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「月神の浅き夢」/その裏側には

 2009-04-29-10:33
月神(ダイアナ)の浅き夢月神(ダイアナ)の浅き夢
(1998/02)
柴田 よしき

商品詳細を見る

とうとう、遡り始めてしまいましたよ、RIKOシリーズ。市内の図書館にあるのが、この「月神の浅き夢」だけみたいなので、図書館本でいく限りはもう遡りようがないんですが・・・。

えーと、先日の「私立探偵・麻生龍太郎」の巻末に、amazonよりも良い既刊シリーズの解説が載っていたので、まずはそちらから引いちゃいます。

「RIKO-女神(ヴィーナス)の永遠-」
 男性優位主義の警察組織に屈することなく、凄惨な事件に敢然と立ち向かう女性刑事・村上緑子。そのひたむきな姿を描いた横溝正史賞受賞作。
「聖母(マドンナ)の深き淵」
 ある女性の失踪事件に関わった緑子。母親となった彼女は、錯綜する事件の真相を解明するために、元・警部の麻生龍太郎と接触をはかるが・・・・・・。
「月神(ダイアナ)の浅き夢」
 若い刑事ばかりが殺されていく凄惨な事件。緑子は捜査を通して、愛する人が関与した冤罪事件と、美貌のヤクザ・山内練と麻生の過去の因縁に突き当たる。
「聖なる黒夜」
 聖なる日の夜に、一体何が起こったのか。そして、麻生と山内の運命の歯車はいつ狂ってしまったのか・・・・・・。人間の原罪を問うて深い感動を呼ぶ傑作長編。

そして、本書の目次に行きます
目次
処刑
突破口
留菜
ムーンライトソナタ
犯行声明
月の場合
背徳
鮮血
莢加
グラシア
長い夜の果て
 あとがき
ネタバレ満載でいくので、続きは隠します。

「月神の浅き夢」/その裏側には の続きを読む

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「レディ・ジョーカー」/抑鬱の果てに

 2007-07-26-23:21
高村 薫
レディ・ジョーカー〈上〉 」「 レディ・ジョーカー〈下〉

「物語三昧」ペトロニウスさんに、高村薫の『リヴィエラを撃て』をオススメしていたところ、こんな記事を書いて下さいました。

ペトロニウスさんの記事はこちら
→ 『リヴィエラを撃て』 高村薫著 素晴らしい人間ドラマでした
  『リヴィエラを撃て』高村薫著? ハードボイルド小説の心象風景とディティールの描写

ついでに、こっちも
→ 『毎日が日曜日』 城山三郎著 日本株式会社の経済戦士たちのバイブル?

で、私はペトロニウスさんにオススメしたくせに、最近、高村作品を読んでません。このブログに記事を書いたのも、合田刑事シリーズ第二作目の『照柿 』くらい。一時期はまって、一気にガーっと読んだので、『新リア王』以外は一応押さえてはいるはずなのだけれど。「企業小説」であることもあり、このたび、唯一まだ持っている『レディ・ジョーカー』を読み直してみることにしました。

高村作品は大抵がどれも緻密な描写が続くのだけれど、再読となるとなまじ筋を知っているだけに、ついつい読み飛ばしてしまうことも。なかなか最初に読んだ時の集中力では読めませんです…。『レディ・ジョーカー』は登場人物の数も結構なものだしねえ。それぞれの人生が重いです。

さて、「レディ・ジョーカー」とは何ぞや。それは、ある犯罪グループが自称する呼び名。警察の捜査に浮かび上がるような<鑑>もなく、一見ばらばらである彼らの人生において、唯一つ共通するもの。それは、「自分はジョーカーを引いてしまったのではないか」という思い。年齢も職業もバラバラの男たち。ただただ目の前に起きた出来事を見据え、与えられた仕事を黙々とこなした日々。しかし、己の人生は、確実に正負のバランスが狂ってはいまいか?

抑鬱された感情の果てに彼らが起こした行動は、大手ビール会社を恐喝して金を強奪するというもの。実際のところ、男たちには金への執着心はほとんどない。それはこの閉塞した状況を抜け出すための手段にすぎない。偶然が積み重なって選ばれた企業<日之出麦酒>も、実は必然であったのか。総会屋<岡田経友会>との関係、関連運輸会社やその主力銀行の融資疑惑を含め、日之出麦酒は様々な手に絡め取られていく。

最初の怪文書を除けば、約5年間のお話であるこの物語。『レディ・ジョーカー』は、合田刑事シリーズ第三作目であるからして、勿論合田刑事も登場する。「レディ・ジョーカー」の脅迫は実に巧妙であり、まずは日之出麦酒社長の城山を誘拐、ビールが人質であることを説明し、後に裏取引を行うというもの。「レディ・ジョーカー」の名にふさわしく、脅迫に使われるビールの色は赤。赤いビール、それは「レディ・ジョーカー」のしるし…。社長の誘拐には当然警察も介入し、また日之出の裏取引を阻止するために、生還した城山社長に張り付けた所轄の刑事が合田というわけ。

警察と企業の駆け引き、警察の捜査、企業内でのパワーバランス、報道記者の世界などなど、余すところなく、非常にみっちりと描かれます。

レディ・ジョーカー」に対峙するうち、メンバーの一人であり、暴力的でぎらぎらした思いを持て余す男に引きずられるように、合田刑事もまた隠微な思いを深めていく。彼らの行動は互いにほとんど愉悦の源でもある。この二人は最後まで突き抜けていってしまうけれど、そうではないメンバーたちもいる。どこの闇に落ちたのかすら分らない者もいるけれど、「終章」で描かれる山々や耕地の姿は美しい。泥のように、澱のように、隠されていた強烈な怒りや、憤りがそれぞれに噴出したこの事件。この事件を体験した者たちは、それぞれに生まれ変わることが出来るのだろうか。この事件が起こったことによる、様々な弊害は残るのだけれど…。

「企業小説」として「終章」で語られる出来事は苦い。背後に暴力団誠和会がつく、岡田経友会とのしがらみを暴露した日之出麦酒への報復として、社長職を辞任した城山は第一回公判の前日に射殺される。城山三郎さんの小説などとは(って、たぶん、むかーしに数冊読んだだけなんだけど)、この辺の厳しさ、リアルさが違うよなぁ、と思います。

終章」で、本庁の国際捜査課に警部として異動になったことが知れる合田刑事。照柿』で灼熱の浄化を経験し、レディ・ジョーカー』にて「再び生まれ落ちた」合田刑事。国際捜査課での活躍も見たいものです。

<おまけ> 料理について
城山の秘書、野崎女史が城山のために用意する軽食が美味しそうでねえ。実際に作るのは、自社ビルの四十階にあるビヤレストランの総料理長なのですが。

 もともとは、ザワークラウトと男爵イモを骨付きの塩豚の塊とともに白ワインで煮込んだものだが、城山のために豚の塊は抜いてあり、ネズの実入りの真っ白なザワークラウトが小ぶりの一山、ほくほくに煮上がって粉をふいたジャガイモが一つ、バター煮のサヤインゲンが少々、熱々の湯気を立ててマイセンの皿に載っていた。          (上巻p330から引用)

誘拐犯から解放されて、会社に戻ってとる食事がこれ。ザワークラウトを食べると、この場面を思い出します。
上巻/目次
 一九四七年―怪文書
第一章 一九九〇年―男たち
第二章 一九九四年―前夜
第三章 一九九五年春―事件
下巻/目次
第四章 一九九五年夏―恐喝
第五章 一九九五年秋―崩壊
終章

「所轄刑事・麻生龍太郎」/その運命の前の姿・・・

 2007-05-15-23:30
 
柴田 よしき
所轄刑事・麻生龍太郎

柴田よしきさんのRIKOシリーズのスピンオフ。ネット上を見ても、シリーズの主人公RIKOよりも、麻生の恋人であるヤクザの山内練が圧倒的に人気だし、『
聖なる黒夜 』を読んじゃうと、麻生その人にも興味が出てくるよねえ。

というわけで、この「所轄刑事・麻生龍太郎」は、あの麻生が所轄時代に出会った小さな事件を描いた連作集。後に、優秀な刑事として本庁で名を馳せ、その後、山内と出会った事で、退職する事になる麻生・・・。彼のまだ初々しい時代とでもいいましょうか・・・。

目次
大根の花
赤い鉛筆
割れる爪
雪うさぎ
大きい靴
エピローグ


龍太郎が配属されたのは、東京の下町にある高橋署。そこで起こるのは派手な事件ではなく、ごく簡単なものに見えるのだけれど、龍太郎は刑事には珍しいタイプだとからかわれながらも、一つ一つの齟齬を潰していく・・・。浮かび上がるのは、月並みな表現にはなるけれど、悲しい女の事情や、人の悪意などなど。

話の筋はさすが柴田よしきさんと言うべきか、特に問題なくするする読めちゃうので、後は安心して麻生龍太郎というキャラクターを楽しむことが出来る。

たとえば刑事という職業に対しても、たとえば出世に関しても、何事にも執着することなく、淡々と日々を過ごす龍太郎。それが、「聖なる黒夜」に繋がるのかと思うと、なんか、ねえ。だから、これは山内練に会う前の(正確には二度目の出会いが重要なわけだけど)、その運命の前の龍太郎の姿。

そして、全く報われない及川の恋情がここにも描かれていて、龍太郎に執着しながらも(聖なる黒夜」を読めば、それは狂気にすら見えるのに)、龍太郎の心が自分にはない事を、理解出来てしまう冷静さがまたかなしいというか、可哀相というか・・・。

RIKOシリーズを読んでいた時に、麻生や安藤、及川あたりは、緑子よりもかなり先輩だったので、高須などよりは幾分か影が薄かったんだよなー(そういえば、高須もいつか幸せになれるのでしょうか? なんだか、彼も不幸そう・・・)。ああ、及川の部分だけでも、読み返したい! えーと、四課にいる柄と口も悪いけど、やたらと切れ者との噂の人物って、あれ、及川だったっけなー。うーん、記憶は全て朧・・・。

「震度0」/警察内部小説

 2007-04-07-03:31
横山 秀夫
震度0

阪神・淡路地区を、大震災が襲った1月17日の未明。神戸から遠く離れたN県警にもまた、異変が起こっていた。三千人の職員を抱えるN県警の筆頭課長、不破警務課長が消えたのだ。

時を同じくして目撃された、殺人犯・三沢は関係しているのか? また、不破課長の車が発見されたのは、彼の前任地である東部署の近くであった。不破の署長時代の県議選違反事件は彼の失踪に関係しているのか?

キャリア、準キャリア、ノンキャリア・・・。それぞれの立場のものたちが、それぞれの思いで動く。
恫喝、脅し、秘匿、おもねり、裏切り何でもあり。

最初のページに、《N県警主要幹部》《N県警幹部公舎》《N県警本部庁舎》の見取り図が載せられているのだけれど、これがまた重要になるほどに、公舎の中での妻たちの争いもなかなかに熾烈。近くに見えてしまうがために、彼女たちは夫たちの序列を公舎にも持ち込み、自らと他人とを常に比較する。横山さんお得意の、全ての基準は人事の優劣、警察内部での出世というような、強烈に警察の中に中にと、入り込んだ物語。表紙も如何にも警察だしね。

《N県警主要幹部》を書き写しておくと、こんな感じ。

・本部長・・・・・・・・・・・椎野勝巳。46歳。警視長。警察庁キャリア。
・警務部長・・・・・・・・冬木優一。35歳。警視正。警察庁キャリア。
・警備部長・・・・・・・・堀川公雄。51歳。警視正。警察庁準キャリア。
・刑事部長・・・・・・・・藤巻昭宣。58歳。警視正。地元ノンキャリア。
・生活安全部長・・・倉本忠。57歳。警視正。地元ノンキャリア。
・交通部長・・・・・・・・間宮民男。57歳。警視正。地元ノンキャリア。


例えば、交通部長よりも生活安全部長の方が位が上とか、警務部と刑事部の確執とか、ノンキャリアの退職後の地元でのポストとか、本庁から送り込まれるキャリアと地方の確執とか、興味がないと辛いかなぁ、と思うけれど、そこは横山さんの筆力があるので、私は面白く読むことが出来ました。や、ぶっ飛び警察小説「夜光曲 」を借りてきたので、それとのバランスをとるために、一緒に借りてきたというのもあるんですが・・・。

遠く阪神・淡路地区では被害の様子が段々と明らかになり、その被害の甚大さ、重大さがN県警にも情報として入ってくるようになるけれど、N県警の幹部たちの目はこの不破課長の失踪事件に向いたまま。しかも、それは不破という一人の人間がいなくなってしまったことではなく、県警の幹部の一人が消えた事による、自分の出世、立場への影響を鑑みての事。「揺れることはかなわん」。キャリアの椎野本部長の言葉が全てを表しているように、阪神・淡路地区の大震災を横目に、N県警の幹部達は震度0を望む・・・。

不破課長の失踪の真相は、京極氏の「姑獲鳥の夏」ですか!、とも思うんだけど、ま、あれほどトンでもではないですかね。

ラストは一筋の光明。途中からじわじわと味を出す、堀川警備部長。彼は県警の良心となり、N県警に「激震」をもたらすのだろうか。

最後に。阪神・淡路大震災をこういう形で小説に描くのは、賛否両論があると思います。確かに、N県警での「震度0」と対比するためだけに、この大震災を描いたのだとすれば、こういう形でなくとも良かったのでは、と思うけれど、救援に飛びたいけれどもなかなか現場に入る事の出来ない事情なども描かれ、そのあたり、真摯に書かれているのではないのかなぁ、と私は思いました。

「夜光曲-薬師寺涼子の怪奇事件簿」/ドラよけお涼がゆく!

 2007-03-30-22:49
 
田中 芳樹, 垣野内 成美
薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲 
祥伝社 NON NOVEL

ヨコガミ破りは当たり前。
ダダとリクツはこねる為にある。
国宝級の美脚に美貌、財力もばっちりのキャリア警視、薬師寺涼子。
ついた渾名は、「ドラキュラも避けて通る」こと間違いなしの、「ドラよけお涼」。

執事のように、僕のように、彼女に付き従うのは、こちらはノンキャリアの部下、泉田準一郎警部補。

「あたしにしか解決できない一大事」を待ち望む涼子の前に現れる事件とは?

目次
第一章 緑の風もさわやかに
第二章 蛍の光り、窓辺の血
第三章 怪人「への一番」の陰謀
第四章 ゼンドーレン最後の日
第五章 ヤマガラシ奇談
第六章 文人総監のユーウツ
第七章 双日閣の対決?
第八章 怪人+怪物+怪獣
第九章 原形質からやりなおせ


えー、わたくし、またシリーズ本を途中から読むという過ちを・・・。軽いシリーズだし、状況説明もちゃんとしてくれるので、読めてはしまうんだけど。でも、シリーズの最初くらいは、探してみようかな。

さて、「夜光曲」に戻ります。最初に起こったのは、新宿御苑の緑が一夜にして枯れ木に変わってしまったという事件。次に起こったのは、蛍狩りが名物の日本庭園での、人食いボタルの出現事件。これは新たなバイオ・テロの一種なのか??

個人的な理由もくっつき、ホタル撲滅宣言で気炎を上げる都知事の緊急会見中に、今度は都知事がネズミに襲われる。一連の騒動は、背後に同じ犯人がいるのだろうか?

涼子が走り、「私」泉田が付き従う。きらきらと光り輝くような(良い意味でも悪い意味でも)涼子に比較し、泉田はまるで涼子の影のよう。でも、この彼がね、サポートは適切だし、有能で、なかなかにかっこいいのではと思うのよ。これはぶっ飛んだ涼子に爽快さを求めて読んでもいいし、泉田くんの忍従ぶりに可憐さというか、ある種の萌えを求めて読むのかなー。しかし、もそっとリアル(に思える)な警察小説では、三十三歳にして、警視庁の警部補というのは、ノンキャリアとしては相当に出世が早い方だと思うんだけど、涼子につりあわせると、こうなっちゃうのかなぁ?

えー、事件の方は、私、最初「怪奇」事件簿という言葉に気付かず読んでたので、てっきり普通の事件を解決するのだと思っていたのだけれど、そこは「怪奇事件簿」。怪奇なのです、理屈ではないのです・・・。妖怪ヤマガラシなのです・・・。

後、楽しい所は、某都知事を髣髴とさせる都知事の言動。自衛団的な首都戦士東京ってほんとにありそうなところが怖いよ・・・。どうなるのでしょうねえ、東京都知事選。嗚呼、東京都民は楽しそうで良いなぁ・・・。
 ← これが最初?

「聖なる黒夜」/純愛 RIKOシリーズver.

 2007-02-20-21:53
柴田 よしき
聖なる黒夜

この本は、柴田よしき氏による女刑事RIKOシリーズに登場する、二人の男性の純愛(?)を描いたもの。純愛とはいえ、何せ本編も本編なので、「綺麗~♪」なものでは有り得ない。とはいえ、本編よりは血と暴力の濃度は若干薄いかなぁ。本編がどろどろ過ぎって話もあるけど。

さて、ここでRIKOシリーズ本編のおさらいを。全て、amazonの内容紹介から引いちゃいます。

1:  2:  3: ?

1:内容(「BOOK」データベースより)
男性優位主義の色濃く残る巨大な警察組織。その中で、女であることを主張し放埓に生きる女性刑事・村上緑子。彼女のチームは新宿のビデオ店から一本の裏ビデオを押収した。そこに映されていたのは残虐な輪姦シーン。それも、男が男の肉体をむさぼり、犯す。やがて、殺されていくビデオの被害者たち。緑子は事件を追い、戦いつづける、たった一つの真実、女の永遠を求めて―。性愛小説や恋愛小説としても絶賛を浴びた衝撃の新警察小説。第十五回横溝正史賞受賞作。

2:
内容(「BOOK」データベースより)
一児の母となった村上緑子は下町の所轄署に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美人が現れる。彼女は失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話をきく。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が…。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべき一つの真実が隠されていた…。ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第二弾。


3:内容(「BOOK」データベースより)
若い男性刑事だけを狙った連続猟奇殺人事件が発生。手足、性器を切り取られ木にぶらさげられた男の肉体。誰が殺したのか?次のターゲットは誰なのか?刑事・緑子は一児の母として、やっと見付けた幸せの中にいた。彼女は最後の仕事のつもりでこの事件を引き受ける。事件に仕組まれたドラマは錯綜を極め、緑子は人間の業そのものを全身で受けとめながら捜査を続ける。刑事として、母親として、そして女として、自分が何を求めているのかを知るために…。興奮と溢れるような情感が絶妙に絡まりあう、「RIKO」シリーズ最高傑作。

と、斯様にRIKOシリーズ本編は、血と精液と、その他諸々の体液に塗れた物語なんである。一言でいうと過剰な物語であり、内容紹介から引いているだけで、お腹いっぱいになっちゃうような物語。決して趣味のいい読書とは言えないんだけど、妙に気になってはしまうのよね。一文、一文を楽しむような読書ではなくって、粗筋を追っちゃう読書にはなってしまうんだけど。

さて、冒頭に二人の男性の純愛と書いたけれど、これは本編にもがっちり出てくる、ヤクザの山内練と、元刑事(この時点では、まだ現職の刑事)の麻生龍太郎の事。悪魔のような山内はなぜ生まれ落ちたのか、愛憎渦巻く山内と麻生の関係はなぜあんなにも縺れ合ったものになってしまったのか、その答えの殆どはここに描かれている。

ちなみに、タイトルの「聖なる黒夜」とは、山内が東日本連合会、春日組の幹部、韮崎に助けられた夜の事。聖なるバレンタインデーの夜が明ける頃、線路で始発を待っていた山内を助けたのは韮崎だった・・・。

勿論、ここで山内を助けるのが違う人物であれば、山内は「悪魔のような」男にはならなかっただろうし、更に遡れば、麻生と山内の二人の最初の出会いであった、あの事件さえなければ、ね。真面目な大学院生だった山内だけれど、誰もが悪魔のようになれる、そういう素質を持っているのか、それとも山内が特別だったのか??(ここでは、山内は無垢な中にも、元々そういった素質を持った、魔性の男っぽく描かれておりまするが)

しかし、周囲の色々な事情が描かれれば、描かれるほど、大学院生だった山内を襲った事件や、その後の付随する出来事は如何にも陰惨(取調べの中のあんな行為や出来事を忘れている麻生もどうかと思いますが。それともあれは封印していたの?)。そして、この後、誰も報われないまま、二人は恋に堕ちてゆくのよねえ。はーーー。白檀の甘い体臭を持ち、胸には蝶の刺青を持つ男、山内練。彼は他のシリーズでも活躍しているそうであります。
本編との関連で言えば、この後、周囲の忠告を思いっきり無視した静香嬢は、結局あんな目に遭っちゃうんだよなぁとか、何回か出てくる、安藤が女のことで失敗したというのは、ああ、緑子とのことね、とか。

文庫には短篇二本が収録されていて、立ち読みで読んじゃったんだけど、より遣る瀬無さが増すのでした・・・。不幸のスパイラルの中、それでも二人共に堕ちてゆくのは幸福なのでしょうか。たとえ、全てが遅すぎたとしても。

「溺れる魚」/イロイロとまみれてます

 2005-12-21-09:07
戸梶圭太「溺れる魚」

小柄で色白、体毛も少なく、痩せ型の秋吉は、警官でありながら、女装癖の持ち主。女性用化粧品の万引きで捕まった彼は、特別監察官室預かりの身となる。

一方、タレこみを受けて連続強盗傷害犯のヤサに踏み込んだ白洲は、犯人を射殺すると同時に、犯人たちの金を着服した。この時の着服仲間の落合が自殺したことで、白洲はシラを切ることが出来ず、やはり特別監察官室預かりの身となる。

特別監察官室という部署は、不正を行った警察官を、その不正が殺人や強盗など凶悪犯罪でない限り、内密に処分したがる。
さあ、不良警察官である彼ら二人の処分はどうなる?

原則的に特別監察官は、警察に所属するあらゆる警察官に対して、調査を行う権限があるが、それが及ばないところがある。すなわちそれは、組織の不透明性、秘匿性をもって是とする公安警察官たち。特別監察官とは相性の悪い公安の調査をするのに、秋吉と白洲はうってつけというわけ。それぞれの罪を不問に帰すことと引き換えに、彼らは怪しげな動きを見せる、公安部外事一課の警部、石巻の監視にあたることとなる。

物語は、石巻が出入りする会員制の店、『クリング・クラング』(ドイツ語の擬音で、日本語で言うとガタンゴトン)のメンバーによる企業恐喝事件へと進み、そこに更に不潔極まりない、石巻の同僚の公安警部・伊勢崎、伊勢崎がネチネチといたぶっている革滅派のメンバーなどを巻き込んで、引きずって、ラストは怒涛のごとき様相を呈す。

秋吉、白洲の視点が最初は主になるし、キャラも立っていると思うのだけれど、この後、出てくる面子、全てが一癖もふた癖もある人物。この二人のキャラがそんなに活かされていないというか、普通の小説であれば「濃い」と思えるキャラなのに、後から出てくる濃い面々にすっかり「薄く」感じてしまう。
特に強烈なのは、恐喝されている企業、ダイトーの専務・保坂と、特別監察官室室長の主席監察官、御代田警視正の二人。

企業恐喝の内容もまた強烈。ただ金を出せ、というものではない。ダイトーの幹部を名指しして行わせる、いい大人の男性を辱めることが目的のようなもの。

「服装は・・・・・・上は白のタンクトップ。黒マジックで前面に“男気”、背面に“嫁さんヨロシク」と大書きし、「下はグリーンの迷彩柄の短パン。靴下はクマのプーさんがプリントされたハイソックス、靴は黄色のデッキシューズ」で、頭にはアメリカ・ニューヨーク市警の制帽」を被り、その格好で中央通りを新橋駅に向かって、競歩で歩くこと」とかね。

何もかもが派手派手しく、馬鹿馬鹿しい。

戸梶圭太はぶっ飛んでいるという話を聞いていて、でも、最初の部分はそれ程でもないなぁ、と思って読んでいたのだけれど、ラストに向かうにつれ、どんどんひどいことになっていき、成る程と納得。

人はバンバン死んでいくし、糞便塗れだし、反吐塗れに、血まみれです。嫌いな人は、近づかないほうがお勧めですが、ここまでひどいと現実から遊離して、更にちょっとした爽快感まで得られてしまうところが不思議。

それにしても、警察の陰の部分を一手に引き受けているというのに、御代田のこの飄々とした態度はいったいなんなのだろう。
「死体はそれでいいとして、負傷者はどうするんです」
「どこかにまとめて捨てますよ。夏だから凍死することもないでしょうしね、ほほ」
御代田は笑ったが、石巻は後味が悪かった。

ある意味、クールな御代田警視正。この人の背景をもっと知りたいなぁ、と思った。

 ← 私が読んだのはこちら
戸梶 圭太
溺れる魚
 ← 既に文庫化されているようです

堤監督により、映像化もなされているのですよね。
このぐちゃぐちゃを、どう映像化したのでしょうか。

ビデオメーカー
溺れる魚

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「失踪症候群」/必殺仕事人?!

 2005-11-22-10:40
貫井徳郎「失踪症候群」双葉社

貫井徳郎氏、初読みです。でも、実はこの作品はいまいちでありました。
もっと面白いものを、もしご存知でしたら、是非教えてください。

警視庁内のスタッフ部門にあたる警務部人事二課には、環敬吾という妙な人物が居た。私生活を全く見せず、与えられる仕事量も少ないのに、席を立つ回数や、掛かってくる電話の回数がやたらに多い環。
というわけで、冒頭は、この環という人物に疑問を持った、人事二課のスタッフ、安藤京子の視点から始まる。彼は一体何者なのか?

実は環は、現代における必殺仕事人のような役割を果たしていた。警察本体を動かせない時に、闇で事件をするっと解決するわけ。彼はチームを率いるリーダーで、メンバーは次の三名。普段は肉体労働のバイトで稼ぐ、体力自慢の倉持真栄、この作品ではその素性、普段の行いが、まだ謎に包まれている托鉢僧の武藤、警察を辞め探偵業を営む原田柾一郎。

今回の仕事は、失踪した若者を探せというもの。だから、タイトルは「失踪症候群」。次々と失踪した、彼らの共通点の一つ目は年齢、二つ目は親許を離れて一人暮らしをしている点、三つ目はそれほど高い学歴を持っているわけではない点、四つ目は何らかの形で人生相談を受けているという点。
取り立てて美男美女はおらず、あくまでも平凡な若者たち。また、自動車免許を持っていない者も何名か。

彼らはなぜ失踪したのか?
なぜ同年代で、いまひとつ特徴のない彼らの失踪が続くのか?

そこそこには面白かったのだけれど、せっかくの「必殺仕事人」メンバーのキャラが、いまいち立っていない様に思われた。若者たちの失踪の理由も、かなり安易であったりする。絡んでくる不動産業者、ちょっとイカれたミュージシャンたちの設定も、それ程意外性があるわけでもない。「仕事人」メンバーの一人である、原田柾一郎とその娘の関係も、途中クローズアップされるのだけれど、何というか予定調和的。色々な要素を、詰め込み過ぎのようにも思う。後で調べたらこれはシリーズ物の第一作であるようなので、チームのメンバーの「顔見世」的要素が、強いせいもあるのかもしれないけれど。

でも、こういうことが可能であるならば、本当にやってしまいたいと思う若者も、結構多かったりもするのだろうか。現実の闇の方が、怖いのかもしれないなぁ(といっても、これ、10年前の作であるようですが)。


貫井 徳郎
失踪症候群  ← 私が読んだのはこちら
 ← 既に文庫化されているようです
貫井 徳郎
失踪症候群  

「花散る頃の殺人」/刑事・音道貴子

 2005-10-21-08:45
?「凍える牙」でお馴染みの、刑事・音道貴子を主人公とした短編集。

目次
あなたの匂い
冬の軋み
花散る頃の殺人
長夜
茶碗酒
雛の夜
★特別巻末付録★滝沢刑事・乃南アサ 架空対談

「あなたの匂い」では、貴子の近くにストーカーの影が。怖い~。ラストには、相変わらずの、「凍える牙」の皇帝ペンギン、滝沢刑事が登場。

「花散る頃の殺人」。立川の古いビジネスホテルで、老夫婦が死亡しているのが発見された。彼らから立ちのぼった、あんずの香り。なぜ夫婦二人の終焉の地として、住み慣れた土地を離れ、こんなに淋しい場所を選んだのか。

「長夜」。染織家、伊関逸子がビルの上から落ちて亡くなった。貴子は逸子の死に拘る、古くからの友人、安雲(あすみ)とともに、彼女が死を選んだ理由を探る。安雲は、知り合った当時は正真正銘の男性で、貴子と警察の同期だった、おかま人生を歩む美しい親友。

「茶碗酒」では、「あなたの匂い」とは逆に、滝沢刑事がメイン。ラストに貴子が登場。

最後の架空対談もちょっとお得な気分。

この音道貴子シリーズは、貴子のキャラが勿論いいのだけれど、周りの滝沢刑事や安雲といった人たちもいい。

実は口で言うほど悪気がない、お腹の突き出た皇帝ペンギン、中年刑事滝沢。この滝沢と貴子のコンビも「凍える牙」以降はあの緊張感もなくなって、独特のおかしみが滲み出る。滝沢刑事は、しょっちゅう貴子のことを、無表情だとか澄ましてるとか言っているけど(貴子の側から見ると、実は彼女にもそれ程の余裕があるわけではないことが分かる。意地っ張り!)。

私が持っている文庫には、BS-2で当時やっていたらしい、ドラマ「凍える牙」の帯がついている。このドラマ、私は見逃してしまったのだけれど、貴子役に天海祐希さん、滝沢刑事役に大地康雄さん。見たかったなー。

乃南 アサ
女刑事音道貴子 花散る頃の殺人

乃南 アサ
凍える牙

「照柿」/狂う、爛れる

 2005-08-31-10:10
高村薫「照柿」

現在三作出ている、合田雄一郎シリーズの真ん中。私はちょっと変則的な読み方をしていて、もう何年も前に「マークスの山」「レディ・ジョーカー」は読んでいるのだけれど、真ん中に当たる本作を飛ばしていた。ちょうど図書館にあったので、借りてきた。
*************************************************
全編を覆うのは、熱。二人の男の熱、気が狂いそうな暑い夏。照柿という赤色の一種。「熱」のせいか、いつもの緻密で這う様な高村節に、更にねっとりとした感触が加わっている。

二人の男とは、シリーズの主人公でもある合田雄一郎と、彼の幼馴染にあたる野田達夫。

合田雄一郎の「熱」は、刑事である彼が追っている「ホステス殺し」。彼の照柿の色は、線路から見た電車の臙脂色。他の作品では、硬質な石の様な印象を人に与える彼が、すっきりとして容赦ないまでに清涼な彼が、この「照柿」では狂ったように一人の女性に執着する。

一方の野田達夫の「熱」は、彼が勤めるベアリング生産工場の熱処理棟の灼熱。彼の照柿の色は、熱処理棟の老朽化した炉の色。

二人の男を繋ぐのは、佐野美保子という女。高村作品ではいつも女性が描かれないのだけれど(「晴子情歌」を除く)、今回は美保子が重要な役割を果たす。とはいっても、男に惚れられる、というだけでは重要な役割とは言い難いだろうか。彼女の行動に整合性は見られないし、彼女をあらわす言葉は「不機嫌」だと思う。何を考えているのか窺い知れない、深い穴のような女性。熱い男たちとは違い、美保子の存在は冷たさを感じさせる。切れ長の、大きく、冷たく、深い穴のような目を持つ女。白く光るふくらはぎ。

三者の出会いは、悲劇的様相を呈し、それぞれに狂った結末を迎える。

《俺の目、さっきからずっとおかしなっとるんや・・・・・・。臙脂色の雨が降っとる、雨も道路も空も全部臙脂色や、浸炭炉みたいな色や、雨が燃えとる・・・・・・。雄一郎、照柿の雨や・・・・・・》
てりがき。照柿。
ああ、照柿という名前だったか、あの色は。
「ああ、達夫、矢田の家で、庭の柿二つ手にのせて、あんたが教えてくれた色や。照柿いう名前やったな、そうやった」
*************************************************
ムック本「高村薫の本」「担当編集者が語る創作秘話」によると『照柿』は「ドストエフスキーの『罪と罰』のような作品をお願いできませんでしょうか」との依頼を受けて書かれたものとの事。軟派な本読みの私は、実は「罪と罰」を通して読んだことはないのだけれど、「照柿」はストーリーがどうだというよりも、人の内面をしつこく追ったような本。

「マークスの山」がきて、「照柿」がきて、次に「レディ・ジョーカー」がくるのか、と今更ながら納得した。「照柿」で灼熱の浄化があった後に、「レディ・ジョーカー」がくるのだな、多分「照柿」を読むと、「レディ・ジョーカー」単独で読んだ時も、ぐはっと驚いた、雄一郎の義兄である検事、加納祐介との物語後半部でのやり取りが余計にキた。

高村作品の男性は、大抵整った硬質な外見の内に、どろどろとした感情を秘めている。「照柿」はそういった感情の動きを追ったような作品だった。あと、ほんとはダンテの「神曲」を読んでいれば、もっと深く楽しめるであろう作品。これまた未読なのだった。
高村 薫
照柿
別冊宝島981号「高村薫の本 」

*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「陰の季節」/人間ドラマ

 2005-06-30-07:58

横山秀夫「陰の季節」

目次
陰の季節
地の声
黒い線


出版社/著者からの内容紹介
天下りなどの人事問題に真っ正面から取り組んで、選考委員の激賞を浴びた松本清張賞受賞作ほかテレビドラマ化されたD県警シリーズ

これ、少し変わった形式の小説です。スポットが当たる人物が、一編毎にくるくる変わる。でもこういった、それぞれ一人ずつにスポットをあてていく小説が結構好きなのです。こんな風に人には見せているこの人が、実は内心こうだった、とか。内心こうなのに、他人からはこう見えるんだ~とか。脇役に対する愛なのかも。

「陰の季節」では、他の短編においては、「四十歳の若さで警視となった」「エース(人事の切り札を握る)」と呼ばれ、皆に恐れられる二渡警視がおろおろと惑う。こういうのがあるから、好きなんだよなー。この本に出てきた人たちの中では、二渡警視が一番好きだった。「黒い線」では「顔」 の平野巡査が登場する。


しかし、警察という組織の中での、出世や男の嫉妬はいかにも大変。家族を養うためとはいえ(「養う」というよりは、あくまでプライドの問題なのかな)、中を向いてだけというのも虚しいよなと思う。ちょっとその辺りに、暗い感じを覚えたりもした。人事、査定
というものは、基本的に暗いイメージを持つのかなぁ。

同じ警察小説でも、高村薫氏による「合田刑事シリーズ」とは、ギラギラのベクトルが違う感じ。同じく同僚がライバルであっても、合田刑事シリーズではあくまで外向き、こちらは警察人事などが関わってくるので、多分に内向き。うーん、人ある所にドラマあり、といった所なのでしょうか。

 ←私が読んだのはこちら
著者: 横山 秀夫
タイトル: 陰の季節
 ←既に文庫化されているようです(「文春文庫」)

未熟であるということ/「顔」

 2005-05-14-07:54
突然ですが、私はとても打たれ弱い。自慢することではないけれど、更に人の悪意にも大変に弱い。悪意に接すると、どうもシオシオとなってしまう。だからブログを始める事にも、実はずっと躊躇していた(始めてみたら良い方ばかりで、幸せだなあと感じているのだけど)。以前ブログのコメントで、「tsuna11さんには世界が綺麗に見えるんだろうね」というような事を仰って頂いた事があって、それはとても嬉しい言葉だったのだけど、きっと同時に私の弱さでもある。

何か、ゴチャゴチャ言ってますが、今日は次の一冊を。

横山秀夫「顔」

横山秀夫さん、以前「クライマーズ・ハイ」を読んで、これが結構好感触だったから、「仲間由紀恵でドラマ化されたんだっけな、「FACE」だっけ?婦人警官なんでしょ、警察物ね」位の知識で図書館から借りてきた。読み始めてみたら、これが非常に読み辛い。
本書は一言で言えば「男社会である警察で孤軍奮闘する、年若い婦警・平野瑞穂を主人公とした短編集」プロローグエピローグを除けば、「魔女狩り」、「決別の春」、「疑惑のデッサン」、「共犯者」、「心の銃口」の五編から成っている。

「男社会である警察で孤軍奮闘する女性」と言えば、乃南アサ「音道貴子シリーズ」を思い出すけれど、音道刑事が腹を括って、ある種のふてぶてしさまで備えているのに対して、この平野巡査は非常に脇が甘くナイーブ。この辺りが、読み進め難い原因だと思う。
ところで、「ナイーブが褒め言葉なのは日本だけだ。ナイーブなんて良い事でも何でもない」というのは、確か落合信彦氏の言葉だったと思うけど、今の日本ではどちらの意味なんでしょうか。とりあえず、私はいい意味では使ってません。
タフであるべき所を、瑞穂はいつも悩み、迷い、ブレる。読んでいると、瑞穂には突出した能力(似顔絵)もあるし、決別の春」で見られる仕事に対する責任感だってかなりなもの。悩むけど、結局は上司に言いたい、言わなければならない事はちゃんと伝える。だから、「なのに何だってそんなに自信がないの!」、「どうして悩むの?」、「いい子ちゃん過ぎない?」と、もどかしくなってしまう。

今日はいつも以上に本の感想からズレていくのですが、ここで私の話を少し。私がかつて働いていた場所も、警察程ではないけれど所謂「男の社会」でした。更にそれ以前の問題として、周囲がほぼ男性という環境の中で学んでいたのと、鈍感だったので、私は人生のある地点までは「男女って平等なんでしょ?対等で当たり前なんでしょ?」と思っていた。その時点においても、今思えば力仕事なんかは、思いっ切り人に頼っていたのだけれど。会社に入ってみると、女性が少ない事で「マスコット的役割」、「癒し的役割」を期待されることもあれば、逆に単純に「目立つ」ことへの僻み、嫉みのターゲットとなることもあった。で、勿論、決して「対等」ではなかった。少ないとは言え女性が居る中でも、立場、役割が違えば、「女の敵は女」という言葉がちらりと頭をよぎることもあった。男性の中にも女性の中にも、上手く入る事が出来ずに蝙蝠みたいと思ったり。そんな訳でようやく冒頭に戻るのだけれど、入社後暫くはこれらの物事に当たるのに、いつも非常に消耗して、悩んで迷っていた。まさに本書の平野瑞穂巡査のように。

そう思って読むと、最初の読み辛さは、瑞穂の中に自分を見てしまったせいだという事が分かって、後はすんなり。話を重ねる毎に、瑞穂も成長していきます。エピローグでは、第三者から見た瑞穂の眩しい程の輝きが語られる。
正直言って、ミステリーとしてはそんなに優れたプロットではないし、「クライマーズ・ハイ」程のカタルシスも得られない。普通の警察小説と思って読むと、肩透かしを食うかもしれない。でも「男社会で奮闘する若い女性の成長物語」として読んだ私には、面白い一冊でした。後は失礼ながら、この本を横山秀夫さんという「オジサマ」が書かれたという事が興味深かった。

私の目標はいい意味でもうちょっと図太くなること。入社後のゴタゴタだって、私が無邪気でナイーブ過ぎたせいも多々あったはず。もうちょっと、泰然自若としているべきだった。会社を辞める頃には、「蝙蝠」なんてもう思わなかったし、多少図太くもなりましたが。そして、村上龍「69」における、レディ・ジェーン・松井和子の「うち、ブライアン・ジョーンズの、チェンバロの音ごたる感じで、生きていきたかとよ」という生き方も気になる所ですが、残念ながらそんな美貌でもキャラでもありませんので、目指す方向はやはり図太くあることなのです。

私が読んだハードカバー版を載せておきますが、既に文庫化されているようです。

著者: 横山 秀夫
タイトル: 顔 FACE
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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