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「非道、行ずべからず」/非道とは何か

 2009-04-02-23:10
非道、行ずべからず非道、行ずべからず
(2002/04)
松井 今朝子

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火事に遭った中村座の楽屋裏から出て来たのは、見知らぬ老人の死体だった。老人は火事で亡くなったわけではなく、首を絞められ、行李に入れられていた。

場合によっては中村座自体が取り潰しにあうことだってある。太夫元である十一代目・中村勘三郎は、北町奉行所同心・笹岡平左衛門と、同心見習の薗部理市郎の取り調べに応じるのだが・・・。

老人は、楽屋に出入りする、担ぎの小間物屋の忠七であった。楽屋に出入りする者を知らないはずのない、楽屋頭取の七郎兵衛はなぜ知らぬ存ぜぬを通したのか。この殺人は、三年前の火事で亡くなった、幼い姉妹に関係するのか。

更に殺人は続く。同心の命を受け、事件を探っていた座敷番の右平次が殺され、また、頭取の七郎兵衛は自害を装って殺される。おぼろげに見えてくるのは、中村座の立女形、三代目荻野沢之丞の襲名を巡る、荻野家の争い。名跡、沢之丞は、長男市之介のものとなるのか、また生意気な弟、宇源次のものとなるのか。

忠七、七郎兵衛、右平次に共通するものとは何か。連綿と続く芝居者の世界。一つの嶮しい道を行くならば、一筋にその道を歩む者を大事にすると同時に、芸の道を外れて非道を行うことを堅く忌む。「非道」を行ったものとは誰なのか。

勘三郎が語る芸の道もわかるけれど、三日月の旦那、笹岡の言葉もまた沁みるのです。

「狭い一本道を大切に思うあまり、人は往々にしてまちがいを犯す。狭い道にこだわって、人間(ひと)としての大きな道を踏みはずすんだ。俺にいわせりゃ、それこそが、非道を行ずってェもんだぜ」  (p343より引用)

さて、犯人なんですがー。わたくし、ほとんど最後になるまで分かりませんでした。後で考えると、とってもフェアに書いてあるんですけど。ミステリー部分もしっかりしてるんですが、そこはそれ、黙ってついていけば、きちんと犯人の元に辿りつくわけですし(しかも、松井さんの語りはとっても巧みだし)、むしろ芝居の世界や、芸の道の話なんかが面白かったです。

還暦を過ぎた女形、沢之丞のとんでもない迫力が、とっても印象的でした。二人の息子に舞の稽古をつけるところなんか、圧巻でしたわー。もう一人、忘れてはならないのが、こちらは「出たな、化け物」の、沢之丞の弟子、虎魚(おこぜ)の荻野沢蔵。女形としては、頂けない御面相のようですが、立役としてはいけるのでは、との師、沢之丞の見立て。右平次亡きあと、沢蔵が笹岡たちの手先となるんですが(右平次とは違って、すっごい嫌々なんだけど)、いつもつるんでいる、瀬川菊江、岩井乙女などの同じくいまいちな女形たちとの話なども楽しいんです。

ラストの笹岡のセリフでん?、と思って探してみたら、微妙にリンクした「家、家にあらず」という、沢之丞の若き日のお話があるんですね。沢蔵が華麗に立役に転身して、売れっ子となって事件を解く、なんて話も読みたいなー、と思いました。松井さん、書いてくれないもんでしょうか。私、沢蔵が気に入っちゃったんです。

↓文庫も
非道、行ずべからず (集英社文庫)非道、行ずべからず (集英社文庫)
(2005/04)
松井 今朝子

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「狂乱廿四孝 」/幽霊画が語る物語

 2006-08-28-22:17
北森 鴻
狂乱廿四孝
(画像は文庫より引きましたが、私が読んだのは単行本です)

一枚の幽霊画に隠された謎。

脱疽におかされ、両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた、明治始めの名立女形・沢村田之助。彼の周辺で殺人や放火が相次ぐが、これには一枚の幽霊画が関係しているようで・・・。芝居町を守るため、守田座を守るため、そして田之助を守るため、座付き作者河竹新七のもとに弟子入り中の、ヒロインお峰は立ち上がるのだった。第六回鮎川哲也賞受賞作

沢村田之助はじめ、大道具方・長谷川勘兵衛、問題となる幽霊画を描いた狂画師・河鍋狂斎、守田座の座付き作者・河竹新七(のち、河竹黙阿弥)など、実在の人物を上手く絡めたミステリー。

話としては面白いし、女形・沢村田之助の凄惨とも言える芝居への思いには心打たれるんだけど、解説にもちらりとあったように、時代色が綺麗についているとは言い難い。ヒロインお峰ちゃんも実に愛らしいけど、この時代のこの場所に、こんな風に存在し得たとは思えないしね。

実はこの「幽霊画の謎」については、早々に投げ出してしまって、田之助やその周囲の人々、歌舞伎の世界を楽しんでしまった。田之助の色っぽさ、また芝居もの達の熱気がむんむん迫ってくるような物語だったよ。

ところで、ネットをウロウロさまよっていたら、皆川博子さんが同じ題材で書いておられると思われる本を見つけました。うーむ、こちらも読んでみたいなぁ。皆川さんの芝居の世界、「花櫓 」でも面白かったし。

皆川 博子
花闇

☆澤村田之助について (Wikipediaにリンク

「鳥少年」/怖い短編集

 2006-07-16-21:27
皆川 博子
鳥少年

これは、皆川博子さんの短編集。
幻想的でホラー調でもあるんだけど、ここに描かれているのは、人間の業というか、どうしようもない感情。ある意味現実的なんだけど、短編だけに説明が少なく、ぷつんと断ち切られるために、より怖さを感じるのかも。

目次
火焔樹の下で

血浴み

黒蝶
密室遊戯
坩堝
サイレント・ナイト
魔女
緑金譜
滝姫
ゆびきり
鳥少年

」、「黒蝶」は、芝居者達のじっとりした舞台裏の話。女形の嫉妬は怖い。
緑金譜」、「滝姫」は、姉への密かな思慕を描く。

作品としての出来は良く分からないけれど、「血浴み」は描かれた女性の人生が哀しい。地方都市の名家の末娘、夏代は離婚して子連れで郷里に戻ってきた女。その後も、父親を決して明かさない、またそれぞれに父親の違う子どもを、ぽこぽこと産む。淫乱だと後ろ指をさされても、夏代には夏代なりのルールがある。夏代のもとに、詩の文芸誌で知り合った須賀という女が、やって来る。夫に離婚を切り出され、また浮気相手にも捨てられた彼女はボロボロ。しかし、泣ける彼女はいい。泣けない夏代とて、男に捨てられて、決して平気なわけではない。

魔女」もまた怖いなぁ。
独りの女が深夜、部屋にこもっているとき、どんな力を持つものか、男は知らないのだって。魔女達の対象である、美容師見習いの六也が健全なだけに、この怖さが際立つ一編。

」、「密室遊戯」は何とも隠微な味わい。

」。夫の浮気を知った依子は、年の近い叔父の結婚式で知った、叔母のつよさに惹かれ、叔母の住む町へと向かう。以前、人形作りをしていたという叔母の元には、既に先客があった。それは、睡眠薬で眠らされた二人の若い男性。叔母は、眠る若い男性に化粧を施す。美しく、艶かしく、汗ばんだ無骨なTシャツとジーンズの上に、男とも女ともつかぬ艶やかな顔が眠る。依子もまた、その魅力に酔うが・・・。

密室遊戯」。「わたし」が住む部屋は、肉屋の二階を三間に仕切ったもの。ある日、「わたし」は隣の部屋から明かりが漏れていることに気付く。隣の部屋の女の生活を覗き見る喜びを知った「わたし」は、女に教えられた甘美な遊びに酔う。隣の女もまた、覗かれる事を知って、「わたし」に遊びを教えたのかもしれない。

のほほんと生きているので、こんな怖い経験はないのだけど、一つのパラレルワールドとして、自分の現実の他に、こんな世界が実は成立しているのかも、と思うと、更に怖い本。うーむ、暑い夏にちょうどいいか? ちょっとぞぞぞ。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「花櫓」/芝居者たちと少女の恋

 2006-06-09-21:29
 
皆川 博子
花櫓 

これ、面白かったー! 皆川博子さんは、色々な設定で書けちゃうんだなー。
以前読んだ「死の泉」は第二次大戦下のドイツを舞台にしていたけれど、こちら、花櫓」は江戸時代の歌舞伎、芝居者の世界を描いている。

歌舞伎の世界を全て理解出来たとは思えないんだけど、芝居者達の世界、「櫓」にかける思いには胸が熱くなる。あったり前なんだけど、中村勘三郎、市川団十郎、市川海老蔵、松本幸四郎など、見知った名前が出てきたりね。歌舞伎の一門に生まれるということ、連綿と続く伝統の世界に身を置くということは、やはり特別な重みがあることなんだろうなぁ。普通の世界とはきっとまったく違う世界。

お菊とお珊の二人は、中村座の座元の娘。二人の父は、八代目中村勘三郎。お菊は妾の、お珊は正妻の娘であるが、正妻の病が篤く、お菊の母が内内の事は取り仕切る日々。大人の思惑が渦巻く中、二人の少女は案外孤独であり、近づいたり反発したりしながら、それでも互いに唯一の味方として生きる。

また、子供の頃は芝居の楽しさ、煌びやかさしか見えなかったけれど、少女達は既にその裏側も存分に知っている。役者の世界は華やかなだけではない。地代は滞って、座元の内情は火の車であるし、歌舞伎役者は色づとめとも無縁ではない。少女達とほとんど年の変わらないあどけない伝九郎、美しい七三郎。彼らもまた、色子をこなして、役者としての色気を手に入れている。

俗にいう江戸三座。公許の櫓を上げられる小屋は、江戸に三つしかない。江戸に見世物、芝居は数あれど、三座の他は、野天の掛小屋でなくてはならぬのだ。
ここに野心を抱えた一人の若者がいた。<馬場の芝居>の若、源次の夢は、祖父が果たせなかった夢を果たす事。いつか三座のように、芝居町・二丁町で、良い役者を揃えて、大芝居を打つのだ。

彼ら芝居に魅せられた若者たちが、恋に、夢に生き、成長していく。少女だったお菊は、中村座座元のおかみに、お珊もまた揺れる不安定な時期を通り過ぎる。

櫓を上げるのは、江戸中の人たちに恋文をおくるようなもの。彼らの気持ちは、きっと届くはず。ただし、その内幕は、人々に分からなくとも良い。ただただ、芝居を楽しんで貰えれば・・・。しかし、その内部に生きる者達の姿は凄まじい。でも、この凄まじさがあるからこそ、内部に生きる者達の人生が濃密なのだろう。

すっごい面白かったのだけれど、うーん、この感動を上手く言い表せないな~。
残念無念す。

 ← こちらは講談社文庫
皆川 博子
花櫓 
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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