恋愛ではなくても、好意を示されれば嬉しいわけで、なんつーか大人になっても、その年齢ほどは実際には大人に成りきれていない私なんかは、精神年齢的には結構な年下とも変わらないのよね。最近、会社で一回り下の女の子に癒されている私、こんな恋愛もいいなー、などと思ってしまいました。

「非正規レジスタンス」/IWGP8

 2008-11-05-23:20
非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8
(2008/07)
石田 衣良

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目次
千川フォールアウト・マザー
池袋クリンナップス
定年ブルドッグ
非正規レジスタンス

■千川フォールアウト・マザー■
シングル・マザー、ユイの苦しみ。彼女に自らの経験を踏まえて、ある道を示したのはマコトの「おふくろ」だった。ユイの子供、カズシの転落事故などは、どこかで起こっていても不思議ではない事件。わたしたちはその背景を知ることもなく、若い母親を無責任だと責めるけれど…。その裏にはこんな事情がないとも言い切れないよなぁ。

■池袋クリンナップス■
池袋の街を再開発したデベロッパーの息子、カズフミは池袋の街で清掃活動を始めていた。黄色いバンダナをつけた、平和的集団、池袋クリンナップス。ところがこのカズフミが、父親の強引な事業の進め方のせいか、誘拐されてしまう。マコトはカズフミを救出するための協力を求められるのだが…。

■定年ブルドッグ■
どうしようもないS男に引っかかってしまった、警察官の娘、ハルナ。ハルナの行動もあまり褒められたものではないけれど、S男、カズマは、ハルナの父と、ハルナそれぞれに写真をばらまき、脅してきたのだ。父と娘の物語であり、警察官の父と「定年ブルドッグ」である大垣の友情の物語でもある。

■非正規レジスタンス■
池袋の街でマコトが知り合った、まるで難民のような生活を送るサトシ。そんな中、日雇い派遣で生きのびる彼らが、何者かに襲われるという事件が相次ぐ。マコトは派遣会社、ベターデイズに登録し、スタッフ番号I128356の真島として、その内情を探ることになる。
これが、池袋の、日本の「今」だとするならば、今回はまた随分と暗い話ばかりだなぁ、と思いました。相変わらず、石田さんの「今」を切り取る文章は見事なんだけどね。

たとえば、「非正規レジスタンス」における出だしはこんな感じ。

 おれたちの生きてるこの国では、二十四歳以下の若いやつらの半分が透明人間だって、あんたはしってるかい?
 やつらはこぎれいな格好をして、こまめにシャワーを浴び、外見はまるでうえの階級に属する正社員の若者と変わらない。憲法で保障された生存権を脅かす貧しさは、巧妙かつ必死に隠されているのだ。すえた汗のにおいはしないし、髪型だって普通。女だったらきちんと化粧もしているだろう(デパートの試供品なんかでね)。
 だが、誰も気にとめない透明人間をよく見てみると、悲惨な実態がわかってくる。

ベターデイズは、まんまグッドウィルのあの事件ですね。安全ネットもなく、連帯感もなく、日々漂うしかない若者たち。この中にも東京フリーターズユニオンなる団体が出てきますが、実際にもこういった団体が出てきているのですよね。安く使い捨てできる人材を求める企業の姿勢は、一度その旨味を知ってしまっただけに、本当に変わることが出来るのかしら、と思うけれど、やっぱりこのあたりの歪さはどこかで是正するべきだよねえ。働いて、評価されて、経験を積み上げることは、純粋に喜びだもの。ただただ労働力を提供するだけでは、擦り切れていってしまうよなぁ。

「浅田次郎とめぐる中国の旅」/浅田さんと中国

 2008-10-13-22:45
浅田次郎とめぐる中国の旅 『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』の世界浅田次郎とめぐる中国の旅 『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』の世界
(2008/07/30)
浅田 次郎

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結局、私は全部を読み切ることなく、時間切れになってしまい、浅田さんの小説の美学などを知ることが出来て良かった~!という、そんなちと勿体ない読み方になってしまったんですが、やっぱりメモメモ。「中国」というテーマは、浅田さんの中でずっと繋がっていて、「蒼穹の昴」、「中原の虹」だけではなく、まだまだ続くそうですよー。

何せ「蒼穹の昴」を読んでからも、「珍妃の井戸」を読んでからも、滅茶苦茶時間が経ってしまっていて。分かり易く描いてくれる浅田さんのお陰で、読んでる間は何とかなるんだけど、せっかく浅田さん自身が「蒼穹の昴」縁の場所をめぐり、説明をしてくれるという企画であるのに、いま一つピンとこないままでありましたよ。勿体なー。「蒼穹の昴」、「中原の虹」と合わせて、訪れる場所は、紫禁城、北京、満州、万里の長城の四か所。「蒼穹の昴」は、古き良き北京のイメージが崩れるから、と敢えてその地を訪れることなく、書かれたそうです。

学者と小説家は違っていて、それでも京極さんとか、この浅田さんとか、在野の人たちがこんだけ調べているのが凄いなぁ、といつもその姿勢には頭が下がります。なお且つ、それらをエンターテインメントに仕立て上げてしまうのだから!

以下、インタビュアー・末國善己氏による「浅田次郎、歴史小説を語る」からの引用です。エピソードが血肉になってない小説は、やはり小説とはいえないよね。

誰でも調べたことは書きたくなる。僕はもともと歴史が好きで歴史小説を書いているので、知っていることは何でも書きたくなるのですが、いかにストーリーを妨害させない程度に抑えるかについては、いつも頭を悩ませています。

僕は小説を書く時に、二つのことを憲法にしています。一つは美しく書く。もう一つは分かりやすく書く。

どれほど難しい題材を扱おうと、分からないという読者がいたら作家の負けです。僕は分かる人間にだけ分かればいいという芸術は、間違いなく二流だという芸術観を持っています。頭で考えるのではなく、一目見ただけで驚きがある、感動するのが本物なんです。
その意味では、文字という知的な道具を使っている小説は、表現としては一番難しい。それでも、いい作品を作るためには、分かりやすく書くという努力は必要だと思います。

「ホームズのいない町 13のまだらな推理」/連鎖反応的ミステリー

 2008-10-09-23:53
ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (FUTABA NOVELS)ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (FUTABA NOVELS)
(2008/03/19)
蒼井 上鷹

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目次
六本のナポレオン?
被害者は二人
あやしい一輪車乗り
ペット探偵帰る
第二の空き地の冒険
赤い○(わ)
五つも時計を持つ男
吐く人
四つのサイン入り本
銀星ちゃんがいっぱい
まだらのひもで三kg
覆面の依頼人
もう一本の緋色の糸
最初に、まずこれは私の好みの本ではありませんでした。でも、書いておかないと忘れてしまい、性懲りもなくまた手を出しては、あああ!となるので、一応メモメモ。

裏表紙には、「まだらな殺人者(MURDERER)」とあり、まだらなまーだー、うん、そういうセンスの本なのかな。

殺人事件から、小さな謎まで、13の謎。うー、好みでない、と思いつつ、そのまま一応読み続けてしまったのは、この13編が巧妙に繋がっているから。たぶん、範囲はほとんど狭い町内のお話だと思うのに、これが見事に繋がってんだなー。Aという事件が起こったおかげで、実はBという人物がCという被害にあっており、同時にまたDも…という感じ。で、ついつい繋がりが気になって、読んじゃったわけですねー。

でもこの謎が、悪意とか勝手な言い分とか、何だかざらりとする後味なのです。出てくる人々も、キャラクター化されたというか、生身の人間ぽくないし。ただ、パズル的、ゲーム的要素は見事だと思うので、そちらに重きを置かれる方には、面白く読むことが出来るお話なのかも。にしても、この町内、住みたくないなぁ…。

この本で一番ビックリしたのは、あのウーパールーパー(アホロートル)が食べられるということ! 白魚のよう、って言われたら確かにそうかもしれないけど…。いや、北森さんの「香菜里屋」で出されたら、美味しそう!とか思っちゃうかもしれないけど…。
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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