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「恋愛嫌い」/レンアイはそんなにエライか

 2009-02-16-23:56
恋愛嫌い恋愛嫌い
(2008/10)
平 安寿子

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気だるげなおねーさんが迫力の表紙です。お腹辺りがなんともリアルだな~、と。
目次
恋が苦手で……
一人で生きちゃ、ダメですか
前向き嫌い
あきらめ上手
キャント・バイ・ミー・ラブ
相利共生、希望します
恋より愛を
年齢も職業も異なる三人の女性。飲食店でたまたま相席になったことをきっかけに、仲良くなった彼女たち。仕事が違うから利害関係だって全くない。ランチを共にするだけの、程よい距離を保つ彼女たちに、共通して言えるのは、真っ直ぐ、正直だということ。だからこそ、恋愛至上主義が蔓延る世の中で、少々生きにくく感じたりもする。

●田之倉喜世美
…コンタクトレンズ販売店フロア主任、二十九歳。
 「恋が苦手で……」、「あきらめ上手」
●二宮翔子
…販売データ処理会社社員。二十六歳。HN mog。
 「一人で生きちゃ、ダメですか」、「キャント・バイ・ミー・ラブ」
●矢代鈴枝
…スナック菓子メーカーベテランOL、三十五歳。
 「前向き嫌い」、「相利共生、希望します」

イロイロと、彼女たちの女心を惑わす出来事もあるのだけれど、結局、彼女たちが選ぶのは、「それが自分らしいか?」ということ。奇跡的に感じの良い眼科医に言い寄られても、プチ成金に言い寄られても、ちょっとずれた後輩に好意をほのめかされても、揺らぎはすれど変わりはしない。

だから、最終章の「恋より愛を」が少し唐突にも思えてしまうんですが・・・。

信頼。
これより得難いものが、この世に二つとあるだろうか。

それでも、奪ったり食いつくしたりしない、レンアイだってあるはずなのだ。女性誌では、モテ特集なんかがやっているわけだけれど、それでもみんなが恋愛至上主義というわけじゃないよね。平さんは、等身大というか、自分の隣にいそうな女性を描くのが巧いよねえ。彼女たちのランチに混ぜてもらいたくなりました。

■関連過去記事■
セ・シ・ボン」/女子の生きざま
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「変愛小説集」/岸本佐知子さん、編

 2008-11-17-23:43
変愛小説集変愛小説集
(2008/05/07)
不明

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目次
五月   アリ・スミス
僕らが天王星に着くころ   レイ・ヴクサヴィッチ
セーター   レイ・ヴクサヴィッチ
まる呑み   ジュリア・スラヴィン
最後の夜   ジェームズ・ソルター
お母さん攻略法   イアン・フレイジャー
リアル・ドール   A・M・ホームズ
獣   モーリーン・F・マクヒュー
ブルー・ヨーデル   スコット・スナイダー
柿右衛門の器   ニコルソン・ベイカー
母たちの島   ジュディ・バドニッツ
 編訳者あとがき
愛にまつわる物語、十一篇。恋愛至上主義への意趣返しのはずが、編訳者、岸本さんも書かれているように、これが意外とピュアな愛の物語になっているのです。

私が好きだったのは、「五月」、「まる呑み」、「リアル・ドール」、「柿右衛門の器」、「母たちの島」。

突然、近所の家の庭にある木に恋してしまったわたし。「わたし」視点と、わたしが共に暮らす「私」視点がいいんだー(「五月」)。

近所の素敵な男の子、クリスをまる呑みしてしまった私。私の中に入ってしまったクリスとの、エロティックな日々が始まるが…(「まる呑み」)。

妹が持つバービー人形と付き合っている僕。妹の目を盗んでの逢瀬。妹の酷い扱いにも関わらず、バービーは妹のことをすっごくいい子というのだが…(「リアル・ドール」)。

本物の磁器とは、牛を感じるものでなくては。ルーシーの大伯母、パーチ夫人はそう言うのだった。子供のころから絵の巧かったルーシーは、長じて陶芸も嗜むようになった。「牛を感じる」磁器を作り上げた後に、彼女が作ったのは…(「柿右衛門の器」)。

この島は母たちの島。戦争により島を出て行った男たちは、とうとう戻ってくることはなかった。しかし、ある日違う男たちがやって来る。私たちの父親となった彼らは、再び島を去り、島はまた母たちの島となった(「母たちの島」)。

岸本さんの訳はどこか品があるんだよねえ、と書こうと思ったんだけど、この筋を書いていると、お話としては品とかそういう問題じゃないのもありますね。愛情がねじ曲がって、ちょっとホラーなところに着地しちゃったものもあるしなぁ。

突然、体が宇宙服に覆われ、最終的には宇宙へと旅立って行ってしまう、「僕らが天王星に着くころ」もその発想が面白かったし、ごく短い「セーター」、「獣」も当たり前の世界に、ぽーんと怖いものを持ってくるところが面白かったです。「お母さん攻略法」はこりゃまた随分とブラックだし(考えてもみてください。成熟した、経験豊かな、愛情深い女性がすぐ目の前にいるのです)、不治の病により自死を選ぶ妻とその夫を描いた「最後の夜」もまた、美しかった愛情が無残に壊れる様が残酷でした。崇高な愛のはずが、凡庸な愛に思いっきり邪魔されて白茶けています。

「ブルー・ヨーデル」はお話としては良く分かんなかったんだけど、小道具が面白かったです。蝋人形に交じってポーズをとり、急に動いて客を驚かせるなんて職業、実際にはないよねえ。その彼女の恋人の「僕」の仕事は、ナイアガラの滝で、誰かが樽の中に入って滝下りをやらないように監視することなのです。この二人のへんてこな職業が面白いし、どうしてそうなっちゃったんだかはまったく分からないのだけれど、クレアが飛び去ってしまうのが飛行船であること、国境など物ともせずひたすら飛行船を追うさまなど、なかなかに美しいのです。

「年下の男の子」/あいつはあいつは…

 2008-11-08-20:12
年下の男の子年下の男の子
(2008/05/16)
五十嵐 貴久

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目次
出会いについて
メールについて
ディナーについて
会議について
引っ越しについて
デートについて
告白について
紹介について
ご褒美について
×××について
交際について
別れについて
神様について
三十七 マイナス 二十三 イコール 十四。

この年齢差の恋愛はありやなしや?

それも、女性の方が年上だったとしたら?

というお話。


いやー、これが実に楽しいんですよ。

児島クンの懐きっぷり、晶子の逡巡。リアルかどうかは良く分かりませぬが、楽しませて頂きました。
三十七歳、独身。このたび、ついにマンションを購入までしてしまった、食品会社宣伝部広報課勤務、川村晶子。結婚を諦めたわけではないけれど、四年前に彼がいたきり、交際している男性もいない。

代り映えのしない日常の中、先方のミスとは言え、会社人生初とも言えるトラブルが起きてしまう。ミスを取り戻すため、徹夜のシール張り作業をともに行うことになった、取り引き先PR会社の若い男性、児島達郎。深夜の難作業を行う中、ある種の感情が芽生えるけれど、それは危機をともに乗り越えたからだと思っていた。その後の彼の、お詫びを兼ねた食事の誘いも、社交辞令だと思っていたのだが…。

なんだかまめにメールを送ってくる児島くんに絆され、食事を共にする晶子さん。話も合うし、好感のもてる青年である児島クン。晶子の引っ越しも重なり、晶子と力仕事が得意な元・山岳部の児島くんは関係を深めていくのだが…。
有川浩さんの「ラブコメ」ともまた違うんだけど、読みながらなんだかニヤニヤしてしまうんだなぁ、これが。

晶子とも年齢が釣り合い、彼女の憧れの人でもあった、秋山部長の離婚話とか、児島くんに好意をもつ、晶子の後輩小川弥生とか、二人の障害(?)も出てくるんだけど、ここらは割とあっさりしているような気がしました。小川弥生なんて、応援してるよ~!、と言いながら、実際は晶子がとってしまったわけで、もうひと波乱あるのでは?と怯えながら読んでたんだけど、彼女は割とただ大人しいだけの女の子でしたね。いわゆる女性の恋愛小説だと、このあたり、恐ろしい復讐に打って出たりするもんですが、あまりどろどろせず良かったです。

ファンタジーといえばファンタジーなのかもしれないし、ラストはそうきちゃうか!、というのもあるけど、それでも読んでる間、私は楽しかったなー。児島くんの懐き方には、なんだか大型犬を思わせるものもありますが、いいよねえ、こんだけ気が利く児島くん。こんな子が、周りにいたら楽しいだろうなぁ。恋愛ではなくても、好意を示されれば嬉しいわけで、なんつーか大人になっても、その年齢ほどは実際には大人に成りきれていない私なんかは、精神年齢的には結構な年下とも変わらないのよね。最近、会社で一回り下の女の子に癒されている私、こんな恋愛もいいなー、などと思ってしまいました。

「塩の街」/世界は恋人たちのために

 2008-09-18-22:14
塩の街塩の街
(2007/06)
有川 浩

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これも、桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」などと同じく(おっと、今amazon検索したら、「砂糖菓子」ってばなーんと、コミックスにもなってるんだ! すっごいですねー)、文庫から単行本になったもの。

私が借りてきたのは、単行本なんだけど、文庫本の表紙を先に見てしまったせいか、読んでいる間中、頭の中で高橋しんさんの「最終兵器彼女」とか「花と奥たん」(現在、スピリッツで単発連載中)の絵柄に変換されてしまいました。「最終兵器彼女」はともかく、「花と奥たん」は壊れた世界で、夕餉をの支度をして懸命に旦那さんを待つ「奥たん」の姿が描かれているからか、どうもこの「塩の街」と重ねてしまうのですよ。
CONTENTS
塩の街
Scene-1. 街中に立ち並び風化していく塩の柱は、もはや何の変哲もないただの景色だ。
Scene-2. それでやり直させてやるって言ったんじゃねえのかよ。
Scene-3. この世に生きる喜び、そして悲しみのことを
インターミッション―幕間
Scene-4. その機会に無心でいられる時期はもう過ぎた。
Scene-5. 変わらない明日が来るなんて、もう世界は約束してくれないのを知っていたのに。
Scene-6. 君たちの恋は君たちを救う。

塩の街、その後
塩の街-debriefing- 旅のはじまり
塩の街-briefing-  世界が変わる前と後
塩の街-debriefing- 浅き夢みし
塩の街-debriefing- 旅の終わり
えー、主たる登場人物である、秋庭は空自の二尉なんだけど、「塩の街」のタイトルの所以でもある、「塩害」は陸地を襲ったわけであるからして、これが自衛隊三部作のうちの「陸」にあたるとのこと。途中からの舞台は、陸自の立川駐屯地だし。

主人公というか、フューチャーする人物を変えながら、話が進んでいくんだけど、ベースに流れているのは、秋庭と真奈の恋。年だって十くらい違う、空自の戦闘機乗りと女子高生という、それぞれの立場だって全く違う。平和な世界であれば、二人に接点などなかったはずなのだが…。

東京湾をはじめとし、世界各地に、ある日突然白い隕石が落ちる。それは巨大な塩の塊であり、ソドムとゴモラのロトの妻ももかくや。隕石の落下後、人々は塩の柱と化す。そんな世界の中、描かれるのは、「こんなことにならなければ気付かなかった」恋、「こんなことにならなければ出会えなかった」恋。

そうして、それなりに安定していた世界を引っ掻き回し、事態の収拾に回った、ほぼマッドサイエンティストな入江が、秋庭と真奈の二人暮らしを襲撃する。

「世界なんか救わないで!秋庭さんが無事でいて!もう旧い世界のほうがよかったなんて、言わないからっ!」

この世界が救われるまでだけではなく、「塩の街、その後」では文字通りその後が描かれ、「塩の街」の世界を補完してくれます。どこまでも健気な真奈に胸キュンするも良し、頼りがいのある秋庭に惚れぼれするも良し、ですかねー。

でも、今回、私が気に入ったのは、作者すら把握出来ないという、喰えない入江。一本気で健気、純粋な人々が多いだけに、このわけの分かんない入江という人物の存在が、ぴりりと利いてんじゃないでしょうか。
塩の街―wish on my precious (電撃文庫)塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
(2004/02)
有川 浩

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「塩の街」は、有川さんのデビュー作であり、第10回電撃小説大賞<大賞>受賞作でもあります。有川さんは頑として曲げなかったそうだけれど、真奈を中学生にして、秋葉を二十二、三歳に出来ないかとの打診があったとのこと。この表紙…。ま、まさか、その髪の長いのは秋葉??汗

なんつーか、少女マンガの主人公or相手役などにも、年齢制限があるようにも思いますが、二十代後半や三十路が青春したって、恋したっていいじゃないのさーー!!と思ったり。あの「ガラスの仮面」の速水真澄氏もそろそろ三十路なんだっけ。あちらも、マヤとの年齢差は十一歳なんだよねー。どうでもいいけど、”速水真澄”でググったら、他のキーワードに”速水真澄 嫉妬”、”速水真澄 ラブシーン”が…。ま、真澄さん・・・。

「阪急電車」/らぶ・関西

 2008-09-15-22:43
阪急電車阪急電車
(2008/01)
有川 浩

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目次
宝塚駅
宝塚南口駅
逆瀬川駅
小林駅
仁川駅
甲東園駅
門戸厄神駅
西宮北口駅

そして、折り返し。
西宮北口駅
門戸厄神駅
甲東園駅
仁川駅
小林駅
逆瀬川駅
宝塚南口駅
宝塚駅

あとがき
電車は何を乗せて走る? 有川さん描く所の、阪急電車は今津線が乗せて走るのは、様々な恋模様や人間模様。そうだよねえ、たくさんの人が乗り降りする電車という乗り物。こんな出会いがあっても、不思議ではないのかも。それはほんの一瞬のすれ違い。それでも、そんな他人のひと押しのおかげで、変わることが出来ることもある。

一読して、私の感想は、楽しいじゃないのはあと、可愛いじゃないのはあと、面白いじゃないのはあと、という全く論理的ではないもの。でも、すっごい楽しかったんだよ~!! 勢いで、有川さんの他の著作もがしがしと借りてきてしまうほどに。

男性が読むとまた良く分かりませんが、有川さんの描く男性がまた素敵でねえ。どこかに残ってた、乙女ゴコロをすっかり刺激されてしまいましたよ。

この連作短編というスタイルもすっごくうまいんだけど、またいいなーと思ったのが、「そして、折り返し。」という後半への繋ぎ。そうそう、電車には往路と復路があるものだもの。あの二人の恋、この人のその後、気になるところもきっちり教えてくれるところもいいなー。

うふふん、しかし、この後、私は有川さんの所謂自衛隊三部作を読んだんですが、ご近所づきあいに苦労するオバさん、非モテだった軍オタ君、情けなくも実はすごいんじゃあ、な年上の彼氏、年の差カップル、などなど、初期から出てきたと思われるキャラクターも出てきてるんですねえ。

「あとがき」もさ、惚気と紙一重のような旦那さんとの会話とか、編集さんとの苦労話とか、内輪全開な感じが、懐かしのコバルト文庫を読んでいるようで楽しかったですよ。

ちなみに往路「甲東園」編のえっちゃんの彼氏のお話。アレンジはしましたが私が以前、正に今津線に乗っていたとき聞こえてきた会話そのままに近いです。恐るべし関西人。腹筋攣るかと思いました。周囲の人たちも笑いをこらえるのに苦しんでいたと思います。    (「あとがき」より引用)

あのオチも完璧な(しかも、何度も重ねてオチがある)、えっちゃんの彼氏の話がほぼ実話だなんてー! 恐るべし関西。でも、らぶはあとですわー。

「愛の領分」/愛には領分があるのか?

 2008-08-10-23:37
愛の領分愛の領分
(2001/05)
藤田 宜永

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わが図書館で、直木賞特集の本棚が出来てまして、そこから借り出してまいりました。ということで、第125回の直木賞受賞作であります。

藤田宜永さん、初読みです。帚木蓬生さんの、現代離れしたほのぼのとした恋愛小説を読んだ直後だったからか、この情念の世界がなかなか面白かったなぁ。じっとりと濃い。若いころの友情と、自分でも何ともし難い感情の世界が描かれることから、宮本輝さんの「青が散る」を思い出しました。
宮”武”淳”蔵”(テーラー・ムサシ経営)は、妻に先立たれた男やもめ。若いころは随分と遊んだものだったが、今では息子と二人、静かに暮らしている。いつものように静かな仕事場に、若き日に共に遊び歩いた、高瀬昌平が突然現れた。淳蔵は、昌平の妻、美保子にその昔、恋をしており、彼女の手酷い裏切りにあって以来、それまでの交友を断ち、四半世紀ほども高瀬夫妻に会うことはなかった。探偵を雇ってまで、淳蔵を探し出した昌平の真意とは…。

手広く商売をやっている家に生まれ、羽振りが良く、如何にも陽性の坊ちゃんだった昌平は、商売に失敗し、心身ともに別人のようになっていた。美しかった美保子も、重症筋無力症を発症し、衰えを隠せない。淳蔵は昌平のスーツの仕立てを頼まれ、東京から上田に住む高瀬夫妻の元を訪れることになるのだが…。四半世紀を経ての再会により、淳蔵、昌平、美保子、更にもう一人の女性を加えて四人の人生が再び絡まり合う。

もう一人の女性とは、淳蔵、昌平共通の知人である太一の娘、佳世のこと。五十三になる淳蔵と三十九歳の佳世。年齢は若干離れているものの、共に独身の二人。二人の交際には、何の支障もないはずなのだが、この恋にはどこか秘密の匂いが付きまとう。若い日に、不倫相手が自殺した過去を持つ佳世。彼女の書く植物画は、精密で美しいけれど、どこか淋しさが付きまとう。淳蔵と体を重ねるようになっても、その欠落した様子は埋まらず、時に浴びるように酒を飲む。彼女の闇には何があるのか。対する美保子の闇も深い。現実に幸福を見いだせない彼女は、淳蔵に愛された過去に縋り付くようである。

それぞれの人物の陰影が濃いです。淳蔵の亡くなった妻のことを、淳蔵は激しい情愛ではないけれども、愛していたと信じていた。しかし、彼女はおっとりとしたその顔の下で、淳蔵と美保子の繋がりに嫉妬しており、淳蔵の愛は通じていなかったようでもある。また、その母に夫への不信を告げられていた息子も、抑うつを抱えたまま、どこか歪に成長していた。なんか考えちゃうとくらーいし、みんな、もっと思ってることちゃんと発散しようよ!、って感じなんですが、こういうじっとりしたお話も、たまには悪くないなぁ、と思いました。

だけど、悪縁だろうが良縁だろうが、縁には違いない。

人が何を考えているのか、他人には本当の意味で分かることは決してないけれども、それでも人は繋がって生きていく。時にそれは思いがけない因果をもたらすものだけれど、それもまた人生、なんですかねー。昌平と淳蔵のような繋がりは、さすがに一般的とはいえないと思うけれども。淳蔵の職業が、仕立て屋というのもまた素敵です。刹那的なものを抱えつつ、若き日から静かな生活を求めていた淳蔵に、実に相応しい職業と言えるでしょう。キャバレーのボーイから仕立て屋の弟子になる、若き日の選択も凄いけど。

「千日紅の恋人」/帚木蓬生さんの恋愛小説

 2008-08-10-01:12
千日紅の恋人 (新潮文庫 は 7-18)千日紅の恋人 (新潮文庫 は 7-18)
(2008/03/28)
帚木 蓬生

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帚木蓬生さんといえば、まだそういう話が珍しかった頃から、医師であるという特性を生かした医療ミステリや、社会派のお話が多かったと思います。ロマンスはあっても、それは決して主役ではなく、ほんのちょっと、ひっそりと華を添えるような、そんなイメージ(まぁ、でも、きっとロマンチストなんだろうなー、と思う箇所はいくつかありましたが)。ところが、そんな帚木さんのこの本の帯には、「辛い別離を経験した時子さんに、素敵な恋が訪れた」とあります。

主人公の仕事を通して老人介護の話や、人間の日常生活の心持ちの話、そんな話もちらりとは出てきますが、他の作品では、脇役に追いやられていた「恋愛」の方がぐーっと押し出されている感じ。とはいえ、それは生々しいものではなく、あくまでほのぼのとしたものなんだけど。
死別、離別と二回の別れを経験した、三十八歳の時子さん(でも、見た目は若い)。ホームヘルパーの資格を持っている彼女は、ヘルパーとしての仕事と、亡き父が遺した扇荘の管理人という二つの仕事で生活している。住宅街にあるアパートのこと、周辺住民との間にも何かとトラブルがあったり、個性豊かな住人たちにも色々と問題はあるけれども、時子は母に代って、もう十五年も管理人としての務めを果たしてきた。個性豊かだけれど、正直、あまり立派な人が多いとはいえない扇荘。そんな古いアパートに、ある日、これまで扇荘の住人の中にはいなかったような、感じのよい若い男性(しかも、第一印象は「美男子」)が入居してくるのです。

とくれば、時子さんの恋愛の相手はもう決まったようなものなんだけど…。恋愛とはいっても、時子さんと母が出演する、カラオケの発表会を見に行ったりとか、時子さんの母を交えた一泊旅行とか、この青年、有馬さん、若いらしいのに(年齢が見つけられなかったんだけど、二十代後半なのかな?)、なかなかすごいアプローチをするんだよね。

いやー、時子さんは前の夫を偲んでるわけでは全然ないんだけれど、なんだか「めぞん一刻」の響子さんと五代君を思い出してしまいましたよ。管理人さんって、その人が魅力的な若い女性の場合、ぐっと魅力ある職業になっちゃうんでしょうか。

時子さんは扇荘で亡くなった高齢者のお通夜・お葬式を扇荘から出してあげたり、壊れた個所があればすぐに気付いて工務店に連絡したり、とその働きぶりはとてもマメマメしく、管理人の域を超えて情のあるところを見せるのだけれど、どーも細かい箇所で時子さんの性格が気になっちゃって。家賃を滞納するわ、洋服ダンス代りに外の洗濯紐を占有するわの、頂けない店子に対しては、心中では思いっきりその人だけ呼び捨てだったりとか、ある店子の商売に対して「小判鮫商法」と何度も出てきたりとか、ちょっとなんだかなーと思ってしまいました。要介護認定をきちんともらえるように、わざと惚けたふりをするんだ、と老母に指導したりする箇所とかもね(ま、これはこういう実情があるという話だったのかもしれないけれど)。

舞台が九州に設定されているので、私には正しい会話がわからないのだけれど、あと気になったのが、会話文がほとんど体言止めのように感じること。もともと帚木さんの会話文って、あまりこなれていない印象を受けていたんだけど、今回は字も大きく、会話も多かったことから、妙に気になってしまいました。

なんだかいちゃもんばかりつけてるような感想になっちゃったけど、決して悪い話ではないんです。さくさく読めるし、ほのぼのもする。でも、なんだか現代の話とは思われないし(というか、この時代設定は一体どの辺なんだー?)、正直なところ、帚木さんでこのお話を読まなくてもいいんじゃないか、という気がしました。なんというか、この本のテーマが良く分からなかったんです…。恋愛だけではなく、それぞれの癖のある住人たちが、なんとかまとまって暮らせるようになっていくシーンもある。そういう場面も含めて大人の童話なんでしょうか…。

「ラ・ロンド―恋愛小説」/繰返しを踊って

 2007-08-23-23:04

服部 まゆみ

ラ・ロンド―恋愛小説


服部まゆみさん初読みです。サブタイトルに「恋愛小説」とある本書。三篇の物語は緩やかに繋がりながら、まるで踊るようにそれぞれの恋をうつす。

目次
父のお気に入り
猫の宇宙
夜の歩み


父のお気に入り
新劇の十一歳年上の女優、妙子と付き合うことになった、大学院生の孝。二人を結びつけたのは、ジョン・フォードの戯曲「あわれ彼女は娼婦」。孝は美しく大人の女性である妙子を愛するが、彼には中学時代の忘れ得ぬ思い出があった。それは赤ら顔の醜く太っていた同級生の、意外なほどに艶めかしい桃の果肉のような白いうなじ。孝は偶然、その同級生、河合と出会うのだが…。
読み終わってタイトルの意味を思うと、うわーとなる。

猫の宇宙
同級生の姉、瑠璃に憧れていた「わたし」。四姉妹であった彼女の妹、鴇子と結婚したけれど、瑠璃とは似ても似つかぬ妻や、縁戚との騒々しい日々の生活は頭痛ばかりをもたらす。義父の元アトリエ、現・「わたし」の書斎に籠ってはマーラーを聴く毎日。そんな代り映えのしない日々であったが、進学に伴い、札幌から瑠璃の娘、藍を預かることになった。「わたし」は藍との会話に心休まるものを感じるのだが…。
さて、「わたし」の専門は哲学で、職業は私大の講師。哲学の道を選んだのには、幼き日の弟の疑問が絡んでいたのだが、自称・芸術家の弟、克己は、三十五を過ぎてもろくな仕事に就きもせず、私の苛立ちを煽る。それどころか、弟は幼き日の疑問にも、勝手な解釈を見つけたようで…。

夜の歩み
前二篇を繋ぐ物語。妙子と孝の二人が、行きつけのジャズバー『滝』の前で出会ったのは、「猫の宇宙」に出て来た藍と克己。二組のカップルの行方はいかに?

みんながみんな、腹に一物を抱えたまま、恋を踊る。そんなわけで、ここで出てくる恋愛は、お天道様の下でピクニック!というようなものではなく、暗い眼差しを湛えた隠微な感じ。この中でいえば、真っすぐで猪突猛進型の藍や、ひたすらに己の正しさを信じる「わたし」などは、まだまだ甘ちゃんと言えるのかしらん。この怖さをもっと突き詰めていくと、皆川博子さんの小説のような雰囲気になるような気がします。

 ■思い出した皆川博子さんの短編集→「鳥少年

恋愛ものでいえば、こちらはもうそれはそれは直球のド・ストレートですが、自分の中では、姫野カオルコさんの「ツ、イ、ラ、ク 」がやっぱりまだまだ一番。「ツ、イ、ラ、ク」のサイドストーリーである、「 」の文庫本が出ているのを発見して、解説を立ち読みしたのだけれど、この解説が愛に溢れていてとっても良かった! 一編集者、四十代の男性が書いたという解説だったのだけれど、男性から見ても、やっぱりこの一連の作品はとても力のあるものだったんだなぁ、と。「ツ、イ、ラ、ク」が直木賞を外したことについても触れられています。ほんと、「ツ、イ、ラ、ク」はもっと評価されるべき作品だと思うんだけどな~。良かった!、と思った単行本が文庫化されると、その解説を読むのが楽しみだったりします。桃」の解説はほんと良かったです、あれは愛ですね。

さて、また「ラ・ロンド」の話に戻りますと、それなりに力のある作品だとは思うのだけれど、私はこういう系統だったら、皆川博子さんを読みたい。著者、服部まゆみさんの作品の中で、「ラ・ロンド」はどんな位置づけなのかなぁ。

「蕎麦屋の恋」/恋とか愛とか

 2007-02-06-23:02
姫野 カオルコ
蕎麦屋の恋

目次
蕎麦屋の恋
お午後のお紅茶
魚のスープ

「蕎麦屋の恋」
山藤製薬経理部、秋原課長四十三歳。淡々としているけれど、読み進む内に滅多矢鱈とモテている彼。彼は女性がその時必要としているものを、すっと差し出せる男のよう。とはいえ、彼の場合、進んでそうしているというよりも、これは生来の性質なのかも。二十そこそこで、出来ちゃった婚をした妻との間には、既に大学受験を控えた娘がいる。「出来ちゃった婚」をした時に感じた、何らかの翳りは知らぬふりをしたまま。毎日はそれでも過ぎて行く。しかし、彼が感じた翳りを、妻も感じていなかったとなぜ言える?

さて、ここに一人の女がいる。安定した商社勤めを辞め、調理師専門学校に通い、今は臨時講師のような事をしている波多野妙子。通勤に使う京浜急行快特の車内の中、活発そうな妙子の外見の中に、秋原は何かを渇望する翳りを見る。

人の育ちは外見からは分からない。けれど、妙子はどこか「普通」とは違う育ち方をしていた。家族皆で炬燵でぐだぐだとテレビを見る。彼女の家庭には、そんな当たり前の光景はなかった。一緒に並んでテレビを見る。それが、彼女の我が儘で贅沢な希望。こんな二人が並んでテレビを見る。それが、テレビのある「蕎麦屋」での「恋」。妻を愛してはいるけれど、流されるままに他の女とも関係を結ぶ、秋原が手を出さずに(ま、単にそういう雰囲気にならなかったのもあるけど)愛おしんだのも、するとかしないとか、そんな事じゃない、蕎麦屋の恋。

「お午後のお紅茶」
やわやわと流されているようでいて、目標に向かってしっかりと力強く歩む小林くん。柔らかなようでいて、彼には自らも意識しない美意識が確固としてあるのだ。
「お」午後の「お」紅茶のようなそんな店。そんな似非上品な店はやっぱり願い下げ?

「魚のスープ」
結婚して三年たった僕たち夫婦。育ちの良く健やかな桜子との日々。三年たった僕たちは子供がいなくてはいけなくなった。だって、問題のない家庭とはそういうものだから。
僕たちはそのために、子供を作る行為をするために、スウェーデンに旅に出る。しかし、この旅行は夫である僕にとっては、少々後ろめたいものだった。学生時代の性差を超えた友だち、ストックホルムに住むカズから突然チケットが送られてきたのだ。カズの意図を僕は測りかねる。結婚した桜子とは全く違うカズ。もしあの時、カズが僕のことを好きだったのなら、もしあの時、カズを選んでいたのならば・・・・。
結果として、僕の感傷は意味のないものだったし、僕はこの旅で桜子の違う一面を見る。分からないのならば、これからまた話して、一緒に歩いていけばいい。

姫野さんの作品の中では、まだ軽やかに読める方かなぁ。「魚のスープ」の桜子なんか、最初、嫌な女だなぁ、と思っていたんだけれど、彼女には彼女のやり方があるというだけで、それは決して対照的なカズの生き方とも対立するわけではないんだよね。一つの生き方が正しいわけではない。
珍しくも甘い余韻が残る姫野作品でありました。

「私が語りはじめた彼は」/愛って何だ?

 2006-07-27-21:33

三浦 しをん
私が語りはじめた彼は

「月魚」 を読んで、文章の巧さは良く分かったんだけど、その寸止めBL小説のような香りに、ちょっと何が言いたいのか分からんなーと混乱し、でも、此度めでたく直木賞を獲ったことだしと、評判の良い「私が語りはじめた彼は」に挑戦。

結論からいうと、いや、これは良かったんだよ。胸に染み入るような綺麗な表紙、そのまんまの世界。そして、此度は言いたいこともちゃんと分かりましたよ。

愛って何だ?そして愛を持続させるには?

目次
結晶
残骸
予言
水葬
冷血
家路

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 のように、一人の男性について、関わった人々が語るスタイル。「ニシノ~」の場合は、語るのは女性だけだったけれど、こちらでは男性も。

さて、この輪の中心となるは、歴史学を専門とする村川教授。彼は妻に言わせるとこんな男性。「村川の魅力は、ある種の女にはたまらないものです。どこを掴まれたのかは自分でももうわからない。けれど、彼によってふいにもたらされた痛みと驚きだけは、いつまでも新鮮に残る。外見や性格とはかかわりのない、そんな種類の魅力です」

浮気を繰り返した彼は、妻と二人の子どもとは別れ、太田春美というカルチャー・スクールの生徒と結婚し、彼女の連れ子を娘とした、新たな家庭を築く。

「結晶」は村川の弟子、三崎が怪文書を確かめに彼の妻の元を訪う。
「残骸」は、村川のカルチャースクールの生徒、多分、彼の最初の浮気相手である真沙子の夫が語る。
「予言」は村川の息子、呼人が語る。離婚を知った彼は荒れる。彼だけが父の十数年に亘る浮気を知らなかったのだ。現在高校生である彼が過ごした時間の大半が、全て嘘で塗り固められたものであるとは、なんと残酷な事だろう。
「水葬」は、大田春美の連れ子、村川綾子の物語。なぜか彼女を監視する調査員が語る。彼女は自らを海に埋葬する。
「冷血」は、村川の娘、ほたるの婚約者、市川律が語る。
「家路」は、新聞の訃報欄で村川の死を知った、三崎が再び語る。

村川の心中はどこにも描かれないけれど、様々な人が語る彼の様子から、村川の心が浮かび上がってくる。

この世のどこかに不変なものがあると信じたい、子供のような村川。誰かと生活を共にするという事は、鮮烈な感情が薄れ、ゆっくりと変化していくということでもある。永遠を求めて、次々と恋を仕掛ける村川は、純粋ではあるが、ある意味哀れな男なのかもしれない。

愛を求め、確かにそれは得られたけれど、誰が村川を理解しただろうか。
また、一体誰が理解されたのだろうか。

変化するからこそ、揺らぐからこそ愛は美しい。
それは、一瞬の完璧に固められた恋の輝きとはまた異なったもの。

村川とは違う生き方を選ぶ男性二人にしんみりする。

冒頭の二千年以上前の、不義密通をした寵姫に対する皇帝の残酷な仕打ちは非常に怖い。変わらぬ愛を許さない大田春美の怖さにちょっと通じているのやも。全く同じ状態をキープしようと努力する愛なんて、不自然なものなのかもね。思い出を合った事として、そのまま受け入れる村川の家族と比べ、村川の何もかもをも奪おうとする、貪欲な大田春美はあまりに醜い。

巻末には、田村隆一の詩が載せられている。
「私が語りはじめた彼は」というタイトル、かっこいいよなー。

 この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして父を殺した
 その秋 母親は美しく発狂した
    田村隆一「腐刻画」



*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「ニシノユキヒコの恋と冒険」/とめどないこの世界の中で

 2006-04-14-20:48
川上 弘美
ニシノユキヒコの恋と冒険

目次
パフェー
草の中で
おやすみ
ドキドキしちゃう
夏の終りの王国
通天閣
しんしん
まりも
ぶどう
水銀体温計

十四歳の西野少年は、全てを受け入れ、全てを拒むようなキスをする少年であり、長じて彼は、上司である年上の女性を縫い止め、奪うような大人の男性となった。獲物をとらえるときの獣は、凶暴でありながら、優雅で無駄のない動きをする。そういう意味で、ユキヒコは獲物を駆る獣のようでもあった。

ニシノユキヒコ、西野幸彦氏は一般に言うならば、女性にもてるプレイボーイ。一連の短編は、全てニシノユキヒコの恋を描いたものであり、様々な時系列の女性との出来事(時にそれはクロスする)が、彼に関わった女性の視点で語られる。

ユキヒコは「おやすみ」の真奈美の言葉を借りると、「こわがりやのユキヒコ」であり、優雅に女を扱う事が出来、凶暴にもなれるというのに、女の子を好きになることが出来ない。一時的にある女性に傾倒することは出来ても、やはり時が来れば飽いてしまう。彼が女の子にもてるのは、なめらかな無関心でもって、優雅に事を運ぶから。しかしながら、本当の彼はどこかぎくしゃくとした人間でもある。

それを愛しく思ってくれた女性もいたし、彼がどこかぎくしゃくした人間となった遠因を知って、彼から逃げてしまう女性もいる。また、ユキヒコの持つ闇に全く気付かない女性もいる。ユキヒコも大概ずるい人間なのだけれど、彼が付き合った女性の中にも、彼のいいところだけ、美味しいところだけを味わった女性もいるのかもしれない。

とはいえ、ユキヒコは彼が出会った全ての女性が、幸せを祈らずにはおられないような男性である。ユキヒコの生涯は幸せだったのか。形は結ばなかったかもしれないけれど、私は幸せな一生と読んだ。

とめどないこの世界の中で、ニシノユキヒコの恋と冒険は実を結んだのか。誰よりも器用に生きながら、どこか戸惑った、迷子のようだったユキヒコ。全編読むと、またこの順番も味わい深い。最初に戻って、じんわりと読みたくなる。

さて、この本には様々なタイプの女性が出てくる。自分だったらどの短編のどの立ち位置にいるのかなぁ、としばし考えた。うーん、私は「通天閣」のタマちゃんかなぁ。友達の昴と「ニシノ」との恋を、「ニシノ」に惹かれ、昴を心配しつつ、何だか気に入らないなぁ、と隣でじっと見ている彼女。素敵なのは、「おやすみ」の真奈美さんと、「夏の終りの王国」の例なんだけど、ま、私はこんなにクールにはなれません・・・。

恋/「ツ、イ、ラ、ク」

 2005-06-03-08:04
姫野カオルコ 「ツ、イ、ラ、ク」

狂おしいほどの恋に、しばしあてられた。

幼い小学生の生活、中学生の頃、そしてそこで出会った恋。
中学生から舞台は一気に二十年後へ。主人公・隼子の恋は? 


普通の(?)恋愛小説のように、「今現在の二人の恋」にのみ焦点を当てた話ではない。ありがちなお菓子のような、ふわふわした甘さもどこにもない。幼い頃の生活のディテールがそれはそれは事細かに描かれる。うーん、でもこれもこの恋の濃度を高めるための演出なのか。周囲の登場人物の性格付けもきっちり。こういう人たちは確かに存在していた。

幼い小学生の女の子の世界。当の昔に大人になったはずの作者が、この息苦しい「サロン」「社交」の日々を、正確に表現することにまず驚いた。早熟な女の子にとって、田舎町の生活はきっとちょっと辛い。よく分からない女の子のルール、おかしな先生、あまりに幼い男の子達。

恋愛小説にあまり感心したことがないのだけれど、この本には感服させられた。物狂いのような恋かー。うーん、読後、現実復帰に時間がかかる感じ。


感心させられる表現が数多くありました。最初は恋愛小説だとは思わないで読んでいたし、小学生の生活が非常に細かく描かれるので、どこに連れて行かれるんだ~?、と不安になりましたが。色々とヒリヒリ痛い、小説だった。でも一点だけ、私は小山内先生が好きではなかった。私もまだまだ潔癖なのかしらん。

姫野さんのエッセイなども読んでみたいなあ、と思ったことでした。
以下、引用。

恋とは、するものではない。恋とは、落ちるものだ。どさっと穴に落ちるようなものだ。御誠実で御清潔で御立派で御経済力があるからしてみても、あるいは御危険で御多淫で御怠惰で御ルックスが麗しいからしてみても、それは穴に入ってみたのであって、落ちたのではない。

「自分が状況や感情を処理する手段と力を持っていないのに、状況や感情に襲われてふりまわされる苦痛は二度とごめんだわ」

たかが。彼をそう思っていた。今からすればふたりとも「たかが」だった。「たかが」のころ、ふたりとも怖いものがなかった。明日のことを考えなかった。一時間後のことすら。そのとき、その一瞬が、ただ在った。そのとき、その一瞬がただ在って、かけがえのない日々の尊さをまるで知らなかった。二度ともどることなきひとときの熱さにまるで感謝しない。若さのきらめきとは、そういうことである。

著者: 姫野 カオルコ
タイトル: ツ、イ、ラ、ク

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

青春の書(大学編)/「青が散る」

 2005-05-04-10:30
著者: 宮本 輝
タイトル: 青が散る
こちらは私の中では、「69」よりも真面目な青春の書として位置づけ。
青春のどうしようもない暗さが、よく描かれていると思う。
新設大学に入学した椎名燎平と、彼の周辺の男友達、女友達をめぐる
物語。

筆者はこの物語で伝えたかったことを、あとがきでこう語っている。
青春の光芒のあざやかさ、しかも、あるどうしようもない切なさと一脈の虚無とを常にたずさえている若さというものの光の糸を、そっと曳かせてみたかったと言えるでしょう


私の感想もまさにこれに尽きるのだけれど、以下に特に好きな箇所を上げておきます。

・辰巳教授のエピソード
今時の大学生とは、もう違ってしまっているかもしれないけれど。そして私の時代ですら、こんな教授はもういなかったのではないかなあ、と思うけれど。
若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。
自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。

・燎平への金子の言葉
これぞまさに青春。
「燎平。お前、ほんまに夏子を好きか?」
黙っている燎平の頭を指先でつつきながら、
「あのての女はなア、大きな心で、押しの一手や」

・ ガリバーが歌う「人間の駱駝」という詞
?
ここに上げたのはその一部だけれど、何か心にしみ入る。
摩天楼の陽炎にひたって
人間の駱駝が生きていく
汗も脂も使うべき時を失い
瘤は栖(すみか)を離れて心にもぐり込んだ
原色の雑踏にまみれて
駱駝はあてどなく地下に還る

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

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GW中は自分の「青春の書」を上げようと思っていて、一応以上で「青春の書」シリーズ(?)は終わりです。うーん、と言っても四冊しか上げてませんね。卒業して働き始めてからは、実際に読書の空白期間があったりして、なかなかこの本と共に生きた!ってのがないような気がします。それともこの後、これから気付くのでしょうか。
実家から懐かしい児童書を引き揚げてきましたので、その内、幼年期の友であった本たちについても書きたいと思っています。
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つな がる

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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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