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「内なる宇宙」/星を継ぐもの三部作プラス一

 2009-08-10-22:04
内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
(1997/09)
ジェイムズ・P. ホーガン

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内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)
(1997/09)
ジェイムズ・P. ホーガン

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今度は上下巻!
しかも、ホーガンによる「日本語版への序」がついてますよー。

コールドウェルをして、異星人の木乃伊を調べに遣れば生きた異星人を宇宙船ごと連れ戻り、星間宇宙船を出迎えに行けば異星文明と修好の扉を開け放ったと言わしめた、お馴染みヴィクター・ハント博士。今度ハントが連れて戻るのは別の宇宙ではないか?、とコールドウェルは肩を竦めるのだけれど…。

そう、タイトルは内なる「宇宙」。ハントはお見事、別の「宇宙」の存在を知らしめるのでした。

ハードSFが表芸だというホーガンが描くところのファンタジー的世界も面白くって! かつ、この神話的世界にも、ばっちりハード的な説明がつけてあるところもすごいよね。そして、ある種の人々への礼賛もいつものごとく。こういう健全さがいいところだよなぁ、と思うのです。

彼らは世界に向かって判決を申し渡すような真似はせず、自分に合った場所を見付けて現実と折り合い、与えられた機会をもっともよく活かすことを知っている。避けることのできない死を正面から見据え、自分が小さな存在でしかないことを認め、なおかつ、世のため人のために働くことに満足を覚える。バウマーたちにはそれができない。だから世の中に対して恨みを抱くのだ。自分では何一つ意義あることを成し遂げられず、他人の行為を否定することにいじけた喜びを見出すしかない。
何よりも、世のハントたちは自分の生き方に迷いがない。

「巨人たちの星」に比べると、ハント博士、今度はばっちり活躍しています。でもって、どうしたって理屈を捏ね回すやつではなく、前向きに行動する者が正義なのです。
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SF

「巨人たちの星」/星を継ぐもの三部作

 2009-08-06-21:24
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))
(1983/01)
ジェイムズ・P・ホーガン

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前二作を読んでから、結構時間が経っちゃったので、細部を忘れてしまっているよ、と心配しながら読んだんですが、ホーガンってばとっても親切! プロローグにて、ばっちりおさらいをしてくれているので、全く自然に世界に戻ることが出来たのでした。

今回も、生物学者のダンチェッカーが、いい味を出しているんだなー。これまで分からなかったことに、当たり前のような澄まし顔をして、ずぱんと解決策を出してくるあたりは、前二作を彷彿とさせます。ま、今作は結構政治的な話も出てきちゃうので、彼個人だけではなく、国連合衆国代表カレン・ヘラーの力もあるんですが。今回、逆に原子物理学者のヴィクター・ハントは、コールドウェルの秘書リンとのいちゃいちゃを除き、いま一つ見せ場がなく、その点はちょっと残念。

かくてミネルヴァと初期ガニメアン、ランビアンとセリアンを含めたルナリアン、チャーリーとコリエル、地球のホモ・サピエンス、そしてジャイアンツ・スターを結ぶ円環を閉じた。


ほんと、お見事ー!なんだけど、また一つ謎が繰り越されるのです。あそこで彼らがあそこに行っちゃわなくても良かったのに、わざわざそうしたってことは、ホーガン自身がやっぱり続きを書きたかったのかしら(って思って、次の「内なる宇宙」も読んだけど、この謎については、全然関係なかったのですね…。嗚呼、勘違い。)。

しかし、ジェヴレン人たちに翻弄される、心優しき巨人たちの姿に何だか申し訳ない気持ちになってしまうなぁ。謀略とか疑うことを知らない人たちが本当にいるとするならば、まぁ、こういうことになってしまうよね。

■関連過去記事■
・「星を継ぐもの」/人類が受け継いだもの
・「ガニメデの優しい巨人」/人類はどこから来たのか?
SF

「たったひとつの冴えたやりかた」

 2009-08-04-14:26
たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
(1987/10)
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー浅倉 久志

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目次
第一話  たったひとつの冴えたやりかた
       The Only Neat Thing To Do
第二話  グッドナイト、スイートハーツ
       Good Night, Sweethearts
第三話  衝突
       Collision
 訳者あとがき
川原由美子さんの表紙がずーっと気になっていたのに、読んでなかったSF名作であります。

内容(「BOOK」データベースより)
やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。元気少女の愛と勇気と友情をえがいて読者をさわやかな感動にいざなう表題作ほか、星のきらめく大宇宙にくり広げられる壮大なドラマ全3篇を結集!

内容紹介に詳しい表題作も勿論いいんだけど、私は第三話を推したい。さらにまた素敵なところが、これらの三つのお話は、”連邦草創期の人間(ヒューマン)のファクト/フィクションを選択して欲しい”という、コメノの若いカップルの希望に応えて、水陸両生の主任司書モア・ブルーが選び出したものなんですね。「こんなふうにして歴史の断片を綴っておく」。物語ってやっぱり素晴らしい!

連邦草創期ということだからか、三つの物語には、いずれも<リフト>近くの辺境基地、連邦基地九〇〇が出てきます。SFではあるけれども、バリバリにハードなものではなくって、どちらかというとスペオペな感じ。”カセット”なんかが何度も出てくるところもご愛嬌かなー。宇宙を航行できる時代に、カセットで記録するというのはどうかと思うの。

私が推す第三話は、ファーストコンタクト(実際は、ある不幸な出会いのせいで、純粋なファーストコンタクトとは言えずに、色々ややこしくなってるんだけど)もの。若きジーロ、ジラノイの好奇心溢れる姿がいいのです。クリムヒーン艦長の頑なさには、ラストが不安になって、先をこっそり薄目で見てしまいましたが…。

なんとなーくイメージがわかない部分があっても、川原さんの挿絵がそれを補ってくれるのですね。異星人の姿がやたらと可愛らしいところには、何やらファンタジー的風味も感じてしまうのです。

↓第一話だけを改訳したバージョンもあるんですねえ。でも、このお話、三話揃ってこそだと思うんだけどなぁ。だって、あの司書さんと学生カップルがいてこそ、でしょう?

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版たったひとつの冴えたやりかた 改訳版
(2008/08/22)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

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SF

「笑壺(えつぼ)-SFバカ本ナンセンス集」/おバカ万歳!

 2009-08-03-13:54
笑壺-SFバカ本ナンセンス集笑壺-SFバカ本ナンセンス集
(2006/06/06)
岡本 賢一岬 兄悟

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出版社/著者からの内容紹介
奇想天外! 脳ミソとろける笑いの8連発
1996年から、12冊が刊行された「SFバカ本」シリーズ。この伝説の短編集の百を越える作品の中から、ナンセンスさに秀でた8篇を厳選。『この胸いっぱいの愛を』の梶尾真治、「ぶたぶた」シリーズの矢崎存美、新田次郎文学賞の谷甲州、TM NETWORKや鈴木亜美の作詞で知られる小室みつ子……。彼らのまったく違う一面が見られる。アンドロイドと女主人、大阪人と宇宙人、おやぢと吸血鬼が登場して……。脳ミソとろける笑いの連続!

目次
哀愁の女主人、情熱の女奴隷   森奈津子
怒りの搾麺               梶尾真治
インデペンデンス・デイ・イン・オオサカ
 (愛はなくとも資本主義)      大原まり子
家庭内重力               岬兄悟
12人のいかれた男たち        岡本賢一
スペース・ストーカー          谷甲州
はなのゆくえ              矢崎存美
フロム・オヤヂ・ティル・ドーン     小室みつ子
 解説 笑いのツボ           岬兄悟・大原まり子
おバカSFなので、どーしても体の一部に話が偏りがちなんですが、ただただ楽しー!、という点で、入院中にはぴったりの本でした。

早熟化が進んだ世界の中、精子が意思を持ってしまった青年の話(「怒りの搾麺」。そう、これは、”ざーめん”と読むのです)、異星人とのコンタクトに行き違いが生じ、切羽詰まった12人の男たちがとった方法とは…というお話(「12人のいかれた男たち」)、家族の内、たった一人違う重力に支配されるようになってしまったお父さんの話(家庭内暴力ならぬ「家庭内重力」なんです)、宇宙を股にかけたストーカーに追われる妻をもった夫のお話(「スペース・ストーカー」)などなど。

森奈津子さんは初めて読んだんですが、まさに”情熱的な女奴隷”にウっときたり、大阪人のたくましき商魂にくらりと来たり(「インデペンデンス・デイ・イン・オオサカ」。大阪人に比べれば、姿はあれでも異星人なんて、赤子のよう~)、耽美なヴァンパイアの世界にやって来たオヤヂの姿には、お耽美ヴァンパイアにちょっと同情してみたり。

面白いのは色々あったし、やっぱり初めて読んだんだけど、矢崎存美さんの「はなのゆくえ」が一番好きだったな。「はなのゆくえ」とは、「鼻の行方」。慣れ親しんだ自分の鼻に家出をされてしまった私。鼻はどこへ行ってしまったというのだ? 鼻の夢が何とも可愛らしい一品なのです。
SF

「虚構機関」/年間日本SF傑作選2007

 2009-07-27-11:15
虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)
(2008/12)
不明

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目次
 序文  大森 望
グラスハートが割れないように   小川一水
七パーセントのテンムー       山本 弘
羊山羊                 田中哲弥
靄の中                 北國浩二
パリンプセスト
 あるいは重ね書きされた八つの物語
                      円城塔
声に出して読みたい名前       中原昌也
ダース考 着ぐるみフォビア      岸本佐知子
忠告                   恩田陸
開封                   堀 晃
それは確かです            かんべむさし
バースディ・ケーキ           萩尾望都
いくさ 公転 星座から見た地球   福永 信
うつろなテレポーター          八杉将司
自己相似荘(フラクタルハウス)    平谷美樹
大使の孤独               林 讓治
The Indefference Engine       伊藤計劃
 解説                  日下三蔵
 二〇〇七年の日本SF界概況    大森 望
宇宙を舞台にした、もろにSFっぽいものから、ん?、ちょっと不思議?、というものまで、バランス良く収められている一冊です。

■岸本佐知子■
「ダース考」と「着ぐるみフォビア」の二本立て。共通するのは、あの中にあるものは一体…、ということ。実に岸本さんらしいなぁ、と思うお話でした。
 ダース・ベイダー こわい
 ダース・ベイダー くろい

アナキンの物語をすでに知ってしまった私たちは、あのマスクの下にあるものも、想像できるようにはなりましたが、あのテーマ曲が確かにこう聞こえちゃうかも!

■円城塔■
アイデアが分かり易かった「オブ・ザ・ベースボール」は大丈夫だったけれど、同時収録されていた「つぎの著者につづく」でギブアップした円城さん。今回も分かるものもあれば、さっぱり~、なものもあり。これ自体が短編なんだけれど、この短編は、「砂鯨」「涙方程式始末」「祖母祖父祖母祖父をなす四つの断章」「紐虫をめぐる奇妙な性質」「断絶と一つの解題」「縞馬型をした我が父母について」「波蘭あるいはアレフに関する記憶」という七つの小さな物語を内包する。小さいと言えそれぞれ独立した世界観があって、分かるものについては面白かったです。一部、話が繋がっているのかなぁ?と思う部分もあったけど、深くはわからんです…。

■伊藤計劃■
まるでルワンダの内戦のようなこの舞台には、ちょっとんーーーと思ったし、ラスト(というか、これが最初の部分に繋がっているんだけど)はそうきちゃうのかー、とちょっと残念にも思ったんだけど、気になってる「虐殺器官」は、やっぱり読もうっと。伊藤さんのブログ「第弐位相」を読んで、壮絶だなぁ、と思っていたんですが、若くして既に亡くなられてしまったんですよね。残念です…。

SF

「さらしなにっき」/リリカルSF

 2009-07-27-10:21
さらしなにっき (ハヤカワ文庫JA)さらしなにっき (ハヤカワ文庫JA)
(1994/08)
栗本 薫

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内容(「BOOK」データベースより)
「小さかった頃にはまだ町ん中に原っぱがあって…」先輩の原口さんが、呑み屋で知り合った男と思い出話に意気投合しているのを、ぼくはぼんやりと聞いていた。中年男二人の他愛ない話と思っていたのだが、その日から原口さんはおかしくなっていった―少年時代の記憶に潜む恐怖を描いた表現作他、130年ぶりに地球に戻った宇宙飛行士の過酷な運命を物語る「ウラシマの帰還」等、美しくも哀しい8篇を収録したSF作品集。

かの有名なグイン・サーガも読んだことがないんですが、ブログをやるようになったら、みなさん、グイン・サーガは当然押さえているべきもの、な感じで読んでらっしゃるのですよね。そんなわけで気になっていた栗本さんの短編集です。今後、自分がグイン・サーガを読むことはないだろうけど、ちょうど時期的にも栗本さんが気になっていたしね…。
目次
さらしなにっき
忘れないで
峠の茶屋
ウラシマの帰還
走馬灯
最後の夏
パソコン日記
隣の宇宙人
 著者解説
一つの特徴としては、各短編ごとに、「著者解説」がついていることかな。栗本さんご自身が、「栗本なかなか短編もお上手」なんて書いてらっしゃるんですが、確かに短編には壮大な長編にはない良さがありますよね。どことなく淋しい、切ない雰囲気や、奇抜なワンアイデアはやっぱり短編ならではのもの。栗本さんが、初期に書いたSFはほとんど影響を受けているという、小松左京さんの本も、私はこれまでほとんど読んだことがないので、そういう意味でも新鮮で面白かったのかな~。

抒情的なものも良いんだけど(ノスタルジーあふれる「さらしなにっき」とか)、ギャグっぽいお話(というか、タコ型宇宙人が隣に越してくる「隣の宇宙人」なんかまんまギャグだな)も面白かったです。同性愛の二人の女性の生活が描かれる「最後の夏」も、漂っている滅びの空気が美しい。

■関連過去記事■
・「メディア9」/十七歳は大人になるとき
SF

「星の綿毛」/すべて、泡沫の夢

 2009-03-16-23:28
星の綿毛 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)星の綿毛 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
(2003/10)
藤田 雅矢

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裏表紙から引いちゃいます。

どことも知れぬ砂漠の惑星。そこでは<ハハ>と呼ばれる銀色の巨大な装置が、荒れた大地を耕し、さまざまな種子を播きながら移動を続けていた。<ハハ>に寄生する人々のムラで、少年ニジダマは暮らしていた。どこかに存在するというトシに憧れる彼は、ある日、トシからの交易人を名乗る男ツキカゲを迎える。それは、世界に隠された大いなる秘密と、ささやかな約束へとみちびく出会いであった―植物育種家にして叙情SFの名手が描く、とある世界の発芽と収穫の物語。

SFは苦手だったはずなのに、もろ日常の本を立て続けに読んじゃうと、最近、何だか苦しくなってきちゃうんです。読書に求めるのが、完全にトリップになってきてるのかなぁ。で、さらにSFとはどれだけ美しいイメージを見せてくれるかだと思った次第。

砂漠をぽくぽくとした黒い土に変え、ゆっくりと進んでいく、銀色に輝くムラの<ハハ>と呼ばれる物体。<ハハ>の下流での少年たちの落ち穂拾いのさま。灼熱の砂漠。灼熱の砂漠に耐えるために、クロモサックなる腰についた瘤に、クロモチップ<人造染色体片>を差し替え、後天的に身体を作り変える交易人。交易人が操る、七本脚のジャランガたち…。太陽の光を受けて発電する、イシコログサの大群落。淡く光るヒカリゴケ。ニジハノチョウの目眩く色彩。

うーん、とっぷりと美しい想像力に浸ることが出来ました。

お話もね、二転三転。あ、こういう物語なのかな、と思った瞬間裏切られ、その感覚が快かったです。
SF

「TAP」/グレッグ・イーガン短篇集

 2009-02-09-22:19
TAP (奇想コレクション) (奇想コレクション)TAP (奇想コレクション) (奇想コレクション)
(2008/12/02)
グレッグ イーガン

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奇想コレクションの一冊である本書は、グレッグ・イーガンの日本オリジナル第四短篇集(全作本邦初訳)であるそうな…。奇想コレクションって、表紙の色遣いとか、何だかみんなおんなじ感じがするんだよねえ、と思いながら読んでたんですが、「銀炎」が面白くて、姿勢を正した感じです。

ところが、面白いなと思い始めた時点で時すでに遅く、次の予約者が待ってたせいで、全編読み通すことができずに、泣く泣く返却致しました。というわけで、この記事は完璧にただのメモ。

グレッグ・イーガン初読みだったんですが、もっとハード系のSFを想像してたんだけど、どっちかというと生物寄りなのかな? それがイーガンの本質かは分かりませんが、少なくともこの短編集はそんな感じで、割と読みやすそうな感じでした。

次回はその世界に入るのに時間が掛っちゃう短編よりも、一気にざくざくいけそうな長編を読んでみたいなぁ。と、思って、amazonで検索かけたら、やたらと「日本版オリジナル短篇集」の文字が…。イーガンの本質は短篇側にあるのかしらん。

色々読めそうだし、いっそ、こっちを読んでみようかなー。
20世紀SF〈6〉1990年代―遺伝子戦争 (河出文庫)20世紀SF〈6〉1990年代―遺伝子戦争 (河出文庫)
(2001/09)
グレッグ イーガンダン シモンズ

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目次
「新・口笛テスト」
Beyond the Whistle Test(Analog 1989.11)
「視覚」
Seeing(短篇集 Axiomatic,1995)
「ユージーン」
Eugene(Interzone 1990.6)
「悪魔の移住」
The Demon's Passage(Eidolon 1991.Winter No.5)
「散骨」
Scatter My Ashes(Interzone 1988.Spring)
「銀炎」
Slver Fire(Interzone 1995.12)
「自警団」
Neighbourhood Watch(Aphelion 1986/87.Summer,No.5)
「要塞」
The Moat(Aurealis 1991.3,No.3)
「森の奥」
The Walk(Asimov's 1992.12)
「TAP」
TAP(Asimov's 1995.11)
SF

「マルドゥック・ヴェロシティ・1」「2」「3」/加速する物語

 2009-01-11-23:30
マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/08)
冲方 丁

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マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/15)
冲方 丁

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マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/11/22)
冲方 丁

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あの「マルドゥック・スクランブル」(感想)以前。少女、バロットとウフコックが出会う前。ウフコックと大男ボイルドの因縁が語られます。ボイルドは、なぜあんなにウフコックに拘ったのか。ウフコックはなぜあんなに自らの存在価値に拘ったのか、使い手を待ち望んでいたのか。すべてが語られます。

そして、この物語の、惚れ惚れするようなソリッドさ。読む前に想像していたのよりもとても良くて、加速するこの物語にぐっと引き込まれました。早川文庫から出ていても、何となくラノベ風の文法で書かれ、筋も比較的シンプルだった前作と比べ、書き込まれた物語の重さは尋常ではなく増している。それは主人公たる人物が、少女バロットから、重力(フロート)を自在に操る大男、ボイルドに変わったからだけではなく。ギャング一家、ネイルズ・ファミリー、あのオクトーバー一族、研究所の三博士、最初の09メンバー、ほぼフリークスなカトル・カール…。詰め込まれた情報量も半端ではない。

しかし、09メンバーの活躍を、その絆を見せつけられれば見せつけられるほど、読みながら切なくもある。だって、「スクランブル」を読んでしまった読者は、既にその絆が失われていることを知っているから。少しずつ削り取られていく09メンバーたち。「バック」がなかなか割れないことに、引かれた絵図の大きさに、徐々に疲弊し、虚無に飲み込まれていく残されたメンバーたち。

その中でやはり他のメンバーとは違うのは、ボイルドの良心でもあった、金色のネズミ、ウフコック。研究所から街へと出た、最初のその気持ちを持ち続けたのは、ウフコックだけだったんではないのかなぁ。悩み続けること、虚無に飲み込まれないこと、ライセンスが交付された際の、ウフコックの宣言文が胸を打つ。ウフコックは救済を諦めない。

しかし、それもこれも、ウフコックは全ての事情を知っていたわけではないから、とも言えるんだけどねえ。詳しく描かれたボイルドの事情、こりゃもう、そうせざるを得なかったと思わないでもない。ただ、それでも、ウフコックの使用者として、ボイルドとバロットはやはり違うとは思うんだけど。

すべてが奇麗におさまった時、冲方さんはここまで予測して「スクランブル」を書いたのかしら、と不思議でした。「スクランブル」のあの事件自体も、なーんと既に約束されたというか、設定されたものだったわけで…。これはもう立派な大河ドラマ。緑の眼をしたあの子の今後だって気になるし、バロットとウフコックのその後だって気になる。この物語にはどんどん増殖していって欲しいものであります。本書は、”/”を多用した箇条書きのような文章が、この凄まじい加速度に貢献しているんだけど、ラノベ的文法も手法も全部無視して、実験的手法でも何でも、冲方さんの書きたいように書いていって欲しいなぁ。

大男、ミスター・モンスター、ボイルドの爆心地(グラウンドゼロ)。迫力かつ胸を打つ物語でありました。

ときとして暴力は、素晴らしい効果を発揮するのだと公言する意義は。
そんなものはない。そう言い切れる楽観こそ、本書の意義であって欲しい。
最善であれ最悪であれ、人は精神の血の輝きによって生きている。
そしてエンターテイメントは、最悪の輝きさえも明らかにするのだ。
残された虚無―その輝きを。
 (たぶん、後書きにあたる「精神の血―その最悪の輝き」より引用)

SF

「ドゥームズデイ・ブック」/ダンワーシイ教授、奔走す

 2009-01-06-23:40
ドゥームズデイ・ブック (夢の文学館)ドゥームズデイ・ブック (夢の文学館)
(1995/11)
コニー ウィリス

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「犬は勘定に入れません」(感想)のオックスフォード史学部の面々が活躍する、姉妹編といったところでしょうか。ただし、「犬は~」がレイディ・シュラプネルという恐ろしい暴君がいても、どこまでも喜劇だったのに対し、こちらは悲劇。登場人物たちは、全体像が全く見えないまま、それぞれがそれぞれにベストを尽くすのだけれど、人間の力だけではどうしようもないことが彼らを襲う。相変わらず小ネタが色々詰まっていて、「犬は~」にも出てきたフィンチの心配症っぷり(しかも、とても細かいこと限定。トイレットペーパーの備蓄が尽きかけています!!)など、懐かしくもあるのですが、お話の内容的にどうしたってやるせなくもある…。

クリスマス休暇になだれ込む直前。史学部長、ベイジンゲームの留守中に、学部長代理の権限を勝ち取った、中世史学科のギルクリストは、ダンワーシイの反対をよそに、女学生キヴリンの中世への「降下」を強行する。「降下」を担当した、技師バードリが謎の病に倒れ、ダンワーシイの心配は頂点に達する。

中世へと開いた「ネット」の「フィックス」も取れないまま、果たしてキヴリンは無事に目的とする年代、土地に辿り着いたのか? 予定していた二週間後の「ランデヴー」、キヴリンの回収は可能なのか?

ギルクリストのそれまでの大演説にも関わらず、キヴリンの様子もあまり好ましくはないようで…。その時代のあらゆる予防接種を受けたはずなのに、キヴリンは辿り着いた先で病を得てしまう。彼女を助けたのは、地元教会の司祭、ローシュ神父と、土地の領主の妻、エリウィスたち一家。

ダンワーシイたちがいる現代、二一世紀と、キヴリンがいる一四世紀。共に伝染病が猛威をふるう。ドゥームズデイ・ブックとは、キヴリンがそう名付けた、キヴリンによる十四世紀の歴史観察記録。ダンワーシイたちの話、キヴリンの話と共に、この「ドゥームズデイ・ブックより転載」されたという記録が挟まる。

この記録は無事生還を果たしたキヴリンからもたらされたものなのか、それとも村の遺跡を発掘していたモントーヤによりもたらされたものなのか。いったい、どうなっちゃうのーーー?と思い、どんどんページを繰ってしまいました。「犬は~」を読むのに二週間近くかかってしまっていたことを考えれば、驚異的な速さでこちらは読み終わってしまいましたよ。

時は、二〇五四年。こんな経験の後に、さらに「犬は~」に巻き込まれるとは…。ダンワーシイ先生には、心よりご同情申し上げます。お話としても、「ドゥームズデイ・ブック」が先で、「犬は~」が後になるんですね。ネット、フィックス、降下、などについては、こちらを読んでやっと分かったこともあります。

「犬は~」はのどかな川の景色が印象に残るのですが、こちらで印象に残るのは、寒い寒い中世の冬。キヴリンが親交を深めた時代人との生活。どんなことでも実際にやってみなければ、調べたこと、聞いただけでは分からないことがある。大がかりなタイムトラベルの果てに言えるのは、そういうことなのかも。

コニー・ウィリス、好きなんだけど、そしてそういう話じゃないんだろうけど、読んでいると彼女が描くところの組織について、ついつい文句が出てきてしまうのです。無能だけれど声の大きい人がのさばるせいで、善良な物事を元に戻そうとする人たちが、どれ程の苦労を強いられているのか!

「犬は~」も実際に登場することの少ない、レイディ・シュラプネルの印象がものすごく強いんだけど、この本で印象が強いのは、全く登場しない史学部長ベイジンゲームの行方。実は最後まで行方が知れないのだけれど、オチがあると信じていたので、それはちょっと肩すかし。米澤穂信さん並みに、「史学部長はどこだ」(「犬はどこだ」(感想))と思ってしまいました。ほんと、ヤツはこの非常時に何をやっていたのでしょう~(私の読み逃し??)。

あと特筆すべきは、コニー・ウィリスの巧みさ。十四世紀と二十一世紀の対比は、伝染病だけではない。ローシュ神父が中世で鳴らす鐘、現代のベイリアルを占拠するアメリカ人たちのハンドベルとの対比、とにかく誰かのために奔走する人々とか。「犬は~」もそうだったけれど、渦中のダンワーシイ教授、これ、ほとんど寝てませんよね・・・。読んでるこちらも、なんだか寝不足がうつりそうな感じでした。

「犬は勘定に入れません」/猫もいます

 2008-12-29-00:30
犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
(2004/04/17)
コニー・ウィリス

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TO SAY NOTHING OF THE DOG or How We Found THe Bishop's Stump At Last

もうねー、ほぼ二週間これを読んでいて、遅々として進まなかったんだけど、途中からはぐんぐん面白くなってきて、いやいや楽しい読書でしたよ。ま、531ページ二段組みというのは、それなりのボリュームでもあるわけですが。

物語は主人公らしき人間とその他数名で「主教の鳥株」とやらを探している場面から始まります。ところが、最初の方はほんとに何が何だか分かりません。実は彼らは「ネット」を使って「降下」してきた時空旅行者で、レイディ・シュラプネルという強権を振るう女丈夫の命により、血眼になって「主教の鳥株」を探している真っ最中。

レイディ・シュラプネルの一大プロジェクト、コヴェントリー大聖堂の復元のために、彼女はその強権を用いて、オックスフォードの中のほとんどすべての学生を徴集していたのです。「神は細部に宿る」。レイディ・シュラプネルは少しの齟齬も許さず、学生たちをあらゆる年代に「降下」させ、あらゆる事象を調査させるのですが…。

そんな中、主人公である史学部の学生、ネッド・ヘンリーは重度のタイムラグ(時代差ボケ)を患っているとされ、現代(二〇五七年)に戻されてしまいます。看護婦からはベッドでの安静をすすめられたけれど、レイディ・シュラプネルはもちろんそんなことを許しはしません。ネッドは彼に同情したダンワージー教授により、19世紀のヴィクトリア朝に派遣されます。ある簡単な任務を果たしたのち、テムズ河でのんびりすると良いと言われたのですが…。問題はネッドがタイムラグにより、ダンワージー教授から託された任務を聞き取れなかったこと。

自分の存在が時空連続体に影響を与えるのでは?、と怯えながら、ネッドはビクトリア朝に飛び込んでいくのですが…。そこにいたのは、ネッドが二〇五七年で一目ぼれしていたヴェリティと、レイディ・シュラプネルのひいひいひいひいお祖母さんであり、コヴェントリー大聖堂の復元や、「主教の鳥株」捜索の元凶でもあるトシー。

段々と分かってくるのは、ネッドとヴェリティが既に時空連続体に影響を与えてしまったこと。ヴェリティが二〇五七年に持ち込んでしまった、、プリンセス・アージュマンドは、ネッドが飼い主のトシーの元に戻すはずだったのに果たせず、さらにネッドはモードとテレンスの出会いを阻害し、テレンスはトシー(未来ではCがつく誰かと結婚しているはず)と婚約してしまった!

未来はいったいどうなってしまうのか? そして主教の鳥株の行方は?

すべてにちゃーんと説明がされるんだけど、探偵役のネッドとヴェリティの関係も楽しいし、テレンスの飼い犬、ブルドックのシリルとプリンセス・アージュマンドの関係も楽しい(何かというと、プリンセス・アージュマンドのパンチがシリルに綺麗にヒット)。「犬は勘定に入れません」の元ネタである(読んでないけど)、「ボートの三人男」となった、ネッド、テレンス、ぺディック教授(隙あらば釣りをする)の旅路も楽しいです。

ヴェリティは一九三〇年代が専門のミステリおたく。ノリノリで探偵ごっこをやり始めるあたりも実に可愛いのです。普段はしっかり者で、むしろネッドにばしばし指示しちゃうような方なんだけど。

コニー・ウィリスは二冊目。両方とも大森望さんの翻訳だったんですが、大森さんの翻訳によるものか、突っ込みなんかがすっごく楽しいんだよねえ。キャラたちまくりの登場人物たちも楽しかったです。

「マルドゥック・スクランブル・1」「2」「3」/ネズミ&少女&…

 2008-12-27-22:05
マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/05)
冲方 丁

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マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/06)
冲方 丁

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マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/07)
冲方 丁

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自分の中で、最もかっこいいネズミといえば、それは「冒険者たち」のガンバだったんですが(そして、最も怖い白いものといえばノロイ)、ここに出てくる金色のネズミ、ウフコック・ペンティーノもまた、ガンバに匹敵するかっこ良さ! みなさんが、良い良いと仰っていた頃からは、かなーり遅れてしまいましたが、ようやく私も読むことが出来ました。

時はSF的近未来。戦争が終わり、軍事と密接に結び付いていた科学技術が禁じられたものとなって以来、ある者は科学技術発祥の地である”楽園”に閉じ籠ることを選び、ある者は快楽に特化した技術を持って会社を興し(*)、またある者は科学技術を民間で生かしていくことを主張した。発達し過ぎた科学技術は怖れの元、民間でこの技術を生かしていく道は決してたやすいものではなく、その技術によって生み出されたネズミ、ウフコックは常に自分の「有用性」を証明し続けてはならないのだ。

シェルという男に焼き殺されかけた少女、バロットはスクランブル-09によって蘇生を果たし、ウフコック、ドクターと共に事件の解決に当たることになる。スクランブル-09は緊急事態においてのみ、科学技術の使用が許可されるという法。人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得たバロットは、なんにでも変身可能なウフコックを「道具」として使い、ドクターとウフコックに協力するのだが・・・。

てきとーに粗筋を書きましたが、実はもっと色々とややこしいのです。体内の亜空間を利用して、どんなものにも変身出来るウフコックは、増大し過ぎていつかは死んでしまうという運命を持っているし、敵方としてバロットたちの邪魔をするのは、ウフコックのかつての相棒ボイルドだし、少女、ルーン・バロットには、彼女の深い絶望がある。

バロットは生命の危機に瀕していたこと、また自分自身の身を守る必要性が高いと予測されたことから、彼女はそういった特殊な体になったわけなんだけど、そうやって特殊な体質になった人というのは、その後どうやって生きていくのかなぁ、とちょっと不思議に思いました。バロットはものすごく適性があるし、ウフコックの相棒として生きていくのだろうなぁ、と思うけど、そうじゃない場合ってもう以前と同じように普通には生きていけないよなぁ…。

続く「ヴェロシティ」では、「スクランブル」以前。ウフコックとボイルドの過去が描かれているのですね。それも勿論楽しみなんだけど、ウフコックとバロットの未来も読んでみたいなぁ。

著者入魂のカジノの場面。わたくし、ちょっと読み流してしまいました…。カジノの場面って、力が入る人が多いですよね。後書き読んで、読み流してゴメンナサイとは思ったんだけど、確率論とか精神的駆け引きとか苦手さ…。この場面、色々かっこいい人たちも出てくるんだけどね。
1巻 The First Compression―圧縮
Chapter.1 吸気 Intake
Chapter.2 混合気 Mixture
Chapter.3 発動 Crank-up
Chapter.4 導火 Spark 
 後書き
2巻 The Second Combustion―燃焼
Chapter.1 活塞 Piston
Chapter.2 噴出 Injection
Chapter.3 回転 Rotor
Chapter.4 爆発 Explosion
 解説 鏡明
3巻 The Third Exhaust―排気
Chapter.1 曲軸 Crank Shaft
Chapter.2 分岐 Manifold
Chapter.3 合軸 Connecting Rod
Chapter.4 導き Navigation
 後書き
*続編、「マルドゥック・ヴェロシティ」(感想)を読んで、間違い発見。会社を興したわけではなく、その技術を持って元々あった企業に入り込んだんですね。
冒険者たち―ガンバと十五ひきの仲間冒険者たち―ガンバと十五ひきの仲間
(1982/01)
斎藤 惇夫薮内 正幸

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「マーブル・アーチの風」/ロマンチックSF?

 2008-12-07-10:52
マーブル・アーチの風(プラチナ・ファンタジイ) (プラチナ・ファンタジィ)マーブル・アーチの風(プラチナ・ファンタジイ) (プラチナ・ファンタジィ)
(2008/09/25)
コニー・ウィリス

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目次
白亜紀後期にて
ニュースレター
ひいらぎ飾ろう@クリスマス
マーブル・アーチの風
インサイダー疑惑
 編訳者あとがき
SFというので、ちょっと構えて読んだんですが、SF的設定があっても全然へーき。むしろ、感じたのはロマンチックだなぁ、ということ。

「マーブル・アーチの風」の夫婦だってそうだし、「ニュースレター」も「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」も。あ、「インサイダー疑惑」もですね。

時節柄にぴったりなのは、「ニュースレター」と「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」かな。
「ニュースレター」
親戚一同に送る「ニュースレター」。送るのにも送られるのもうんざりしていたナン。単調な毎日の繰り返しに、面白いニュースなんてあるわけがないじゃない!
ところが気になる同僚、ゲアリーが突然私に相談を持ちかけてきた。機内に大きな手荷物を持ち込んだやつがいなかった!到着が遅れた便でも、人々は言われたとおりに大人しく待っていた!機内にいた赤ん坊は一度も泣きださず、後ろの席の幼児は一度も席を蹴らなかった!
ゲアリーは何かが起こっていると主張するのだが…。

「何かが起こっている」というにはみみっちく、むしろ日頃のわたしたちの行為のひどさを感じるものばかりなんだけど、ゲアリー+ナンの宇宙人の研究がなんだか楽しくてねえ。実際に侵略がはじまっているとして、あんた、そんな映画や本の知識ってどうなのよ?って感じなんですが、実際に侵略がなされた時に普通の人が出来ることってそんなことくらいなのかもね。

そうして、今年のナンには、「ニュースレター」に書くべき出来事が起こったというわけ。うんざりする事ばかりだとしても、イラつく事があったとしても、きっとそれが人間ってものなんだよねえ。
「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」
プレゼントの手配から会場の設置、ディナーの用意まで、クリスマスの何から何までを引き受ける外注(プロフェッショナル)クリスマスを生業とするナン。クリスマスを控えたこの時期はまさにてんてこまい。テーマを何度も変更するパンドラ・フリーに悩まされ、同僚かつ彼氏でもあるノーウォールと会う暇もない。申込みはとっくに終わっているにも関わらず、熱意にほだされ、新しい顧客である、ミセス・シールズのクリスマスを引き受けたのだけれど…。

ネット回線が発達し、場所としてのオフィスを持つこともなく、人と実際に会って話をすることもほとんどないこの時代。そんな時代だというのに、極度のテクノロジー恐怖症だというミセス・シールズがネットでの打ち合わせを拒否するため、リニーは彼女の家へと足を運ぶ。そこで出会ったのは、彼女の甥だというブライアン。彼女の説明に何かと茶々を入れる彼に、リニーは反感を覚えるのだけれど…。

少々ベタでもあるけど、最近こういうあまーいお話に弱いんだよなぁ。フィクサーが後ろで働いていたにせよ、ブライアンがなかなかに素敵なのです。その分、ノーウォールはひどいけどさ。クリスマスは愛と寛容の季節、ですよね。
コニー・ウィリスを初めて読んだんだけど、いかにも現代的な小ネタも楽しかったです。他にも読んでみようっと。
SF

「九百人のお祖母さん」/愛すべきほら話

 2008-05-26-00:16
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九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)
(1988/02)
R.A. ラファティR・A・ラファティ

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目次
九百人のお祖母さん
巨馬の国
日の当たるジニー
時の六本指
山上の蛙
一切衆生
カミロイ人の初等教育
スロー・チューズデー・ナイト
スナッフルズ
われらかくシャルルマーニュを悩ませり
蛇の名
せまい谷
カミロイ人の行政組織と慣習
うちの町内
ブタっ腹のかあちゃん
七日間の恐怖
町かどの穴
その町の名は?
他人の目
一期一宴
千客万来
 訳者あとがき
 文庫版 訳者あとがき
表紙を見た瞬間、借りることを決意した本です。SFでこの表紙って、気になりません? 文庫裏の説明によると、これは「愛すべきホラ吹きおじさんラファティの抱腹絶倒の21の短編」集。抱腹絶倒というか、後でじんわりおかしくなってくるタイプのお話だと思うけれど、愛すべきホラ吹きおじさんというのは、全く同感。訳者あとがきにも、ラファティの愛すべきおじさんぶりが書かれているのだけれど、文章からも何となく伝わってくるような気がします。「うちの町内」は、ちくま文庫の「新編 魔法のお店」にも収録されていたので、これだけは以前、読んだことがありました。

いくつかの短編について。でも、あらすじを書いても、この面白さは伝わらないんだよなぁ。

「時の六本指」
自由に加速状態へ入ることができるようになった、ヴィンセントの話。

「山上の蛙」
パラヴァータでは、エリートであるローアたちが姿を消し、愚鈍なオガンタたちが彼らにとってかわるようになっていた。ガラマスクはこの謎と親友アリンの死の謎に迫るため、三重の山に登り、猫ライオンのシネク、熊のリクシーノ、コンドル鷲のシャソス、そして蛙男のベイダー・ジェノを仕留める狩りの旅に出るのだが…。ガイドのチャヴォは、ガラマスクを尊敬しているといいつつ、なぜかガラマスクの命を狙うのだ。

「カミロイ人の初等教育」
”カミロイ人の初等教育に関するダビューク市PTA連合への合同報告書、副題「近隣惑星の平行文化に対する批評的感想ともう一つの教育法の評価」の抜粋”なる設定のお話。

「スロー・チューズデー・ナイト」
超外科手術によって、人類が前よりも素早い決断、よりよい決断を下せるようになった世の中の話。今では、人々はその性質と嗜好に従って、早起き族と昼光族、深夜族の三派に分かれて暮していた。八時間で一つの経歴を作るのも、ごく普通のことになっていたのだが…。そんなある火曜日の一夜のお話。

「スナッフルズ」
惑星ベロータに研究にきた、探検隊の六人。そこには熊もどきともいうべき、愛すべきスナッフルズ(鼻詰まり)がいたのだが…。ある日、豹変したスナッフルズが、探検隊を襲う。

「蛇の名」
ローマ教皇による回勅により、はるか遠い惑星アナロスに宣教に訪れたバーナビィ神父を待ちうけていた運命とは…。

「町かどの穴」
ある夕方、帰宅したホーマーは、愛する妻レジナを貪り食い始めた。ホーマーに一体何が起こったのか? レジナの「ゼッキョー、ゼッキョー」というフレーズが印象的。

「他人の目」
「その町の名は?」、「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」と同じ研究所を舞台としたお話。研究員、チャールズ・コグズワースは、他人の眼を通して物事を見る装置を完成させたのだが…。

民話的雰囲気を持つ「巨馬の国」、「せまい谷」、「一期一宴」も印象的だし、恐るべき子供たちとでも名付けたいような、カミロイ人の子供たちや「日のあたるジニー」なども印象的。一気に読むと、ちょっとお腹いっぱいになってしまうけれど、ぼちぼち読み続けると良かったな~。いやー、ケッタイなお話です。電気技師であったラファティが、SF誌にデビューしたのは彼が四十五歳の時だったそう。ずいぶん遅咲きのようにも思うけど、真面目にお仕事をしながらも、頭の中にはこういう世界が広がっていたのかなぁ。
SF

「モンスター・ドライヴイン」/B級映画の神さま降臨

 2008-05-14-23:57
モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)
(2003/02)
ジョー・R. ランズデール

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目次
  溶明(フェイド・イン)/プロローグ
第一幕 オールナイト・ホラーショウ
   (ポップコーンと彗星もって)
第二幕 ポップコーン・キング登場
   (血まみれコーンと怪物引きつれて)
第三幕 オービット崩壊
   (死と破滅、そしてイカレたスクールバス)
  エピローグ/暗転(フェイド・アウト)
 日本語版字幕担当者あとがき
 ジョー・R・ランズデール著作リスト
金曜日の夜、テキサス州最大のドライヴイン・シアター、《オービット》はいつだって大騒ぎ。

しかし、この週末はいつもとは違う。ハイスクール・ボーイのぼくとボブ、ランディ。さらには、街の怪しげな酒場、ダンの店で知り合った、年上のウィラード(肉体的には三歳年上だけど、甘ちゃんなぼく等に比べると、精神的には十も年上のよう!)からなる一行は、連れだって訪れた《オービット》で、思わぬ事態に巻き込まれてしまう。《オービット》に彗星がやって来て、シアターの外は車だろうが人だろうが、何でものみ込んでしまう黒い闇に変わってしまったのだ!

こうして、ドライヴインシアターに閉じ込められてしまったぼく達ほか、大勢の人々(なんてったって、《オービット》は四千台の車を収容出来るのだ)。ホットドック、ポップコーン、キャンディ、ソフトドリンク…。売店のマネージャーは、食料には不足はないと請け負い、続けざまに上映されるB級映画の合間に配給が始まるのだが…。

マネージャーは、州兵が来るまでの辛抱だというけれど、シアターの外は暗闇のまま。勿論、州兵なんてやってこない。外の世界がどうなったかなんて、ぼく等には全くわからないけれど、事態はB級映画そのままに進行していく。

ウィラードとランディは、売店に落ちた稲妻によって、融合したポップコーン・キングになってしまう! ポップコーン・キングの支配がはじまり、生き残った人々はその支配下に置かれるのだけれど…。ぼくとボブは協力して、何とかこの事態をやり過ごす。
本作は「伝説のスプラスティック青春ホラーSF」とのことなのだけれど、スプラスティックなんだけど、ほんのり甘酸っぱい感じの青春をしていて、これが何だか楽しいの。主人公もほんのちょっとした悪さを楽しむくらいのごく普通のいい奴だしね(自称”ミスター一般人”)。人食など、色々えぐい場面もあるんだけど、なんてったって、B級だからして、どこかばからしいというか、あほらしい感じの、いい感じの力の抜け具合。そして、B級映画と言えば、隙あらばトゥ・ビー・コンティニュード。終わり方にも、なんだかニヤリとしてしまうのです。
□その夜の《オービット》の上映作品リスト□
・「アルバート・ショック」
・「死霊のはらわた」
・「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生」
・「大工道具箱連続殺人(ツールボックス・マーダーズ」
・「悪魔のいけにえ」
20周年アニバーサリー 死霊のはらわた  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド悪魔のいけにえ スペシャル・エディション(2枚組)
これがエンドレスで流されるというだけでも、かなりゾッとしないよなぁ。
(しかも、検索するとたくさん出てきて、上に載っけた画像があっているかどうかもわからない…)
SF

「ガニメデの優しい巨人」/人類はどこから来たのか?

 2008-04-30-23:39
01714635.jpg
ガニメデの優しい巨人 (1981年) (創元推理文庫)
(1981/07)
ジェイムズ・P.ホーガン

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「星を継ぐもの」の続編です。お馴染みのハントとダンチェッカーも活躍するのだけれど、今回出てくるのは人類だけではなく、異星人であるガニメアン、心優しき巨人たち。そう、今回はいわゆるファースト・コンタクトものでもあるわけです。

amazonから内容紹介を引きます。

 木星の衛星ガニメデで発見された異星の宇宙船は二千五百万年前のものと推定された。ハント、ダンチェッカーら調査隊の科学者たちは、初めて見る異星人の進歩した技術の所産に驚きを禁じ得ない。そのとき、宇宙の一角からガニメデ目指して接近する物体があった。遥か昔に飛びたったガニメアンの宇宙船が故郷に戻って来たのだ。

高度な科学知識を持ち、また、大きく頑丈な体格を持ちながら、争うことも互いに責める事も知らない心優しき巨人たち。彼らが乗っていた宇宙船は、二千五百年前に母星、ミネルヴァを出発したが、思わぬ故障により、二千五百年後の現代に至るまで、その動きを止める事が出来ず、どこにも到達することも出来なかったのだ。彼らガニメアンたちは、二千五百年前に何を求めて旅立ったのか? 

彼らの帰るべき場所であった惑星、ミネルヴァは、既にガニメアンとは正反対とも言える暴力的性向を持つ、ルナリアンたちによって破壊されていた。失望を味わいながらも、地球の科学者たちと関係を深め、ついには地球への訪問も果たすガニメアンたち。人類は異星人とのコンタクトに熱狂するが、ガニメアンたちは伝説の<巨人の星>を目指して、再び旅立っていく。

彼ら、常に慎重を期するはずのガニメアンたちが、快適な地球での生活を捨て、伝説にしか過ぎぬ星を目指すのはなぜなのか。彼らがミネルヴァを旅立った二千五百年前、時をほぼ同じくして、ミネルヴァ陸棲の動物たちが絶滅したのはなぜなのか。今回も、見事にまとめてくれます。途中、振り落とされそうになりながらも、あちらこちらに散りばめられた謎がぴたぴたとはまり、解かれていく様はやっぱり圧巻。

前回はね、人類の生命力よ万歳!、という感じだったんだけれど、今回は心優しく賢い巨人たちに比べると、人類のほとんどはしたないとも言える生命力や、攻撃性が途中までは恥ずかしくも思えるのだけれど…。そうはいっても、ジェイムズ・P・ホーガンは、きっととても楽観的で明るいものの見方をする人なんだろう。人類に対しても、ガニメアンたちに対しても、やっぱりその目線はあくまで温かい。

それは、まさに扉にある妻への言葉のように。

若草は、たとえ日陰に生出でようとも丹精によってきっと育つものだと私に教えてくれた妻リンにこの書を捧げる

勿論、そのマイナス面を理解しながらも、進歩であるとか、進化、前に進んでいくことを、丸ごと肯定しているように思うのです。

いま一つ、今作において、大きな存在感を示しているのが、ガニメアンたちの宇宙船、<シャピアロン>号のコンピューターである、ゾラック。インターネットもそんな感じと言えばそうだけれど、こんな双方向性を持つ存在に慣れてしまったら、そこから引き剥がされてしまった時に、物凄い喪失感に襲われちゃうんじゃないかなぁ。ハントなんか、この後が辛そう。ゾラックは、アン・マキャフリーの「歌う船」の鋼鉄の乙女、ヘルヴァもかくや、という存在なのです。

すっかり、彼らガニメアンたちのファンになってしまったので、次の「巨人たちの星」もぜひ読まなくては! ここまで読んでも、相変わらず、「星を継ぐもの」のプロローグはまだまだ謎だしね。
SF

「ラギッド・ガール 廃園の天使2」/「グラン・ヴァカンス」前日譚など

 2008-04-03-00:15
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
(2006/10)
飛 浩隆

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会員制の仮想空間<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>。「グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ」では、その中の一つの世界、<夏の区界>の滅びの様が描かれたけれど、こちら、「ラギッド・ガール」で描かれるのは、同じく仮想空間を舞台とした前日譚や、語られることがなかった、ゲストたちの世界、すなわち現実の物理世界のお話。全部で五つの短編からなっている。
目次
夏の硝視体(グラス・アイ)
 Air des Bijoux

ラギッド・ガール
 Unweaving the Humanbeing
クローゼット
 Close it.
魔術師
 Laterna Magika

蜘蛛(ちちゅう)の王
 Lord of the Spinners
ノート
通常、魅力的なその世界の裏を明かすようなお話は、ともすれば興醒めになってしまうこともあるけれど、これは大丈夫、待っているのはむしろこうなっていたのか!、という軽い興奮。

表題作の「ラギッド・ガール」。これ、「グラン・ヴァカンス」のことを知る前から、印象的なタイトルだなぁ、と気になっていたのです。「ラギッド」とは「【ragged】ぼろ(ぼろ)の, 破れた; みすぼらしい; でこぼこ[ざらざら]の, ごつごつの; 手入れの悪い; 不ぞろいな, 不調和な, 不完全な; (声が)耳ざわりな; (神経を)消耗した」のこと(goo英和辞書より)。あの<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>を作った主要メンバーの一人である阿形渓(あがたけい)は、醜くざらざらの肌を持つ女であった。身体感覚が主となるからか、キーワードは「ざらざら」や「解かれる」、かな。

ただ、大切なことは、きちんと順番を守って読むこと。「ラギッド・ガール」「グラン・ヴァカンス」だとこの感動が得られないような気が致します。
■夏の硝視体
<夏の区界>のジュリー・プランタンとジョゼのお話。ジョゼの中に刻まれた傷に、ジュリーが気づいたときのお話。そして、ジュリーと金盞花(スウシー)の話、視体<コットン・テイル>との出会いの話。

■ラギッド・ガール
あの<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>の開発者たちの話。世界に右クリックを掛けたかったドラホーシュ教授(なんで、自分たちの世界には右クリックで調整がかけられないんだ?)に、直感像的全身感覚の持ち主であり天才的プログラマである阿形渓(そして、「全身これ犀のけつ」のざらざらのとても醜い女でもある)、語りの手の私、カリン・安奈・カスキ…。

この場合、阿形渓が醜い事はどうでも良くて、重要なのは代謝異常の不自由な体を持つ彼女は、その不自由な体故に、ある特殊な能力を持っていたということ。彼女の中には一本の定規のような「絶対時間」があり、キャプチャされた直感像的全身感覚が、薄いプレパラート標本のようになって、彼女の中に蓄積されているのだ。これらの感覚はしっかりと記憶され、いつでもどんな風にも引き出すことが可能である。通常、人は感覚の中のいくつかを覚え、後のものは捨て去っていくものであるのに…。ドラホーシュ教授の提案する<仮想空間>の技術は、この阿形渓を迎えて格段に進歩するのだが…。

「グラン・ヴァカンス」で描かれた、読む者と読まれる者の関係が、ここではもっともっとくっきりとクリアに描かれる。そう、読まれることで本の中の登場人物たちは息を吹き込まれ、彼らの人生を生きるけれど、同時に読まれることによってその中で死を迎えることもある。読む者がなければ、彼らは死ぬ事もなかったのか? しかし、読む者の感情、リソースを使って、彼らが生きたことには意義があるはずなのだ。

情報量に圧倒されちゃうけれど、これもまた美しく残酷なお話です。強烈な自己愛のお話でもあるのだけれど、これだけ突き抜ければ、いっそ甘美。

■クローゼット
ドラホーシュ教授の研究グループの一員であった、カイル・マクローリンは謎の死を遂げていた。彼と同棲していたガウリ・ミタリはその謎に迫るのだが…。
そうして、ここでひとつ明かされるのは、<夏の区界>でジョゼたちAIの深層に植えつけられていた「恐怖」の誕生。恐ろしい~。

■魔術師
突然、ゲストたちが仮想空間を訪れることがなくなった、大途絶(グランド・ダウン)の真相とは…。
これ、AIのサビーナって、例の彼女なんだよね? 彼女はやっぱり特殊なAIだったのだ。

■蜘蛛(ちちゅう)の王
蜘蛛たちの王であり、<夏の区界>を蹂躙し、例外として他の区界を自由に行き来していたランゴーニの話。ランゴーニはいかにしてランゴーニとなったのか?
後書きに当たるであろう「ノート」によれば、≪廃園の天使≫シリーズ、長篇第二作の「空の園丁(仮)」は、「蜘蛛の王」よりももっと派手な展開になるのだとか。こちらも楽しみ!
「ラギッド・ガール」の刊行は、2006年10月。次が出るのはいつなんでしょう。
□ネットで見つけた飛さんのインタビューにリンク
(佐々木敦氏による批評ブログ「How It Is」より)
☆関連過去記事☆
「グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ」/永き、休暇
SF

「グラン・ヴァカンス 廃園の天使1」/永き、休暇

 2008-03-26-22:24
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/09)
飛 浩隆

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そこは、夏の長いヴァカンスに相応しい、美しくクラシカルなリゾート地。南欧の小さな港町をイメージしてデザインされた、この<夏の区界>は、古めかしく不便な街で過ごす夏のヴァカンスを完璧に具現する。

デザインされた…。そう、この地は現実に存在するものではない。会員制の仮想空間<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>に作られた<夏の区界>には、様々な肉付け、味付けをなされたAIたちが住み、現実社会からやって来るゲストたちをもてなしていた。現実社会からこの仮想空間にやって来るゲストたちは高価な対価を支払って、時に誰かの父として娘の誕生日を祝うロールを、誰かの妹のロールを、それぞれの好みに応じて選び、演じていた。

ところが、この仮想空間に大途絶(グランド・ダウン)と呼ばれる現象が起こる。ゲストたちがこの地を訪れなくなってしまったのだ。大量のリソースを使用するはずのこの<夏の区界>は、それでも何の影響も受けず、これまでと変わらず、千年もの長きにわたって、同じ日々を繰り返していたのだが…。

今日も従姉のジュリーとともに、鳴き砂の海岸で、硝視体(グラス・アイ)を探しに行こうと考えていた、少年ジュールの一日は一変する。<夏の区界>が突然の攻撃を受けたのだ。AIたちは、なすすべもなく、「飢え」を纏った蜘蛛たちに喰い尽くされていく…。

目次
第一章 不在の夏
第二章 斃す女、ふみとどまる男、東の入り江の実務家たち
第三章 鉱泉ホテル
第四章 金盞花、罠の機序、反撃
第五章 四人のランゴーニ、知的な会話、無人の廊下を歩く者
第六章 天使
第七章 手の甲、三面鏡、髪のオブジェクト
第八章 年代記、水硝子、くさび石
第九章 ふたりのお墓について
第十章 微在汀線
 ノート
 文庫版のためのノート
 解説/仲俣暁生
最近のちょっと低調だった読書を吹っ飛ばしてくれた、すっごい本です。

「ノート」より作者である飛さんの言葉を引きますと、

ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。 

そう、この物語は、いっそ陶酔する程に、美しく、残酷。

読者は読み進むうちに、この<夏の区界>には、不必要なほどに性的な仄めかしがあることに気付くでしょう。これもまた、現実社会からやって来る「ゲスト」のための刺激的な味付け。彼らゲストは、この仮想空間に君臨し、AIたちに残酷な行為を強いていたのだ。

千年の長きにわたるゲストの不在や、いつしかこの区界に辿り着いた硝視体(グラス・アイ)の力によって、正しくチューニングされていたAIたちの性格は少しずつ狂いはじめていく。彼らはもう、ただの<AI>などとは呼べないほどに、実に人間らしく、いじらしい。

さて、<夏の区界>に住むジュールたちAIを攻撃してきたのは、一体誰なのか? 通常だったら、現実社会から?、と言いたいところだけれど、これはもっと複雑で、敵はそうではないのでした。こちら側の事情については、次作「ラギッド・ガール」で描かれているみたいです。

このAIたちの戦いは実にスリリングだし、その彼らAIたちの痛みを、安全なこちら側で読んでいるという、甘やかな背徳感すら感じてしまう。これ、解説が秀逸で、なんだかもう、「そうそう、そうなんだよー!」となって、自分の感想が書けなくなってしまう感じなんだけど、解説の仲俣暁生さんがおっしゃる通り、この本の中のゲストとAIたちの関係は、そのまま物語への侵入者である読者と、この物語の登場人物たちの関係だと言うことが出来るのだ。

滅びの様すら美しい、<夏の区界>。この物語を「記憶」することが出来て、良かったー!

次はこちらだ! ← 読みました(2008.4.2)。
「ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ」/「グラン・ヴァカンス」前日譚など
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
(2006/10)
飛 浩隆

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SF

「星を継ぐもの」/人類が受け継いだもの

 2008-03-09-21:33


ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
星を継ぐもの (創元SF文庫)

超有名SFですよね。なんとなく、最近、SFも怖くない!、と思えてきたので、読んでみました~。しかし、これ、実は四部作だったのですねえ、続きもぜひ読まなくては。

あらすじを引きます。

 
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。

30代の半ばにして核物理学の権威であり、会社に自分専用のポストを作らせる程に優秀なヴィクター・ハント博士は、ある日、理不尽とも言える指示を受け、自身が設計した画期的な機械と共に、国連宇宙軍(UNSA)が居を構えるヒューストンへと駆り出される。彼を待っていたのは、UNSAの航空通信局(ナヴコム)本部長のグレッグ・コールドウェルと、月面で発見された五万年以上前の死体。

各分野から集められた専門家たちが、この謎に挑むのだが…。

主たる登場人物は、このハントと、コールドウェルに、生物学者のダンチェッカーですかね。あ、あと、”チャーリー”と名付けられた月面の死体。所属していた会社で、ハントとコンビを組んでいた、ロブ・グレイは途中からフェード・アウト。

その全貌は明らかにされないけれど、一本釣りのような手法でハントを駆り出したコールドウェルという人物も気になるなぁ。

二十年以上もの長きにわたって彼は熾烈な闘争を勝ち抜き、宇宙軍最大の機関の長にのし上がったのだ。白兵戦にかけては、彼は百戦錬磨の古強者である。しかも、その間彼は自らの血を一滴たりとも流していない。以前のナヴコムなら、あるいは今回のようなプロジェクトは与り知らぬことだったかもしれない。これはナヴコムの手に余ることかもしれない。その意味では土台UNSAにとって荷が勝ちすぎる仕事かもしれないのだ。それはともかく、現実にコールドウェルは責任者の立場にある。プロジェクトの方からナヴコムの膝元に転げ込んで来たのだ。コールドウェルは自分の手で仕事をし遂げる決心だった。協力の申し出があれば、それは拒まない。しかし、プロジェクトはあくまでもナヴコムの名において推し進めなくてはならない。それが気に食わないと言うなら、この仕事を横取りしてみるがいい。そう、やれるものならやってみろ―。
(P41、42より引用)

実際に謎を追うのは、研究者たちであり、ダンチェッカーであり、ハントであるのだけれど、後ろで糸を引くのはあくまでコールドウェルなんだよね。何故に、彼はこんなタフさを身につけたのでしょう? というか、リーダーってこういうものなのかもしれないけど。まさに適材適所に、ぴたぴたと人を嵌めていく手腕が見事。

最初はどうしようもない堅物に見えたダンチェッカーは、ラストにやってくれます。いいねえ、かっこいいねえ。途中から、ファーストネームのクリスで呼ばれるようになるし、ただの堅物ではありませんでした。

ハントに関しては、ただただ先へ、未知の世界へと突き進んでいく、その生きざまが興味深い。以下は、有毒ガスがたちこめる、荒涼とした木星の衛星、ガニメデでの彼の独白です。

彼は生涯、一度も立ち止まることなく歩み続けて来た。そして、彼は常にそれ以前の自分から未知の自分へ変貌する過程を生きていた。新しい世界に立つと、必ずその向うからさらに別の世界が彼を差し招いた。どこへ行っても周囲は知らない顔だらけだった。見知らぬ顔は、ちょうど前方の靄の中から浮かび上がってくる岩の影のように、彼の傍を流れて消えて行った。岩と同じように、人々は一瞬、紛れもなくそこにいるかに見えながら、やがて幻のように背後の闇に吸いこまれた。
(p257より引用)

そうして、彼らが辿り着いた真実とは…。タイトル「星を継ぐもの」の意味とは…。とっても大胆な説なんだけど、ぐっときちゃうな。特にダンチェッカーが語る、”ルナリアン”(月世界人)たちの最後の様子や、”人類”というものの希望には。

しかし、実際、これ一冊を読んでも、プロローグにおける謎や、ガニメアンと名付けられた”巨人”の謎は解けないんですねー。今後、どういう風に謎を解いてくれるのか、楽しみです。


■四部作の残り■
ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))


ジェイムズ・P. ホーガン, James P. Hogan, 池 央耿
内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)

SF

「占星師アフサンの遠見鏡」/真実を語るということ

 2008-03-04-23:22


ロバート・J. ソウヤー, Robert J. Sawyer, 内田 昌之

占星師アフサンの遠見鏡 (ハヤカワ文庫SF)


ターミナル・エクスペリメント 」から、勢いづいてのソウヤーです。

表紙絵を見ても、恐竜が主人公である事が丸分かりなんだけど、今度の主人公は恐竜キンタグリオの少年、アフサン。まだ年若い田舎の少年であるアフサンは、帝都に上り、見習い占星師として、頭の固い宮廷占星師のタク=サリードに仕えていた。

さて、恐竜であるキンタグリオ一族には、当然ながら野性としての様々な本能がある。しかし、彼らは宗教と理性の力で、それらの本能を抑え込み、世襲制の国王のもと、中世ヨーロッパ的な文明社会を築いていた。キンタグリオの社会の中では、その個体が大人になるために、狩猟と巡礼という二つの通過儀礼が定められている。

狩猟は憎悪と暴力の衝動を一掃するための儀式であり、特別な仲間意識を共有することが出来る。消すことのできぬ縄張り意識を持つキンタグリオが、友情と協調によって一つになる事が出来るのだ。巡礼は、彼らが住む大地を離れて大河へ漕ぎ出し、かつて予言者ラースクが発見したという<神の顔>を詣でる儀式。この二つの儀式を通過することで、そのキンタグリオの魂は来世で救われるのだ。

さて、ダイボ王子と共に、ダシェター号に乗って巡礼の旅に出たアフサンは、遠見鏡を使って天体を観察するうち、驚くべき発見をする。それは、キンタグリオたちが作り上げてきた社会通念を、真っ向から否定するものであった…。

この発見を黙っているべきか、更に仮説を深めるべきか? 偶然現れた巨大川蛇、カル=タ=グードへの、ヴァー=キーニア船長の執着から、アフサンは船をそのまま同じ方向へと進めることに成功し、この世界が水で覆われた球体であることを発見する! 

というわけで、ネットを見ていたら、これは恐竜ガリレオ少年の物語であるそうです。

実は本国ではキンタグリオ三部作として、残り二作が出ているらしいのだけれど、残念ながら日本では未訳。なので、最後の方は、もうページ無くなっちゃうよ~、と思いながら読んでたんだけど、やっぱり、ええ!そこで終わっちゃうの?!という終わり方なのでした…。いや、一応、これ一冊でも完結はしているのだけれど、「序章」という雰囲気も強いんだよなぁ。

最初の頃のアフサンは、まさに田舎から出てきたばかりの少年なんだけど、様々な出来事を経てアフサンは成長していく。自らの力で真実を探り当て、その真実のために戦い、そして尊敬出来るパートナーとも出会って恋をし…。真実を伝えることは、時に大変な難しさを含んでしまう。特に、それが誰かが信ずるものを否定することになってしまう場合には。しかし、キンタグリオ全体の危機をも予知することになってしまったアフサンは、真実を伝えることに躊躇はしなかった。その代償は非常に大きなものになってしまったけれど…。

うーん、ここから先のアフサンについても知りたいなぁ。続編では、アフサンの息子やアフサン自身も活躍するそうなのだもの。キンタグリオの習性なども面白かったです。野性的な狩猟の場面や、縄張り意識の話がある一方、そういうのが向かない体型なのに、寝板に寝そべって本を読んだり、書きつけをしたり(尻尾があるので、仰向けにもなれないし、ぺたんと座るにも不具合があるのかな)、 理性的であろうと礼儀正しいところには、なんだか健気な愛らしさを感じてしまいました。
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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