スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「怪しげな遺産」/イギリスの田舎屋敷

 2009-01-27-23:08
怪しげな遺産怪しげな遺産
(1995/05)
メアリー ウェズレー

商品詳細を見る

表紙の美女と、訳者の南條竹則さんに惹かれて借りてきました。

迷っていた時に後押しされたのは、普段は見ない、後ろの「訳者あとがき」における「メアリー・ウェズレーの愛読者たちは、しばしば彼女をジェーン・オースティンに比較する」という一文。結局、まだジェーン・オースティンを読めてはないんだけど、イギリスのそういう観察眼が好きだなぁ、と。

巻頭に「『怪しげな遺産』人物相関図」が載せられているんですが、これがまた「じつは○○の子」なんて表記があったり、普通に「不倫」なんて関係性を矢印で示してあったりして、何やらややこしい気配。

とはいえ、舞台はイギリスの田舎屋敷だし、みんな、中上流階級の人間だし(その中で、本人たちは色々区別というか、自負が色々あるみたいだけど)、通常だったら平穏なお話だと思うのです。ここに爆弾のように投下されるのが、結婚して屋敷に到着して以来、ベッドに寝付いてしまった絶世の美女、マーガレット。彼女は寝室を金色+鏡だらけにしたり(ちょうど、表紙がそういう絵なんだね)、旦那を殴ったり、自分では何もやらなかったりとやりたい放題。彼女をベッドから出そうと画策する人物もいるのだけれど、彼女がベッドから立ち上がる時、必ず悲劇が起こるのだ…。

マーガレットと結婚したのは、父の臨終の頼みを聞いた、田舎屋敷コットショーの主人、ヘンリー・ティロットスン。彼の少々殉教者的ダンディズム、長い手足、鷹揚なところは、若い娘たちを惹きつける。

父に対し、屈折した気持ちを持っていたヘンリーは、父が生きていた時と同じようなパーティーをコットショーで執り行うことを思いつく。そうしてやって来た、二組のカップル、ジェイムズとバーバラ、マシューとアントニアは、その地で婚約し、たびたびこの地を訪れる生涯の友人となる…。

時は過ぎ去り、代すらも変わっていくというのに、マーガレットは変わらない。その他の人物は、打算や正直な思いがあちこちで窺えるのだけれど(具体的にどうこう書くのが難しいけど、こういうのは成功すると面白いですよね~)、最後まで良く分かんないのは、このマーガレットとヘンリーの心情かなぁ。何が気に入らないのかベッドに入ったまま、基本は旦那を侮辱する態度に出つつも、離婚はしない。でも、ある意味無邪気で好き勝手やってるマーガレットって、不思議と憎めないのです。

訳者あとがきには、「とんでもない小説である。世の中と読者をナメている」とあるんですが、自分が伏線を読み飛ばしちゃったんだか、ほんとにこの「ナメ方」で良いのか、いま一つ判断できず。ネットで検索してみても、読んで感想あげてる人も見つけられないし~。でも、「唖然とした」ってことなので、そういうことで良いのかしら。
イギリスのマーガレット奥さんといえば、また一味違う奥さんがここにいます。
→「マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (旅情篇)」/二人で旅せば
 「マーガレットとご主人の底抜け珍道中 (望郷篇)」/二人で暮らせば
(「訳者あとがき」にも、「尊敬する漫画家・坂田靖子に『マーガレット奥さんとご主人の底抜け珍道中』というシリーズがある。」とありました。南條さんもお好きなのね、とちょっと嬉しい。)
目次
第一部 一九四四年
第二部 一九五四年
第三部 一九五八年
第四部 一九五九年
第五部 一九九〇年
訳者あとがき 南條竹則
スポンサーサイト

「寿宴」/宴は続くよどこまでも

 2006-11-09-22:54
南條 竹則
寿宴

野を越え、山を越え、そう、そして谷さえも越えて!!!

目次
寿宴
秦檜
点心厨師

「寿宴」は、南蝶氏(時に、でふ氏)のお仲間たちの宴の算段や、その様子を描いたもの。多分、この作品の前に「満漢全席―中華料理小説」があるんだけど、南蝶氏や仲間達の宴は、中国杭州でのただ一度の満漢全席では終わらなかった!

メインは、でふ氏の恩師、甘木先生の喜寿のお祝いでもある、寿宴のお話かなぁ。昼も夜も、前菜を含めて七つのコース! コースごとに料理が三品に、さまざまな余興付き。

何せ、前回の「満漢全席」は日本ファンタジーノベルの賞金で行われたものだったけれど、今回はそういった当ても少なく、バブルも弾け、宴の実現には若干苦労されている模様。でも、宴には主がいなければならず、みんなで平等にお金を出す民主主義の宴会なんて、宴会とは言えないのだそうな。そうか、宴会の主はまさに主なわけね。途中、寝ぐらである原宿の家を父上に売られそうになったり、これはほとんど「猫城」 の世界。自分の身に起こった事を、このすっとぼけた筆致で、さらに空想の世界に遊ばせてしまわれるのかしら。

「秦檜」
「中華文人食物語」 の憎い敵を食べる話から採られたような話。甘木先生が主人公。

「点心厨師」
榊が出会った不思議な屋台の話。

ご馳走の数々にしても、何せ中国四千年の歴史ある料理なわけで、気合が入り過ぎていて(?)あまり羨ましくはないのだけれど(駱駝の足とか! 流石の面々も辟易するような臭いがあるんだそうな)、この御一行の様子は本当に楽しそう。うー、どこかから、こっそり覗き見てみたいよな、この御一行。

「幽霊船」/不思議のカケラ、小さな少年、満たされぬ思いを抱える者。それらのスケッチ

 2006-09-23-23:26
 
リチャード ミドルトン, Richard Middleton, 南條 竹則
幽霊船 

リチャード・ミドルトンは、夢を持ち、詩を詠み、散文を書き、極少数の篤い友情に恵まれたけれど、その生涯は不遇の作家だったという。
「幽霊船」による成功の直前、二十九歳の誕生日を迎えてまもなく、異郷の地、ブリュッセルの下宿で自殺を遂げた。

これは、そんなミドルトンがものした、スケッチのような小品集。

最初の「幽霊船」から、徐々に不思議の占める割合は薄くなり、「ある本の物語」辺りからは、世界はほぼ現実に着地する。実際に刊行されたものから、訳者の南條さんが順序を大きく変更したとのことであり、これも関係しているのかな。

特に好きだったのは、不思議系では「幽霊船」「奇術師」
現実系では「新入生」「大芸術家」

「幽霊船」
:ある嵐の日、フェアフィールドの村のかぶ畑に、幽霊船が座礁した。半幽(はんばけ)に見える船に乗った、バーソロミュー・ロバーツ船長が言うには、少々港の奥に来過ぎたようだけれど、彼らは人員補充のために立ち寄ったとの事。ここは海から50マイルも先だってのに!

フェアフィールドは不思議が満ちる村。大抵の事では驚かない村人達と、共に暮らすのはご先祖の幽霊たち。ところが、この幽霊船がやって来てから、大人しく上手く共存していた幽霊たちと村人達との仲がおかしくなり・・・・。

なんてったって、かぶの畑に乗り上げた船、という設定がいい。どこかの田舎町には、こんなことがあるのかもね。船が去って以降も、このかぶ畑で取れたかぶは、ラムの味がするってことだ。

「奇術師」
:奇術師が行った、オーディションを兼ねた舞台上のトリック。
観客は大受け、興行主も大喜びだけれど・・・。

「新入生」
:他の男の子達とは違う事に悩む繊細な少年。
イギリス版、「銀の匙」(中勘助)といった趣き。

「大芸術家」
:夢を持ち、自負を持ちながらも、倒れゆく芸術家。
芸術家の胸にぽっちり灯った希望が切ない。

全編、程よい感傷と、疎外された感受性と、それでも尚強い自分の中での自信のようなものを感じた。

目次
序 アーサー・マッケン
-----------------
幽霊船
ブライトン街道で
羊飼いの息子
棺桶屋
奇術師
逝けるエドワード
月の子たち
園生の鳥
誰か言ふべき
屋根の上の魚
小さな悲劇
詩人の寓話
ある本の物語
超人の伝記
高貴の血脈
警官の魂
幼い日のドラマ
新入生
大芸術家
雨降りの日
-----------------
解題
ミドルトン小伝

「恐怖の黄金時代」/怖い話は好きですか?

 2006-04-13-22:21
私は、「アーサー・キラ・クーチ」(本書では「その他」扱いの、通称「Q」。この本 とかこの本 とか。しかし、「Q」などと言われると、スタートレック?とも思う)と、著者の南條さんに惹かれて、この本を借りてきたのだけれど、これが面白かった! とら さんのところで、お馴染みのダンセイニ卿、ラヴクラフトについても、何だか分かったような気になりました。

南條 竹則
恐怖の黄金時代―英国怪奇小説の巨匠たち
集英社新書


目次
はじめに
第一章・・・四大の使徒    
      -アルジャノン・ブラックウッド
第二章・・・セント・ジョンズ・ウッドの市隠
      -アーサー・マッケン
第三章・・・師匠と弟子    
      -ダンセイニ卿とラブクラフトについて
第四章・・・ケンブリッジの幽霊黄金時代
     -M・R・ジェイムズその他
第五章・・・霊魂の交わるとき
     -メイ・シンクレア
第六章・・・レドンダ島の王たち
     -M・P・シールとジョン・ゴーズワース
第七章・・・魔の家を見し人は
     -H・R・ウェイクフィールド
「枠の中の顔」 付録-M・R・ジェイムズ最後の怪談
あとがき
参考文献一覧

第一章からはブラックウッドについて。ブラックウッドの身上は「大きさ」であり、いまだ大地の始原の力が息づいている土地によって、霊感を吹き込まれた彼の小説は、「自然」が彼を憑坐として、大いなる声で語っているとも言える。

第三章からは、ラヴクラフトについて。神話を、宇宙そのものを創りあげたダンセイニに心酔し、同じく古典や過去の神々を借りる事をせず、幻想境に遊んだラヴクラフトであったが、聡明な彼は他人の亜流たる事を良しとしなかった。ラヴクラフトは「小さき神々」の別天地に遊ぶ事をやめ、その代りに現実の、彼の時代の地球上に、禍々しき暗黒神の一群を連れてくる。クトゥルー、ダゴン、ヨグ・ソトホート、ニャルラトホテプ、”旧支配者”、これら「異界の神々」は、孤独な詩人が人間に追われた神々の復讐をするために召喚した「別の神々」に他ならない。

うーん、読みたくなってきたぞ~。

「怪奇小説」とはただ怖~い物語をいうのではない。それは古めかしくも、香気溢れる物語。人は「怪奇」の向こうに、自然の神秘や、その力に対する畏怖、日常世界の危うさを見るのかもしれない。とすると、美しい自然を持つ、英国や日本で香り高い怪奇の書が生まれたのも、何だか分かる話。

で、「あとがき」を読んで、またまた南條さんってすごいなぁ、と思ったことをついでにメモ。

中学三年の文化祭の時のこと-文芸部の部屋に行ったら、客は誰もおらず、部長である友人が一人で吉川幸次郎全集を読んでいた。この友人は中学時代から漢文学の研究を志し、今はさる大学で教鞭を執っている。漢文などそれこそチンプンカンプンのわたしに、閑なので、阮籍の詠懐詩についてひとしきりレクチャーしてくれた。
わたしはそのおかえしに怪奇小説の話をすることにした。急遽特別講演を行うということで、その部屋に人を集め、一時間くらいしゃべったのである。七、八人は聞き手がいたと思う。話した内容は忘れてしまったが、ただ「ラヴクラフト!ラヴクラフト!」と連呼したのだけは記憶に残っている。

なんだか豊かな中学生活。

さて、ついでに過去記事のサルベージ

・南條竹則 「ドリトル先生の英国 」?
・南條竹則 「中華文人食物語
 一方では英国に関する本があり、またその一方では中国の食に関する本もある(で、上では「漢文などチンプンカンプン」と書かれておりまするが、これを読むと決してそんな事はないことが分かる。というか、それは中学時代限定の話?)。?

・南條竹則 「酒仙 」?
・南條竹則 「猫城
 「猫城」なんかは、本書にもちらりと登場する、萩原朔太郎の「猫町」的でもあり、これもまた一種の怪奇小説?

・小田卓爾 「ふり返らない少女-英国21人の幽霊たち
 「黄金の~」では、ケンブリッジの教授による怪奇譚が語られるけれど、こちらはオックスフォードの日本人留学生が出会う幽霊の話。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「中華文人食物語」/南條竹則氏の薀蓄いっぱい

 2006-03-13-21:07
南條 竹則
中華文人食物語
集英社新書

これまで、「猫城 」、「酒仙 」などの南條作品を読んできて、その背後には恐るべき量の薀蓄があることを感じていたのだけれど、物語の中では薀蓄はあくまでさらり。そんなわけで、南條さんは薀蓄をもっと聞きたい!と思ってしまう稀有な作家。

そして本作では、その薀蓄の数々が滔々と流れ出る!
(いや、語り口は、割とつらつらと、なんだけど)

目次
東坡肉
蘿蔔漫談
覇王別姫
一字乾坤

チャプスイの話
馬肝
犬と魯智深
憎い敵を食べる話
袁枚と王小余

そうだなー、南條さんは、気軽な軽装版であり、独酌の肴にでもしておくれ、と書いていらっしゃるのだけれど、こう、目次を見ても分かるかな。情けないけど、漢字が難しくてですね、ちょっと読み進むのに苦労しました。漢字は書けないものでも、読むのは大丈夫!と思っていたのだけど、いや、読むほうも全然駄目になってました・・・。

興味深かったのは、「蘿蔔漫談」と「一字乾坤」、「憎い敵を食べる話」の章。

「蘿蔔」は、「らふく」とふってあるけど、中国語では「ロオポ(luobo)」と読み、これは大根のこと。日本の大根のように辛くはなく、むしろ果物の一種のように取り扱う。これに絡めて語られる話の一つ(薀蓄はまだまだあるのだ~。笑)は、張果老という”八仙”の一人が子供の頃のお話。何とも大らかな伝承で、こういうお話、好きです。

一字乾坤」は、海鼠の料理の名前。ナマコには頭も尻尾もない。故に初めもなく、終わりもない。”乾坤(宇宙)”と同じだというわけ。海鼠が宇宙か~と思うと、ちょっと遠い目をしそうになりますが、かっこいい名づけ方だよなぁ。

憎い敵を食べる話」は、まさに文字通り! 憎い敵、食べたいですか? 南條さんも書かれているけど、食べちゃいたいほど好き、というのはあっても(?)、憎いから食べたいというのはあまりないように思うのだけれど・・・。中国には料理となって、今でも食べられ続けている人たちがいる。その一つは油炸檜。宋の時代に、敵国と密通して、忠臣を殺害した秦檜夫婦の不正を憎むあまりに、人々が彼らに見立てて小麦粉で二本の棒を作り、油で揚げて「釜茹での刑」にすることで恨みを晴らしたため、この名前が付いているのだそうな。もう一方、秦の始皇帝もまた、チョウザメの骨となって、二千年以上煮たり揚げたりして、食べられている。まったく、「恨みというものは買わないに如くはないネ」なのであります・・・。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。

「酒仙」/酒星降臨!

 2006-01-11-09:23
南條 竹則「酒仙 ?

calix meus inebrians quam praeclarus
(かりくす めうす いねぶりあんす くあむ ぷらえくらあるす)

いきなり佳境から引いてしまいますが、これはラテン語。最初の部分は比較的時がゆったりと流れるので、退屈される方もいらっしゃるかもしれないけれど、ラストの佳境の部分はほんとに燃えます。この言葉は、一体ナニ?と思われた方(特に酒飲みの方)は、是非読んでみてくださいなー。

さて、本の筋に戻って、最初から。主人公暮葉左近は、御開府以来江戸に住み暮らし、巨万の富を築いた旧家に生まれたのだが、現当主、左近から数えて七代前、暮葉家に突如として異変が起こる。すなわち、代々下戸でしまりのよい人間ばかりだった所に、中年に至って升酒の味を覚え、生涯大酔した当主が現れたのだ。以来、一族は代を重ねるごとに酒量が増え、身すぎ世すぎの才覚と情熱は、それに反比例してすぼまっていく・・・。そして左近に至って、とうとう暮葉家の経営は立ち行かなくなってしまった。奉公人には一人残らず暇を出し、屋敷も明日には債鬼に明け渡さねばならぬ。

どうにもならなくなった左近は、ぬる燗をした濃い飴色の紹興酒、特級品の状元紅の中で、今にも酔蟹となって死なんとす!そこに現れたるは、蓬莱八仙の一人である鉄拐李。左近の額にあるしるしを認めた鉄拐仙人は、左近を抱えて、仙界へと舞い戻る。左近の額にあらわれたるは、実は「酒星のしるし」であった。千年に一度、その身に酒星をおびた人間が生まれるのは、仙人たれば誰もが知っていること。酒星とは千年紀が生命と活力の盛りをすぎて、天地に滅びの影がさす時、世界を救う人間として選ばれる救世主のしるし。

虫の息であった左近は、南総里見城跡、苔むした石塔の後ろ、秘密の岩窟の奥深くに潜む、秘教・金樽教の神殿にて、聖徳利の秘蹟を受け、息を吹き返す。聖徳利の秘蹟によって蘇った左近は、「徳利真人」となる。ちなみに、抱樽大仙によると、二千年ばかり前に、ゴルゴダの丘で尺解を果たした小僧もいた、とのこと。 救世主(メシヤ)となった左近は、膳部のどぶ六を御付として、酒徳を積むことになる・・・。といっても、飲んで飲んで飲みまくってるだけという気もしますが。浅草の飲み屋においてはニライカナイの酒を飲み、小岩の中華では竹葉青酒を飲み、しかもそれぞれの場所は、龍宮と崑崙山に繋がっていて、勿論そこでも酒を飲み・・・。つまみもまた美味しそうなんだ。

救世主たる左近、楽しんでばかりはいられない。左近は、崑崙山で出会った酔悟大法師(ひょうたん老人)に聖徳利が盗まれたことを知らされ、「聖酒変化」のレクチュアを受ける。聖徳利を盗んだのは、三島酒造の三島という男。地獄の眷族に加わった、三島が造る酒は魔酒。三島に、「聖酒変化」に必要な聖杯までもが奪われてはならない!

ようやく救世主らしくなってきた左近、三島と渡り合い、聖杯があるという山梨は勝沼、くれない谷へと乗り込んだ。時はまさに百年に一度の酒星降臨。いざ、聖酒変化の儀をつとめようぞ!

千年に一度の聖酒変化の儀。聖徳利と聖杯、二つの神器が二人の持主の手に分かれた今回の仕儀は、左近と三島、二人が秘祭を行うという極めて異例のものとなる。酒星に詩をうたい、言霊の力を借りて、酔心を捧げるのだ。さあ、勝つのはどっち?三島は李白の漢詩、左近は「ルバイヤート」の助けを借りる。詩が酒星を喜ばせれば、聖徳利から美酒がとくとくと流れ出る。

クライマックスは勿論、聖酒変化。酒仙も下戸も、魔酒の輩もなく、果てしない祝宴が始まる。男も女も、老いも若きもさては酔いしれるばかり。この夜、生きとし生ける者はみな、いいがたき恍惚を味わい、<アラヤ識>は無限の孤独の中で、かぐわしき夢を見る。

お酒を飲んだら、酔わなくちゃいかんぞ―酔わんような酒を飲むんじゃないぞ―

美酒に酔い痴れるような物語。個人的にいいな、と思ったのは、くれない谷の美少女当主、「くれないぶどう」のキャラや、ラスト勝ち負けがついた所で、誰もが楽しめるところ。敵であっても、いつまでも敵ではないところかなぁ。読む前から注意されていたことですが、お酒が飲みたくなります。笑(つまみもまた、いいんだ~)

 ← 文庫でも出ているようです

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
+++++++++++++++++++メモ+++++++++++++++++
◆ 紹興酒、状元紅については、『
中国まるごと百科事典 』さんの、
                          中国酒→黄酒に詳しいです
アラヤ識 (阿頼耶識)(Wikipediaにリンク)
◆「
ルバイヤート 」(Wikipedia にリンク)
◆作者、オマル・カイヤーム(リンクではウマル・ハイヤーム)
  に関しては
こちら (同様にWikipediaにリンク)

「猫城」/どこかにあるかも? 猫の世界

 2005-12-15-09:16
オンライン書店ビーケーワン:猫城
「猫城」
南條 竹則著
東京書籍

無宿人となった詩人である「我輩」は、K大学での講演を切っ掛けに、九州の泉都である、とある温泉地に流れ着く。そこで「我輩」は、隻眼の大きな虎猫(「政宗」と名付けた)に出会う。政宗は、町のそこここに貼ってある、お霊符(「此処に犬猫を捨てるな その家に禍が起こります」&呪いの字を書き付けた霊符)を剥がそうと試みており、彼に助力を請われた「我輩」は、お霊符を引っぺがしてやった。

政宗達に品定めをされた「我輩」は、どうやらそれに合格したらしい。講演料も底を尽きた「我輩」は、彼ら猫の導きにより、神乃輪の「くじら荘」に宿を移す。後からやって来た老人(”猫ひげ”とでも呼んでくれ)には、毎晩美味い料理を振舞ってもらえることになる。

さてさて、うまい話には、通常の場合、裏がある。彼ら猫族の望みとは一体何か?それは猫文字で書かれた巻物「万猫譜」(猫神からはじまって、かくれもない猫族の系譜が綴ってある)に、「神乃輪の猫の歴史」の続きを書けということ!
「我輩」は勿論人間だから、「猫文字」を簡単に解するわけではなく、「猫文字」を理解するまでの努力もまた、涙ぐましい。

更に「万猫譜」とは、実は天のお役人にご婚礼の儀を願い出るための書類であった。天官様に楽しんで頂く、口語体の部分が終わったら、次は駢儷文”ニャンスクリット”で上奏文を書かねばならない。お輿入れまでの時間が迫る。鍋島の猫姫様の嫁入りには、果たして間に合うのか?

またこの輿入れにより、神乃輪の猫達が強力な後ろ盾を得て、猫城が建つことを快く思わない、葱坊主のようなバケモノ<アラダマ>の妨害から逃れ、無事神乃輪の猫達の願いは叶うのか?

最後は「我輩」という一人称は、これのためだったのか、という終わり方。
ま、それは大方予想がつくかものかもしれませんが。

話は荒唐無稽だけれど、温泉の描写、”猫ひげ”の作る料理、美麗な駢儷体”ニャンスクリット”、「万猫譜」に記された猫の話などが、独特のリズムある文体で語られ、面白かった。 南伸坊氏による装丁の、すっとぼけた風のある、「猫殿様」の絵も楽しい。

しかし、これ、「
ドリトル先生の英国 」を書いた人とはとても思えないし、更にこの著者は、tujigiriさんが紹介されているような、こんな小説(tujigiriさんの記事はこちら→「酒仙」南條竹則 / 芳醇なる教養ファンタジー )も書かれている方なんですよね。

巻末の著者経歴から抜書きすると、1993年『酒仙』で第五回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。賞金で中国浙江省にて宮廷料理「満漢全席」の大宴を開き『満漢全席』を著す」そうであります。満漢全席なんて、漫画でしか見たことないよ・・・。tujigiriさんの『酒仙』の記事を読んだ時も、只者ではないな、と思ったのですが、やはりすごい人のよう。お酒にも食べ物にも温泉地にも造詣が深く、且つ「西洋史学科卒業、同大学院英語英文学修士課程終了」ってすごいよね。『酒仙』も読んでみるべきかな。

 
南條 竹則
猫城

*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
03 | 2017/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。