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「センセイの鞄」/恋すてふ

 2006-12-23-00:46
川上 弘美
センセイの鞄

目次
月と電池
ひよこ
二十二個の星
キノコ狩 その1
キノコ狩 その2
お正月
多生
花見 その1
花見 その2
ラッキーチャンス
梅雨の蕾
島へ その1
島へ その2
干潟―夢
こおろぎ
公園で
センセイの鞄

駅前での一杯飲み屋での十数年ぶりの再会から、逢瀬を重ねるセンセイとわたし。センセイは、わたし、月子の高校時代の国語の教師であった。二人は「センセイ」、「ツキコさん」と呼び合い、共に酒を愉しむ仲になる。

逢瀬といっても最初の頃は、それは実に淡い交わり。歳は三十と少し離れているけれど、肴の好み、人との間の取り方が似ている二人は互いに近しく思う。

淡い交わりはいつしか恋に変わる。しかし、それはツキコさんの一人芝居のようにも見え、またツキコさんの前にも高校時代の同級生である男、小島孝が現れる。年齢的にも、また男性としても、ふつうの女であれば、こちらの方が相応しいと思われる小島孝であるけれど、しかし彼はツキコさんには馴染まない。

ああ、こういうのって分かるなぁと思ったのが、以下の部分。

 年齢と、それにあいふさわしい言動。小島孝の時間は均等に流れ、小島孝のからだも心も均等に成長した。
 いっぽうのわたしは、たぶん、いまだにきちんとした「大人」になっていない。小学校のころ、わたしはずいぶんと大人だった。しかし中学、高校、と時間が進むにつれて、はんたいに大人でなくなっていった。さらに時間がたつと、すっかり子供じみた人間になってしまった。時間と仲よくできない質なのかもしれない。

センセイもツキコさんも、時間からはぐれた迷子のような人間だったのかも。

途中まではこんなにずっぽり恋愛になるとは思わずに読んでいたので、花見におけるツキコさんの嫉妬心に驚いたり、面白がったりしながら読んでいた。いや、この二人、相当すっとぼけているのですよ。けれども、花見を過ぎた中盤あたりからは、時間が限られている恋愛に切なくなった。勿論、若い人であっても持っている時間は無限ではないけれど・・・。あわあわと、しかし濃ゆくもある、恋物語。

 ← こちらは文春文庫

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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「神様」/不思議のものども

 2006-07-20-21:30
 
川上 弘美
神様 
中央公論社


私がこれまで読んだ川上さんの本は、小説では「
古道具 中野商店 」、「ニシノユキヒコの恋と冒険 」。エッセイでは「なんとなくな日々 」。これらも勿論良かったのだけれど、これは基本的には現実にリンクした物語。
川上さんの本には、不思議な生き物が出てくるものもある、と聞いていたのだけれど、まさにこの「神様」が不思議な生き物が闊歩するお話だった。

不思議といえども、怪異でも怪奇でもなく、妖艶でもない。当たり前のように、そこにすこんと不思議な者たちが生きている世界。これぞ川上ワールドなのかな。ちょっと他の作家さんにはない独特の雰囲気に感じた。
不思議のものどもが、怒ったり、笑ったり、悲しんだり、何とも普通に生きている。読みながら、何だかしみじみしてしまったことですよ。

目次
神様
夏休み
花野
河童玉
クリスマス
星の光は昔の光
春立つ
離さない
草上の昼食
あとがき

「神様」「草上の昼食」は、ある日同じマンションに越してきたくまの話。
「夏休み」は梨の精のような、白い毛が生えた小さな三匹の生き物とのお話。
「花野」は五年前に死んだ叔父の話。
「河童玉」は、文字通り河童のお話。大らかな河童たちの姿がいい。
「クリスマス」は、壷から出てきた、コスミスミコの話。気のいいコスミスミコは、「チジョウノモツレ」でこんな姿になってしまったのだという。
「星の光は昔の光」だけは、そういえば不思議がちろりとしか出てこないな。近所の小学生、えび男くんお話。
「春立つ」は近所の居酒屋「猫屋」のおばあさん、カナエさんの不思議な話。
「離さない」は、偶然手に入れてしまった人魚の話。

作品の世界が繋がっているのは、「神様」「草上の昼食」「河童玉」「クリスマス」「星の光は昔の光」。 私が中でも好きだったのは、川上さんの初めて活字になった小説だという「神様」「草上の昼食」

◆「神様」◆
「わたし」の三つ隣の部屋に越してきたのは、雄の成熟したとても大きなくま。彼は律儀で行き届いたくまだった。「わたし」とくまは、くま言う所の縁を感じ、時に共に散歩をする仲になる。呼びかけの言葉としては、漢字の「貴方」が好きだというくまは、昔気質のくま。

「わたし」はごく普通にくまを受け入れるけれど、勿論そんな人間ばかりではない。子どもに「くまだ」「くまだ」と囃し立てられても、くまはあくまで穏やか。
「小さい人は邪気がないですなあ。」

川原でのピクニック。くまは魚を獲って、更に今日の記念にと干物にして、「わたし」にプレゼントしてくれる。なんと行き届いたくま! 散歩を終えた二人はそれぞれの自宅に帰る。くまの別れの挨拶は、抱擁に、「熊の神様のお恵みがあなたの上にも降り注ぎますように」という祈りの言葉。悪くない一日。

◆「草上の昼食」◆
故郷に帰るという、くまとの最後のお散歩。此度、くまが用意したのは、鮭のソテーオランデーズソースかけ、なすとズッキーニのフライ、いんげんのアンチョビあえ、赤ピーマンのロースト、ニョッキ、ペンネのカリフラワーソース、いちごのバルサミコ酢かけ、ラム酒のケーキ、オープンアップルパイ。くまは付き合えず白湯だけれど、彼が用意した赤ワインはバルバレスコ。

赤ピーマンのローストを褒められたくまは、薄皮を剥くのが少し難しかったと話す。学校に通うのも難しいくまの料理は、こんなに多くの料理を作ることが出来ても、それは自己流なのだという。くまの生活の難儀の多き事に、「わたし」は思い至る。
青年期から、こちら側に住んだというくま。故郷に帰る気持ちは如何に? こちら側に馴染め切れなかったというくま。「わたし」とて馴染まないところがあるけれど、それは簡単に比べられるものではない。

故郷に帰ったくまから、差出人の名前と住所がない手紙が届く。
私はくま宛に決して届く事のない手紙を書く・・・。

この「くま」がいいんだよなぁ。「合わせる」ことなんかないのに、一生懸命律儀に「合わせる」姿に、何だかしんみりしてしまう。「魚の皮」を持ってのお散歩。洒落た料理じゃなくったって、「わたし」はきっと付き合ったのに。

?← 文庫も

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「ニシノユキヒコの恋と冒険」/とめどないこの世界の中で

 2006-04-14-20:48
川上 弘美
ニシノユキヒコの恋と冒険

目次
パフェー
草の中で
おやすみ
ドキドキしちゃう
夏の終りの王国
通天閣
しんしん
まりも
ぶどう
水銀体温計

十四歳の西野少年は、全てを受け入れ、全てを拒むようなキスをする少年であり、長じて彼は、上司である年上の女性を縫い止め、奪うような大人の男性となった。獲物をとらえるときの獣は、凶暴でありながら、優雅で無駄のない動きをする。そういう意味で、ユキヒコは獲物を駆る獣のようでもあった。

ニシノユキヒコ、西野幸彦氏は一般に言うならば、女性にもてるプレイボーイ。一連の短編は、全てニシノユキヒコの恋を描いたものであり、様々な時系列の女性との出来事(時にそれはクロスする)が、彼に関わった女性の視点で語られる。

ユキヒコは「おやすみ」の真奈美の言葉を借りると、「こわがりやのユキヒコ」であり、優雅に女を扱う事が出来、凶暴にもなれるというのに、女の子を好きになることが出来ない。一時的にある女性に傾倒することは出来ても、やはり時が来れば飽いてしまう。彼が女の子にもてるのは、なめらかな無関心でもって、優雅に事を運ぶから。しかしながら、本当の彼はどこかぎくしゃくとした人間でもある。

それを愛しく思ってくれた女性もいたし、彼がどこかぎくしゃくした人間となった遠因を知って、彼から逃げてしまう女性もいる。また、ユキヒコの持つ闇に全く気付かない女性もいる。ユキヒコも大概ずるい人間なのだけれど、彼が付き合った女性の中にも、彼のいいところだけ、美味しいところだけを味わった女性もいるのかもしれない。

とはいえ、ユキヒコは彼が出会った全ての女性が、幸せを祈らずにはおられないような男性である。ユキヒコの生涯は幸せだったのか。形は結ばなかったかもしれないけれど、私は幸せな一生と読んだ。

とめどないこの世界の中で、ニシノユキヒコの恋と冒険は実を結んだのか。誰よりも器用に生きながら、どこか戸惑った、迷子のようだったユキヒコ。全編読むと、またこの順番も味わい深い。最初に戻って、じんわりと読みたくなる。

さて、この本には様々なタイプの女性が出てくる。自分だったらどの短編のどの立ち位置にいるのかなぁ、としばし考えた。うーん、私は「通天閣」のタマちゃんかなぁ。友達の昴と「ニシノ」との恋を、「ニシノ」に惹かれ、昴を心配しつつ、何だか気に入らないなぁ、と隣でじっと見ている彼女。素敵なのは、「おやすみ」の真奈美さんと、「夏の終りの王国」の例なんだけど、ま、私はこんなにクールにはなれません・・・。

「なんとなくな日々」/ゆるゆる、ゆらゆらな日々

 2006-04-03-22:40
川上 弘美
なんとなくな日々

「古道具 中野商店」 が面白かったので、今度はエッセイを借りてきた。

うーん、確かに「古道具 中野商店」を書かれた人よね、と感じる、飄々とした中野さんのような部分、男前な中野さんの姉マサヨさんのような部分、生きる事が下手なヒトミやタケオのような部分が、ちらほらと仄見えるような文章だった。

目次
台所の闇
なんとなくな日々
平成の蜜柑

「台所の闇から」は、「台所の闇」「まざる まざらない」が、面白かった。

「台所の闇」
川上さんの台所には、悲しげに鳴く冷蔵庫がおり、見知らぬ生き物のものらしき毛が落ちている。春の朧に潤んだ夜には、台所に招かれるものなのだろうか。

「まざる まざらない」
世の中は、上手く混ざっているようで、実は案外混ざっていない。混ざらないまま、自分のいる場所こそが世界の中心なんだと思い込む事の怖さ。そして、「混ざっていない」場所にいるとき、人はその事にすら気付かないものなのかもしれない。

「なんとなくな日々」では、1から25までの章を使って、川上さんの日常が語られる。友人とお酒を飲み、ふらりと小さな旅をしたりする日々。「服のことが苦手である」から始まる14と、原稿の依頼により、突然仕事部屋の惨状に気付いてしまった16が良かった。一シーズン、同じ服を着続けるという川上さん、私の服の可愛がり方と、世間一般の可愛がり方は、どうも一致しないらしい、としょんぼりと語る。

「平成の蜜柑」からは、川上さんが時折「世間話」をする仲の、小学生の少年との会話を書いた「春の憂鬱」。世間話をする仲の小学生の少年がいる、というのも何だか羨ましい話。

「ためになる」ようなエッセイでは全然ないんだけれど、転んだ時の話、沢山のお店があって目移りしてしまい、結局どの店にも入れず、自転車を飛ばして通り過ぎる話、美術館に行った筈なのに、つい関係ないところでうろうろとしてしまう話、などなど、自分にとっては何だか妙に共感してしまうエピソードが満載。私の日常も、相当ゆるゆるしているのかもしれないなぁ。そして、このゆるゆるっぷりは、私にはとても気持ちが良いものだった。

「古道具 中野商店」/ゆるゆると時は過ぎ行く

 2006-03-22-22:45
川上 弘美
古道具 中野商店

「古道具 中野商店」を舞台にした物語。

「中野商店」は、どこか惚けた味わいのある中野さんが営むお店であり、骨董屋でもアンティークショップでもなく、ただの古道具を扱うお店。そこでアルバイトする主人公ヒトミと、同じくバイトのタケオ、店主の中野さん、中野さんの「女」のサキ子さん、中野さんの姉のマサヨさん・・・。
東京の西の近郊、学生街にある中野商店に集う人々が織り成すストーリー。

目次
角形2号
文鎮
バス
ペーパーナイフ
大きい犬
セルロイド
ミシン
ワンピース

林檎
ジン
パンチングボール

三度目の結婚なのに「女」がいて、それも更に二股になってしまう、飄々としているのに、なぜか女性関係がややこしい「中野さん」。つるりとした顔をした五十代半ば、中野さんのゲイジュツカで独身の姉、マサヨさん。中野姉妹に関わる人々、古道具屋の一風変わったお客たち。ここ中野商店では、時は随分とゆるゆると過ぎ行く。

しかし、短編が連なる中、主人公ヒトミは何となくタケオと付き合いだし、些細なことで喧嘩をし、修復不可能な仲になってやっと、タケオのことが随分と好きだったことに気付く。

そして、永遠に続くかに思われた、この中野商店での時間は、「ジン」に至って終わりを告げる。「パンチングボール」では、みんなが新装開店! 中野商店が「解散」して三年、それぞれに時は流れた。ヒトミとタケオはまた新たに出会い、中野商店は、西洋アンティークショップ「なかの」として新生する。

「愛してる」ってなーんだ。難しいけれど、マサヨさんの言葉には、なかなか含蓄がある。時がとまったような中野商店での日々。小説の中ですらもそのままではいられないけれど、こんなバイト先、いいなぁと思った。こういう雰囲気、好きだなぁ。
やさしげな表紙そのままの雰囲気の物語。

川上さんは、蛇を踏むに挫折したことがあるのだけれど、古道具屋 中野商店」「蛇~」に比べ、随分分かり易く感じた。蛇~」も再度挑戦してみようかな
(っていうか、蛇~」は芥川賞なのね・・・。通俗的な本読みだからか、芥川賞はいつもどうも性に合いません・・・)。

川上 弘美
蛇を踏む
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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