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「おまけのこ」「ちんぷんかん」

 2009-05-20-23:56
おまけのこおまけのこ
(2005/08/19)
畠中 恵

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ちんぷんかんちんぷんかん
(2007/06)
畠中 恵

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「しゃばけ」→「ぬしさまへ」→「うそうそ」→「ねこのばば」と、1→2→5→3の順番で読んでしまったわたくし。「おまけのこ」と「ちんぷんかん」を図書館で見つけ、これで間が埋められると小躍りして借りて来たわけですが、「おまけのこ」が4、「ちんぷんかん」が6。更に、既に第7弾である「いっちばん」が出ているんですね…。いやー、実は「うそうそ」が最新刊だと思っていたし、今回の二冊で「うそうそ」までの間を埋めたつもりでいたんです。ああ、全然順番が分からないですよ…。
 おまけのこ*目次
こわい
畳紙
動く影
ありんすこく
おまけのこ
 ちんぷんかん*目次
鬼と小鬼
ちんぷんかん
男ぶり
今昔
はるがいくよ
「うそうそ」でちょっとしゃばけシリーズから心が離れていたんですが、これはやっぱり順番通りに読まなかったせいなのかも。今度はね、割とすんなりこの世界に入っていくことが出来ました。このシリーズ、短編の方が好き、という自分の好みもあるかとは思うのですけど。

「おまけのこ」では、若だんなと栄吉の幼き日の絆が語られる、「影女」が良かったです。確かに寝込んでばかりの若だんなだものね。たとえ近所に住んでいたとしても、まだ幼く外で活発に遊んでいる他の子どもたちにとっては、こういったことでもないと、若だんなの存在に関心すらわかないよねえ。不思議なタイトル、「ありんすこく」は、吉原の禿、かえでの足抜けの話。

「ちんぷんかん」では、「鬼と小鬼」にて、若だんなはとうとう死出の旅へ! いやー、若だんなも忙しい人ですよね。「ちんぷんかん」を読んでいる時に、「うそうそ」→「ちんぷんかん」だと思っていたので(実際は、「ちんぷんかん」→「うそうそ」)、腹違いの兄、松之助の縁談話におかしいなぁと思ってたんですが、なるほど、これはこれで良かったんですね。マンネリとも思われるこのシリーズ、そうはいっても、若だんなの周囲も何かと変わっていくのだなぁ、と思いました。

変わらぬというか、今回改めて可愛いなぁ、と思ったのが、鳴家たちのきょんぎゅーとか、ぎゅんいーっなどの叫び声。何だか和みますよねえ、この叫び。袖に鳴家を忍ばせてみたい♪
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「古道具ほんなら堂~ちょっと不思議あり~」/あなたの街の古道具屋さん?

 2008-11-22-10:37
古道具 ほんなら堂古道具 ほんなら堂
(2008/05/24)
楠 章子

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もくじ
プロローグ
1話 まめだのせっけん
2話 ガラスビンのしずく
3話 にじ色のこな
4話 かけた茶わん
エピローグ
表紙ではおばあさんが浮きながらこちらをじっと見てはいますが、この人は普通の人間。ほんなら堂の店主、白髪のおかっぱ頭の橙花さんなのです。

すっごく不思議なわけではなく、「ちょっと」不思議。そうですねえ、異界のものたちも出てくるけど、重点は普通の人の生活におかれています。悲しいけれど、惚けてきてしまっているおばあさんを持つ小学生の女の子、優子、お母さん亡き後、お父さんに厳しく躾けられ、それが嫌になっている明美、知らない男の子に影を踏まれてしまった波乃、友だちがいじめられているのを止められなかったさやか…。

一見おっかない橙花さんが(きちんと名乗らないと怒られたりするけど)、彼女たちを助けてくれるのです。おお、今書いてて気づいたけど、これって見事に女の子ばっかり出てくるお話なんだなぁ。

好みでいえば、私はもっと不思議な方に舵を切ってくれる方が好きで、街の不思議でいえば、村山早紀さんの書かれるものの方が好きでした。もっと怪異メインなのかなぁと思っていたので、ちょっとあてが外れてしまいました。優しい物語ではあるのですけれど、ね。

というわけで、以下過去記事へのリンクです。
・「カフェ・かもめ亭 ささやかな魔法の物語」/こんなお店があったらいいな
・「 コンビニたそがれ堂―街かどの魔法の時間 」/探しものはなんですか?

「酔郷譚」/酒に酔い郷に酔え

 2008-09-16-23:21
酔郷譚酔郷譚
(2008/07/16)
倉橋 由美子

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目次
桜花変化
広寒宮の一夜
酔郷探訪
回廊の鬼
黒い雨の夜
春水桃花源
玉中交歓
倉橋由美子さんは2005年に亡くなっているわけですが、これはそんな倉橋さんの「新刊」なのです。とはいえ、この世界はお馴染みのものと言えるのかな。「桂子さんシリーズ」の一つである、慧くんを主人公とした連作集。

桂子さんシリーズの困ったところは、版元を割りと軽々と乗り越えているところ。私が持っているシリーズその他の本は、講談社文庫、中公文庫、新潮文庫とか。で、今回のこの本は、河井出書房新社から出版されています。

慧くんは、「ポポイ」の舞のいとこ。でも、こんな最後の新刊にケチつけるのも何なんですが、どうもいまひとつ酔えなくて~。主人公が男性だからなのかなぁ。桂子さんだったら、するりと入っていけるエロチックなお話が、どうにも入ってこなかったのでした。残念…。

バーテンダーの九鬼さん、慧くんと一緒に暮らすことになる真希さんは、どっかに出てきたんだっけなぁ?? と、思ったら、おっとー、「よもつひらさか往還」は、まさに慧くんと九鬼さんの物語だったのね。うーん、私、これ読んでないのかな。倉橋さんの本は、わっかんないな~と思うのも含めて、大体読んだような気がしていたんだけど…。色々と記憶が怪しいなー。

■関連過去記事■
・「ポポイ」/首を飼う
・「夢の通い路」/異世界との交歓

「ねこのばば」/しゃばけシリーズ3

 2007-11-19-22:54
畠中 恵
ねこのばば (新潮文庫)

途中、すっ飛ばして、その時点での最新刊であった「うそうそ」を読んでしまった私ですが、図書館で「ねこのばば」の文庫を見つけたので、やっぱり借りてきちゃいました。

相変わらず、長崎屋の若だんな、一太郎は体が弱く、佐助や仁吉は若だんなには甘甘で…。以下、5つの短編が語られます。

目次

茶巾たまご
花かんざし
ねこのばば
産土
たまやたま


うーん、やっぱり、このシリーズは短編がいいような気がします。それでも、現時点で一番好きなのは、登場人物それぞれの事情が巧みに描かれた感のある「ぬしさまへ」で、(一太郎の腹違いの兄、松之助の話、「空のビードロ」や、仁吉の千年にわたる片思いを描いた「仁吉の思い人」など)、今回のは悪くはないけど、特筆すべき出来ではないようにも思います。人気シリーズだけに、ちと点が辛くなってしまうのかも。畠中さん、わが図書館でも人気でして、つくもがみ貸します」なんかも、すごい予約数なんですが…。

「産土」は、犬神である佐助の話。犬神である彼だけれど、「佐助」と呼んでくれる人のあるありがたさ、居場所のあるありがたさ。

「たまやたま」では、一太郎の幼馴染、栄吉の妹、お春に縁談が…。さて、一太郎はお春の謎かけを解くことが出来るのか??

メディアミックス流行りの昨今ですが、この週末にはこの「しゃばけ」のドラマが放映されますね。楽しみなような、怖いような。予約しておかなくっちゃ。

☆関連過去記事☆
・「しゃばけ 」/妖(あやかし)
・「ぬしさまへ 」/やっぱり妖(あやかし)
・「うそうそ 」/若だんな、箱根で湯治・・・・のはずが?

「百鬼夜行抄4~6」/あやし

 2007-09-24-23:02
4巻における、妖魔、鬼灯のセリフが印象深い。

 俺達がおまえを見つけるんじゃない
 おまえが俺達を見つけるんだ
 闇を見抜くおまえの目が俺達を生かすんだ
 あるはずのないものが
 あるようになるんだ

なかったものがあるようになる。しかし、そこと我との間には深い溝がある。別世界ということを弁え、お互い深くは関わらぬように。時に、茶飲み話をするくらいが、互いに合った付き合い方。

同じ妖怪を描いていても、この辺が「しゃばけ」シリーズ などとは違うところ。どちらにもそれぞれの良さがあるけれど、別世界への恐れやあちらの世界を尊重するやり方が、この「百鬼夜行抄」シリーズの特徴だよね。



行李の中
人形供養/祖父、伶の若き日の話。伶は「赤間」に助けられる
鬼の居所
神の通る道/律、大学生に
待つ人々
雨がまた呼ぶ/2巻の「花盗人」の左手がまたもお騒がせ
闇夜行路
不老の壺/祖父が作った「鬼灯」を封じる壺

雲間の月
うす紅色の女
魔の咲く樹/律の眼にとり憑いたモノの話(ちょっと時空が歪んでる?)
狐の嫁入り/昔、まだ人間と妖怪とが約束を結んでいた時代の話
笑う盃
秋しぐれ/律、幽霊屋敷で雨宿り
返礼/「魔の咲く樹」の前日譚。哀しい呪術師の話

花貝の使者
隣人を見るなかれ/律のおじ、開が二十六年ぶりに「帰って」くる話
雨降って地に流るる
枯れ野
闇は彼方に佇み/開おじと、環おばの幼き日に出会ったモノが舞い戻ってくる話
マヨヒガ
骨の果実

■関連■
百鬼夜行抄1~3

「百鬼夜行抄1~3」/あやしの物語

 2007-09-24-00:30
飯嶋律の祖父、飯嶋蝸牛(伶)は他人にはない不思議な力を持つと言われた、幻想文学の書き手であった。ときに、他人には見えぬ、この世ならぬものを見てしまう者がいる。こちらが気がつかなければ、向こうもこちらに気づかない。けれど、そういうものを感じてしまう人間は、悪い影響を受けることもある。

祖父、蝸牛はそういう人間であり、また、それを利用した人間でもあった。ただし、それによって、蝸牛の寿命は確実に減った。そして、まだ幼かった律には、自分を守る術がない。祖父は自分の死に際し、律の身の安全を、「青嵐」なる妖魔に託す…。

 見てはならない 話してはならない


それが律の約束となる。

この世ならぬものが跋扈する律の家。律と同じくそれらが見えてしまう、従姉の司や晶。律や司、晶の身近で起こる様々な不思議な出来事…。

青嵐は、律の護法神であるけれど、律の家来であるわけではない。見過ごすことが出来ず、誰かを助けようとする律に、余計な事はするな、と忠告したりもする。あちらのモノどもと渡り合うのは、実は大変なこと。とはいえ、そう簡単に悪いことを見過ごすこともできず、大抵の場合、律は巻き込まれ、青嵐も駆り出されることになるのだけれど。

たとえば、人間によって使役される式神であっても、それらは好きで使役されているわけではない。自由を奪われ仕方なくやっていること。術が破れたとき、彼らが襲うのは最も憎むべき相手である術師である。

律は時に危ない橋を渡りながらも、何とかそれらと渡り合っていく。

連作短編といった感じで、基本、どこから読んでも大丈夫な気もするのだけれど(流石に1巻は最初に読んだ方がいいのかな)、時々、時系列がバラバラのお話が(特に祖父・蝸牛関連の話)飛び込んでくるので、その後にも関係のありそうなお話のメモメモ。

ストレートに人に害為す妖魔も怖いけれど、祖父、蝸牛と戯れていたという、妖魔「鬼灯(きちょう」も怖い。長く生きている彼は、遊び相手を求めている。自分のことが見え、対等に話せる律に鬼灯は執着するのだ…。ある種の無邪気さを持つ妖魔に見込まれるというのも、彼には律以外はどうでもいいわけで、身近な人たちにとばっちりがいかないようにするだけでも、結構大変~。

精進おとしの客/青嵐と祖父との約束の話
闇からの呼び声/従姉の司の痣の話
あめふらし
桜雀/尾白と尾黒の話
目隠し鬼
人喰いの庭/
雨夜の衝立/若き日の飯嶋伶と姉の話

水連の下には
見知らぬ花嫁
神借り/従姉の晶が連れて来てしまったモノの話
言霊の木
雪路/律の初めての友達の話
花盗人

封印の家
夏の手鏡
反魂術の代償/祖父の友でもあった、青嵐よりも長く生きている妖魔登場
凍える影が夢見るもの
南の風
青い鱗

■関連記事■
百鬼夜行抄4~6

「うそうそ」/若だんな、箱根で湯治・・・・のはずが?

 2007-01-29-22:42
畠中 恵
うそうそ

「しゃばけ」シリーズ、第五弾。此度、わたくし、図書館で本を借りる悲哀というか、予約システムの悲哀を思い知りましたよ。「しゃばけ 」、「ぬしさまへ 」と、シリーズのはじめの二冊は読んでいたものの、間が抜けたまま、この「うそうそ」が私の手元に来ちゃったのです。間を買おうか迷ったのですが、そのまま、えいやで読んじまいました。

そのせいかどうか、今回はちょっと楽しめなかった・・・。表紙絵は相変わらずの可愛らしさなんですが・・・。珍しくも、少々辛口で行きます。
ある夜、若だんなは揺れとと共に不思議な声を聴く。その声は複数であり、若だんなが邪魔であることを告げる怪しい声、若だんなが死んでしまうと心配する声、若だんなが持っているはずの物を狙う声、そしてお終いには悲しそうな女の子の泣き声・・・。これらの声は一体何を意味しているのか?

さて、江戸ではその後も地震が頻発し、一太郎は籠がぶつかって、軽いとはいえ怪我をする。若だんなの身を心配した母は、稲荷神のご神託もあって、一太郎の湯治を発案する。庭の稲荷神様が言う事には、ゆっくり湯に浸かって養生したら、若だんなも人並みに丈夫になれるかもしれないというのだ。

ところが、この旅は最初から波乱含み。店の横の堀から船に乗って、薬種問屋・長崎屋所蔵の常盤丸に乗り換え、小田原までは海路を行き、後は箱根まで駕籠で行く。たったこれだけのはずだったのに、若だんなの傍を離れた事のない二人の兄やたち、仁吉、佐助が逃げる場所もない海の上、常盤丸の中から忽然と姿を消す。若だんなは兄の松之助と共に、旅を続け、目的地である塔ノ沢の一の湯へと何とか辿り着くのであるが・・・・。

そこで待っていたのは、ゆったりと過ごせる湯治三昧の日々などではなく、手始めに、宿から侍達に攫われた若だんなと松之助の二人は、次には天狗の襲撃を受ける。一体なぜ? そして、突然現れた佐助は、一体何をしていたのか?

ところで、箱根の芦ノ湖には龍神が、神山には父神がいるのだという。かつて、人々は龍神の怒りをおさえるために、芦ノ湖に生け贄を捧げた。そしてある年、人々は身寄りのない、神と人の女との間に生まれた娘を生け贄にした。その行いは、当然、神の怒りに触れ、山は凄まじい勢いで噴火し、芦ノ湖の半分を埋めたのだという。

助けられた姫神の思い、姫神の御守である天狗の思い、若だんなの丈夫になりたいという願い、箱根の雲助、新龍の秘密、新龍のかつての同僚、勝之進、孫右衛門の思い・・・。それぞれが「うそうそと」入り乱れる。

沢山の登場人物がいて、みな其々の思いがあるのだけれど、それらが随分と散漫な印象を受ける。また、ずーっと引っ張る一つのメインの悩みには、どうも共感が出来ない。「しゃばけシリーズ」のいいところの一つは、のほほんと明るい雰囲気に、前向きな姿勢だと思うんだけれど、このメインの悩みのせいで、その辺りが薄れているように思う。ああ、しかし、この後も、彼女、メインのキャラになっちゃうんですかね・・・・。今後は彼女も進歩していることを願います。

ところで、塔ノ沢には実際、「一の湯」があるんですが、あそこってそんな昔からあるもんなんでしょうか・・・。

「邪魅の雫」/待ってました、京極堂シリーズ最新作!

 2006-10-19-22:37
京極 夏彦 邪魅の雫

心の中に、ぽつんと一つ落ちる黒い染み。黒い思い。
白いカンバスに、たった一つ付いた、けれど取れない染み。
それは邪悪な思い。邪な思い。

そういった感情と全く無縁の人はきっといない。けれど、通常はその染みをなかったことにして、またはその上に何か違うものを塗り重ねて、そして生き続けている。―少々後ろめたく思いつつも。

しかし、ここに邪悪な雫があったらどうだろう。美しいその雫は、たった一滴で人を殺す。もしも自分の世界に「それ」が持ち込まれたならば、自分の信ずる正義のために、若しくは自分の世界を壊すために、自らの世界を完結させるために、「それ」を使いたくはならないだろうか・・・。透明な雫の入った小瓶。それは、美しくも邪悪な一滴の集まり・・・。

東京、平塚、大磯で、人が死ぬ。連続しているようでもあり、非連続でもあるようなこれらの事件。警察の捜査は混乱を極め、京極堂シリーズのいつもの登場人物たちを、雪だるま式に捲き込んで、事件はますます錯綜する。一つの事実が判明しても、それは事件の解決の糸口にはならない。でたらめなこの事件においては、それはただ謎の羅列でしかない。

常にない様子の榎木津(だって、楽しそうではないのだ!)、最後に真打として登場する京極堂ではなく、此度活躍するのは、探偵助手の益田に、陰気な小説家・関口、木場修の巻き添えを喰って、派出所勤務中の青木といったところ。

いつも軽薄であることを、上滑りすることを心がける益田、常に世間に対して後ろめたい思いが抜けず、「犯人顔」と揶揄される関口が、この物語の語り手としては相応しいのかもしれない。なぜなら、これは「世界」と「世間」と「社会」の物語であるから。たびたび気鬱の病に襲われ、ただ自分に関係しているというだけで、人の存在が重いのだ、と語る関口の世界と世間、社会とのずれ。上滑りでもしてないと遣っていられない、立っていられない、社会と接続する術を持たない益田。彼ら二人こそがこの物語には相応しい。

京極堂は語る。世界は個人の内部の世界と外側の世界の二つに分けられる。言葉は内側から発せられて、外側に向かうもの。内側においては全能である言葉が、外に出た瞬間に世間という膜に吸収され、大した効力を持たないものとなる。それは既に社会にも届かず、勿論世界になど届く訳もない・・・。

自らの世界と外側の世界、世間、社会と接続する術を持たない者たちは、一体どうすればいいのだろうか。自分の内部の世界と、外側を繋げるのは、時に難しいものとなる。そう、たった一人で世界と対峙しているような、あの榎木津のような男を除けば・・・。青木を諭す、老刑事、藤村がいい。人には出来ることと、出来ないことがある。わしらに出来るのは、目の前のことだけ。目の前に何も見えないと、余計な大義名分が幅を利かせ始めるが、それは驕りだ思い込みだ。今やるべきことは、目に見えるところ手の届くところに犯人を引寄せること。

そうして炙り出された犯人は、ただぼわぼわと自らの世界を膨張させた人間だった。しかし、その世界は決して世間と、社会と互角に渡り合えるものではない。世界を語り、世界を騙る、漆黒の男、京極堂は、いつものように事件を解体し、また構築し直す。

京極堂の今回の語りにおいては、不思議である、怪異であるという解釈をするのは、古代、その世界の王、権力者にしか許されていなかった、というところが面白かった。個人の世界においては、どう解釈してもそれはその者の自由であるけれど、それを公言することは、その昔は罪であった。江戸期、明治、現代(大戦後の昭和)と時代が進むにつれて、解釈は下の者へと降りていった、という辺りには、「後巷説百物語 」を思い出したりね。

「絡新婦の理」もそうだったけれど(勿論、登場人物、シチュエーションその他は異なりますが)、最初と最後の部分がかちりと嵌まるのは、やっぱり快感。最後まで読んで、また冒頭に戻ると、哀しさが際立つように思った。でもさ、基本的に、京極堂って女性には優しいよね。笑 関口なんて、何もしてないうちから、いつも罵倒されてるっていうのに・・・。いや、あの糞味噌ぶりも、また心地良いんだけど。

「ぬしさまへ」/やっぱり妖(あやかし)

 2005-12-02-08:28
畠中恵「ぬしさまへ」

「しゃばけ」 の続編にあたる短編集。

目次
ぬしさまへ
栄吉の菓子
空のビードロ
四布の布団
仁吉の思い人
虹を見し事

相変わらず、すっとぼけた妖(あやかし)たちは愛らしく、若だんな一太郎は体調を崩し気味。つまり、大きな変化はないというわけ。変化といえば、短編の途中で、縁を切られていた腹違いの兄、松之助が、長崎屋で奉公することになることくらい。
とはいえ、「しゃばけ」に比べ、随分と熟れた印象を受けた。

一太郎が安楽椅子探偵となる謎解き物と、脇の人物が主役となる回がある。「空のビードロ」は腹違いの兄、松之助の話、「仁吉の思い人」は千年にもわたる、仁吉の片思いのお話。「虹を見し事」だけは、実際に一太郎が当事者となり、安楽椅子に座るというわけにはいかない。

時々差し挟まれる、一太郎の将来への不安は痛い。とはいえ、一太郎は、大店の若だんなで、両親に溺愛されているという、自分の立場に安住しない所がいいのだ。彼は内省的で、周囲の者たち(人であれ、妖であれ)に分け隔て無く優しく出来る人柄。今後は、どうなっていくのだろうね。
*********************************************
さて、一番気に入った「仁吉の思い人」について。

仁吉の思い人は、やっぱり妖(あやかし)で、年上の吉野どの。吉野という名は、平安の御世、女房として暮らしていたときのもの。妖(あやかし)は恐ろしく長命だから、人の世にいる内は、時々名を変え、住む場所を移さないと、人ではないことがばれてしまう。

仁吉の初恋の妖(あやかし)、吉野を振り向かせたのは、宮廷に仕えていた一人の若い公達だった。仁吉は妖(あやかし)と人間との恋の行方を心配するが、男は吉野の真の姿を知ってなお、気持ちを揺るがす事は無かった。彼は銀の鈴を吉野に贈り、二人はその音を合図に、逢瀬を重ねた。しかし、人というのは弱いもの。男は三十路にも届かないうちに、身罷ってしまう。

周囲の妖(あやかし)は、これでこの恋は終わったのだと口々に言ったけれど、吉野は諦めず、“鈴君”を待って人の世に留まり続けた。そして、三百年後、再び巡りあった二人は互いが分かったのだ。本来、人は何もかもを忘れてから、再びこの世に来るというのに・・・。今回、共にいられた日々は五年程。そして、また吉野の一人待つ時間が続く。その後も数百年の単位で、何度か繰り返して出会う事が出来た二人。仁吉は常にそれを傍で見守っていた。

そして、このお話のメインは、”鈴君”なのかどうか、吉野にも判断出来なかった、江戸時代における出会いのこと。微かに鈴の音が聞こえる、弥七は”鈴君”なのか?
仁吉はただの人である弥七に対し、どうにも心が騒いで仕方が無い。千年もの長きにわたる片恋。これは嫉妬なのか、それとも吉野の危険を察してのことなのか。仁吉は、弥七の問題にきっちり片をつけることを決意する。そして、その後は・・・。

ちょっと乙女チックに過ぎるかもしれないけれど、ずっと傍で見守ってくれる人がいるだなんて、いいなぁ~と思った。数百年もの長い間、一人で待ち続けなくてはならないのは、嫌だけれども。そして、仁吉は吉野を思い切ることが出来たのかなぁ。

畠中 恵
ぬしさまへ
 ← こちらは新潮文庫?

「しゃばけ」/妖(あやかし)

 2005-11-24-08:18
畠中恵「しゃばけ」

江戸十組の株を持つ、廻船問屋の大店である、長崎屋の一人息子、一太郎には、身体が弱く、両親に溺愛されているという他に、ちょっと人とは違う所があった。それは、妖(あやかし)の者達が見えるということ。
五つのときから、祖父につけられて一緒にいる、佐助、仁吉も、実は犬神と、白沢(はくたく)という妖の者。

一太郎は極端に身体が弱く、何度も死にかけた身なものだから、「薬種問屋・長崎屋」を任され、「若だんな」と呼ばれるようになっても、いつも周りの者に気遣われてばかり。そもそも、長崎屋が「薬種問屋」を始めたのも、身体の弱い彼のために薬種を方々から集めている間に、商いが大きくなって一本立ちさせたという経緯がある。齢十七では真実店を切り回せるわけもなく、一太郎はほんの形だけの「若だんな」である。そんな自分を不甲斐なく思うのだけれど、人一倍弱い身体はやはり如何ともし難いもの。

冒頭は、そんな一太郎が独り夜歩きをする場面。彼が供の者も連れず、夜歩きするのは初めてのこと。また、よりにもよってこの夜歩きの際に、人殺しと行き会ってしまう。付喪神・鈴彦姫のお陰でこの危機を何とか逃れ、無事に店へと帰りつくが、一太郎にはこの夜歩きの理由を、周囲の人間に語ることの出来ない理由があった。この理由については徐々に明かされるのだけれど、これは自分の弱い身体、周囲への気兼ねとも無縁ではない。

ある日、一太郎と仁吉は、「命をあがなう特別な薬」を求める客に襲われる。犯人はぼてふりの長五郎で、冒頭の殺人も彼の手によるものであることが分かる。しかし、江戸の町では以来、薬種屋が襲われる事件が相次ぐ。
一太郎と仁吉を襲った犯人は、直ぐに捕まったはずなのに、一体なぜ?
また、薬種屋が襲われた際には、一太郎たちの場合と同じく、下手人が薬を欲しがっている様子が見られたという。下手人が変わりながらも、薬を求めて薬種屋が襲われる事件は止まらない。

この一連の事件は、一太郎の出生の秘密と重なっており、彼は自分の弱い身体、これといった妙案があるわけでもない事を知りながらも、「敵」と対峙することを決意する。そう、見越の入道の言葉の通り、彼もいつまでも甘えてはおられないというわけ。

「まあ、妖の年からみれば、ほんの生まれたてというところだが。人の身なれば、いつまでも甘えてばかりではおられまいよ」
*****************************************
ちょっと軽いかなぁと思う場面もあるのだけれど(ラストの対決とかね)、愛らしい子鬼の鳴家(やなり)、少々色っぽい屏風のぞきなど、なかなかに魅力的。この「しゃばけ」は、第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞したとのことで、江戸捕り物帖を期待する人にお勧めすることは出来ないけれど、江戸ものファンタジーとして、私は好感を持ちました。宮部みゆきの手による江戸もののような、熟れた雰囲気はないのだけれど、その分素直でのびのびしている感じ。続編もあるようです。一太郎の腹違いの兄、松之助の今後も気になるところ。

一太郎の幼馴染、表長屋の菓子屋の跡継ぎ、栄吉との会話もいい。十七ともなれば、自分の置かれている立場をきちんと把握しているもの。どうにもお菓子作りが上手くならない、一人息子の栄吉の立場も辛いのだけれど、「現し世はきびしいし、「世の中、願ってもどうにもかなわない事はあるもんだ。とはいえそんな中、一太郎も敵と対峙することで一回り成長し、御付の二人の妖からも、大人扱いされるようになるし、栄吉もまた自分のペースで成長する。菓子屋の命である、美味しい餡を作ることが出来るようになるのは、今しばらくの時が必要になるかもしれないけれど・・。

 ← 私が読んだのはこちら
畠中 恵
しゃばけ
 ← 既に文庫化されています

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「倉橋由美子の怪奇掌篇」/幻想的な

 2005-10-27-09:07
倉橋由美子「倉橋由美子の怪奇掌篇」

目次
ヴァンピールの会
革命
首の飛ぶ女
事故
獣の夢
幽霊屋敷
アポロンの首
発狂
オーグル国渡航記
鬼女の面
聖家族
生還
交換
瓶の中の恋人たち
月の都
カニバリスト夫妻
夕顔
無鬼論
カボチャ奇譚
イフリートの復讐

どれもごく短い幻想的なストーリー。目次を見ても、なかなかに妖しげなタイトルが並んでいる。秋の夜長に如何でしょうか。

私が好きなのは、「首の飛ぶ女」「事故」

「首の飛ぶ女」は、夜毎、恋しい人の下へ首を飛ばす美少女の物語。語り手である「私」の父の友人Kは、戦地から引き揚げる際に、中国人の女の子を連れ帰ってきた。美しく成長した彼女は、実は飛頭蛮と呼ばれる種族の一員であった。この種族は、夜中に頭が胴を離れて飛びまわるという、変わった習性を持つ。Kと彼女との関わり、また生前の「私」の父との関わりとは。

首を飛ばすって随分野蛮な話に聞こえるけれど、そこは倉橋由美子さん。美しいです。美少女の首が窓の外にやって来たら、やっぱり家の中に入れてあげて、お話したくなるのだろうか。

「事故」は、突発性溶肉症にかかってしまった小学生、山口勉君のお話。ある秋の夜長、つい湯槽の中でうとうとしてしまった勉君は、すっかり骨だけの姿になってしまう。

起きたら虫になっているのも困るけれど、骸骨になってしまうのも困るよね。でも、すかすかして、気持ち良いのかも(冬は寒いか?)。


そういえば、「読書感情文 」のぐたさんの所で紹介されていた、「おとぎ話占い」自分の診断結果、「かぐや姫」の記述に違和感を覚えたのは、この本の中の「月の都」の荒涼としたイメージが頭にあったからかもしれない。確か、倉橋由美子さんのその他の短編でも、「かぐや姫」は結構冷たい性格に描かれていたように思う。

その他、「アポロンの首」は、別の物語「ポポイ」 (美少年の首を飼うというお話)の元になっている。

倉橋 由美子
倉橋由美子の怪奇掌篇

■おとぎ話占いはこちら
■ついでに、「かぐや姫」の性格分析。
 
かぐや姫のあなたは、心の優しい穏やかな人。人との調和を大切にし、良くも悪くもとびぬけることが好きではありません。人には親切で、けんかや言い争いは嫌い。少々気に入らないことがあっても、騒ぎ立てずにがまんしてしまいがち。とはいっても、意志が弱いわけではなく、本当はとても頑固。人のアドバイスを聞くことは聞きますが、それで自分の考えを変えることはありません。凝り性のところがあり、自分の仕事が好きな分野にはまると、思う存分力を発揮できます。

「とても頑固」しか合ってない所が、悲しいなぁ。

☆関連過去記事「夢の通い路」/ 異世界との交歓

「夢の通い路」/異世界との交歓

 2005-09-28-08:32
倉橋由美子「夢の通い路」

倉橋さんの小説は、典雅でありながらエロチック。現実の世界と、こことは違う世界との境界が曖昧になる感じがする。これは「桂子さんシリーズ」の内の一冊。

背表紙にはこうある。

現世と冥界を自在に往来し、西行、式氏内親王、定家、則天武后、西脇順三郎たちとくりひろげる典雅な交歓と豊潤な性の陶酔。「大人のための残酷童話」の著者の奔放なイマジネーションが、時空を超えて媚薬の香りに満ちた世界へ読者を誘う。幻想とエロティシズムの妙味を融合させた異色の文芸連作二十一編。

冒頭はこう。

夜が更けて犬も子供たちも寝静まった頃、桂子さんは化粧を直して人に会う用意をする。誰にも話していないことであるが、それは別に秘密にしておく必要があってのことではなくて、話す必要がないので黙っているだけのことである。大体、別の世界があってそこの人たちと付き合っているというような話を理解してもらうのは、考えただけでもむずかしい。

これは、「桂子さん」と別の世界の住人たちとの、交わりの話。

目次
花の下
・・・こちらの世界では「佐藤さん」である「西行さん」との話
花の部屋・・・『とはずがたり』の二条のパパ、後深草院の話
海中の城・・・「トリスタンとイズー」が飲んだ媚薬の話
媚薬・・・式氏内親王と「定家さん」の話
慈童の夢・・・「定家さん」ご推薦の美少年、慈童の話
永遠の旅人・・・西脇順三郎と食す、霊魂の実の話
秋の地獄・・・地獄から能舞台に現れた、深草少将の話
城の下の街・・・現世の知人と共に迷い込んでしまった地下街の話
花の妖精たち・・・近所に引っ越してきた、完璧な美少年と美少女の話
月の女・・・月の世界の住人、嫦娥と、蝉丸の話
遁世・・・「西行さん」に学ぶ遁世の心得の話
雲と雨と虹のオード・・・緑珠に学ぶ巫山の夢(房事の術)の話
黒猫の家・・・ポーの『黒猫』を思わせる話
赤い部屋・・・処女の血を好んだ、エルゼベート・バートリ伯爵夫人の話
水鶏の里・・・六条御息所に紹介された紫式部の話
蛍狩り・・・紫式部に連れられて見た、和泉式部から舞う霊魂の話
紅葉狩り・・・桂子さんの誕生会に集まった鬼女たちの話
蛇とイヴ・・・ある学会に現れたHeavahay博士(Yahaveh)の話
春の夜の夢・・・鬼女になってしまった愛人の話
猫の世界・・・トバモリーのような猫、ポザイと暮らす母娘の話
夢の通い路・・・死者との「夢の通い路」を塞ぐ話

元になっている話を全て知っているわけではなく、大方は雰囲気で読んでいるのだけれど、たまに読み返すとこちらの知識量が若干増えて、以前は分からなかった所が分かるようになったりする。一編ずつはとても短いお話なのだけれど、独特の世界に酩酊する。「蛇とイヴ」以降は、桂子さんの物語ではないのだけれど、同じくこちらの世界だけではなく、妖かしの世界とどこかで繋がっている話。

倉橋 由美子
夢の通ひ路
←講談社文庫のものは取り扱われていないようで、これは単行本です

☆関連記事→「ポポイ」/首を飼う

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「もののけ化石の物語」/あやしの世界

 2005-07-30-11:37
葛城 稜, 高田 美苗
もののけ化石の物語
新紀元社

時間に追われて慌てて借りてきたので、実は普通の化石の本と勘違いしていた。でも、これはそうではない。現実ではないあやしの世界のお話。

白髪の翁、平田氏の蒐集品を見せてもらうことになった、青年「私」が描き記したもの。主人公の「私」はこんな素養をもつ人物。

幼い頃から私は目には見えないものの<気配>を感じることがあった。だが、木々の枝や草の葉の下に”なにか”を見ても、信じてくれる人はいない。確かにいると感じるから、私は感じとったものを描いている。

目次
序の物語/全体地図/単眼類/多頭類/一角類/水精類/半獣人類/半魚人類/有翼人類/有翅妖精類/小人類/巨人類/人頭蛇身類/龍類/終章

私でも知っているようなものが大半だったので、そうマニアックな本ではない。マニアックな楽しみ方は出来ないけれど、精緻な絵や、翁による独特の語りの雰囲気は、ぐでんぐでんに暑い日々が続く、こんな時期にいいかもしれない。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、御連絡下さい。
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つな がる

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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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