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「ビッチマグネット」/私を形作るのは…

 2010-02-08-00:11
ビッチマグネットビッチマグネット
(2009/11/27)
舞城王太郎

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内容(「BOOK」データベースより)
なんだか妙に仲のいい、香緒里と友徳姉弟。浮気のあげく家出してしまった父・和志とその愛人・花さん。そして、友徳のガールフレンド=ビッチビッチな三輪あかりちゃん登場。成長小説であり、家族をめぐるストーリーであり、物語をめぐる物語であり…。ネオ青春×家族小説。

これもまた、舞城さんが描く一つの家族のかたち。でもって青春小説。漫画を描こうと思い立ったけれど、何も描くことがなかった事に初めて気付いた十八歳の私。そんな私が原稿用紙百三十枚くらいの小説を書けるようになるまでの数年間の軌跡。

たとえば自分の状態にもある名前を付けてしまう事で、その情報が固定されてしまったり、人からの見方に縛られてしまったりもする。主人公の香緒里が辿り着いた結論は、人間のゼロは骨であるということ。そこに、肉と物語をまとっていく。

歴史と記憶と想像と思い込みと願いと祈りと連想と創造。物語を物語が飲み込んで、時に思わぬ飛躍も起こる。
私は今のこの私になり、お母さんは広谷になってから菅井に戻って今度は後藤田になる予定だ。お父さんはお父さんとして複雑な何かを抱え込んでいる。友徳はビッチマグネット。
でも弟よ、それは物語で、自分もしくは他人による捏造の可能性もあるのだ。
そしてその可能性は私もお母さんもお父さんも全ての人間が抱えているものなのだ。
(p206より引用)

結局、自分を形作るものは自分しかなくて、力強くそこに向かっていく彼女が眩しいです。

「~~」を多用したゆる~い会話文や、なのだ!なんだ!という香緒里の心の動きに沿った展開(というか、舞城ヒロインは、いつも考え過ぎるほどに考え過ぎる一人称?)が、実に舞城さんらしいんだけど、この辺が芥川賞を逃した所以なのかしらん。実際は真面目に人生考えてる小説だと思うんだけどなー。誰もが憧れる職業とか、その職についたら一生幸せ!なんて職業が見えない時代だけど、とりあえず興味のあった所から始めて、戦略を立てて働き始めた香緒里の生き方は、若い人にこそ読んで欲しいなぁと思うんですが(香緒里が選んだ職業は、ここでは臨床心理士)。…でも、芥川賞だからって若者が読むわけじゃないか。

正しさで人は動かせないとか、正論は潜水艦(=自分)の周囲の状況を確かめるために発信するソナーだとか、今回も私にはおおっ、と思う表現が沢山でした。人はそう簡単には変わらないから、ソナーの影響を受けるとしてもとてもゆっくり。それはとてもゆっくりだから、通り過ぎた地形が変わったとしても、既にその場を離れた潜水艦には関係ない、とかね。「ディスコ探偵水曜日」みたいに疲れないで、うんうんと素直に読めちゃう本でした。今回は暴力的シーンも(ほとんど)ないし、人死になんか全くないしねえ。女子高生といえば、「阿修羅ガール」もあったけど、今まで私が読んだ舞城さんの本の中では、一番ぶっ飛び度が低かったです。

「ビッチマグネット」というタイトルに、このえらくファンシーな表紙だったので、ちょっと違和感があったりもしたのですが、読んでみれば確かにこれでいいんだよね。フォントといい、舞城さんって装丁などにもこだわりがありそうに感じるんだけど、実際どうなんだろうなぁ。ぶっ飛び度は低くても、読後の爽快感はやっぱり共通。読んだばっかりですが、また次の作品も楽しみです。
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「ディスコ探偵水曜日・下」/舞城王太郎、総決算?

 2008-10-02-00:40
ディスコ探偵水曜日 下 (2)ディスコ探偵水曜日 下 (2)
(2008/07)
舞城 王太郎

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のっけからページ数の話をするのはどうかと思うけど、下巻は書き下ろしの「第四部 方舟」だけで構成され、ページ数も452ページと、だいぶ常識的な厚さ(?)に落ち着いています。

下巻はいきなり、ディスコ(っていうか、孤児の日本人、踊場水太郎)の高校時代の話から始まります。上巻では比較的ポピュラーな方のグループにいた、という話だった水太郎は、ここでは上巻で馬鹿にしていたギーク(オタク)なグループの地味~な存在。ん??、って感じなんだけど、これにもまた一つの説明がなされます。

<パインハウス>に戻ったディスコは、梢を襲った相手に打ち勝つべく、名探偵たちと共に、時間と空間の外にあるものを考えます。ディスコは時空を曲げることが出来るようになったけれど、それでも起こった出来事を変えることはまだ出来ない。ところが、敵にはそれが可能ならしいのだ。

人間の≪好き嫌い≫は≪意識≫にも≪知≫にも縛られずにあるまさしく根本だ。「≪好き嫌い≫が世界の中心なんだ。そこから≪倫理≫も≪美的感覚≫も生まれるし、≪知≫も≪意識≫も制御され、≪世界≫の形ができあがる」。そして自分の持つ≪好き嫌い≫の感覚から生まれる≪こうあるべし≫≪こうあってほしい≫≪こうなってほしい≫という気持ちは、つまり≪意志≫なのだ。ならば≪意志≫のあるところに≪出来事≫が生じる以上、この世の全ては≪好き嫌い≫に誘導されるのだ…その≪好き嫌い≫の強さに応じて。≪鉄の意志≫によって。俺は梢を救う。そのために全てを曲げてみせる。(p96-97より引用)

梢を救うために未来へと飛んだディスコは、「梢式(Cozue-method)」なる忌まわしきシステムを知る。子供を虐待すると、その子供たちは苦しみから逃れようと人格を分裂させる。分裂した人格は、サブチャイルドの体の中に入り込む。サブチャイルドに入り込んだ分裂した人格は、10年もすればすんなりと癒されて消えてしまう。JJ率いるスタイロン社は、その空っぽになった身体を売っているのだ。クローン人間ともまた違う、ボディを丸ごと新しくしてしまうという、その斬新な仕組みは爆発的な成功を収めているのだが…。

子供たちを傷つける者は許さない。ディスコはどうやら未来の世界で、三億人の子供たちを攫い続ける運命(十三年で三億人。一秒に一人ずつ毎日十七時間ずうっと誘拐し続ければ可能な数字)にあるようなのだ。そして、この未来では、全員が失踪宣告を受け、死亡が確定していた、「パインハウス」事件の名探偵たち。ディスコは何と、<ラグナレク>にて世界を折り曲げ、「新世界」を名探偵やエンジェル・バニーズたちに任せ、自分は「旧世界」に残って、滅びゆく世界でひたすら子供たちを攫い続けることにしたのだ。

って、書いててもすっごい設定なんですが、たとえ矛盾があろうとも、大風呂敷過ぎて、この世界についていくのが精いっぱい。突っ込みようがないよーー。それでも、上巻で感じたメッセージと同じものを感じます。すなわち、子供は守るべきものであること、意志の力が世界を変えること、弱いことは悪いことだなんて決めつけんな!ってこと、気持は実際に力を持つこと、とにかく愛!とかそういうこと。更に強く感じるのは、世界への希望とか。

とりあえず、ディスコはそんな世界の中、愛する者とともに踊り続けるのです。舞城さんの世界は、グロかったりえぐかったりするのに、最終的にはすんごく明るくて、真っ当なところも特徴だよね。それこそ強い意志とか希望を感じるのです。

「ディスコ探偵水曜日・上」/舞城王太郎、総決算?

 2008-09-30-23:18
ディスコ探偵水曜日 上 (1)ディスコ探偵水曜日 上 (1)
(2008/07)
舞城 王太郎

商品詳細を見る

何の前情報ももたずに、ぽちっと図書館の取り寄せをした私は、この本が届いて思わず仰け反りましたよ。だって、上下巻だっつーのに(結果的に下巻は上巻に比べると、大したボリュームではなかったんだけど)、上巻はなんと621ページ!(背表紙の厚さを思わず測ってみたら、37mmくらい?) お前は京極本か!、と突っ込みたくなるのは、私だけではありますまい。

大爆笑カレーとか、コテージ奈津川とか、ルンババ12とか、桜月淡雪とか、「THE WORD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS」とか、九十九十九とか、暗病院終了(あんびょういんおわる。清涼院流水みたいじゃない?)とか、東京都調布市とか、福井県西暁町とかとか、たぶん私が見逃してるのも含めて、懐かしのキャラクターだとか設定がバシバシと出てくるのですが、このあんまりな情報量にクラクラと目眩がします。また凄いのが、途中から始まる<パインハウス>で起こった作家、暗病院終了の密室殺人の名探偵たちによる解釈なんですが、推理を展開していった名探偵たちは、途中から真実がすり抜けていくことで、その推理は間違ったものとなり、続々と左目に箸を突っ込んで絶命しちゃうのです。えっぐー。

まぁ、でも、そういった色々な物が詰め込まれていても、やっぱり舞城さんが言ってることは、ごくごくシンプルなんだと思うんだよなー。
ディスコ探偵水曜日。DISCO Wednesdayyy(お前は、終りにeがつくanneかっつー気もしますが)、もしくはディスコ・アレクサンダー・ウェンズデイ、ディスコ水曜日、時にウィリアム・イーディ、時に踊場水太郎は、迷子探しを専門とする探偵。

彼はある事件で取り戻した、六歳の山岸梢と一緒に住んでいる。ところが、梢の体に変化が起こる。十七歳の梢を名乗る、未来の彼女がやって来る時、六歳の梢の体は、本当に伸び縮みしているのだ。同時に起こる、少女たちの魂を盗むとされる「パンダラヴァー」事件。また、小さい梢が体を追い出される時に行くという、「パイナップルトンネル」。西暁町の「パインハウス」事件を聞いたディスコは、梢を守るために、ディスコと同じくらいぶっ飛んだ名前の(そして、ぶっ飛びっぷりは、決して名前だけでは終わらない)、水星Cと共に「パインハウス」に乗り込んでいく。そこでは名探偵たちの推理と死が連続していた。果たして、ディスコは梢を救えるのか?
筋としてはこんな感じなんだけど、タイムトラベル的要素を含むからか、ワームホールだの量子論的な話が出てきたり(下巻では宇宙論なども)、図もバシバシ出てきたり、舞城さんらしいといえば実にらしい作り。突然の太字とか(ジャスト ファクツ)、「待て待て。」とかで展開していくお話も。

で、私がシンプルだと思う、この小説から伝わって来たことは、子供は守るべきものであること、意志の力が世界を変えること、弱いことは悪いことだなんて決めつけんな!、気持は実際に力を持つこと、とにかく愛!とかそういうことなのです。

ラスト付近では、ディスコは時空を曲げて自在に時を行き来できるようになっちゃうし、パンダは喋るし、まぁ、本当に何でもあり。とはいえ、ラスト、これにて無事解決か?と思いきや、まだまだディスコは休むことが出来ません。上巻で振り落とされなければ、下巻は一気に行っちゃえます。

でも定められているとは言え俺は努力を続けなければならないのだ。思うこと、感じること、求めること、願うこと、欲しがること、そういうものをすべて強く持つことだけが運命を引き寄せる。誰よりも強いそれらを持つことだけが運命を現実化させる。 (p618より引用)

本筋とは異なるけれど、気になったことと言えば、「ら抜き」言葉! 新潮社のチェックをくぐり抜けているわけだし、わざとだよねえ。でも、なんでー? あとは私はやっぱり舞城さんの擬音が好きだな~。電話の音、ルサムサムサムサム……とか、ぶぶーという笑い声とか。梢が読んでるのが、「大どろぼうホッツェンプロッツ」なんてところも。しかし、ディスコは何で、宇野千代の桜の花びらナイフとフォークなんて持ってたんでしょう。笑 そりゃ、あんまりにファンシーだ。
目次
第一部 梢
第二部 ザ・パインハウス・デッド
第三部 解決と「○ん○ん」

「暗闇の中で子供」/物語はなぜ存在するのか、そしてどこからやって来るのか

 2007-02-26-22:49
舞城 王太郎
暗闇の中で子供―The Childish Darkness

煙か土か食い物 」の続編、お馴染み、血と暴力に彩られた奈津川ファミリーサーガ。
「煙か土か食い物」の時と同じく、表紙裏から引くと内容はこう。

あの連続主婦殴打生き埋め事件と三角蔵密室はささやかな序章に過ぎなかった!
「おめえら全員これからどんどん酷い目に遭うんやぞ!」

模倣犯(コピーキャット)/運命の少女(ファム・ファタル)/そして待ち受ける圧倒的救済(カタルシス)・・・・・・。
奈津川家きっての価値なし男(WASTE)にして三文ミステリ作家、奈津川三郎がまっしぐらにダイブする新たな地獄。
-いまもっとも危険な”小説”がここにある!

やっぱり、私は舞城さんは、この奈津川サーガが好きだー。「もっとも危険」かどうかは分かりかねるけれど、間違いなくアツい小説。

これは、奈津川家三男の三郎が語る、その後の奈津川サーガ。切れ者外科医、チャッチャッチャッチャッと物事をこなし、暴力も厭わない四郎に比べると、三郎は幾分穏やか? とはいえ、三郎も勿論あのモンスター・二郎を生んだ奈津川家の一員、普通の人に比べれば、暴力的にだってなれるし、暴力的な出来事にも随分慣れてはいるんだけど・・・。

さて、「三文ミステリ作家」である三郎は、物語について考える。この世には、現実に喜びも悲しみも楽しみも寂しさも十分に存在するのに、どうして更に作り話が必要なんだ? なぜ人は作り話、嘘を必要とするのだ? それはつまりこういうこと。

ムチャクチャ本当のこと、大事なこと、深い真相めいたことに限って、そのままを言葉にしてもどうしてもその通りに聞こえないのだ。そこでは嘘をつかないと、本当らしさが生まれてこないのだ。涙を流してうめいて喚いて鼻水まで垂らしても悲しみ足りない深い悲しみ。素っ裸になって飛び上がって「やっほー」なんて喜色満面叫んでみても喜び足りない大きな喜び。そういうことが現実世界に多すぎると感じないだろうか?そう感じたことがないならそれは物語なんて必要のない人間なんだろうが、物語の必要がない人間なんてどこにいる?まあそんなことはともかく、そういう正攻法では表現できない何がしかの手ごわい物事を、物語なら(うまくすれば)過不足なく伝えることができるのだ。言いたい真実を嘘の言葉で語り、そんな作り物をもってして涙以上に泣き/笑い以上に楽しみ/痛み以上にくるしむことのできるもの、それが物語だ。

そして、三郎は物語の来し方にも思いを馳せる。

書き手が物語を選ぶのではないのだ。物語が書き手を選ぶのだ。「選ぶ」というのも少し違うのかも知れない。それは「選択」というよりは「邂逅」だからだ。物語が偶然書き手に出会い、それからこの世に出現する。 だから、物語は真実を語る手立てになりこそすれ、作家の道具には決してならない。 物語と出会い、それが語られたがっている語り口を見つけることのできたラッキーな作家だけが、その物語を用いて語れる真実だけを語ることができるのだ。

さて、この本の中で、色々な「嘘」を用いて語られている真実とは何なのか? それはクサいけど、「愛」について。歪な愛、痛い愛、家族の愛、友だちの愛・・・・。
そして、価値なし男、三郎は自らの価値を高め、生をはっきりと捕まえる。次なる奈津川ファミリーサーガはないのかなぁ。父、丸雄とか、母、陽子で読んでみたくもある。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

「世界は密室でできている。」/密室は飛び出すべきもの

 2007-01-08-21:20
 
舞城 王太郎
世界は密室でできている。―THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS 

英題は、THE WORD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS。 ”make out”をgooの英和辞書で調べると、「…を(やっと)見分ける; (書類を)作成する; …を証明する; …を仕立て上げる ((to be)); 理解する; 主張する; ふりをする; (こまかく)描く; 〔話〕 成功する; 仲よくやる ((with)); 〔米話〕 いちゃつく; 性交する ((with))」と出てくる。〔話〕〔米話〕は関係ないとして、作成する、仕立て上げる辺りが正解でしょうか。いや、最近、英語からきしなので、make outって何だっけー、と思わず調べてしまいました。あ、あれ、でも、make out ofでは出てこないなぁ・・・。ofがついてても一緒でいいのか?

さて、本の方に戻ると、これはある意味で舞城氏御馴染みである、地方を舞台にした青春ミステリ。

煙か土か食い物 」にも出てきた名探偵ルンババ(番場 潤二郎)と、僕、西村 友紀夫の少年時から青年に至る物語。

彼らがどの位成長するかというと、パンツ丸見え天国にウハウハする十三歳(パンツ丸見え天国。これって十三歳の男子にはマジ極楽じゃないですか?セックスとかさせてくれる天国があればそっちの方が本当は素敵そうな感じだけど、でもそんなの、なんかよくやり方判らなそうだし、わざわざ天国まで来て何かに困りたくなんてないし、死んでからまでいちいち頑張りたくない)から、私と一緒にいてくれる?なんて聞いてくれて、彼を頼りにする女の子が隣にいることになる十九歳まで。

彼らの周囲には常に何らかの事件が起こっていて、手始めは、ルンババの姉、涼ちゃんの「飛び降り自殺」に、その後の、中学の時の東京への修学旅行で出会った井上 椿、榎姉妹を巡る事件や、名探偵となったルンババが手がける事件など。ルンババのハチャメチャな名探偵ぶり(有り得べからざる事件がおき、とんでもない解釈がなされ、実にそれが正解だったりする)は、舞城作品、お馴染みの事と言えるかも。

でも、例によって、間にどんな事件が起ころうとも、言いたい事は最後の部分に集約されているような気がするなぁ。作られた密室を飛び出した彼らは、前を向いて生きていく(で、でも、「煙か土か食い物」においては、ルンババって死んじゃいましたよね? あー、書いておいても内容、結構忘れちゃうんだよな。その辺、確かめなくっちゃなぁ)。

好みでいえば、これまで読んだ舞城作品の中では、「煙か土か食い物」がやっぱりまだまだ一番。
あれは凄い迫力でしたよ、やっぱり(微妙に内容忘れてもおりますが)。

 ← こちらは新書。装丁はこっちのが好みです。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

「好き好き大好き超愛してる。」/それは愛だ!

 2006-09-05-23:15
舞城 王太郎
好き好き大好き超愛してる。


「好き好き大好き超愛してる。」と、「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」
二本立て。

二編を分けるのは、舞城氏自ら描いた十数ページにわたるカラー頁。
更にこの二編は、印刷用紙も、行間もフォントも異なるという凝った作り。

「好き好き大好き超愛してる。」は、大切な人、恋人を失ってしまうお話。柿緒という恋人を、癌で失った作家の治の話。ASMAというウィルスに、身体を蝕まれていく智依子を見守るしかない巧也の話。夢の中で出会った女の子、佐々木妙子を探し続けるツトムの話。ろっ骨融合をして「神」と戦うアダムとイヴ、石原とニオモの話・・・。これらの話が、唐突に現れては消えるので、最初はちょっと面食らう。柿緒の話が何度も出てきて、ボリューム的には一番長いので、一応これがメインなのかな?

大切な人を喪ってしまう事。それに対する感情は、ただ「悲しい」という一つの感情に塗りつぶされるわけではない。たとえ失うことが最初から決まっているにしても、無駄であっても悪あがきをしたいし、それが後に嘘になることが分かっていても約束したい。こんな時はこうすべきだなんていう、客観的な判断なんてくそ喰らえ!

でもバカでいい。間違いばかりでいい。

愛し過ぎるというのはそういうことなのだ。そしてそれぐらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。

ろっ骨融合して「神」と戦うアダムとイヴの話は、ほんとに短く挿入される感じなんだけど、これ、もっと読みたかったな~。このまま一遍出来ちゃうんじゃないだろうか。世界設定が面白い。

「ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン」は、舞城氏御馴染みの、一見、血と官能と暴力に塗りつぶされたお話。でも実は、「好き好き~」よりは、最初はこちらの方が読み易かったよ。笑

東京都調布市の中学生、村木誠は世界を救う少年。彼の頭の左上には穴が空いていて、その穴にぴったり填まる角を持つ、鞘木あかなというユニコーンのガールフレンドがいる。

一方、福井県西暁市に住む加藤秀昭は、彼ら家族を襲った男によって、頭にプラスドライバーを突き立てられる。頭の穴を共有したせいか、彼の意識はなぜか村木誠の意識と同化してしまう。また、村木誠が住む調布においては、空にはプラスドライバーのような、調布タワーが突き刺さっている。この関連性は如何に?

彼の頭の穴を埋める角としての、鞘木あかなの特別性を失ってしまった村木誠に、敵として(第1937号エネミー)鞘木あかなが立ちはだかる。


そうだなー、「好き好き大好き超愛してる。」は、最初はほんとに面食らったし、んー、今ひとつ?と思ったんだけど、後になった方がじわじわと面白かったー!と思う物語であり、「ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン」は、このぶっ飛びぶりが私は好きでした。今ひとつ、深読みは仕切れませんが・・・・。

多少マイルドな「好き好き大好き超愛してる。」や「阿修羅ガール 」よりも、どうも私は少々ハードな「煙か土か食い物 」や、ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン」の方が読み易いよう。いや、「九十九十九 」までイッてしまうと、あれはあれで辛いんだけど・・・。

「煙か土か食い物」の続編、暗闇の中で子供」もその内読まなくては。

← 煙か~」と同様、PB風。スタイリッシュ?

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「九十九十九」/世界を構築するのは誰だ

 2006-05-23-21:45
舞城 王太郎
九十九十九
講談社ノベルス


これはねえ、読み通すのにすっごい努力が必要でした・・・。読み終わった後も、感想も上手く言えないし、面白かったかどうかというのも微妙。
なんせ「努力」が必要になった物語ですからね・・・。

以下、カバー扉からの引き写し。

「苦しさを感じるなら、僕なんて愛さなくていいんだ」
聖書/『創世記(ジェネシス)』/『ヨハネの黙示録(アポカリプス)』の見立て連続殺人を主旋律に、神/「清涼院流水」の喇叭が吹き荒れる舞台(ダンスフロア)で踊りつづける超絶のメタ探偵・九十九十九の魂の旅が圧倒的文圧で語られる。
”世紀の傑作”はついに王太郎の手によって書かれてしまった!
「ハァレルゥヤ!」

目次
第一話
第二話
第三話
第五話
第四話
第七話
第六話

目次の順番、これ、私の写し間違いではないのです。1→2→3ときたら、当然次は4でしょう、と思うのに、5と4は入れ替わり、更に6と7も入れ替わっている。この御蔭で、途中から、「オリジナルの僕」に「二人目の僕」や、「別の僕」なんかが出てきちゃって、まー、読むのに苦労するんです。

さて、第一話から第七話までの主人公は全て、「九十九十九」というこの一風変わった名前の青年。一話一話はそれぞれ完結したストーリーであり、「同工異曲」とでもいうのかなぁ、それぞれの「話」における九十九の体験が語られる。例えば、二話においては、「一話における、これこれは実は本当に起こった事ではない」が、「これこれは実際に起こった事である」というように、一部は重なり、一部は嘘であるとされながら、全体としての話は進行していく。

さて、全体を通して設定が同じなのは、主人公、九十九に関すること。

 ・「九十九十九」というのは美しすぎる人間に付けられる名前で、ここに出てくる九十九も、サングラスを掛けていないと、彼を見た人が笑みを浮かべて失神する程に美しい人間である。
(このせいで、九十九は自ら、顔の肉を削ぎ落としたりもする。後で、縫い付けてたけど)
 ・九十九は過去、両目をくり貫かれ、鼻を削がれ、耳を削がれた事がある
(この設定のせいで、九十九の目玉は良く取り出される)
 ・九十九には「寛大・誠実・正直」という名の三つ子がいる
 ・全ての回で名前は異なるけれど、愛する女性がいる(三つ子の母親)
 ・ツトムという名の弟がいる

綺麗は汚い、汚いは綺麗。「見た人が失神するほど美しい」なんてことは、本来はありえない筈。それは一体どういうことなのか。全ては脳の見せるまやかしなのか。

ラストの第六話まで読めば、一応全ては繋がるんだけど、読後感は「分かったー!」というよりも、どっちかというと呆然。や、「努力」を強いるものとはいえ、このストーリーでここまで作り込む能力は流石、と思うけど、一番最初にこの作品を読んでいたら、舞城作品、読むのを諦めていたなぁ、と思う。ボリュームといい、話のクドさといい、エグさといい、結構苦痛でした。マゾ的読書だったかも?

ああ、そうそう、あと、「講談社ノベルス」がバリバリ出てくるんですが、私は京極氏くらいしか読んだ事がなく、その辺のネタはあまりよく分かりませんでした。ま、大勢に影響はないと思うんだけど。

舞城氏が純文学に分類されるのは(えーと、されてますよね?)、「自意識」を良く扱うからなのでしょうか。「自意識」って結構グロテスクなもんだから、真っ当に取り組むと、こんな恐ろしいものになってしまうのかなぁ。「自意識」ってモンスターだ。

「煙か土か食い物」/それもまた家族の形

 2006-05-10-21:19
?
舞城 王太郎
煙か土か食い物 ?
講談社ノベルス

本の裏から長々と引いてしまいますが、この本の内容はこう。

アメリカ/サンディエゴ/俺の働くERに凶報が届く。
連続主婦殴打生き埋め事件。被害者は俺のおふくろ。
ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!

腕利きの救命外科医・奈津川四郎が故郷福井の地に降り立った瞬間、血と暴力の神話が渦巻く凄絶な血族物語(ファミリー・サーガ)が幕を開ける。
前人未到のミステリーノワールを圧倒的文圧で描ききった新世紀初のメフィスト賞/第19回受賞作。
「密室?暗号?名探偵?くだらん、くたばれ!」

謎の連続主婦殴打生き埋め事件は起こるわ、その地点をプロットしていくと、「ベリートゥルーリーエレガント」な図形は現れるわ、さらにさらにその図形のゼロ地点には空の棺桶が埋まっているわ、まぁ、ミステリーといえばミステリーではあるんだ、名探偵だって出てくるしね(最後、死んじゃうけどさ・・・)。でも、そう、これは裏にもある通り、「密室?暗号?名探偵?くだらん、くたばれ!」な物語なんである。

それでは一体何の物語なのかというと、これはきっと「凄絶な血族物語(ファミリー・サーガ)」である家族の物語。

主人公の名「四郎」があらわす通り、四郎は奈津川家の四兄弟の末っ子である。政治家である父、丸雄は奈津川家に君臨する暴君であり、四兄弟はみな彼の暴力に晒され、今回の殴打事件の被害者である母陽子は、類まれな美しい女性ではあるものの、夫の暴力を止める事も出来ない無力な存在であった。

さて、地元の名家である奈津川家には、四郎の曽祖父にあたるドイツ人、奈津川ハンスが残した風変わりな三角形の蔵があった。その蔵は、かつて祖父大丸が自殺した呪われた場所であり、四郎たち兄弟が罰として閉じ込められる場所でもあった。四兄弟の中でも、一番の問題児であった二郎は、頻繁にこの呪われた蔵の中に閉じ込められ、この蔵を「俺の別荘」と嘯いていた。そして、二郎が十七歳のとき、彼はいつものように閉じ込められていたこの密室の闇の蔵から、忽然と姿を消したのだ。

四兄弟、一番の問題児の次男、繰り返される父からの暴力、父や母の歴史までもが詳しく語られる様、呪われたオカルトチックな場所が現れる所には、こちらは救いようのないノンフィクションではあるけれど、マイケル・ギルモアの「
心臓を貫かれて 」を思い出した。心臓を貫かれて」は悲劇的な結果に終わるけれど(というか、これはそもそも悲劇があって、書かれた本だからな)、こちら、煙か土か食い物」はそうではない。最後はちょっとじーんとする。

子供を愛さない親はいない。でも不幸は起こる。この世のどこかに必ず不幸は起こっている。大丸と丸雄の間や丸雄と二郎の間で起こった暴力的諍いがそうだった。成長過程で受けた暴力の傷が基盤になってそこにいろんな意味でのすれ違いが重なりすぎたんだろう。悲しむべき出来事だ。でもそれは俺や一郎や三郎や、その他の人間にも責任があるんだ。俺たちはそれを背負ってなんとかやっていかなくてはならない。一日一日を生き延びなくてはならない。もちろん罪は罪だが罪というものは許されなくてはいけないし罰なら誰にとっても十分に当たっているといえるんじゃないのか?孤独と苦痛と不信と無感覚。

暴力の連鎖、怨嗟の連鎖はどこかで誰かが止めなければならない。圧倒的な暴力になど晒された事のない自分ではあり、またこの作品は思いっきりフィクションではあるけれど、どこかで起こっているであろう不幸な連鎖が止まる事を願う。

俺達は今日と明日と明後日とその後を生きていかなくてはならないのだ。昨日とか一昨日とかその前じゃなくて。

舞城作品って、フリルがごちゃごちゃ付いてるけど、言ってる事は実はとってもシンプルなんだね。でも、この装飾過剰ぶりも私は嫌いではない。今回のはもうちょっと句読点を打って欲しかったけど。笑

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

 ← 文庫もあるみたい。これが噂のMaijoだ、ですよ。

☆その後に読んだ、続編の「暗闇の中で子供」の感想はこちら
→ 
「暗闇の中で子供」/物語はなぜ存在するのか、そしてどこからやって来るのか

「煙か土か食い物」とはまた違うリズムで語られるんだけど、こちらもまた面白かったです。

「阿修羅ガール」/混乱、混沌、迷宮

 2006-04-22-14:33
舞城 王太郎
阿修羅ガール

舞城さん、初読みです。で、これが面白かったかというと、ちょっと微妙。最初はふんふんと読んでいて、途中放り投げそうになりつつも、最後、形が見えてくると、それに興味を持って読み通しちゃったという感じ。最初に比べると、最後は妙に綺麗に収まってしまっているなぁ、とは思うものの、後数冊は読んでみないと、この作家の雰囲気を理解したとは言えないのかも。

と思っていたら、tujigiriさんも、ほぼ同様の意見を述べておられました。
 ◆tujigiriさんの記事はこちら
   →「阿修羅ガール」舞城王太郎 / 摩訶不思議な自閉空間

とら
さんが取り上げられておられた、こちらの本も気になるところ。
 ◆とらさんの記事はこちら
   →世界は密室でできている』 ちょっとシュールな青春小説


さて、この物語は、アルマゲドン三門JUMPSTART MY HEARTの三部構成で描かれる。 第一部「アルマゲドン」では、女子高生アイコの日常が、彼女の超口語体で語られる。時々、人生の真理が顔を覗かせるものの、ま、アイコは基本的には感情のおもむくままに、時々反省したりしつつも、彼女の人生をゆく。

ただの学園物、少女の生活を描いたものか?と思うと、物語は段々きな臭くなってくる。舞城さんの小説では、人が沢山死ぬのが決まり事なのかな。まずは、冒頭でアイコが好きでもないのに、やってしまった事を反省していた、佐野明彦が忽然と姿を消し、足の指とともに身代金の要求が彼の家に届けられる。更に更に、彼女の住む調布では、それ以前に「グルグル魔人」なるものの手による未解決殺人事件があって・・・。これを中学生の手によるものと決め付けた、インターネット掲示板《天の声》メンバーによる、キッチン(厨房)狩りが始まり、調布アルマゲドンが告知される。

さて、第二部にあたる「三門」。ここを乗り越えるのが一番辛かった。あと、時々フォントが異常に大きくなって、ビックリしたりもする。であるけれど、第一部を読んで、この先に少しは興味がある人は、このまま読み進めることをオススメします。要はアイコの心象風景が延々と続くので、「今までの謎は?」と思うと、頭の中が「????」になってしまう。

三部「JUMPSTART MY HEART」。物語はアイコの現実へと戻ってくる。色々あって、幾分か悟って賢くなったアイコがそこにいる。第一部の弾けた口調に慣れてしまったので、「あれ?これアイコ?」とも思うんだけどね。

何故なら私がこうして生きて、お兄ちゃんたちと暮らしたり、陽治のことを思ったり、陽治以外の人とエッチしちゃって虚しかったり、意味ないことで喧嘩したり、死んだり、蘇ったりすることが、私は本当に楽しいからだ。楽しい、と感じている気持ちは本当だから、それなら結局全部オーライなのだ。オールオッケー、問題なし。私は自分の存在を疑うことすら楽しんでいる。人間、楽しむということが最優先だし、そう心がけなくても、最優先してる。苦しんでる人は、その苦しみを楽しんでるんだし、頑張ってる人はその頑張りを楽しんでる。人が今やってることが、その人の選んだ、自分にとって一番楽しいことなのだ。うんうん。

霊能者、桜月淡雪のお茶会は羨ましいな~。自分で焙じた熱いほうじ茶と、丁寧に出した冷たい緑茶に、手作り和菓子を外で食べられるんですぜ。しかし、とうとう行方が分からない、佐野君は憐れである、と思う。

←文庫化もされています。
舞城 王太郎
阿修羅ガール

帯を見て成る程。私は女子高生青春物と読んだけれど、これって、一応恋愛小説でもあるのか。「恋愛物」のイメージからは、ファーフロムであるとは思うけど。笑 人が沢山死ぬとはいえ、ミステリーとも思えないんだよな。舞城さんが書かれる小説は、通常どこに分類されるのかな。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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つな がる

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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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