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「香菜里屋を知っていますか」/ビアバー、香菜里屋。その由来と幕引き

 2008-01-19-09:19

北森 鴻

香菜里屋を知っていますか


これにて、≪香菜里屋≫シリーズは打ち止めということらしいのですが、まだ四作目なんですよね、うーむ、勿体なーい。

さて、こたび、語られるのは、店主・工藤の事情。謎解き場面では前面に出張って来たとは言え、一応黒衣の存在であることが求められたバーの主人としての顔ではない、工藤個人の顔の話。彼の過去には何があったのか、彼は誰を待っていたのか、どんな思いで夜毎、あのぽってりとした提灯を灯していたのか。脇を固めるのは、お馴染みの面子であったり、≪香菜里屋≫シリーズに出てきた懐かしいあの人であったり。なんと、今作では、例の池尻大橋のバーマン香月は、結婚してしまうんですぜー。独身主義者なのかと思っていたよ…。

香菜里屋の常連たちも、それぞれの理由でその地を離れ、また香菜里屋という存在自体も…。さみしいけれど、やはりこれが最後なのかしらん。別れがテーマになることが多く、いつもの料理もいつものようには楽しめませんでしたよ…。

目次

ラストマティーニ
プレジール
背表紙の友
終幕の風景
香菜里屋を知っていますか


「ラストマティーニ」
≪Bar谷川≫の老バーマンが出す、古き良きスタイルのマティーニは、長く香月が信頼を置いていたものだった。ところが、ある日≪谷川≫を訪れた香月に出されたマティーニは…。


「プレジール」

人には楽しむという言葉が背負いきれなくなる時がある。励ましの言葉が呪いの忌み言葉になる事がある。プレジール、楽しむ会を結成していた、三人の女性たちにも、それぞれの変化が訪れていた…。

「背表紙の友」

香菜里屋の店内で、いつものように弾む会話。ところがこの会話には、三十年前にある田舎町で起きた、ささやかな出来事が隠されていた。本に関する話題にはつい頬が緩むのだけれど、「背表紙の友」という言葉が床しい感じでいいなぁ。たとえそれが、男子中学生のよからぬ思いから来たものであっても…(ま、可愛いもんなんだけど)。

「終幕の風景」

変化はいつだって些細な事から始まるもの。常連客が香菜里屋で感じた違和感の正体とは? そして、工藤の店からタンシチューが消える。香月が語るに、工藤のタンシチューはただのタンシチューではない。それは二人がともに修行した店の直伝の料理。そこで起こった不幸は、工藤のその後にも影響し、工藤はタンシチューを作り続け、待ち続ける男となった。これに関しては、次の短編にも話が引き継がれる。

「香菜里屋を知っていますか」

この話では、工藤の姿が見えない。その代わりと言うべきか、他シリーズの登場人物たちが豪華メンバーで出演します。香菜里屋を知りませんか? その問いに答えるのは、一 雅蘭堂の越名集治、二 冬狐堂・宇佐美陶子、三 蓮杖那智。
蓮杖那智がラストを締める。香菜里屋は迷い家のようなものだったのかもしれない。山中で道に迷った旅人が、ふとたどり着く一軒の家。そこで渡された握り飯はいつまでもなくなることがなく、またその家から拝借した椀には、米が絶えることなく溢れるのだ。その話を聞きつけた他の人間が山中を歩きまわっても、決して見つからない、そんな迷い家…。
終焉はまた、開始への約束でもある。さて、香菜里屋は、工藤はどうなるのでしょうか。

■関連過去記事■
桜宵」/広がる北森ワールド(≪香菜里屋≫シリーズ2)
螢坂」/ビアバー≪香菜里屋≫にて・・・(≪香菜里屋≫シリーズ3)
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「ぶぶ漬け伝説の謎」/アルマジロ、再び!

 2006-10-12-22:19
 
北森 鴻
ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー 

支那そば館の謎 」の続編。京都、それもメジャーどころではなく、知る人ぞ知る、裏(マイナー)な名刹、大悲閣を舞台にした、ミステリーの連作集。

目次
狐狸夢
ぶぶ漬け伝説の謎
悪縁断ち
冬の刺客
興ざめた馬を見よ
白味噌伝説の謎

登場人物は前作に同じ。広域窃盗犯としての過去を持つが、現在は心を入れ替え、大悲閣の寺男を務める、有馬次郎ことアルマジロ。みやこ新聞の「自称・エース記者」、折原けい。バカミス作家のムンちゃん。全てを見通し、全てを包み込むような、懐の広いご住職。

前作にて予想されたことではあるけど、お調子者同士の、折原けいとムンちゃんのコンビは時に凶悪。有馬次郎でなくとも、少々頭が痛くもなる。おイタが過ぎて、「冬の刺客」においては、折原けいはとうとう「自称・エース記者」の看板を捨て、みやこ新聞に辞表を出すハメにも陥る。

とはいえ、全体的にライトな作風の本シリーズ。「興ざめた馬を見よ」、「白味噌伝説の謎」においては、裏京都・ミステリーガイドなるシリーズを売り込む、フリーライターとして返り咲き、またしても大悲閣に鼻息荒く乗り込むのだった・・・。

ちょっとした謎、ほんの少しの手掛かりから、有馬次郎が分かった!!!!、となる本シリーズ。その推理については、うーむ、それもあるのかもしれないけど、それだけじゃ分からんだろ、とも思うのだけど、本シリーズはキャラを楽しみ、十兵衛の大将の料理を楽しむべきもの。ちょっとした、京都の豆知識などを仕入れつつ、軽~く楽しむのが良いと思う。で、私はそれを楽しみました。

しかし、「ぶぶ漬け伝説の謎」で知って、吃驚したんだけど、京都ではラーメンに鶏の唐揚げというのが、当たり前の組み合わせとしてあるそうな。関東では見かけないような気が致します。関西でも特に京都だけのことなのかしらん。

そうそう、本シリーズの舞台である、大悲閣。このお寺って、実在しているそうなのですね。前作、支那そば館の謎」の文庫版の解説を立ち読みしたところ、なんと本物の大悲閣のご住職が解説を書いておられました。

更に更に、も一つ気になったシーン。

「どないしたん、折原まるでどこかの民族学者みたいやよ」
「いってくれるじゃないの、ア・リ・マ」
有馬でもなければ、アルマジロでもない。独特の言い回しで耳元に囁かれると、胃の腑から苦いものがこみ上げそうになった。
―悪いミステリーでも、読んだんちゃうか。

って、それはやっぱり、
蓮丈那智シリーズ のことよね。笑 

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「狂乱廿四孝 」/幽霊画が語る物語

 2006-08-28-22:17
北森 鴻
狂乱廿四孝
(画像は文庫より引きましたが、私が読んだのは単行本です)

一枚の幽霊画に隠された謎。

脱疽におかされ、両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた、明治始めの名立女形・沢村田之助。彼の周辺で殺人や放火が相次ぐが、これには一枚の幽霊画が関係しているようで・・・。芝居町を守るため、守田座を守るため、そして田之助を守るため、座付き作者河竹新七のもとに弟子入り中の、ヒロインお峰は立ち上がるのだった。第六回鮎川哲也賞受賞作

沢村田之助はじめ、大道具方・長谷川勘兵衛、問題となる幽霊画を描いた狂画師・河鍋狂斎、守田座の座付き作者・河竹新七(のち、河竹黙阿弥)など、実在の人物を上手く絡めたミステリー。

話としては面白いし、女形・沢村田之助の凄惨とも言える芝居への思いには心打たれるんだけど、解説にもちらりとあったように、時代色が綺麗についているとは言い難い。ヒロインお峰ちゃんも実に愛らしいけど、この時代のこの場所に、こんな風に存在し得たとは思えないしね。

実はこの「幽霊画の謎」については、早々に投げ出してしまって、田之助やその周囲の人々、歌舞伎の世界を楽しんでしまった。田之助の色っぽさ、また芝居もの達の熱気がむんむん迫ってくるような物語だったよ。

ところで、ネットをウロウロさまよっていたら、皆川博子さんが同じ題材で書いておられると思われる本を見つけました。うーむ、こちらも読んでみたいなぁ。皆川さんの芝居の世界、「花櫓 」でも面白かったし。

皆川 博子
花闇

☆澤村田之助について (Wikipediaにリンク

「螢坂」/ビアバー≪香菜里屋≫にて・・・

 2006-08-24-00:55
 
北森 鴻
螢坂

「花の下にて春死なむ」
、「桜宵 」に続く、ビアバー≪香菜里屋≫シリーズ第三弾。

三軒茶屋の奥まった路地を抜けた先には、ぽってりと白い提灯が浮かび、そこではいつも、店主工藤が優しい微笑みとともに客を待つ。四種類の度数の異なるビールと、趣向を凝らした酒肴、それに常連同士の他愛無いやり取り、店主工藤の細かい心配りが、香菜里屋の特徴。

こんなお店があったら、行ってみたいよなぁ、と思ってしまう。
(ぬるくなると取り替えられてしまう、ビールの値段はどうなってるの?、などとも思ってしまうけど。笑 ベストな状態でビールを飲むことは、ここ香菜里屋の信条とも言える)

目次
螢坂
猫に恩返し
雪待人
双貌
孤拳

前二作と同様に、ミステリー仕立ての短編が並ぶ。

「螢坂」は他愛無い嘘をつかざるを得なかった女の哀しみが、「猫に恩返し」では町角の人情話に込められた、焼き鳥屋の常連客たちの思いが描かれる。

「雪待人」では、雪を待っていた女が描かれ、そのラストには店主工藤のちょっとした秘密が、池尻大橋のバー「香月」のバーマン、香月から語られる。残り二編では、それについて触れられることはないのだけれど、いつか、このちょっと不思議な人物、工藤の過去についても語られるのかもしれない。

「双貌」はちょっと凝ったお話。作家、秋津が描いた貌。二つの貌は何のため?

「孤拳」は捜し物をしに香菜里屋を訪れた、若い女性、真澄のお話。誰に振るう事も出来ない、ただ自ら眺める事しか出来ない孤独な拳。しかし、それは不幸であるということと、同義ではない。

≪香菜里屋≫シリーズ、第一弾の「花の下にて春死なむ」も読んだのだけど、これはメモを取る前に返却期限が来てしまったのです。そうだなー、なので、大体の印象なんだけど、一作目ではまだまだ「謎」の方が幅を利かせ、店主、工藤の造詣を含め、まだこなれていないような印象を受けた。「花の下にて春死なむ」は、「第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作」とのことなので、「謎」としては面白いのかもしれないけど、人の心の機微や料理を楽しむ私の読み方では、二作目、三作目の方が嗜好に合うよう。
三作目の本作では、料理も絶好調。ほんとに美味しそうなんだ、これが。

「メイン・ディッシュ」/二人の「ねこ」の物語

 2006-07-30-21:12
 
北森 鴻
メイン・ディッシュ

小劇団「紅神楽」を率いる、姉御こと略して「ねこ」。彼女の元には、雪の日に拾ってきた捨て猫のような男がいる。彼女が拾ったのは、これまた略して「ミケ」こと三津池修。年齢も職業も過去も、互いに敢えて聞くことも、話す事もない彼。日ごろ何をしているのか分からないけれど、きちんと家賃を半分納めてくれ、なおかつ料理の腕はプロ級とくれば、文句はない。二人はいい関係を築いているのだ。

目次
アペリティフ
ストレンジ テイスト
アリバイ レシピ
キッチン マジック
バッド テイスト トレイン
マイ オールド ビターズ
バレンタイン チャーハン
ボトル“ダミー”
サプライジング エッグ
メイン ディッシュ

劇団員達が持ち込むちょっとした謎を「ミケ」が解いてくれる、そんな日常の謎系ミステリーかと思いきや、実はもっと凝った仕掛けが施されているのであった・・・。

間に挟まる「アリバイ レシピ」「バッド テイスト トレイン」は作中作とでもいいましょうか、作中のある人物が作った、仕掛けの物語。わけが分からなくても読んでおけば、後できっちり繋がりますです。

さて、このまま半永久的に続くかと思われた、「ねこ」と「ミケ」の暮らしだけれど、ある日ふらりと「ミケ」が出て行ったことでこの生活は終わってしまう。「ねこ」は結局は「ミケ」のことを何も知らなかったわけで、彼自らの意思で出て行かれては、探す伝手すら残されてはいなかったのだ。また、「ねこ」が主宰する劇団にも転機が訪れる。毎週末のように行われたホームパーティーで、「ミケ」の料理を堪能した仲間達もバラバラになってしまう・・・。

「ミケ」とは誰だったのか?
そして、「ミケ」はねこの元に返ってくるのか?

うーん、人にとって、人生のメイン・ディッシュとは誰で、またそれは誰と食べるものなんだろうね。

ちょっと
「支那そば館の謎 」 のムンちゃんを髣髴とさせる、見当外れの推理ばかりしている、座付き作者の小杉隆一のキャラがいいです。?

「ミケ」が作る料理が、これまたすっごい美味しそうなんだ!
大きな謎解きとしては、実はちょっとうーんだったりもするんだけど、ミケの料理に免じて許せてしまう。
人間の男を拾うという点で、ちょっと「きみペ」との関連も思ったんですが、いや、「ミケ」はモモより全然、実際的な面で役に立っています。笑

← こちらは文庫

「メビウス・レター」/過去から来た手紙

 2006-07-25-23:50
 
北森 鴻
メビウス・レター 

幻想文学の書き手として名が売れ始めた作家、阿坂龍一郎のもとに、「今はもういないキミへ」と題された、差出人の名が無い手紙が送られてくる。
その過去から来た手紙に阿坂は激しく動揺する・・・。

また、時を同じくして五芒星を描くように、阿坂のマンションを中心とした放火事件が相次ぐ。

阿坂を追い詰めるのは何なのか、阿坂は誰に追い詰められているのか?

それは手紙が指し示す、山梨の高校における、七年前の少年の焼身自殺事件が関係しているようであるのだが・・・。

フェアに書かれているし、ん?、と引っ掛かるところもあるので、勘の良い方は途中で一つのカラクリには気付くのだと思う。なんていうんだろう、ちょっと違うけど、歌野さんの「葉桜の季節に君を思うこと」的なトリックが仕掛けられているのだよ(あれも、そう思って読めば、確かにそう読めるでしょ

ただし、こちらは動機がなー。作家・阿坂の誕生のきっかけになった殺人(というか、事故)や、阿坂を追い詰める人物の動機がいかにも弱い。

残念ながら、この本は
「狐罠」 に出てきた刑事、四阿、根岸のコンビが活躍するのが嬉しいくらいだったなぁ。?

?← 文庫も。こちらのが直截的に「事件」に関わっている。

「孔雀狂想曲」/北森さん、もう一つの骨董の世界

 2006-07-07-23:16
北森 鴻
孔雀狂想曲

北森さんで骨董の世界で、というと、真っ先に思い出すのは、「冬狐堂シリーズ 」なんだけど、この本の中には、「陶子」の陰はちらとも見えない。
唯一クロスしているのは、「狛江の市」くらいかな。?

同じ骨董の世界とはいえ、店舗を持たない旗師の陶子とは違い、こちらの店主・越名は下北沢の地に、《趣味骨董・雅蘭堂(がらんどう)》なる店を営んでいる。

目次
ベトナム・ジッポー・1967
ジャンクカメラ・キッズ
古久谷焼幻化
孔雀狂想曲
キリコ・キリコ
幻・風景
根付供養
人形転生

眠っているようだと、いわれることがよくある。
わたし自身もわたしの店も、である。
眠り猫のように目が細いのは親の遺伝子のせいであるし、わが愛すべき《趣味骨董・雅蘭堂》が下北沢という絶好のロケーションにありながら暇なのは、少々駅から離れすぎているのと、完全なる住宅地の、しかもひどく目立たない路地の片隅にあるためであって、これはだれを責めることもできない。

冒頭より引いたこんな雰囲気からも、少々漫画的でもあるかと思う。私は好きだけど。店で扱う品物を介した、ミステリー仕立ての短編集で、探偵役は店主の越名。

以前は美術館系のバイヤーをしていたようだけれど、今は何をやっているかわからない、香港からコレクトコールで国際電話をかます兄も面白いし、兄の繋がりで知る事になった、善悪飲み込んだような犬塚とその郎党も面白い。「非合法は身内でやるに限る。裏切り者が出ないからな」、ですよ。

目も細いし、冬狐堂ほどピリピリしたところはないけれど、そこは海千山千の骨董の世界。越名も眠っているように見える目とは裏腹に、実際はキレる男。越名は悪党の犬塚とも、対等に渡り合う。骨董の世界では、悪党ほどいい目を持っているのだという。何せ目利きが悪ければ、悪党としてのしていくことは出来ないものね。悪党が単純に敵、悪ではないという構造も、ちょっと面白かった。

キャラが漫画的であるのは、いいところでも悪いところでもあるわけで、女子高生・安積のキャラは、ちょっと私にはどうも・・・であった。いや、店主・越名とこの安積の掛け合いが、時々上滑りしてイタく感じたんだけど、これ、どうなんだろうなぁ。
「あのさあ、前に読んだことがあるんだ。ナントカ神父って小デブが活躍するミステリー。クラウンだっけ、バラモンだっけ、とかそんな感じ。小デブだってさ。汗 いや、私も結局、いまだに読んだ事ないんですが、「ブラウン神父シリーズ」。

でも、北森さんの本は基本的に手堅いよなぁ、とも思うのであった。そこそこの面白さは絶対外さないもの。北森さんの本の今ひとつの楽しみである、食の話があまり出てこないのが、残念といえば残念だったんだけどね。

← 文庫もあるようです。

そうそう、ちょっとおどろおどろしい感じのハードカバーの表紙より、こちら文庫の表紙の方が、本の内容に合っていると思いました。店主の越名、ちょっと年齢不詳だったんだけど、やはりこれはそれなりに若い男性なのかしら?

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「支那そば館の謎」/北森さんの地方シリーズ?

 2006-06-29-23:16
 
北森 鴻
支那そば館の謎 

表紙に裏京都ミステリーとある通り、これは京都を舞台にしたミステリーの
連作集。

目次
不動明王の憂鬱
異教徒の晩餐
鮎踊る夜に
不如意の人
支那そば館の謎
居酒屋 十兵衛

観光客で賑わう渡つき橋から、山道のアップダウンを繰り返す事約二十分。嵐山の奥の奥に位置する大悲閣千光寺。寺男として勤める有馬次郎には、広域窃盗犯としての過去があった。全てを知りつつ、赦し見守る住職の下で、彼は修行の日々を送るのであるが、京都みやこ新聞文化部の自称エース記者、折原けいが持ち込む様々なトラブルに巻き込まれ、時に山を降りる事になる。

地方を舞台にしたミステリーであり、「ちょい悪」な過去を持つ主人公、頭が上がらず敬愛する人物が主人公にいるところなど、博多を舞台にした
「親不孝通りディテクティブ」 と似ている感じ。ただし、こちらの方が、ギャグ色が強く、ライト。本自体もソフトカバーだしね。

大日本バカミス作家協会賞受賞作家であり、著作『鼻の下伸ばして春ムンムン』で知られる水森堅ことムンちゃんの人物造詣、寿司割烹・十兵衛の大将が作る料理などが魅力的。でも、主人公とコンビを組む新聞文化部記者、折原けいとのやり取りが、かなり上滑りしているので、ちょっと好みが分かれるかな。

ムンちゃんが出てくるのは、途中からなんだけど、やたらとキャラクターが立っているだけあって、続編であるぶぶ漬け伝説の謎にも出てくるみたい。
うーむ、ムンちゃんが出てくるのならば、続きもちょっと読んでみたいなぁ、とまぁ、そんな感じ。時に少々後味の悪いお話もあれど、全体的にはライトにライトにさっくり楽しむお話群。

 
北森 鴻
ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー 

「桜宵」/広がる北森ワールド

 2006-05-29-19:36
北森 鴻
桜宵

東急田園都市線三軒茶屋の駅から商店街を抜け、いくつかの路地の闇を踏みしめたところにぽってりと等身大の白い提灯が浮かぶ。それが、この《香菜里家(かなりや)》の目印である。決して立地条件がよいわけでもないのに、客足が途切れないのは、ここをさながら隠れ家のように愛してやまない人々が数多くいるためだ。

この本は、このビアバー香菜里屋を舞台にした短編集。

目次
十五周年
桜宵
犬のお告げ
旅人の真実
約束

「旅人の真実」、「犬のお告げ」を除けば、殺人事件だって出てこないし、所謂、昨今流行の日常の謎的ミステリー。常連客がふと漏らす不思議、謎を、その時店にいた、他の客がやいのやいの言い、店主・工藤がそこに一筋の道をきっちり付ける(約束」のみ、舞台は香菜里屋ではない)。

店主の工藤は安楽椅子探偵でもあり、食事を供し、一歩引いた態度である所からいうと、アシモフ「黒後家蜘蛛の会」の給仕ヘンリーを思わせる。

「少し変わった物を作ってみたのですが、という言葉と共に出される、彼の創作料理も魅力的。

広がる北森ワールドとしては、「たまに来る民族学の先生」というのは、蓮丈那智 のことであろうし、その縁で冬狐堂 とも繋がっているはず。

読んでいて気になったのは、工藤とはまた異なる個性のバーマン、香月の池尻大橋近くにあるという、茶室をイメージして造られたというお店。これもまた、どこかの作品で出てきたりしているのかなー。色々と繋がっている北森ワールド。油断がなりませぬ。

北森作品は新しい物の見方や、物凄く新鮮な文体を見せてくれるわけではないのだけれど、質の高い粒の揃ったものを出してくれる、安心感のようなものがある。
これだけ読んでると、頭が偏るようにも思うけど、気楽に読むのに私には適している感じ。

この本も、いくら控えめにしているとはいえ、ビアバーの主人がなぜ謎に首を突っ込む!、とか、常連が色々口を突っ込んでくるお店は嫌よ、などないでもないけど、そこの所はお約束で目を瞑って、作中で工藤に料理を勧められるように、黙って北森さんの紡ぐ物語を味わった。

 ← こちらは文庫

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

「親不孝通りディテクティブ」/ストリートの探偵コンビ

 2006-05-13-19:48
 
北森 鴻
親不孝通りディテクティブ 

目次
セヴンス・ヘヴン
地下街のロビンソン
夏のおでかけ
ハードラック・ナイト
親不孝通りディテクティブ
センチメンタル・ドライバー

最近、民族学を絡めた蓮丈那智シリーズ や、旗師・冬狐堂シリーズ から、微妙に北森鴻氏にはまっているワタクシ。今回は、図書館にあったのでこちらの本を。

しかし、北森さんってすっごい多作な方なんですね。amazon見に行っても、たっくさーんの著作が出てくるですよ。

さて、これは蓮丈那智シリーズや、冬狐堂シリーズとは異なり、民族学、美術品も出てこないし、主たる登場人物だって、大人の女性ではなく、博多っ子の若い男性。多作でもあり、守備範囲もイロイロなのねと、ちと感心。


「親不孝通りディテクティブ」までは、何というか池袋の街にはマコトが!、博多は天神、親不孝通りにはテッキとキュータのコンビがいる!、という感じでバサバサと地元で起こった事件を解決していくスタイル。マコトの方が若いけれども、ストリート探偵モノといった趣き。基本的にはお金にならない仕事だし、厄介ごとを持ち込まれて、それを解決していく感じ。謎解きというよりも、街の雰囲気や、登場人物の会話、行動なんかを楽しむ所も、IWGPシリーズと似た印象を受ける。

「俺」ことテッキは若い頃は東京にいたけれど、何かをやらかして博多に舞い戻ってきたらしい、哲学科くずれのちょっと一家言ありそうな、二十代も後半の屋台のオヤジ。屋台といってもおでんにラーメンに、カクテルが出てくる所等、少々洒落てもいるのかも(とはいえ、不評のカクテルも多いんだけど)。

二十代後半にしては少々落ち着きすぎたテッキとコンビを組むのは、お調子者で愛に生きる結婚相談所の調査員、こちらはおそらくずっと地元っ子、バリバリの博多弁を操るキュータ。

高校時代からの腐れ縁、テッキとキュータは、持ち込まれた厄介事をそれぞれのやり方で解決していく。「俺(テッキ)」と「オレ(キュータ)」の一人称が、章毎に交互に続くスタイル。脇を固めるのは、二人の高校時代の恩師であり、今はキュータの勤める結婚相談所の代表である、「オフクロ」こと華岡妙子。一癖も二癖もありそうな、博多署の悪徳刑事、ライブハウス《セブン》の経営者にしてシンガー《歌姫》などなど。

(以下、ネタバレ)
これ、なかなか顔ぶれも面白いし、シリーズ化も出来ちゃうんじゃないの?、とも思うんだけれど、「センチメンタル・ドライバー」に至って、テッキは後戻りできない事をしてしまうんだなー。そして、彼は博多の街から姿を消してしまう。IWGPシリーズで、マコトにも似たような事はあったと思うんだけれど(?の「水のなかの目」ね)、彼の場合はあくまで直接手を下したわけではないからなー。ま、こういったスタイルの物語では、探偵が当事者になってしまうのは、なかなかにむつかしいもの

最後の章まではいい調子で読んでいたんだけれど、最後がかなーり苦かったです。もっと他の方法はなかったんかい、とちょっと切ない・・・。ま、やせ我慢でハードボイルドチックな、テッキらしくはあるんだけれどさ。などと考えてしまう辺り、またしてもそれなりにはまったのかもしれませんが。

最後苦いし、力いっぱい面白かった!、とは言えないんだけれど、途中までは博多弁も、福岡の街の雰囲気も、ちょっとした裏の雰囲気も楽しく読んだ。あの終わり方は何だか勿体無いよ、と私は思う。

「狐罠」/それは妖しき贋作の世界

 2006-03-30-20:04
北森 鴻
狐罠

これは蓮丈那智シリーズ(過去記事はこちらこちら )の北森さんの別シリーズ。とはいえ、この二つのシリーズは、ところどころクロスリンクするらしく、実は「凶笑面」の中の一編において、本作の主人公、陶子には既に出会っていた。こちらもまた主人公は美貌の大人の女性。蓮丈那智シリーズでは民族学的なフィールドワークがその舞台だったけれど、こちら、冬狐堂シリーズでは舞台は骨董の世界へ。時々、クロスリンクするのもわかるでしょ? 全然、雰囲気は異なるけれど、漫画「雨柳堂シリーズ」を読んでから、どうも骨董の世界にも心惹かれるのだな。

さて、本作の主人公、宇佐見陶子は、「冬狐堂」を名乗る、目下売り出し中の旗師。旗師とは、店舗を持たない骨董業者のこと。そんな彼女の前に、やり手と噂の「橘薫堂」から芳香を放つ餌が投げ付けられた。

「騙され」ても「騙し」た方が上とされ、騙す方をやり手と認識し、騙される方が目がないのだ、と蔑まれるこの世界。陶子は「橘薫堂」の巧みな「目利き殺し」を仕掛けられ、発掘物の硝子碗と称した贋作を掴まされる。目利き殺しとは、品物の欠損をあの手この手でごまかす技術のこと。陶子の目を殺したのは、炒る所から始まって、店主手ずから供されたほうじ茶の香り。嗅覚を署・ェれた人間の感覚は鈍る。

プライドを傷つけられた陶子は、保険会社の美術監査部調査員、鄭富健の助けを借りて、橘薫堂のキナ臭い仕事ぶりを知る。橘薫堂の店主、橘は、国立博物館の主任研究員をも手玉にとって、手広くダーティーな仕事を行っていたのだ。

陶子は、イギリス人の芸大教授、プロフェッサーDとの夫婦時代に知己のあった、潮見という老人を紹介して貰い、贋作の世界に手を染める事になる。これは彼女のリベンジマッチ。それは離婚してからの旗師としての生き方を測るもの、これから生きていく道の厳しさを覚悟するためのものでもある。骨董を扱う限り、贋作とは完全に手は切れないもの。

リベンジマッチの相手として、目利き殺しを仕掛けるのに、橘薫堂ほどふさわしい相手があるだろうか。

物語は陶子による「目利き殺し」と、「橘薫堂」の従業員殺しの二つを軸に進行する。橘薫堂の従業員、田倉俊子はなぜ殺されたのか。これには過去の事件が絡んでいるようなのだが、それはなぜ「今」でなければいけなかったのか。

陶子は刑事から従業員殺しの嫌疑を掛けられながらも、贋作の世界に生きる潮見老人の凄味をまざまざと見せ付けられ、目利き殺しに奔走する。「目利き殺し」といっても、単に橘薫堂に贋作を掴ませて、それで終わりにするつもりは陶子にはない。これは橘薫堂に対する懲らしめも含む意味で、まさに戦いなのだ。施された仕掛けも粋に感じた。

登場人物で言えば、刑事の根岸、四阿のコンビもいい感じ。海千山千だけれどコンピューター関連にからっきし弱い根岸と、データ処理命の若手の四阿(ま、ちょっと類型的でもありますが)。 陶子と、友人のカメラマン、硝子との、人呼んで壊れ物コンビ(陶器に硝子)もまたなかなか。

憂いを含むプロフェッサーDも気になるし、凄惨とも言うべき精魂込めた物作りに没頭する潮見老人も気になる。非常に高度な技を持った贋作師、潮見老人は、この手で作るものは既に贋作ではないと嘯く。その手は、その時代にかつてあったであろう喪われたものを、現代に蘇らせているのだという。

蓮丈那智シリーズでは、内藤三國というウロウロ惑う存在が居るので、那智自体はクールにまったく揺らがないけれど、こちら冬狐堂シリーズでは、陶子は揺ら揺らと揺れ動く。悪党になるには純粋すぎる陶子、これからいっぱしの悪党になっていくのか?

本作では贋作事件に関わりがあったという噂が立ち、幾つかの市への出入りも禁止されるが、凶笑面」に出てきた陶子の凄まじさはまだ見られない。本作から、凶笑面」との間に、陶子に何が起こったのか? 気になるのできっと次作も読むのだと思うのだけど、図書館にあるといいなぁ。

← 文庫もあるようです
北森 鴻
狐罠

「触身仏」/民族学ミステリー

 2006-03-20-22:02
 
北森 鴻
触身仏―蓮丈那智フィールドファイル〈2〉 

つい先日、同シリーズの
「凶笑面」 を読んだばかり。その時はちょっと微妙に思い、評価保留にしていたのだけど、これは大分バランスも良くなって、なかなか面白かった。前回、微妙と思ったのが、探偵役の「蓮丈那智」の人物造形。今回は?だけあって、お披露目的な説明の部分が大分減ったからか、助教授「蓮丈那智」にあまり違和感を覚えなかった。

?と同様、今回も短編が連なるスタイル。
一つ一つの区切りがあるので、これも読み易さの一因かも。

目次
秘供養
大黒闇
死満瓊
触身仏
御蔭講

民族学的薀蓄と現実の事件がリンクするスタイルをとっているので、民族学的部分と謎解きの部分のバランスが難しい。「秘供養」などは民族学的なアプローチは面白かったけれど、殺人事件の顛末はあれれという感じ。
バランスという意味でも、面白かったのは「触身仏」と「御蔭講」の二編。「触身仏」は、生きながら仏になる即身仏のお話。「御蔭講」は、助手内藤三國の講師昇格がかかる、「御蔭講」の解釈のお話。

前回、助手のミクニが苦労していた教務部の狐目の男が、実は那智の同窓生で如何にも曰くありげだったり、まだまだこのシリーズは広がっていきそう。実は別シリーズで骨董業界を描いているらしい(前回、ここの登場人物が、凶笑面にもちらりと登場)、「狐罠」も借りてきてしまったのだ。なんだかんだで、ちょっぴりはまってます、北森鴻さん。

民族学の「記号」の話が、面白い。製鉄民族にも興味がわいてきたな~。
「もののけ姫」に出てきたのも、あれって製鉄民族なのかしらん。

 ← 文庫化&ドラマ化されていたようです

「凶笑面」/民族学なミステリー

 2006-03-17-21:07

北森 鴻
凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉

美貌の助教授、蓮丈那智と、助手・内藤三國がおくる、民族学なミステリー。

目次
鬼封会
凶笑面
不帰屋
双死神
邪宗仏

サブタイトルに「蓮丈那智フィールドファイル」とあるように、彼女が関わった一つの事件が、フィールドワークのように語られる。表紙とタイトルに惹かれて、借りてきちゃったのだ。この表紙、なんか興味をそそられません?

その頭抜けた発想と、酷薄にも見える美貌で、彼女は学会では「異端の民俗学者」として有名であるらしい。彼女の研究室の助手、内藤三國はほとんど彼女の下僕状態にあるけれど、全ては彼女の頭脳でもって報われる。同じ研究者である三國は、那智の発想にいつも感嘆してやまないのだ。そんな三國は那智の頭脳に惚れ込んでいるともいえる。そして、那智が天才肌とすれば、コンビを組む彼はきっと努力家。そういう意味で、これはちょっと変形のホームズとワトソン・コンビ。

事件が起こり、「異端の民俗学者」である蓮丈那智が、民族学の知識を散りばめながら、そこで何が起こったのか、紐解いていく仕掛け。「双死神」などは、次作への伏線かな。

で、肝心の面白いかどうかというとですねー、これが実は微妙なんだな。いや、面白くないわけではないんだけど。でも、こういうパターンの本って、この「蓮丈那智」自身のリアリティが、面白さに大きく影響してくるでしょう? 自分が那智の美貌に嫉妬してんのか?、とも思うけれど、別に「美貌の助教授」(教授でもいいけど)って、それだけで「異端」かなー。そんなに珍しいもんでもないと思うんだけどなぁ。頭いい人って、美人なこと多くない? 那智の美貌エピソードも、なんだかとってもステレオタイプ(おじさんが寄ってくるとか、それの撃退の仕方とか)。

後は、助手、内藤三國が苦心する、大学教務部とのやり取りなんかにも、いまいちリアリティーが感じられないというか・・・。いや、それだけ優秀なんだったら、大学内部だけではなく、外部からもちゃんと研究費を署・ャ取ってくるもんだろう、とか。理系と文系では違うのかなぁ・・・。

でも、何となく気にはなるので、図書館にあった次作も借りてくるつもり。そうだなー、かる~く民族学を楽しむにはいい本かも。いや、後ろに参考文献沢山載ってるんですけどね、生意気言ってすみません。民族学とはちとずれるかもしれないけど、どうしてもこういうタイプの本は、京極堂の凶悪なまでの知識と比較してしまうのだな、うん。

 ← 既に文庫化もされているようです。

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「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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