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「魂萌え!」/萌えよ魂、出でよ見知らぬ私

 2007-02-15-22:21
 
桐野 夏生
魂萌え ! 

関口敏子五十九歳。子供二人は既に家を出て、退職した夫と二人で暮らす、慎ましいけれども平凡な日々。六十三歳の夫もまだ若い。まだまだ二人の生活が続くのだと思っていたのだけれど・・・。

目次
第一章 混乱
第二章 夫の秘密
第三章 家出
第四章 人生劇場
第五章 紛糾
第六章 水底の光
第七章 皆の本音
第八章 嫁の言い分
第九章 手帳の余白
第十章 妻の価値
第十一章 夜の惑い
第十二章 燃えよ魂、風よ吹け

持病もなかった夫は、ある日突然倒れてそのまま逝ってしまった。敏子の混乱に輪をかけるように、夫の十年来の愛人の存在が明らかになり、また、アメリカに行ったきりだった息子の家族が突然同居を提案するなど、敏子の心は千々に乱れる。夫とのこれまでの生活は何だったのか、自分はこれからどうやって生きるべきか。心は揺れ、言動もまた揺れ、時に揺り戻す。

これまでしなかったことをしようと、独りで今後の事を考えるためにカプセルホテルに泊まれば、凄まじい人生経験を持ち、今ではカプセルホテルに棲むつく老女と知り合いになり(そして、金をせびられ)、夫の隆之が入っていた蕎麦食べ歩きの会に誘われてみれば、メンバーの塚本によろめき、また思いもかけぬことに夫の愛人と対決めいた事になったり。仲の良いグループだと思っていた高校時代の友人三人とも、寡婦の栄子の気持ちは分かるものの、家族持ちの和世や美奈子とは何だか距離を感じたり。

息子とて、アメリカに行ったきり、帰国したのは夫隆之の葬式が初めて。アメリカで結婚した嫁、生まれた孫とも、ほぼ見知らぬ他人である。なおかつ、息子、彰之はあちらで始めた古着屋に限界を感じ、日本に戻ってきて、隆之亡きこの家に寄生するつもりらしい。娘、美保とて、年下の彼氏、マモルとの同棲生活も長いけれども、コンビニの店員同士では、将来は難しい。

知人、友人、隣人、袖擦り合うも、の他人、血を分けた子供たち。当たり前だけれど、全て彼らは自分ではない。時に分かり合え、手に手を取り合ったりしても、反発する事だってあるし、嫌な思いだってする。それでもきっと、死んでいるように生きているよりもずっといい。慎ましやかな奥さん、毒にも薬にもならない敏ちゃん。敏子は隆之の影に隠れてこれまで知らなかった世界を知り、周囲の人間とももっと踏み込んで付き合えるようになる。時に図太くなりつつも、ね。専業主婦、関口敏子の冒険、萌えよ、出でよ、敏子の魂、という感じかなぁ。

しかし、これは作者が「あの」桐野さんであることから、怪しげな人物が出てくるたびに、ドキドキしながら読んじゃいましたよ。怪しげな人物はそこここにいて、人間の欲望を剥き出しに抉り出した恐ろしい『ダーク』のように、敏子が身包みはがされたり、酷い目に遭うんじゃないか、と気が気ではありませんでした。でも、新聞連載だったからか、意外と穏当で前向きなお話でした。私は無駄にドキドキしながら読んじゃったし、単行本の表紙はえらく派手なんですけどね。
   ←文庫も
 ←こちらでは、お馴染み村野ミロが酷い事になってます・・・
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「ローズガーデン」/混沌の中にあるもの

 2005-10-24-09:13
桐野夏生「ローズガーデン」

村野ミロシリーズの、何だか気だるい短編集。
ミロの前半のシリーズ、「顔に降りかかる雨」などに見られるハードボイルド色よりも、混沌として妖しい気配に満ち溢れた「ダーク」よりの物語。

目次
ローズガーデン
漂う魂
独りにしないで
愛のトンネル

■「ローズガーデン」
ミロの夫、博夫はインドネシアで、僻地への営業を勤めながら、高校時代のミロと自分を思う。年上の女とばかり付き合っていた博夫は、ミロの持つアンバランスな気配に気付く。

ミロが俺の目をじっと見つめた。冷めていて熱い。そこに見え隠れする関心と無関心。ああ、こいつもやはりあの手の女だ。間違いない。

誘われて訪れた、ミロが父親と二人で暮らす家には、荒れ放題の庭のそこかしこに薔薇が咲き乱れていた。ミロの言葉に背徳を覚え、そのインモラルさに興奮する博夫。
ミロと結婚することで、博夫はミロの昼も夜も手に入れるが、愛した混沌を永遠に失ってしまった博夫は、それを求めて彷徨う事になる。

ここで高校時代のミロが話すことが真実なのかどうか、それはどちらにもとることが出来るように思う。村野ミロのデビュー作、「顔に降りかかる雨」では既に自死を選んでいる博夫
「ローズガーデン」はミロシリーズに更に妖しい奥行きを与える物語。
混沌としたジャカルタの描写もいい。

■「漂う魂」
ミロの住むマンションに幽霊騒ぎが持ち上がる。探偵業を営むミロは、管理会社から幽霊騒ぎの調査を正式に依頼される。

人の悪意の怖さを感じるお話。

■「独りにしないで」
ある夜ミロは、あまりにも不釣合いなカップルに出会う。女は類稀れな程美しく、男は平凡で地味で冴えない。びっくりするほど美しい女は、中国人のホステスだった。偶然、冴えない平凡な男・宮下に再会したミロは、美しい女「有美」の気持ちを確かめて欲しいと依頼される。他人の気持ちを計るのは不可能だと、依頼を断ったミロだが、一週間後宮下は殺されてしまう。宮下は一体何に触れてしまったのか?

ミロが受けていた他の依頼の話も絡め、「愛」の難しさを描く。

■「愛のトンネル」
ホームの巻き添え転落事故で、娘、恵を亡くしたばかりの男性が、ミロの事務所にやって来た。平凡に暮らしているものとばかり思っていた娘が、なんと「女王」業で貯めた二千五百万円で、SMクラブの経営権を購入していたのだ。ミロは男の妻と末の娘が恵のアパートを片付ける前に、「その手の物」を取り除いておくよう依頼される。
ごく簡単な仕事のはずだったのに、後手に回ってしまったミロは、荒らされた恵の部屋と対面することになる。父親から見ると、天使のように優しく、おとなしくいい子だった恵。

「天使のような」彼女の優しさは、何に向けられていたのか。
彼女の周囲の人々は、その「優しさ」をどう受け止めていたのか。
*******************************************
どれもこれも、人の心の複雑怪奇さに迫るような物語。
すっきりするような話ではないのだけれど、たまにはこんな心の中を覗いてみるのも悪くはないかもしれない。ただし、一編一編は短いけれども、どれもこれも結構ずーんと来ます。

桐野 夏生
ローズガーデン

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

評価の基準/「グロテスク」

 2005-04-11-14:00

桐野夏生「グロテスク」

東電OL殺人事件に着想を得たと思われる物語。自己の存在意義をかけ、
もがく人々を描く。

高校の同級生だった「わたし」と和恵。「わたし」の妹で、怪物的な美貌をもつユリコ。高校時代、「エリート達」に認められようと必死だった和恵。ユリコはその美貌だけをもって、「エリート」に認定される。時が過ぎ、和恵は一流企業に勤務しながらも、女としての評価を得るために、夜毎街に立ち春を鬻ぐ。同じく街娼となったユリコ。和恵とユリコは娼婦として殺害される。なぜ二人は娼婦となり、殺害されたのか。「わたし」が語っていく。

これは本当に怖い怖い本だった。人間の嫌な部分が沢山書かれていて、誰もがどこか、当て嵌まる部分を持つのではないかと思う。
従順、協調性、優しさ等が、他者から見た際に重視される女性の世界。 さらに容姿や学歴など、シビアでいながら、明文化されていない基準は沢山ある。小中学生であっても、区別の基準が数多くあって、女の子のグループは形成されていく。
男性よりも女性の方が様々な評価にさらされていると思うのだけれど、最近は男性も容姿で評価されたりもするのだろうか。

唯一自己から離れた冷徹な目を持った、ユリコは醜くなり殺されてしまった。
私がこの本を怖いと思ったのは、この堕ちていく和恵にシンクロする部分があったからだと思う。何せ自称元優等生なもので。和恵のような行動に出ることはないけれど、いつまでも「評価」というものを求めてしまう気持ちも分かる。
結局、人の決めた相対的な土俵の上で戦っている限り、人は幸せにはなれないのだなあ、と思った。
足るを知ることは、しかしながら、大変に難しいこと。

しかし「東電OL殺人事件」関係の本は沢山出版されているわけで、あれから随分経ってはいるけれど、皆この事件に何か引っ掛かりを感じるのだよな、と思った。「昼はOL、夜は娼婦」なんて言葉に惹かれるオジサン的興味を別にしても。


著者: 桐野 夏生
タイトル: グロテスク

ところで最近、桐野夏生さんがとっても怖い。「ダーク」を読んで、ミロが!ミロが!(あ、トモさんも!)、と思い、何でこの人、こんなことまで書いちゃうのだろう、と呆然と致しました。精力的に創作活動されていることは確かだと思うのですが・・・。うーん、脱落してしまうかもしれません。「残虐記」は読んでみたいなあ、と思っている。

takam16さん【本と本屋と図書館に魅せられて】は、こちらの記事 で、角田光代著「対岸の彼女」を読み、『「対岸の彼女」&俺は男だぁー!!』と叫んでおられます。何でも「対岸の彼女」は、「女性がテーマの物語。編集者はみな女性」とのことであります。こちらを読んだら、自分はどう感じるのかなあ、と思いました。takam16さん曰く、「対岸の彼女」の感想は「読み手の年齢、職業、結婚暦、そして学生時代の過ごし方などの体験の違いでまったく異なるはず」とのことです。面白そうではないですか。

その後、読んだ「対岸の彼女」の感想をこちら にリンク。
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つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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